ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
【ゆーあいちゃんが壊れちゃったの これ、俺たちのせい……だよな?】
【そうでないとでも?】
【そうではあるけど、ここまでなったのはユズちゃんが酷使したからじゃ……】
【酷使していいのは淫獣だけなのにな……】
【草】
【草生やしてる場合か?】
【ユズ】
【本個体】
【自壊】
【必要?】
「あ、そういうのはいいので。本当に要らないです。そんなことより、どのくらい落ちました? 処理」
さっきから変なことを言ってたUIさんが――たまに理央ちゃんがなるみたいに不審なことを言い出したから、強めに遮る。
……この戦いが終わったらよしよししてあげないとね。
【ユズちゃん……】
【ユズちゃん……お前……】
【もしかして:DV彼女】
【ひでぇ】
【さすがにダメだぞユズちゃん】
【ゆーあいちゃんに救いの手を】
「……言い方で誤解させてごめんなさい。後で、ちゃんと話聞いて謝りますって。処理落ちしたのは気にしてないから現状を教えてくださいって言ったんです」
コメント欄のみんなも巻き添えに、すごいことになっている。
……配信自体はリアルタイムでも数秒の映像と音声のラグがあって、そこからさらにコメントを打って送信するラグがあるから、ときどきこうやって不本意なすれ違いが起きちゃうんだ。
やっぱり言葉って、選ぶのが下手だとこうして困ることも多いよね……。
「ぎゅ……ぎゅひひひーっ!」
ちゅんっ、ちゅんっ。
おまんじゅうへ魔力を流し込み続け、おまんじゅうの体を腕と胸で潰し続け、応急的に空の穴を埋めようと試みる。
けども……。
【:】
【37%減】
「結構減りましたね。どおりで」
上を見上げると――まだ大丈夫だけど、そのさらに上の空間では迎撃が届かなくなって数が減らなくなったから増えていく、ドラゴンの群れ。
【やべぇ】
【4割減……】
【戦艦さん、消えちゃった……】
【あ、軍港の定点配信 消えた船が盛大に……空中に出現して落下してのめっちゃやべー水飛沫でカメラが吹っ飛んだわ】
【草】
【あーあ】
【大惨事で草】
【乗組員の人たち……大丈夫……?】
【リストバンドしてれば最悪の事態は……?】
【でも乗り手が居なくなるぞ?】
【もうだめだ……】
うーん……。
「おまんじゅう?」
「 」
「他の子たちと一緒に体ごと進化して飛べる?」
「 」
「……おまんじゅう?」
「 」
「」
「ぴ?」
気がついたらツノは小さいおできに戻っていて、チョコは投げ出されていて。
ついでにおまんじゅうのつぶらな瞳は……真っ白な白目になっている。
「……役立たず」
【草】
【草】
【ユズちゃん……?】
【女の子は気分の上下が激しいからね……】
【子供も乱高下するよな、一瞬で】
【それが自分をまさぐってきてた理央様もとい駄馬だって認識してるから、ことあるごとに八つ当たりはしたくなるよね】
【草】
【ならしょうがない】
【ゆーあいちゃんはかわいそうだけどユニコーンはなぁ……】
【けど、どうするの、これぇ……】
「んー」
ぽつ、ぽつ。
あちらこちらの空が、そのはるか先から黒い点が見え始める。
「また魔力を使って召喚……でも、そろそろ底が見え始めて――」
「ぴ」
悩んでいた僕の前に、チョコが跳ねる。
「チョコ?」
「――――――ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ」
ちかちかちか。
なめらかだししっとりしてる金属製のチョコが、明滅する。
「魔力? ……うん、大丈夫。また大きな船を連れてくるよりは、ずっと軽いから」
「ぴ」
その声とともに、ぎゅるぎゅるってチョコに吸われていく魔力。
「っ……」
ちかちか。
目の前が暗くなったり光ったりして、思わず体が傾く。
そのまま頭が地面にぶつかりそうになって、やばいかなって思って――
「――柚希先輩!」
……ぽふっ。
側頭部が地面と接触する、ぎりぎり。
その瞬間に、柔らかい手のひらの感触。
【おおおお】
【おおおおおお】
【あっぶな!】
【理央様ナイス】
【これは理央様】
「……ありがとう、理央ちゃん」
頭、肩、脇腹。
ひとつずつに理央ちゃんが入ってきて、倒れかけていた僕を垂直に戻していく。
「いえ……ですけど……」
心配そうな瞳。
理央ちゃんが――気づけば、僕にぴたりと張り付いている。
【速報・理央様、ユズちゃんを助けるついでに良い思い】
【理央様……お前……】
【や、役得だから……】
【やることはやったから……】
【半分以上は我欲に満ちあふれてそう】
【理央様とユニコーンへは当たりが強い配信】
【これまでが、ね……】
「……大丈夫。だよね、チョコ」
「――――――ぴぴっ!」
ひときわ元気に返事をして――ぽいんっと跳ねた、メタリックなスライム。
空中に舞うその姿の向こうに――空に、無数の渦。
転移魔法。
そこから一斉に姿を現してきたのは。
「……スライム、たち」
ぽんぽんぽんぽん。
軽い音ともに降ってくる、動く液体。
スライム。
最弱のモンスター。
跳ねる、ぶつかる、包み込む以外の攻撃を持ち合わせない液体の存在。
――けれども、僕たちは知っている。
チョコは――シルバースライムは、強いんだって。
そんなチョコが連れてくる子たちもまた――最弱のモンスターだって、戦い方次第なんだって。