ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「………………………………」
光が見える。
綺麗な花火。
夜空で爆ぜる、綺麗な光。
【おおおおお】
【おおおおお】
【朗報・ユズちゃん、一撃で敵を粉砕】
【しゅごい】
【やっぱこのバ火力、ロリテイマーなユズちゃんにしか出せないのな】
【まぁサキュバスだし】
【あっ……でも、落ちてる】
【え?】
【あっ】
【悲報・ユズちゃん、落ちてる】
【さっきのレベルとか★うんぬんとか気になるけどとにかくユズちゃんがんばって飛んで 飛ばなくても良いから浮遊して ちょうちょなんだから行けるでしょ? なんにも考えないでひらっひらしよう?】
【草】
【草】
【羽生えてるのに、なんで飛ばないのぉ……?】
【大技使った直後は硬直するんだって】
【魔力切れもありそうだな……あの攻撃は】
【あー】
ひゅううう。
僕は落ちる。
落ちている。
僕の髪の毛が――ずっと切っていなかったからずいぶんと伸びた前髪と横髪が、視界の隅でそわそわしているんだ。
「おまんじゅう?」
「 」
ふと、僕のおまたから出てくる白いものがあったからつかんでみる。
おまんじゅうだ。
小さくなった、いつものおまんじゅう。
かっこいい白馬さんじゃなくって、ぬいぐるみみたいなおまんじゅうだ。
【あっ……】
【悲報・駄馬、綿になる】
【あーあ】
【あんな機動性はずっと維持できないよねぇ……】
【でもユズちゃんなら羽で飛べるし……】
ぎゅっ。
僕は、彼を抱きしめる。
お母さんとか理央ちゃんが部屋に敷き詰めてる、たくさんのお人形さんとかクッションみたいな柔らかさの彼を。
【えっ】
【飛んでない……?】
【あっ……羽、引っ込んでる……】
【おでこのツノもないなってる……】
【え?】
【もしかして:ユズちゃん、魔力使い過ぎてサキュバスじゃなくなる】
【そんなぁ】
【えっちなままなのに、どうして……】
彼を抱きしめたまま、空を見上げる。
綺麗な空。
黒の中に白い点々が咲き誇る、空。
「……やったんだね」
きゅっ。
優しく抱きしめる。
けども彼は寝ているのか、返事はない。
「僕たちは、やったんだ」
「ぴ」
「あ、チョコ」
もぞもぞと――ポケットから出てこられる力はないみたいだけど、チョコの声が聞こえる。
なら、大丈夫だ。
「このあとが、どうなるのかは分からないけども」
ひゅううう。
背中から吹き付ける風が、僕を浮かせながら落としていく。
「でも、僕たちはやれることをやったんだ」
『――――――AAAAAAA――――――』
――――――ずぷん。
空が、目を開く。
暗い空の一点から、突如としておめめのような空間の歪みが僕を見つめてくる。
「……そっか。君たちには、まだまだ仲間が居たかぁ」
そこから飛び出してくるのは、もっともっとおっきいドラゴンさん。
僕じゃ、もう手も足も出ない存在。
「……ま、いいよね」
僕はもういちど、おまんじゅうのふわふわとした白い体を胸元で確かめるように抱きしめる。
「僕たちは、がんばったんだから」
【 】
【おろろろろろ】
【ユズちゃん起きてぇ!?】
【悲報・宇宙からでかでかドラゴンが】
【もうだめだ……】
【え ユズちゃん、負けた……?】
【違うぞ がんばったんだぞ、ユズちゃんは】
【けど、敵は増援が……無限に来る】
【無限湧きとか反則だろ……】
「――ゆずきちゃんをキャッチしてください!」
眠くなっていく意識の中へ、ひなたちゃんの声が差し込まれる。
「ゆずきちゃんさえ無事なら……きっと! ……だから!」
「めがみ」
「さきゅばす」
「ゆうしゃ」
「いんきゅばす」
「こども」
「まもる」
どすどすどすどす。
「「「わおにゃあクピ――――――!!!」」」
たくさんの声と足音が、聞こえる。
けども、僕は動けない。
だって……すごく、眠いんだから。
【あっ……下のモンスターたち――とひなたちゃんたちが、ユズちゃんを助けようと】
【ぶわっ】
【ユズちゃんってさ いつでも愛されてるよな】
【ああ】
【誰からでも、誰からでも愛されるんだ】
【性を司るサキュバスなのにな】
【サキュバスの子供だからだよ】
【愛すべき存在だからな】
【俺たちだけじゃなく生物は馬鹿だからな かわいかったり一途だったり、いじらしかったりかっこよければ応援しちゃうんだよ】
【そうだよな】
【ああ】
【ユズちゃんはかわいくていじらしくてかっこいいからな】
【ひなたちゃんたちは間に合うか】
【いや……】
【残念ながら】
【ユズちゃんが戦ってた場所は、ひなたちゃんたちへ攻撃を通さないように離れてた……だから、急いでも……】
【誰でも良い 誰か だれか、ユズちゃんを抱きしめてくれ】
【お願い】
【誰か】
◇
「……柚希先輩」
「理央さん……?」
ふらり。
ある少女が――周囲が7色に光る謎の空間に漂う魔王城のバルコニーから、彼の名前を呼ぶ。
「柚希先輩」
彼女は――ためらいもなく、その手すりに手と足を掛け――
「――っ!? 理央さん!?」
【えっ】
【?】
【どうした?】
【今ユズちゃんがそれどころじゃ――おいまて理央様なにしてる】
【ふぁっ!?】
【理央様!?】
【待って早まるな理央様!?】
――――――とんっ。
「――あなたが居ない人生なんて、人生じゃないから」
彼女は、亜空間の中で身を躍らせる。
捨て身ではあっても、誰かを助けるための犠牲となるために。
「だから――待っててください、先輩。……私は、どれだけたくさんの人に呆れられても――先輩にさえ受け止めてもらえたら、他には何も要りませんから」
定期のないないのため、次回の投稿は17日火曜日の予定です。