ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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70話 ふたりでピンチ!

「……ひなたちゃん、どう?」

「だめ……リストバンド、両方とも起動しないっ……」

 

【えぇ……?】

【そんなことってあるぅ!?】

【だって配信電波届いてるだろ!?】

【そうなんだよなぁ……】

【1年前のあの配信とは違うはずだしなぁ……】

 

広くて薄暗い部屋。

さっきのボス部屋の数倍の広さ。

 

そんな、明らかにおかしい場所に放り出された僕たちは……当然ながら、すぐにリストバンドを起動しようとした。

 

けども、僕たちの合計4つの生命線……ダンジョン内からの緊急離脱装置は、通報も離脱もできない。

 

「壊れた……? いや、普通は壊れないし、予備のも合わせて4つとも壊れるだなんてありえない……」

「……どうしよ……ねぇゆずきちゃん、どうしよう!?」

 

とりあえずで、入って来た場所すぐから壁際へ。

 

ボスモンスターは、ある程度まで近づかないと……ちょっとやそっとじゃ起きない。

 

だからこれで大丈夫なはず……なんだけど。

 

「ぐすっ……ごめん、ごめんねぇゆずきちゃん……わっ、私のせいでぇっ」

 

【泣かないで】

【ひなたちゃん……】

【前回に続き今回も……だもんな】

【なまじ良い子だからこそ罪悪感も半端ないだろうな】

【こんな暗いところに放り込まれたら誰だってこうなるよなぁ】

 

……チラッと見たけども、スマホの配信画面は動いてて、コメント欄も流れてる。

 

――ってことは電波は普通に通ってる。

 

なら、時間さえ稼げれば光宮さんたちが来てくれる。

 

幸いなことに、僕たちはボスからかなり離れた位置。

動かなければ、大丈夫なはずだ。

 

「だいじょうぶ」

「ふぇっ……」

 

僕は彼女の頭を、そっと胸に抱きしめる。

怖がらせないように、お母さんみたいに。

 

ひなたさん。

 

友達想いの良い子で、多分良いお家の子。

 

ひなたさん自身も性格が良くって頭が良くって、お家の方もきっと良いお母さんとお父さんなんだろう。

 

でも、この子はまだ小学生なんだ。

小学5年生……まだ11歳とか12歳とかなんだ。

 

だから、17の僕がしっかりと大人らしく包容力を見せてあげるんだ。

 

……こんな僕だって、年下の子相手なら……少しは癒やせるから。

 

あ、もちろん男だからね。

泣いてる女の子をあやすのは男の役目だから。

 

「おちついて。 僕の心臓の音、聞こえる?」

「……聞こえる……」

 

「困ってる感じ、する?」

「……とっても、ゆっくり……」

 

「うん。 僕は、理央ちゃんとあやさんが来てくれるって、信じてる」

「うん……」

 

「何より、ひなたちゃん。 君のことも、信じてる。 もし戦うことになっても、僕たち2人でなんとか切り抜けられるって」

 

もちろん、根拠なんてない。

 

いや、一応はある……おまんじゅうだ。

 

「きゅ、きゅひぃぃっ……!」

 

……なんか地面でひっくり返ってぴくぴくしてるけど、いつものだからほっとけばいいや。

 

とにかく、僕にはユニコーンなおまんじゅうがついてる。

 

「おまんじゅうはね? 『最大出力なら、数階層下のモンスター……がんばれば10階層分くらいでも、相性次第なら倒せるかも』って光宮さんも言ってたんだ」

「うん……」

 

「だから、1回だけなら魔力使い切っても、何とかなる。 遠くでまだ寝てるモンスターも、おまんじゅうが倒してくれる」

「うん……」

 

ひなたさんだって、初心者にしてはずいぶんと動きが……なんて言うか、慣れてる感じがする。

 

多分スポーツとかしてるんだろうね。

光宮さんと同じように、フットワークが良いもん。

 

「ひなたちゃん。 君も強いよ。 そんな、背丈もある大剣をひゅんひゅん振り回せるんだから、会心の一撃も出やすいんでしょ?」

 

会心の一撃。

クリティカルヒット。

 

魔法で言えば、弱点属性の攻撃。

 

「大ダメージを与えやすいし、この前見せてくれたように、大剣の平たいところで攻撃も防げるんだ。 君は、大丈夫。 君に守られる僕も、きっと大丈夫」

 

「うん……っ」

 

「だから、僕たちのスペックだけで言えば……何とかなる。 きっと、なんとかなる」

 

もちろん、根拠はない。

レベル差は覆せない。

 

――でも、そう信じる。

 

そう信じて落ち着いて、手脚が震えないようにして、頭がちゃんと働くようにして。

 

「だから今は、心を落ちつけて。 普段通りになれるように、怖い気持ちをどっかに投げちゃって」

 

僕はわざと大きく、深く息を吸って吐く。

 

それが、よく聞こえるはず。

 

そう思って抱きしめてたけども、だんだんと震えが止まって、息が落ち着いてきて。

 

「ちょっと暗いくらい、何さ。 僕たちは、冒険に来てるんだろう? だから、楽しもうよ。 変な罠に引っかかってピンチになるけど、勇気と知恵で乗り切る主人公とか――かっこ、良いでしょ?」

 

ゆっくりと頭を上げてくるひなたちゃん。

 

そんな彼女の目は、まだ濡れていたけども――唇は、もう、泣いてない。

 

「ピンチだからこそ、勝ったときは……物語を追ってる僕たちまで、楽しいんだ」

 

「……うんっ!」

 

【ユズちゃん……!】

【ユズちゃん、こういうときは輝くな】

【普段はあんなに被保護対象なのに】

【いざとなると急に強いよな】

 

【なんて言うか、メンタルが強いよな。 ちょっとおかしいとかそういう感じじゃなくて、普通に……強い】

【ああ……】

【でも、ここまで強くなるってことは、やっぱこれまでの人生が……】

【大変だった分、ここから報われるんだろ?】

 

くしくしと涙を拭って、唇は笑ってる彼女。

 

……もう、大丈夫だね。

 

「……さて! とりあえずここが隠しボスとかの部屋だって仮定してみよう。 初心者ダンジョンでってのは珍しいけど……ないわけじゃないらしいし」

 

まーだひっくり返ってたおまんじゅうを片手に、もう片手でしっかりとひなたちゃんの手を握りながら立ち上がる僕。

 

……片手じゃ抱えられないから、思わずでお腹をむんずってつかんじゃってるけども……ぜんぜん平気そうだね。

 

「きゅ、きゅひぃ……!」

 

ぶるぶる震えてるし……うん、なんか平気そう。

 

ぴくぴくしてるけど、これは多分いつものやつだから問題ないよね。

 

【草】

【ユニコーン……お前……】

【あのさ、ユニコーンのこの状態って】

【尊さが頂点に達した感じだよな……?】

【だよな】

 

【まぁこんな場面至近距離で浴びたら尊さで悶える気持ちは分かる】

【分かる】

【画面の向こうでさえそうだからな】

 

【しかも現地じゃ、ロリっ子たちの吐息までだろ?】

【ずるい】

【ユニコーンめ! そこを代われ!】

【草】

【ユニコーンのせいで何もかも台無しだよ!!】

 

 

◆◆◆

 

 

70話に届きました。

柚希くんをお楽しみくださり、いつもありがとうございます。

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