ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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55話 帰り道、光宮さんに慰められた

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛どうしようどうしよう理央ちゃんどうしよぉ……!」

「落ち着いてください柚希先輩、いつものことじゃないですか。 あんな感じになるのって」

 

あの後、どっか行っちゃってたおまんじゅうをみんなで探して。

 

そうしてスイーツをみんなで楽しんで、ひなたさんもすっかりご機嫌になって。

 

さっきのことなんて、ちょっと忘れかけて。

で、2人と別れて光宮さんと電車に乗って。

 

……昼間だからほとんど誰も居ない車内でほわーってしてたら……急に思い出して、ぶわっと来ちゃった。

 

「だってだって! だってぇ!!」

「もう何十回、私としたようなことですし大丈夫ですよ」

 

「でもひなたさんとはまだ2回しか会ったことないし!」

「ひなたちゃん、良い子ですし、それに柚希先輩との相性良いっぽいですし大丈夫じゃないです? 先輩から1口、あーんしてもらってご機嫌でしたし?」

 

どうしようどうしよう……お友達になったとは言っても、まだ全然お互いのこと知らない子なのに、そんな子にあんなこと言っちゃって。

 

「また僕、あんなことを他の人に……」

「まぁ、中学まではときどきありましたよねぇ、クラスで。 で、みんなで気まずくなるっていう」

 

「うぅ……せっかくできた友だち、なくしちゃう……」

「きゅい?」

 

ぎゅっとおまんじゅうを抱きしめて顔をうずめる。

 

……ちょっと安心するけども、でもやっぱり、さっきやらかしたのが何回も頭の中でぐるぐる回るんだ。

 

「うぅ……ぐす……」

「きゅいっ」

 

がたんがたん。

 

電車の音を聞きながら、うじうじとしてる僕。

ああ、僕はいつもこうだ。

 

人に優しくされすぎると、いつもこうやって突っぱねちゃう。

 

もっと良い断り方とかあるはずなのに、本とかで読んでるのに、それができないんだ。

 

「昔みたいに泣きながら断るのよりは進歩してますよ? 先輩があんまりにもかわいくかわいそうに泣くので、みんなが困っちゃうあれよりは」

「思い出させないでぇ……」

 

「……だからみんなに、柚希先輩が泣きじゃくる姿で……する属性、植え付けちゃった張本人のくせに。 だから田中先輩だって……」

 

「?」

「……なんでもないですっ」

 

ほら、光宮さんも怒ってる……うぅ……。

 

「ま、帰ったらフォローも入れときます。 多分大丈夫でしょうけど」

「お願いぃ……」

 

ああ、こんなときでも見捨てないでくれる光宮さん。

 

何かにつけて「家族ですから!」って言ってくれるし……年下だけどお姉ちゃんみたいな子だよね。

 

「柚希先輩。 今日は助けてくれてありがとうございました」

「ひっく……え? ううん、僕の方が」

 

「私、似た場所にあるダンジョン間違えるって言う致命的なミス、やっちゃってたんですよ?」

「うん、でも僕たちも」

 

「……いえ、経験者の私が未経験者の柚希先輩たちを危険に晒したんです。 あの場面、仮に安全を優先してリストバンド使ってエスケープしてたら」

 

珍しく、下を向いたままの光宮さん。

 

「……柚希先輩にも一気に、今日の稼ぎがない状態で今日の稼ぎの半分くらいの借金させることになってました」

 

「ああ、リストバンドってよっぽどの緊急時以外での使用はお高いもんねぇ……」

「ですです。 なので戦うこと選びましたけど、そのせいで先輩たちが危険だったのは変わらないんです」

 

泣き止んだ僕と、うつむいている光宮さん。

 

「本当なら、先輩も含めて3人に思いっ切り怒られても文句は言えない立場なんです。 なのに先輩もあの2人も、全然そんなこと」

 

「そんなの当たり前じゃない? 光宮さんだけのせいじゃないもん」

 

僕たちは、確かに光宮さんの案内で今日のダンジョンを選んだ。

 

でも、ゲートのあっちこっちでダンジョン名とか注意書きとか書いてあったはずだし、それを確認しなかった僕たちも悪い。

 

ミスってのは1人だけのものじゃない。

パーティーなんだから、みんなのもの。

 

人に任せたんだ、その人が間違えたとしても、そのミスは任せた方の責任でもあるんだから。

 

「それに、光宮さんだけいっぱいケガして戦ってくれてた。 あの姿見て怒る人なんて居ないよ」

「……はい」

 

いくら治癒魔法で治るとは言っても、痛いものは痛いんだ。

 

初心者な僕たちを守るため、ひとりであんな怖い戦いをしてたこの子は、本当に勇気がある子。

 

……僕も、そんな勇気がほしい。

 

そう思って10年以上だから、もう諦めてるけどね。

 

「……それにしても、おまんじゅうちゃんすごかったですね」

「あ、うん。 ちゃんと1体だけを狙って攻撃できるなんて」

 

「いえ、違います、そっちじゃないです……いえ、まあそうですけど」

「?」

 

「きゅい?」

 

なんとなくで腕の中を見たら、ちょうど見上げてきてたおまんじゅう。

 

話、分かってる?

 

……そんなはずないよね、モンスターだもん。

 

「――先輩、本当にダンジョン適性分からなくって潜ったことないんですよね?」

 

「あ、うん。 毎年学校ので受けてて……毎年どんどん参加者が減っていくから、高2の今年に受けたのなんて僕以外でたったの……」

「先輩、大丈夫です! もうテイマー、なってますから戻って来てください!!」

 

この世界は残酷だ。

 

だって小学校1年からクラスごとに、ピクニック感覚でダンジョンに連れてかれて適性が判明するんだもん。

 

そこで適性があるって分かったら「才能あり」、何にも出なかったら「才能ないかも」って分けられる。

 

……で、毎年少しずつ才能がある側の子が増えていけば、それで引っかからなかったのは「アイツら才能ないんだ」って目で見られるんだ。

 

ほんと、ダンジョンなんてなかった時代がうらやましいよ。

昔は適性とかレベルとかなんて測定できなかったんでしょ?

 

ああ、才能ない同士で慰め合ってたあの日々。

クラスの半分くらいはそうだったんだけども、やっぱり温度差はあったんだ。

 

ダンジョンのこと楽しそうに、僕たちに見せつけるようにして話してたグループからそっと距離取ってたあの日々。

 

今じゃ、クラスで3分の1くらいの才能無しグループだし。

 

ん?

待って?

 

それじゃ僕、次学校行ったら才能ありグループ?

あと、仲良かった友達がほとんどな才能無しグループから追放?

 

え?

 

「……ぐす……」

「きゅきゅっ」

「ごめんなさいごめんなさい!? そこまで落ち込むなんて思わなくって!」

 

 

 

 

……僕はもうちょっと、涙腺ってのを鍛えないとダメだ。

 

また泣いちゃって、途中で乗って来たお姉さんに「大丈夫?」って心配させちゃったもん……。

 

「……ごめんね、もう大丈夫」

「いえ、私も言い方が悪くって……私が言いたかったのはですね、先輩」

 

泣き止んだら、あとひと駅だった僕たち。

 

がんばって泣き止んだら、近くに乗ってたおばあちゃんに「泣くの、止められて偉いねぇ」って頭撫でてもらって飴玉もらって、ころころ甘いのでちょっと気分が良くなった僕に、光宮さんが言う。

 

「先輩はダンジョンに潜って戦闘したことないので、レベルが1――あ、この前のスライムで2くらいにはなってたかもですけど。 先輩たち、数匹倒しましたから」

「あ、そっか。 あの後でレベル測定とかしてもらってないもん」

 

「ですね。 で、さっき換金してもらったときにだいたい分かったんですけど……小規模な中級者ダンジョンの真ん中くらい、そのモンスターたちを。 私の吹き飛ばしのダメージなんてほとんどなかったので、実質2回の攻撃で倒してたってことなんです。 先輩と、おまんじゅうちゃんだけで。 たった2回ですよ?」

「きゅい」

 

「……そんなに強いのだったの?」

「だから他の倒すあいだ、明らかに強いの数体だけ吹き飛ばしして後回しにしてたんですよ。 トドメ刺す前に怒り状態になられたら持たないって判断したんです」

 

そうだったかな?

そうだったかも。

 

「そんなモンスターたちを、2回の攻撃で倒せて。 あれからさらに湧いてきたのも含めると、先輩たち、多分10体くらい倒したんですよ?」

「途中で眠くなっちゃったけどね」

 

「レベル1か2だったのでMPも少なかったはずですし……つまりですね、柚希先輩とおまんじゅうちゃんは『レベル1か2で中級者ダンジョンの10階層程度なら行けちゃう』んですよ」

 

中級者ダンジョンの、10階層。

……実感は全然ないなぁ。

 

「もちろん継戦能力はないですけどね。 それって現在のレベル測定じゃ、多分イレギュラー過ぎる力なんです。 見逃されちゃう能力なんですよ」

 

窓の外に見慣れた風景がやって来て、そろそろ着くって頃合い。

 

「だから、先輩」

 

ブレーキが掛かり始めた電車で、いつもみたいに先に立ち上がって手を伸ばしてくる光宮さんが言う。

 

「――先輩たち、レベル上げたらあっという間に上位層に食い込めますよ。 私、そこまでお世話しちゃいますから!」

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