ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「しかし、まずは柚希を守らねばな」
「理央ちゃんがだっこしてくれてるから、とりあえずはブレスね! あのでっかいブレス! なんならもう熱いもの!」
玉座から魔王城の尖塔の上の小部屋――魔法で浮かぶスクリーンモニターが並ぶ部屋で、柚希の父母(母母)が、天上を睨む。
「でも、どうやるの?」
「魔王としての記憶と権限によれば――こうだ」
ぽちっ。
銀髪紅眼少女な父親が押したのは、なぜかそれだけが古めかしい――父親になる前の彼が子供のときに再放送で観たアニメで憧れたものにそっくりな、物理のボタン。
それが押されるやいなや、魔王城全体が激しく轟音に包まれる。
「あら? あらあら? なんだか傾いてないかしら?」
「ああ。だってこれは、男なら誰しもが憧れる――」
◇
【!?】
【!?】
【どうしたお前ら】
【!!??】
【ユズちゃんが墜ちてるぅぅぅぅ】
【理央様……はどうでも良いけどユズちゃんがぁぁぁぁ】
【草】
【そこでみなさん、ちょいと画面の上すれっすれを見てください】
【ユズちゃんたちがどうなっても良いって……なんだあれ!?】
【みえない】
【見えねぇ】
【絶妙に見えねぇ……なんだあれ……】
【草】
【なんか動いてるのだけは分かる】
「がかくしゅうせい」
【あ、女神ちゃん様めっちゃ助かります】
【あの、ユズちゃんが下に見切れたんですけど】
【カメラさんは大変ね】
【まさか最上位種族?な神族が配信のカメラマン担当になるとはな……って】
【!?】
【!?】
【なんだあれ】
【魔王城が……】
【まさか、あれは……】
「……ん? なんだ?」
墜落する柚希たちを全力で追っていたはずのおやびんが、一部の視聴者とともに、視界の隅に捕らえてしまった「それ」。
――魔王城が、轟音を立てながら動いている。
具体的には、豪華な古城の両翼の尖塔が持ち上がると同時にいくつかに割れて広がり、中央の尖塔もまた持ち上がりながら壁を外へ展開しつつ回転し、塔の中から何本ものアームが蠢きながら持ち上がり――その他いろいろのギミックが発動している!
その継ぎ目や展張した部位からは煙が勢いよく吹き出している!
さらには地面から何十ものブロックが飛び出し、城を中心に高速で旋回しだしている!
それはまるで、秘密基地。
かの有名な大和国の首都、そこを治める知事の住まう城にある噂のように、非常時には変形分解して民を守るために敵に立ち向かう姿だ!
――巨大構造物が関節を持ち、その巨体を自ら動かす。
その姿に興奮するのは、幼い男子だけではなかったようで。
「すっげー! なぁなぁ見ろよあれ! 城が変形してんぞ変形! あの城、ゴーレムだったのか!? すっげー!!」
「は?」
「なに言ってんだこのおやびん」
「おやびん……とうとう……」
「あの城がゴーレムとか」
「あんなでっけぇ魔王の城が変形するはずうわぁぁぁぁなんかかっけぇぇぇ!!!」
主の大ピンチ――それよりも心動かされてしまったワイバーンたちは、柚希たちへあと少しというところできゃっきゃと楽しんでしまい、救出作戦から脱落。
「おやびん様!?」
「行けませんエリー様――せめて私たちでユズ様を!」
「ああ、やはりワイバーン様たちは亜竜……中近距離戦闘に特化しすぎて少々残念な種族……ですがそれが興奮……こほん」
【魔王城はかっけぇけどユズちゃんのこと忘れちゃったおやびん】
【かわいいね】
【かわいいね】
【おやびんはおやびんのままでいいから……】
【バかわいいロリ巨乳ドラゴンっ娘だもんな!】
【その真横を二度見三度見しながら駆け抜けるエリーちゃんたちがかっこいいね】
【エリーちゃんの絶望顔よ】
【そらそうよ……】
【会話の内容までは聞き取れないけどエリーちゃんがかわいそうなのだけはわかる】
【いつでも不憫なエリーちゃん……】
【でもユズちゃんたちがもう……】
【エリーちゃんたちでもぎりぎり……】
【もう見てられないわ】
【このまま地面に……】
【下のひなたちゃんたちも、ギリ間に合うかどうか】
【間に合わなかったら……】
「――こ、この杖を柚希さんたちに向けて魔力を込めるだけで良いの……ですよね……?」
【!?】
【今度はなんだ】
【魔王城のバルコニー! 理央様がダイブしたとこ! スワイプして拡大してみろ!】
【あれは……あやちゃん!? なんで!?】
【ずっと活躍の機会がなかったおっぱいちゃんが、とうとう……!】
【草】
【草】
【ひでぇ】
【常識人はね……ユズちゃんと愉快な仲間たちにかき消されちゃうからね……】
【じゃなくて、なーんかエグい杖持ってるんですけど……】
【あやちゃんの身長的に、3メートルはありそうな……】
【なんか後ろにメイドさんたちがたくさん】
【なぁにこれぇ……(先行入力】
魔王城、そのメインテラス。
その落下防止の手すりのはずの煉瓦の上に、あやが仁王立ちしている。
……その後ろは何人ものメイドたちが背の順であやを、後ろから抱きかかえ――あや自身は、持っているだけでふらつきそうなほどの長い杖を構え、柚希たちへとその先端を定めていた。
「魔王様の許可は下りました。――その杖での反重力魔法なら、ユズ様方をお助けできるかと」