ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
コメント欄が、おばあちゃんの話で埋め尽くされている。
それを見た僕は――ちょっとばかり、行き過ぎてるなって感じる風潮を是正しようと思う。
確か前に理央ちゃんが言っていたんだ、「配信者ってのはコメント欄を適度に管理しなきゃいけないんです」って。
優さんも「自分たちは雇った人にコメント欄を管理してもらって不適切な発言や流れを制御しています」って。
それが、配信って文化における配信をする側の義務。
だから僕は、普段の僕に代わって言う。
「そもそも、みんなが呼んでる『ちょうちょ』ってのはね? 11年前――ああもうすぐ12年前なのか。ダンジョンが出現したあのとき、勇者に目覚めたお父さんが瀕死のお母さんや子供だった僕を助けるために魔王さんの器になって肉体的には死んだんだけど、それを子供だった僕が理解できないように魔王さんが施してくれた記憶操作の魔法。それの影響が大きいんだ。だからあんまりそればっかり言わないでね」
【!?】
【!?】
【どうした急に】
【ユズパパが死んだ場面を話し始めてる……?】
【ユズちゃんが正気になってる!?】
【ちょうちょがその影響で……?】
【???】
【いや待て、様子がおかしい】
【これは、まるで……】
【もしかして:0歳未満になった結果、前世とかじゃなく、1周して精神年齢が戻るどころか何年か後の成長後に戻った】
【それだ!】
【草】
【精神年齢が……時空を超える……】
【大丈夫? 勢い余って老後から戻ってきてない?】
【ひでぇ】
【いやいや……いやいや】
【それよかとんでもないことを言ってるんだが】
【ユズちゃんが急に理央様の呪縛から解き放たれたこと以上に大切なことってある?】
【ないな……】
【ならいいじゃん?】
【そうだな】
【どんな経緯があったとしても10年近い悲劇から解放されたのなら】
【俺たちは応援するよユズちゃん】
【感動した】
【素晴らしい】
【奇跡だ……】
【これが「ちょうちょ」か……福音の言葉だ……】
【草】
【ひでぇ】
【ま、まあ、さっきまで「やっ」としか言わないくらいにおへそ曲げたり、かと思えばギャン泣きしたりしてたから……】
【4歳児になっていよいよやばくなってたから……】
【ギャップが激しすぎて脳の処理が……熱暴走する……】
【41℃を超えないようにがんばれよ】
【100℃くらいになりそう】
【脳みそ固まってそう】
【これが頑固ってやつか】
【草】
【ちゃんと冷やせよ 氷水がおすすめだぞ】
……やっぱりみんな、好き勝手言って。
でもそれがこの世界の……そしてこの配信の空気だからしょうがない。
とにかくまじめに聞いてる人たちが理解してくれて、おふざけしてる人たちもそれなりにストッパーがかかるんならもうそれでいいやって。
今まで1度も――本当に1度も、僕から「こういうことはしないで」って言ってこなかったんだ、今すぐにおとなしくしてくれるって思うのは無理だとも分かってるし。
「くぴくぴ」
そんな僕の横で、おばあちゃんは目をつぶってペットボトルの口から一生懸命に水分を摂取している。
【かわいい】
【かわいい】
【真っ赤なお顔で必死にお水飲んでてかわいいね】
【酔っ払い幼女かわいい】
【でもこれが……おばあちゃん……?】
【でもこれが……サキュバス……?】
【でもこれが……経産婦……?】
【性癖がよじれる】
【その前にユズちゃんへと同様母性がかき立てられる】
【それな】
【やけ酒を飲む経産婦ロリ(数百歳)を介護できるお仕事をください】
【まず異世界へ転生へ転生するところからだな!】
【草】
【とりま、ちょうちょはあんま言わない方がいい感じか?】
【でもちょうちょ言わない配信なんて】
【だよなぁ】
【草】
【ちょっとは気にした方がいいんじゃない? 本人がメッって言ってるんだから】
【そうしてみる】
【大変そうだけどなぁ】
【さすがに明らかなちょうちょしてるときはいいよね?】
【明らかなちょうちょしてるときってなんだよ】
【見て分からない奴はたぶんもうとっくに羽ばたいてるよ】
【草】
【かわいそうに……】
――「ちょうちょ」、「幼女」。
コメント欄で連呼されてて――僕が見るとさりげなくではあるけど嫌だなって思ってたそれらの片方へのいろいろは軽減されていく……気がする。
直接的じゃないけども、なんとなくコメントを打つ前に一瞬迷って書き直す――そうしてくれる人が居たらいいかなって。
え、幼女扱い?
どうせリリスな時点で性転換できるって知られてるし、どっちでも良いんじゃない?
たとえ脱いで見せたとしても「リリスの権能で生やした」としか思われないだろうし。
ていうかそもそも淫魔族にとっては性別なんて、そのときの気分や相手次第でころころ変えられるものだし……ってのは、リリスになりたてな僕としてはまだ実感はないかもね。
「……ふふん」
僕は少し上機嫌になった。
【かわいい】
【かわいい】
【なぜかはまったくもって理解できないけどドヤ顔してて草】
【かわいいね】
【かわいいね】
【ちょうちょじゃなくてもかわいいね】
【もうこれでいいや】
【けど、ちょうちょに代わるユズちゃんを表現する言葉か……難問だな】
【ユズちゃんが帰ってくるまでに考えようぜ!】
【あの……その前に壮絶な戦いをしてるみなさんは】
【※ユズちゃんが完全に忘れてるっぽいです】
【草】
【あーあ】
【かしこくなってもちょうちょは追いかけてくる……どこまでもな】