ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
【10年近くずっと寝込んでたらしいし、ユズパパと別れたときの記憶もないっぽい?から、ユズパパと離れ離れになってから体感ではそこまで経ってはいないとしてもだ さすがに娘と父親の感動の場面で暴れるんじゃねぇ母親が!】
【草】
【それはそう】
【あー、ユズねぇ、要は気持ちがまだ幼いのね】
【高校生?にしてサキュバスに目覚めてすぐにユズちゃんを産んだとしたら、体感では20代前半……うん、今どきならまだってことで理解はできるが】
【でもな、ユズねぇ うちの娘だって、その妹に対しては優しく我慢できるぞ あとでこっそりフォローはしてやるけど】
【もしかして:ユズねぇ、子供以下】
【草】
【あーあ】
【むしろ、こういう面ではユズちゃんの方が大人よね……】
【え? ちょうちょがお姉ちゃんで、合法ロリ母が妹? 脳の因果が逆転していく……】
「……ゆず。ゆず」
「ぐすっ……女神さん?」
お父さんと話してるあいだは離れててくれた女神様。
長い黒髪を揺らしながらとてとてと近づいてきた彼女が、僕を見上げてくる。
……甘えてるとこを友達に見られてちょっと恥ずかしいけど、女神様がこうやって自分から話しかけてくるのは珍しいって思うから。
「そろそろ、いってくる」
「……? 女神さんが?」
「おしごと」
「そうなんですか」
目元を拭って、けれどもお父さんに抱きついた感覚を忘れたくないから片手だけを繋いだまま、僕は話しかける。
「……ここまで、本当にありがとうございました」
「ん」
「モンスターさんたちのレベリングとか進化とか、さっきまでいろいろしてくれてたUIさんとか。あれ、全部女神様のおかげなんですよね」
「のーむ」
「……?」
「なまえ」
「……ノーム様なんですね」
「んむ」
「ノーム、さん……で、良いですか?」
「むふん」
ちょっとだけ嬉しそうな顔の女神様――「ノーム」さん。
【ノーム――土妖精?】
【さぁ?】
【でも女神様なんでしょ?】
【だと思うが……】
【精霊ならユズちゃんと同じ種族でお似合いだな!】
【あの懐きっぷりにも納得だな! なにしろ仲間だからな!】
【草】
【えっ……】
【?】
【いやいや……いやいやいや】
【どうした急に】
【いやな? 某ロリ女神の姉妹が、確かその名前……】
【えっ】
【???】
【もしかして:ユズちゃん、とうとう天界からも守護られる】
【というかユズちゃんがひらひら舞い上がって天界に行ったっていうか】
【そこで保護されてべたべたに甘やかされながら戻ってきたっていうか】
【それだ!】
【なるほど……保護されてたのか 女神ちゃん、ありがとう】
【草】
「ゆず」
「はい」
「もうすぐ、さいごのたたかい。たくさんのてき。らすとだんじょん」
「……まだ、来るんですか」
「ん。でも――――――ほんとうに、さいご」
ぶんっ。
ノームさんの真横に黒い渦――転移魔法の穴が出現する。
「でも、ゆずならだいじょうぶ」
「……はい」
「ちちおや、まおう、ははおや、なかま」
気がつけば――周りの人たちが、みんな見てきている。
「ゆずの。ゆずだけの、ちから」
ぶわっ。
渦から、今までに感じたこともない魔力がほとばしる。
「――――――っ!? これは……!」
「……流石は神族様。なんと膨大な魔力を……!」
お父さんを守るように、メイドさんたちが駆けつけてきて警戒している。
この子――ノームさんは優しい子だから、大丈夫なのに。
「……この風……少し、怖いです。柚希先輩は大丈夫でしょうか」
「ノームちゃん、いい子だよ?」
「……そうですね。柚希さんの、お友達ですから」
「ぷはっ! あら、ゆずと一緒だった子がなんだかすごいわ!」
「お義母さん? 少し静かにしていましょうね……?」
ごうごうと彼女の周囲に、ゆっくりと出してくれてなかったら僕でも怖くなっていただろう、とてもとても濃い魔力が吹き荒れる。
普段はのんびりしているこの子が、どうやったらここまで吐き出せるのか分からないくらいの魔力を。
――真っ黒な光なのに、けれども神々しいって表現がぴったりな力を。
「ゆずは、たくさんもってる」
「僕が……」
「ん」
彼女は、浮き上がる。
「『ゆうしゃ』のちから」
彼女は、紡ぎ出す。
「『せいじょ』のちから」
まるで、呪文の詠唱のように。
「『いんまのおう』のちから」
エリーさんを、見上げる。
「『ゆにこーんしゅぞくのあるじ』のちから」
おまんじゅうを、見下ろす。
「『ありゅうのおう』のちから」
おやびんさんを、見上げる。
「『まおうのひめ』のちから」
お父さんを、見上げて。
「『ちょうちょ』のちから」
――僕の羽根を、見ている。
【ん?】
【草】
【待って女神ちゃん待って】
【なんか不穏なワードがこれでもかと】
【おろろろろろ】
【去り際にさらりと物騒なこと言わないで!?】
「『はいしんしゃ』の、ちから」
おまんじゅうのツノを起点にふよふよと漂っている、機材を――カメラを、真正面から見る。
「――――――『ていまー』の、ちから」
そうして最後に僕の顔を見てきて。
無表情なのがかわいい小さな女の子が――もっとかわいく、微笑む。
「ぜんぶつかえば、ぜったいかてる」
よく、分からない。
けども……この子が僕を勇気づけてくれたのは分かるんだ。