ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「………………………………」
ぐー、ぱー。
両手をにぎにぎ。
感覚は……うん。
「充分、暴れたかな」
【肯定します】
【魔王軍主戦力――うちの守備部隊を壊滅】
【地球への侵攻へは、推定で50年ほどは必要です】
50年。
ここで撤退したら、僕たちはほとんど損失なしで50年を稼いだことになる。
【50年……】
【すごい】
【バフを受けまくった地球艦隊の総力戦だもんな】
【でも、それでたったの50年か】
【違うぞ 50年あれば――いくらでも考えられる】
【いくらでも対策ができる】
【魔王軍に対抗可能な軍備を、揃えられる】
【ユズちゃんのテイムを解析して、他の魔王さんたちに頼み込んで教えてもらって ユズちゃんみたいな召喚魔法を使えるような人や機械、道具を準備できる】
【次は――――ユズちゃんだけにがんばらせずに済む】
【そうか そうだな】
【ユズちゃん、ずっと戦ってたんだもんな】
【いくらちょっとおかしいちょうちょが花開いたとはいえ、ユズちゃんは俺たちの仲間 たったの1匹もとい1人にがんばらせすぎたんだもんな】
【草】
【ちょうちょはやめろ!!】
【シリアスさんが……羽ばたく……】
【シリアスちゃん「もういや」】
【草】
【かわいそう】
【そういう冗談は置いておいて いや、冗談が言えるくらいには「次」があるんだもんな】
【ああ……】
【ぶわっ】
【本来なら、あの数の魔王軍が無傷で地球に来るところからスタートだったんだろう それが、ユズちゃんのおかげで……】
【そうだな ユズちゃんが知的好奇心にあふれる冒険ロリっ子姫様精神をあふれさせて魔王城を探索してミラーボールに突撃しなければ、こんな先手を打つことはできなかったんだもんな!】
【草】
【草】
【それ言ったら、あんまりにも姫っぽかったからメイド長ちゃんが謎の勘違い起こして攫おうってならなければ、だもんな】
【あー】
【みんなでユズちゃんを、出海道の大規模ダンジョンへお姫様として運び込んだ あれのおかげで……脅威に先手を打てたんだよ】
【だな】
【だからユズちゃん、つらかったら帰ってきて みんな、待ってるよ】
【ユズちゃんのおかげで、時間ができたんだ】
【帰ってから理央様たちといちゃいちゃでもして休もうよ】
「………………………………」
「柚希先輩……」
「ゆずきちゃん、顔、まっさおだよ」
「治癒魔法をかけても……ですね」
「ええ。魔力の枯渇は、私たちの魔法では治せませんから」
理央ちゃん、ひなたちゃん。
あやさん、優さん。
「なかま、まもる」
僕に寄り添ってくれるみんなの前へ、ずしんと立ち塞がる巨人の子。
「……そうだね」
リストバンドは、完璧じゃない。
僕の召喚魔法――テイムも、魔力が切れてきてる以上、やっぱり完璧じゃない。
だから。
「――全員、撤退します。UIさん、みんなを危険な順に退避させてくれますか」
【既に開始済みです】
【残存時間:10分】
10分。
それが、みんなを連れてきた僕がみんなを守り切るまでに必要な時間。
【地上戦力のみなさん、かなりの勢いで消えてってるが】
【数が数だからねぇ……】
【バフも切れてきたみたいで、墜落したドラゴン1匹に対して100人くらいでようやくになってきた印象だしな】
【あー、バフも切れるか】
【戦車部隊はひと足先に弾切れになって帰ったっぽいな】
【改めてユズちゃんのテイムってやべー威力だったんだな】
【あ、そういや対空射撃もすかすかになってきてる】
【また髪の話してる……】
【してないが??】
【草】
【わぁ、上 もうあんなに新しい集団が……】
【またスライムに頼るか? いや、でも魔力がもう、って……】
――――ダンジョンに潜ってから何回目の、強烈な疲労感。
魔力の、枯渇。
意識を保てなくなる、あの感覚。
「ぴ」
チョコのかけ声で、ふたたびにスライムさんたちが――けれどもさっきとは違ってまばらに、人の多いところへ飛び跳ねていってから、その上を守るように……ドーム状に広がる。
「魔力を節約しつつ、でも、みんなを守るのを優先にしてくれてるんだね。ありがとう、チョコ。みんな」
「「ぴっ!」」
『『――――――GAAAAAAA――――!!』』
空。
砲火が収まり、最後のミサイルが炸裂し――静かになった、空。
そこからは無数の敵が……最強の敵が、存在と数に任せた暴力が、押し寄せてくる。
【ひぇっ……】
【空が降ってくるようだ……】
【こわいよー】
【どす黒い積乱雲の真下に居るような恐怖感】
【燃える積乱雲……いや、無数の隕石の激突……】
【ユズちゃん……みんな 頼む、最後まで無事で居て……】
「………………………………」
「柚希さん……?」
「柚希さん、今は守られてください。勇気と蛮勇は、違います」
もういちどおまんじゅうを振り絞ろうとした僕は……けれども、巨人の子の真横に立った、あやさんと優さんに止められる。
「1回だけなら、ひなたが守れるよ!」
「わ、私も! 柚希先輩を抱えて逃げ回るくらいなら!」
ふらふらな僕が、理央ちゃんの両腕にがっしりと抱えられる。
「でも……」
あと、少し。
あと少しで、完全に制圧できたんだ。
「……悔しいなぁ……」
僕は、強くなった。
おばあちゃんを吸ったりして、さらに強くなっていた。
けども――あとちょっとだけ、届かなかった。
空が、降ってくる。
質量に任せた、大気圏と擦れた炎で身を覆った魔王軍が、押し潰そうとしてくる。
けれども僕は、最後まで諦めたくはない。
だから、おまんじゅうをもういちど胸の中でぎゅうってしようとして、
――――――きらんっ。
何かが、光る。
光った何かが――――墜ちてくる塊を、一閃した。
『――――――GA!?』
【!?】
【!?】
【なんだ今の】
【どっから!?】
【えっと、方向としては……まさか】
その光った方向へ、目が吸い寄せられる。
――――ごごごごごご。
「空に……浮かび上がってる……?」
UIさんが召喚を解除して広くなっていた、海。
その先に浮遊していたのは――七稜郭と魔王城がくっついた、かっこいい要塞だった。