ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「! 伝令! やはり城塞を取り囲むように魔王軍と思しきモンスターが出現しました!」
「情報通り、第一印象では強敵は不在……高くて中級者ダンジョンのそれです!」
紫色の空の下が、土煙に覆われる。
UIさんの言ったとおりに、5万の敵が出現したらしい。
――けども。
「「「おおおおおお…………!!」」」
地響き。
その足音と声は、まさにその言葉のとおりに地面を揺らしている。
渦――転移魔法の中から現れた、たくさんの人たち。
親衛隊。
同級生や下級生、上級生や卒業生のみんな。
彼らが。
僕が見ていた、彼らが。
――かつてはバイト先の窓の中からうらやましいなって眺めていた彼らが、今は僕のためにって戦うため、大声を上げている。
「………………………………」
――ダンジョン適性がなかった時の僕が、あんなに羨ましくって輝いて見えた彼ら。
けれども僕がそのあとにテイマーの適性を得て、ちょっとおかしな冒険ばっかりをして――気が付いたらレベルもちょっとおかしなことになっていて。
その上に僕の血にサキュバスが入ってるとかインキュバスが入ってるとか、果ては魔王さんと魂では血のつながったきょうだいだとか、本当によくわからないことになって。
だから――今は。
相対的には僕の方が強くって、彼らの方がレベルは低い。
いや、けれどもついさっきに僕がちょっとおかしかった原因の「★」ってのを使い切っちゃったから、また、弱くなってるのかな。
「………………………………」
でも……いいや。
もう、すっごくがんばったから。
なぜかいまだに女の子って思われてるけども、それでも強かったのはみんなが知ってくれているから。
だからもう、守られている内側から眺めていても……悲しかったり嫌な気持ちには、ならないんだ。
「いぇーい、みんな見てるー?」
「おまっ!? ちゃんと前見ろバカ!」
「私、この前レベル9に上がりましたー! 将来有望でーす! 今流してる配信見て見てー!」
「あ、ずるっ! お、俺は昨日、レベル10に! 職業は見てのとおりに――」
――けれども彼らは、やっぱり、あのときのとおりに輝いている。
それが、なんだか誇らしくって。
「が――がんばってーっ!」
だから、思わずで声が出た。
すっごい騒音の中で誰にも聞こえないだろうって思ってたのに、やけに響く声が、出た。
【!?】
【!?】
【ユズちゃん!?】
【うわびっくりした、どうした急に】
【普段、こんな声出さないのに】
【みんながんばえー】
【がんばえー】
【ぷいきゅあがんばえー】
【幼女の声が染み渡る】
【すっごくうわずってたのは黙ったげようね】
【草】
【草】
【ユズちゃんがかわいそうだろ!!】
【でもかわいいだろ?】
【そうだけど! あ、ユズちゃんって今年のぷいきゅあ見てるのかな】
【忙しいから録画かサブスクで一気見じゃない?】
【もはや幼女すらサブスクの時代か……】
【お母さんか理央様がやってくれてるんだろうね】
【今年のはダークホースなぷいきゅあが居るからユズちゃんハマりそう 幼女心にもクリーンヒットしそうなデザインと設定だし】
【草】
「……おい」
「ああ」
「みなぎってきたな」
「ああ……!」
「もう何も怖くない!」
「体が軽いわ!」
「え!? モンスター、いくらでも倒していいのか!?」
「ああ……今までの分も、存分に倒してこい……」
「やめろ」
「おいやめろ」
「転移召喚されてるこっちでリストバンドがちゃんと作動するかわからないんだから慢心厳禁だって言われてるだろ!!」
僕の声で一瞬立ち止まって振り返ってきていたみんなは――意気揚々と、全方向から迫ってくるモンスターたちへと駆けていく。
――――どぉんっ、どぉんっ。
堀の中からの――迫撃砲って言うんだっけ?――からの攻撃が、みんなが向かう先へ、ぐるりと着弾。
ついでにそれに合わせて上からの、あやさんの遠距離砲撃がその場のモンスターたちを巻き込んで、爆ぜていく。
「あのあたりが第1フェーズの防衛ラインだ! 聞こえた者はパーティーメンバーや他の人に知らせてくれ!」
「「おう!」」
一気に味方も敵も増えて、戦場が広がる。
やがて前線同士がぶつかり合って、どこを見ても攻撃音や魔法の音で満ちあふれていく。
「……これが、戦場……」
「ええ、姫様。これが、ダンジョン――地上侵攻してくる魔王軍を迎撃する、姫様を守るために戦う人々の姿でございます」
「それはちょっと違うかもだけど……でも」
その光景を見て、僕は。
きっと、場違いで不謹慎なはずだけど。
「……かっこ、いい」
「……そう、で、ございますね。ええ……死力を尽くす姿は、人であれ魔族であれ、美しいものでございます」
ぎゅっ。
お姫様抱っこされるからしょうがなく胸元で握っていただけだったはずの両手のこぶし。
それは、今――高鳴る心臓を抑えるために、強く強く、握りしめられていた。