ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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558話 【速報・ユズちゃん、浮く】

「聖女様……勇者様?であり、魔王様のご息女であらせられる淫魔の王たるユズ様……脳が、分裂を……」

「思わず卵を産みたくなりますね」

 

「――あや様。その杖は、魔王様の宝物庫の中でも低ランク寄りの中ランクの魔力武装でございます。残念に思われるかもしれませんが、ために扱いは用意で現在のあや様でも使用可能な最上位の武装であり、なによりも――」

 

あやが構えていた杖の先から、深い紫の光がほとばしる。

 

それは、理央が飛び降りて戸惑っていたあやへメイドたちから手渡された――今の彼女へはあまりにも過ぎた魔法兵器。

 

だが――優れた武器とは、優れる理由もまた様々のようで。

 

「『持ち手の認識を読んで状況を推測し、持ち手の実力に合わせ最も効果的な魔法を行使できる人工精霊の宿る万能杖』を使うべきは、今かと」

 

「私共が使用、あるいはユズ様をお助けしてもよろしかったのですが……こういうものは、パーティーのメンバーがすべきと」

 

「ということで、地面に激突まであと10秒ですのでさっさと出してくださいませ、あや様」

「あと3秒迷われたらその母性の象徴を揉みしだきますので――いち、ぜろ」

 

「は、はいっ――――――――えいっ……!」

 

あやの構えた杖の先から、光が放たれる。

 

洪水のような光。

魔力の塊。

 

あやがダンジョンで魔法を行使してきた、そのどれとも桁違いに膨大な力へ用意の無かった彼女は、

 

「きゃっ」

 

「おっと」

「役得でございます」

 

「さすがは配信で『おっぱいちゃん』などと呼ばれているだけは……ふぅ」

 

「あ、あの、それはさすがに恥ずかし――あ、あら?」

 

ぽすり。

 

魔法の反動により真後ろに立つメイドたちに包み込まれたあやは、腰やわきの下に差し込まれる手に一瞬驚くも――すぐに自分が立っていられなくなっている事実に気がつく。

 

「……ごめんなさい、か、体が……」

 

「お見事でございます」

「まぁ正直、私共がこうすればもっと早く確実ではあったのですが」

「しーでございます、しー」

 

「ですが、あや様」

 

魔力切れ――所有MPを限界近くまで短時間に使い切ると起きる現象――に視界が回ってきたあやは、その中心へ指されたメイドたちの指先をぼんやりと見つめる。

 

「――これであや様がユズ様をお助けした大勲章間違いなしでございます」

 

「む? 人工精霊が共鳴している……ふむ。あや様? レベリングにご興味はお有りで? ほんの数十年のパワーレベリングで雇われ魔王などは……」

 

 

 

 

落ちる。

墜ちる。

 

魔力切れで眠りに落ちた柚希と、「最期まで」彼を抱きしめ続けることだけを考えている理央が、落下スピードに抵抗する空気の層に支えられながらも、墜落する。

 

「ユズ様ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「あ、やっべ忘れてたわ。もう無理か?」

「おやびん……」

 

絶叫する声、状況を見て――意外と薄情な声、残念そうな声。

 

響き渡るダンジョン空間の中、2人は地面へ頭を向けて突っ込んでいく。

 

【あああああ】

【あああああ】

【ユズちゃんたちが】

【もうだめだ……】

【落ちるぅぅぅ】

【よりにもよって頭から地面に……】

 

【理央様  ここは理央様がクッションになるんだ】

 

【そうだ、行け】

 

【構わん、行け】

 

【骨は拾ったげるね】

 

【大丈夫大丈夫  魔王ちゃんになんとかして蘇らせてもらうから】

【とりまゾンビで良い? 魔王城に来たとき襲ってきたやつ  ほら、コスト安そうだし】

【大丈夫だよ理央様、ユズちゃんならちょっと腐ってても愛してくれるよ】

【なんたって肝心の理央様が忘れてた10年間も一途に想ってくれていた天使のユズちゃんだからね】

 

【by 七稜郭待機中組より】

 

【草】

【草】

【ひでぇ】

【けどそれしか、もう】

【コメントが速すぎてラグ起きまくっててわけがわかんねぇ】

 

【おいなんだあの光】

 

【うおっまぶし】

 

【みえない】

 

【一寸先が見えない】

 

【就活のビジョンが見えない】

 

【昇進の可能性が見えない】

 

【老後の安寧が見えない】

 

【人生が見えない】

 

【草】

【草】

 

【まーた見えなくなってる】

 

魔王城から深い緑の光が放たれ、それが柚希たちを包み込んだ。

その事実はともかく、カメラの先ではまばゆい光が静まりつつあり、さらには――

 

【あ、見えるようになって】

 

【!?】

【!?】

【おい……】

【ああ……】

 

【ユズちゃんが……】

【親方ぁ! 空から女の子が!】

【なんかきらきらしながらゆっくり降りてる!?】

【なぁにこれぇ……】

 

「……え?」

 

理央が、ゆっくりと目を開く。

 

彼女の視界には、意識を失いながらも彼女と両手を握りしめた状態になっている柚希――そして。

 

「……柚希先輩の胸元が……光ってる……? ………………え゛、ちょっ!? 柚希先輩!? またなんかやらかしてます!?」

 

優しい光が2人を包み込み――2人はまるで体全体が浮力を得たかのように、ふわりふわりと回転しながらの緩やかな墜落へと移行していた。

 

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