ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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608話 【リリス】モード

「……んぅっ」

 

ばさっ。

 

僕は、限界まで魔力が尽きていたために消失していた羽を伸ばす。

ついでにそっと、僕を保護してくれていた個体の腕の中から抜け出す。

 

「!?」

 

 

【!?】

 

 

【!?】

【!?】

【!?】

【!?】

【!!??】

【ふぁっ!?】

【メイドちゃんとゆーあいちゃんがびっくりしてる】

 

【幼女が急に羽ばたいた!】

 

【草】

【ちょうちょだからな……】

【冗談言ってる場合じゃないぞこれ】

【なんだか様子が】

 

ふむ。

 

――【リリス】としての覚醒度は、1%未満。

 

でも【サキュバス】としてのそれは60%以上――肉体は男なのに。

 

ああ、そのおかげで、やろうと思えばサキュバスに変身して覚醒度を80%以上にできるんだ。

けども僕は男としての矜持があったのか、それを心で拒否していたから今までそういうことはしなかったと。

 

まぁそれでもサキュバスの力に引っ張られて姿形が女寄りになりつつある。

 

……これ、このままだったら数年で【インキュバス】へ変身した状態じゃないと子を成せない状態になってたな……いやまぁできはするから問題はないんだろうけども。

 

そんなことを考えながら僕は、僕を抱えていた個体――じゃない、メイドさんだ、彼女の足元で転がっているユニコーンの幼体――じゃない、おまんじゅうを見やる。

 

「きゅひ……」

 

僕自身の魔力切れのために、周囲の魔力を吸ってなんとか実体を維持しているその存在は水で溺れかけながらも必死で息継ぎをするかのようにもがいている。

 

彼が、なにも知らない僕へしてきたことを読み取る。

 

……当時の僕はそれが非常に不満だったらしいけども、結果としてそれは良い方向へ働いたわけだ。

 

「……きゅ……?」

 

彼は、息継ぎが相当楽になったことに気づいたらしい。

……ささいな魔力だけど、もう少し待っててね。

 

「ひ……姫様……? 今は、おいくつで……?」

 

 

【ユズ……いや、これは……】

 

 

【どうしたゆーあいちゃん】

【何が起こったのか分かったのかゆーあいちゃん】

【ところでゆーあいちゃんって名前、かわいいよね】

【かわいい】

【ゆーあいちゃんかわいい】

【言ってる場合か!?】

 

【なんかユズちゃんが覚醒したと思ったら羽ばたいて1人でふよふよしながら納得してる……怖いよ……ユズちゃん……】

 

「………………………………」

 

――こぉんっ。

 

僕は取り急ぎ、周囲の状況把握のために探知魔法を行使する。

 

「……コボルトからオーガ、タートル種からボアまで、ざっと150万匹。その外側からはまだまだ転移魔法が発動していて――その遙か先、リングの外と上からは竜種が、僕たちがどのくらい持つかを賭けている。なるほどね。これは、見世物か。で、追加が150万匹――賭けの動向のあとで投入される予定か」

 

「     」

 

 

【……ユズ】

 

 

【150万……匹……?】

【お前はなにを言っているんだ  って言いたいところだけど】

【もしかして:リリスモード】

【だろうなぁ】

 

【羽も生えて浮いてるし、お口も閉じてる  間違いなく精神年齢が上がっているな!】

 

【草】

【草】

【お口で分かるユズちゃんの精神年齢】

【よかった  もう理央様のせいで幼児退行するユズちゃんは居ないんだね】

 

【けどなんでまた急にリリスモードに】

【分からん】

 

【あの  その  ……ロールバックしすぎたとかで、0歳未満になったりしたんじゃ……ほら、ゲームとかで数字がオーバーフローするとか、あれの逆で……】

 

【オーバーフロー?】

【昔のゲームとかプログラムだと想定していた最大値を超える数字になると0に戻ったりするんだよ】

【なるほど】

【キッチンタイマーって99分の次が0分になるとかああいうのか】

【あー】

 

【てことは……】

【ああ……】

 

「うん。理央ちゃん――あの子の思い出のせいで、僕は巻き戻りすぎたんだ」

 

コメント欄。

 

その99%以上は知識のないごく普通の人間のたわいもない言葉しかない空間――だけども、残りの1%、そして99%の中にも偶然に真実へたどり着くものがある。

 

だからこそ有用で、だからこそ運用の難しいシステム。

 

「ああ、ストレスとかはそこまでじゃないよ。ただ……幼い子供の感覚は敏感だから。その状態で触られた記憶が一気に押し寄せたら、幼い子供の精神はパンクしてしまうんだ」

 

「……姫……様……?」

 

【……なるほど?】

【分かりやすい】

【ありがとうユズちゃん】

【でも……】

 

【ユズちゃんが、ここまで知性的に……リリスモードってこんなんだっけ……?】

 

【草】

【ひでぇ】

【ユズちゃんはかしこいって知ってるだろ!! お勉強はできるって】

【親衛隊の報告で知ってたけどびびるわ】

【分かる】

 

「ふぅ。さて、とりあえず」

 

僕はおもむろに転移魔法を展開。

 

「目的の血縁」をたどっていって――

 

「……あら?」

 

「不味いぞ柚乃、さすがの魔王でもこの先は……柚希?」

 

にゅるりるん。

 

僕と最も近い2人を先に出し、さらにその先をたぐる。

 

【!?】

【ふぁっ!?】

【ユズねぇとTSユズパパ!?】

【草】

 

【なぁにこれぇ……】

【え? これ、ユズちゃんがやったの?】

【ユズちゃん……一体なにをしでかすつもりなの……?】

【以前のリリスモードのとき、いやそれ以上の恐怖があるな……】

 

 

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