ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「ふう……疲れましたね、お父様」
遠くから羽ばたいてきたお姉ちゃんが、地面に足を着けながら言う。
「だから、その呼び方はやめてね……? 柚乃が聞いたら――」
「せんせい」
しゅんっ。
それに応えるお父さんへ――なぜかどこからともかく出てきたお母さんが、ちょっとだけ低い声でつぶやく。
「こうして浮気を疑ってくるからね?」
「先ほど、何度も説明しましたのに……何度も納得しましたのに……」
お母さんが――ぺって投げ出されたはずのお母さんが、堂々と返ってきてお父さんに迫っている。
お姉ちゃんは……魔王さんは、相当にげんなりしている。
わかるよ。
お母さんって、こういう人だから。
でも。
「……おー……」
僕たちの前で……修羅場が展開されている。
お金がないけどヒマだからって、理央ちゃんと共有の動画配信サイトで観た古いドラマでよくあった感じのが。
それも――僕へ被害を出さない形で。
「やっぱり若い女が良いんですね。高校生の私を貪り食ったように」
「この場面、地球に配信されてるから僕と教えていた学校と教師陣と生徒たちと……あと僕自身と君や柚希の名誉のために言っておくよ?? 言い訳じゃなく事実を言うからね? これは救出に来てくれた人たちが証言してくれるはずだからね? 僕は、サキュバスな母親を持つ君に――今から思えばサキュバスとしての力で、鍛えていないながらも成人男性だったはずの僕が3日間どれだけ叫んでも床を叩いても誰にも気づかれず、スマホも電波が入らず警察もなぜか踏み込めない状態で組み敷かれていたんだからね!? しかも三日三晩睡眠も食事も水分補給も排泄も必要なくなって……その……だったからね? 生物学的に死んでいてもおかしくない状態で君に貪り食われていたのは、僕だからね??」
【ひぇっ】
【おいたわしい……】
【うらやましいと思う傍らでそういうのはリアルではちょっと……って思いました】
【わかる】
【もしかして:サバトの中で、今リアルタイムで起きている喜劇な悲劇と同じ状況】
【あー】
【あー】
【そうか、そうだよな……ユズちゃんはユズねぇの娘なんだよな……】
【ユズちゃんほどじゃないにしても、ユズパパたった1人相手ならユズねぇでもできるんだろうな……サキュバスだし……】
【サキュバスこわい】
「あぁ……淫魔族の中でも愛がたったの1人に向く種類の個体は、生涯、たった1人を獲得するために他の全てを遠ざけると言いますからね……」
「……おー……!」
お姉ちゃんがため息をついている。
でも……お父さんには悪いけども、こういうの、見ていて楽しいんだ。
【朗報・かわいい】
【かわいい】
【かわいい】
【かわいいね】
【かわいいね】
【これはかわいい】
【でもこれ、事情があって娘をこさえた亡き夫(現TS娘美少女)になってるパパがユズねぇ(元未亡人な経産婦)に浮気(誤解?)を迫られてる場面なんだよね……】
【※しかも義理の娘?自身から擁護されてます】
【????】
【脳が……なんだよこれ……開いているのか閉じているのか、もうわけわかんないよ……】
【草】
【草】
【とりあえずユズちゃんが楽しそうでなにより】
【そうか? そうか……】
【どうしようもないから諦めるしかないともいう】
【ユズパパかわいそう】
【この配信、かわいそうな人が多いよね】
【大丈夫大丈夫 ユズちゃんだけは絶対安全圏だから】
【ちょうちょは何物にも……束縛されないからこそ、羽ばたけるんだ……】
【草】
【いいこと言ってるようでいていつもので草】
【羽ばたくな羽ばたくな】
【そう言うわりにはユズちゃん、羽ばたいてないね】
【なんだかんだリリス(ご先祖? それとも真のユズちゃん?)のおかげで落ち着いてるね】
【あの ただ単純に危機感を覚えていないから良く分かっていない幼女そのものなんじゃ……】
【あっ……】
【草】
【もうだめだ……】
【ある意味救いだよな】
【ある意味? ある意味か……】
【………………………………………………………………………………………………………………………………】
【あの……】
【ひぇっ】
【さっきから、ゆーあいちゃんのアカウントが……】
【もしかして:激おこ】
【戦場の中心で……こんな力が抜けていくアットホームドラマ見せられたら誰でもそうだろ?】
【それはそう】
【ならしゃあないか……】
【草】
【:】
【ユズ】
「お母さん」
「! ユズ!」
でも僕は、助け船を出す。
【あっ】
【あっ……】
【草】
【まーた絶妙なタイミングで】
【ユズちゃん……どうして……】
「――いい歳して正直恥ずかしいって思わない? そういうの」
「えっ」
【えっ】
【草】
【どストレートで草】
【ユズちゃんの声が低く】
【たまに聞けるハスキーボイスで私歓喜】
【わかる】
「でもでもだってだってってやってるお母さん。……うざい」
「 」
「ゆ、柚希……?」
「……なるほど、娘とはこのようにして……ユズ、私、姉としてがんばります」
【草】
【朗報・ユズねぇ、沈黙】
【もう一生沈黙しとけ】
【草】
【ユズちゃんつよい】
【娘の冷静に軽蔑した視線と声は、さすがに母親には効くか】
【※なぜかユズお姉ちゃん魔王がラーニングしてます】
【もうだめだ……】
【あっ……】
【ま、まぁ、ユズちゃんなら少なくとも人類へは もうだめだ……】