ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「いーい? ちょうちょって言葉は適度にね?」
【はーい】
【はーい】
【はーい】
【ちょうちょー!】
【草】
【ちょうちょとは……もしや、福音なのか……?】
【なんてことだ 俺たちは御業を笑っていたのか】
【素敵な言葉だから幸せになって笑っていたんだよ】
【ちょうちょ ちょうちょちょうちょあはははは】
【おろろろろろ】
【草】
【ちょうちょは適度に使ってあげようね ユズちゃんが怒るからね】
【これ、どこまでが本当でどこまでがちょうちょの戯れ言なのぉ……?】
【画面の隅っこでエリーちゃんがリバースし始めてるから本当のことだと思うぞ】
【エリーちゃんかわいそう】
【かわいそう】
【おやびんが慌てて介抱し出してるから本当のことみたいだね】
【ああ、常識枠が悲鳴を上げているんなら本物なのか】
【あーあ】
【え? てことはこれ全部、本当のこと……?】
【ちょうちょの鳴き声じゃないんだとしたら……】
【ちょうちょは鳴かないだろ草】
【鳴くよ? ユズちゃんみたいに】
【ギャン泣きするの?】
【ギャン泣きするの】
【ひらひら飛んできたちょうちょが?】
【ひらひら飛んできたちょうちょが】
【こわいからやめて!!】
【普通にホラーで夢に出てくるからやめろ!!】
【草】
【え、じゃあ地球の大気中に微量でも魔力があるとかも本当のこと? 教科書には「ダンジョン以外の地球には、ダンジョンから漏れた以外の魔力は存在しない」って書いてあったけど】
【あくまでダンジョンのせいで魔力が漏れ出てきたってのが定説だったな……つい1分前まで】
【あっ……】
【いやいや、ダンジョン周辺でもゲート内じゃないと魔力が検知されないって】
【だから「微量」なんだろ? 地球人類の科学力じゃ観測もできないけど、確かにあるんだろ】
【研究者さんたちが禿げ上がりそう】
【また毛の話してる……】
【ちょうちょは毛根を吸っていくんだよ】
【ひぇっ】
【草】
ほんの10秒くらいで同時並行的に――いくつもの、負荷分散のための何百ものミラー配信のコメント欄に書き込まれる、繋がっているようで繋がっていなくって、でも並べてみると全体としては緩く繋がっている会話。
その温度感は僕を全然信じていない人から信じる人、信じた結果新情報で混乱している人とさまざま。
……本当にびっくりしてる人はそもそも書き込む余裕はないから、結果として冗談半分に捕らえている人のコメントが大半になるんだ。
一方のおばあちゃんは、まだまだお酒が効いてるから覚醒状態は泥酔の1歩手前と見えて「……なんだ夢か」とか言ってるけど、先に言うことは言っておこう。
「だからみんな? そういう事情があるって前提で、適度に言ってね。僕もやろうと思えば配信のコメント欄とか掲示板の書き込みとかSNSのつぶやきとか、エリーさんみたいに読めるから。僕がやだなって思うかもって考えて、言い過ぎるのはやめてね。嫌なときはなるべく嫌って言うけど、書き込む前に一瞬でいいから考えて?」
【はい】
【はーい】
【ごめんね】
【それは本当にごめん】
【なにしろ最初期の雑談配信でも平気そうだったからそのノリで来ちゃってごめんなさい】
【草】
【あー、そういやそうだったわ】
【そうなんだよなぁ……それのせいでコメント欄がなぁ……】
【あれはちょうちょモードのせいで単純に追いつけてなかった疑惑】
【それだ】
【ユズちゃんごめんね】
【てかユズちゃん、配信コメントほとんど見ないから気づかないって思ってたのよ……】
【でもちょうちょって盛り上がるのは楽しいから禁止はやめてね \3000000】
【草】
【草】
【300万課金するレベルで好きなの!?】
【課金した分はちょうちょって言えるんだな よし、俺も】
【おいばかやめろ】
【気持ちは分かる】
【言いすぎない範囲で課金しながらちょうちょって言う……これだ】
「……言いすぎないんなら、もうそれでいいや……」
僕は諦めた。
みんなが言う「ちょうちょ」は、理央ちゃんが僕にするセクハラみたいなものだもん、って。
あ。
そういえば理央ちゃんが幼稚園のときからずっと中途半端な発情状態だったの、僕の中で眠ってたサキュバスの――リリスの血のせいかも。
………………………………。
……そう思ったら、これまで微妙にストレスだった理央ちゃんのいろいろも半分くらいは逆に申し訳ないって思えてきた。
だって、あの子が入園してきたときにあの子の好きな相手が僕だけになっちゃって、小学校では「上の学年の子(僕)(そのときも理央ちゃんの服着せられてたから、目撃した先生からは僕が女の子って間違われてた)を脱がしていかがわしいことをしていた低学年女子」って要注意人物認定されて、小学校からずっと休み時間――別の階になったり別の校舎になったり小学校と中学校、中学校と高校になっても学校では先生たちが理央ちゃんを警戒してたし、学校が終わってからも無理じゃないなら必ず毎日僕のところに来てたくらいだもん。
あの感情が全部、僕の血から発せられてた淫魔に当ててられてたんなら……それこそ、僕の方が一生をかけて償ってあげなきゃいけないほどに理央ちゃんの人生を捻じ曲げたことになっちゃうから。
あと……うん。
理央ちゃん自身が好き勝手してたのもあるけども……この先一生、ネットに消えない傷跡は刻まれちゃったからね、理央ちゃんの……。