ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「――なるほど。90式が、出海道防衛以外で活躍できるか」
「12年前を除けば、ダンジョンからあふれたモンスターへの出動要請以外に出番の無かった、この車も――――」
――――――どぉん、どぉんっ。
島へ転移してきた戦車さんたちが――人間への身体強化魔法のように、魔力で補強された砲塔から砲弾を発射する。
それらは、最前線で縦横無尽にターンを決めているお船たちを通り越した放物線から――砲弾を、雨あられと振り下ろす。
【たーまやー】
【すげぇ……10キロ先?くらいまで】
【数台の戦車が数秒に1発ずつ、1体ずつモンスターを倒してるぅ……】
【え? 戦車ってあんなに遠くまで飛ばせるの?】
【ユズちゃんだぞ?】
【ごめんなさい……】
【なかないで】
【草】
【ああ、最前線でゴムボートみたいなとち狂った動きしてる駆逐艦とか、その上で平然と(優ちゃんを除く)遠距離攻撃とか続けてるダンジョン潜りとか、1分に1回くらい上空へ花火打ち上げてる潜水艦とかみたく、あらゆるバフをかけられてるのね】
【レベルを強制的に引き上げられてそう】
【ていうか島の防衛線、いつの間にかに戦車だらけなんだが】
【細いミサイルを撃ちまくってる車とかロケランみたいなのとかも所狭しと】
【しかも弾もガソリンも無料、自動装填 そら張り切るよな】
【ユズちゃん救出→討伐のために来てた各国の戦車も装甲車も続々と】
【これが――地球国連軍だ】
【かっこいい】
【惚れるわ】
【海面もすっかり多国籍海軍に変貌してるし……すごいな】
【地球 feat. サキュバス VS. 魔王軍とかいうロマン全開の展開よ】
【さすユズ】
【でもどうせ絶対間違いなく確実にバタフライエフェクトなだけで、ユズちゃんはこれっぽっちも想定してないんだよね】
【それはそう】
【そうでないとでも?】
【結果として使えたから使ってるだけなんだろうなぁってのがユズちゃんを知る俺たちの判断】
【そうじゃなかったら?】
【もう何も信じられなくなるが?】
【そのへんをひらひらしてるちょうちょにすらトラウマを抱くが?】
【脳が……つるつるになる……】
【シナプスが電気信号を拒絶する……】
【草】
「――――――胃液も吐き切った私には、もう怖いものなどありません。お願いします」
「なげる」
「わはー♪」
ぶぃんぶぃんっ。
巨人の子の両手から――ひなたちゃんに、優さんが射出される。
「ゆうちゃん、あの子!」
「ええ――――――では」
「転移」「てんい!」
ぶぉんっ――――――ひなたちゃんが使い始め、気がつけばそれなりの人たちまで好き勝手に使い始めたバグ技もとい僕の知らない仕様。
「テイマーがモンスターを収納・展開する権能」を「テイムされた側」が行使している。
【優ちゃんが覚醒している】
【胃液もなくなった優ちゃんかわいそう】
【でも……すっきりした顔をしているぞ】
【凜々しい】
【限界まで嘔吐をするとな……悟るんだよ】
『!?』
海中からぬぼっとした頭を突き出していた、巨大なモンスター。
海坊主――進化したクラーケン。
かなり後方に居たはずのそれは、けれども目の前へ突然に現れた2人に硬直――慌てて触手を引き揚げようとするも、
「やー!」
「はぁっ!」
ずぶり。
その脳天へ大剣が刺さり――輝く剣が、真下へと切り裂く。
「たおしたー! てんいー!」
「転移……うぷっ」
しゅんっ――不意打ちでクラーケンを一撃で倒した2人は、再びに姿を消していく。
「ふむ……」
僕は、思考した。
「……準備できた人で高所恐怖症とか海が怖くない人」
【はい……】
【はい……】
【はい……】
「今の戦法で、砲弾とかが届かないエリアに居る中で防御力とかが低いモンスター。やってくれる?」
【はい……】
【はい……】
【とうとう俺たちも使い捨てか……】
【仕方ない これが定めだ】
【サキュバスに使い捨てられるか……興奮するからいいや】
【いいのか……】
【分かる】
【草】
気がつけばみっちみちになりつつある島――七稜郭。
島ごとが砲台になったような錯覚を覚えるほどの砲撃の雨が飛び立ち、島の上層部からはあやさんの魔法砲撃が再開してにぎやかになっている。
魔力を回復して再びに飛び立ち始めたエリーさんたちやおやびんさんたち。
けれども彼女たちは、砲弾に気をつける必要はない。
その1発1発までが、全部「テイムモンスター」として情報共有されているから「そこにあるって分かってる」状態だ。
時間経過で広がっていく、島を取り囲む海。
面積が増えると同時に延びていく戦線を埋めるために、まだまだ待っている艦船を地球から合流させる。
最前線から離れた奥――その内側にいる友軍が邪魔で反撃ができていなかった大型のモンスターたちは、ひとまとめに転移して奇襲してくる人たちに翻弄されている。
「おばあちゃんの魔力は、残り40%……敵の残りはどうですか?」
【3億です】
【ただし大型、かつ強力なモンスター――及び、魔王の同胞である支配者のドラゴンたちがメイン戦力となります】
「分かりました」
僕は、戦場を観察し続ける。
「地球の全戦力と、僕たちの力。これで――ノームさんたち女神様たちが帰ってくるまで、持ちこたえてみせます。……ですよね? みなさん」
そう言って僕は、もはや当たり前すぎてこういうときしか意識をしない存在である配信カメラへ――笑いかけた。