ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
※今話は海があふれる描写がありますので、苦手な方は飛ばしてください。
「ぶもっ!?」
「キー! キー!」
「ゴブブブブブ」
――ざぁぁぁぁ。
絶対的な勝利――「勝ち確」の状況で逃げる獲物を追っていた多種多様なモンスター、魔族により構成された軍隊は、目標の鼻の先まですでに到達していた。
なんなら召喚主――ドラゴンという支配種族が功を焦り、あとは時間刻みの賭けのためにとペースを早めすぎたため、それぞれの即席雑多辺境連合軍とも表現できる指揮系統で入り乱れた前線の小型モンスターが同じく後続の大型のそれらに踏み潰されるという悲劇まで起こっていた、数の暴力。
『GAAA!?』
『GAAAAA!!』
けれどもその上空では支配者層たちは互いの「所有物」への介入に抗議をするのみで、適切な指揮を執ることはなく。
執ったとしても肝心の「魔王」が不在で留守を預かるのみの彼らだけしか居ないせいで数百の指揮系統がぐちゃぐちゃになっている現場へ届くことも、あるはずはなく。
そもそも彼我の実力差以前に物量差でひっくり返されるなんて「可能性としてあるはずがなかった」ため、柚希の急な動きも「ちょうちょのひとひら」としか見られていなかった。
なにしろ大勢力の魔王の本拠地へと転移「させられた」「かよわき勇者とその仲間」たちでしかなかったから。
だが、状況は変わった。
水という質量の塊が通常の転移魔法のセオリーを無視し、ほぼ無限とも表現できる勢いで、何カ所から一斉に放流。
まるで複数のダムが決壊したような勢いのそれらは――空中に出現した複数の巨大な渦から滝として流れ出した単純な質量として、制圧目前だったはずの魔王軍を飲み込んでいく。
それが魔王軍――魔族が直接に指揮していない、ただの野良の使い捨てなモンスターだったならば、まだなんとかなっていただろう。
通常の、力をろくに持たないモンスターたちは「装備」など基本的には身につけずに魔力の塊から出現するのだから、何割かはなんとか浮いて助かったはずだった。
だが――人間を絶望させながら威圧するために「わざわざ人間の好む鎧姿」とされてしまっていたモンスターたちは、その金属の重みのせいで――浮き上がることはできなかった。
「ぎゃーす!!」
「に゛ゃーん!! に゛ゃーん!!」
「くぅん……」
ゴブリン、キャットシー、コボルトなどの二足歩行へと進化した先の凶悪だったはずのモンスターたちが、あっという間に海底へと引き込まれていく。
すでに海面は高くなり、種族として巨大なギガントたちも、なすすべも無く沈んでいく。
「うわ……」
「えぐっ……」
「俺たちが半壊させられた相手が……」
「やっぱ人間ってちょうちょには敵わないんだなって」
【草】
【それはそう】
【現地勢がドン引きしている】
【そらそうよ……】
【黄色い線(白い線)(に光る壁)の外まで迫ってた魔王軍が一瞬で水に飲まれていくんだからなぁ……】
【ユズちゃん……これはえぐいて】
【でも、できるんなら最高率だろ?】
【歴史って、結構盛大にえぐい作戦とかあるからね……】
【過去のこととかフィクションならなんとかなるが】
【おろろろろろ】
【少数の犠牲で敵軍を壊滅させられるなら、それはもう名将なんだよなぁ】
【うん、仮にユズちゃんが地球に戻ってきて普通の女の子したくっても無理だわ 「怒ったらこういうこと(範囲攻撃)をいつでもできる」って見せられた時点で、もうどうあがいても特別扱いするしかないわ……】
「おろろろろろろろ」
「うわぁ……」
「うみ、こわい」
【ああ、かわいそうな優ちゃん 今の俺たちと同じ発想で……】
【※乗り物酔いする体質で何十分も運ばれていました】
【あ、そっちか】
【草】
【かわいそうに……】
ざぁぁ、ざぁぁ。
見渡す限りの地平線――アリーナの中が「およそ30メートル」の海に包まれた、その中心部。
大量の海水が流れ込み、先ほどまでは足が着いていた場所が水の厚さで透けて見えなくなるほどに変貌した光景を見渡す人々。
迫りくる海水に、当初は「自分たちはユズワールドの生け贄か……」と諦めムードだった人々も、次第に七稜郭全体が海面に合わせて浮いていると気づいてからは――自棄を起こしたように泣き叫び、祈り這いつくばっていた。
【こわいね】
【こわいね】
【マジでこぇぇ……海を自在に操るとか】
【普通に世界規模の怪異で草】
【だって「ユズワールド」だぞ?】
【怪異「ユズワールド」ってこわいね】
【しかしマジでヒヤヒヤしたわ】
【ああ……】
【ユズちゃんのメンタルなら人ごと沈めはしないと思ってたけど、一方でユズちゃんメンタルだとちょうちょやらかして「あっ……」って結末があり得たからな……】
【草】
【全国の神社仏閣教会協会その他あらゆる場所でみんなが祈ったからだよ】
【これが祈りの力……!】
【もしかして:ユズちゃん教爆誕】
【※もうすでにサバトの段階でしてます】
【※現在進行形で信徒数がうなぎ登りです】
【もうだめだ……】
【いくらリストバンドで命が助かるって知ってても……海の中は単純な恐怖だもんなぁ】
【それな】
【おろろろろろろろ】
【ユズちゃんの地形操作とかいうバグった戦法で、敵軍は完全に沈黙……ようやくに第2フェーズが終わったか】
【これでもう終わりだよね……?(希望的観測】
【「第2」があるってことは?】
【もうだめだ……】
【ま、まあ、おかげで2万 VS. 300万とかアホみたいな戦力差はひっくり返せたから……】
【敵が魔王ならこっちも魔王 大丈夫、父娘2代魔王だよ】
【大丈夫……?(ちょうちょを眺めて】
【もうだめかもしれないな】
【草】