ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「さ、早くこっちです先輩!」
「あ、うん」
ぎゅっと腕をつかまれて引っ張られる僕。
……今さらながらにどきどきしてきた……だって、僕のレベル、最低でも2とかにはなってるでしょ?
レベル2だよ?
万年レベル0だった僕なんかが、2回3回潜っただけで2も上がったんだ。
そう思えば、なんだか嬉しくなってくるんだ。
「ええと……柚希さん。 こちらへどうぞ」
「は……はいっ」
水晶玉を用意してくれてるおばさんは、配信とかに慣れてるらしい。
多分僕たちが下の名前だけで活動してるって分かってるらしく、みんなのもそれで呼んでた。
配信機材のおかげでフルネームとかはカットされるにしても、やっぱりどきってするもんね。
「おまんじゅう、チョコ。 ちょっと待っててね」
「きゅいっ」
「ぴぎっ」
2匹を片腕に、僕は……もう湿ってる手のひらを、水晶玉に。
――お願いだからレベル2以上でありますように。
そう願いながら伸ばした僕の手は、なんだかあったかい玉の表面に張り付く。
「はい、そのまま。 もうすぐ、……。 ………………………………」
「?」
「……ええと、エラーが出たようです。 恐れ入りますが、1回手を離してもらって……ええ、そうです……もう一度お願いできますか?」
なんか肩すかし。
最初のどきどきがなくなって……エラーって言ってたから、もしかしたらレベル1のままなんじゃないかなって不安になりながら、もっかい手をぺたりと載せる。
「………………………………」
「………………………………」
【?】
【何が起きた】
【分からん】
【レベル測定でエラー……?】
【そんなのあるのか?】
【いや、そんなことあるはずが……】
「……し、失礼しました……数字、出ましたからもう良いですよ」
「あ、はい」
すっかり汗も引いてて平常心な僕。
……けども、おばさんの顔が……引きつってる。
――――――ああ。
やっぱり、レベル1のままなのか。
僕は分かっちゃった。
……聞きたくないなぁ。
でも配信だから聞かないとなぁ。
なるべく明るく振る舞わないとなぁ。
そんなことばかりがぐるぐる回る。
「……いくつ、でした……?」
「……エラーの可能性があるので、後日改めて精度の良いもので測り直しさせていただくのが前提となりますが……」
水晶玉に繋がれたモニターと僕の顔を、すごい勢いで何往復もするおばさん。
「柚希先輩……」
「ゆずきちゃん……」
「大丈夫ですからね、柚希さん」
いつの間にか静かになってたみんなが、僕の肩とか背中に手を乗せてくれてる。
……せめて、泣かないようにしないと。
男だもん、こういうときくらいはがんばって――――
「柚希さん」
「はい」
しん、となる部屋。
僕たちが最後の組だったのもあって、完全な空白が一瞬包む。
「あなたのレベルは……あくまで暫定ですが――」
「……はい」
血の気が引く感覚。
でも僕は、例えレベルが1のままでも、
「――――――レベル……ええと……59、です……」
「やっぱりそうです、……………………へ?」
「レベル……」
「ごじゅう……?」
「……何かの間違いでは……?」
【えっ】
【だよな? エラーって言ってたし】
【いやでも、レベル測定とかでエラー出るのって普通ないぞ?】
【だよな……】
59。
ごじゅうきゅう。
「…………………………??」
【草】
【かわいい】
【振り返ってこっち見てるユズちゃん、ぽかんとしてる】
【かわいすぎる】
【疑問しか頭に浮かんでないって顔が好き】
【頭の中になんにもなさそうな顔が好き】
【完全に無って分かるこの顔が良いんだ】
【草】
【分かる】
【やっぱユズちゃんはこれだよな!】
【ああ……】
【この顔が良いんだ……この無垢な感じが……】
【しかも困って最初に見るのが理央ちゃんって】
【お互いにいちばん大切……】
【ゆりゆり……】
【ああ……!】
【理央ちゃん良かったね……ユズちゃんにいちばん頼られてて……】
「きゅきゅっ」
「ぴぎ?」
「あ、ごめん、狭かった? ……けど……え?」
ついぎゅっと締めちゃって、文句を言ってきたらしいおまんじゅうたちを両腕に乗せる。
けども、考えはまとまらない。
……だって、レベル。
おばさんの困った顔で、てっきり1だって思ってたのに……全然違う数字を言われたから。
「……あの、59って……どのくらいでしたっけ!」
「え、ええ……今のところの、通常の人類の到達点が、この基準で換算して50ほどと言われていますから……」
「……柚希先輩が、それより」
「ええ、ですからエラーだと思います。 後日ご案内するまで落ちつかないとは思いますが……」
「……あ、はい……だいじょうぶです……」
ごじゅうきゅう。
ごじゅうきゅう?
ごじゅうきゅう。
「ごじゅうきゅう……きゅう……ごじゅう。 …………ふぇ?」
【ああ、ユズちゃんがオーバーヒートしてる!】
【そらそうよ……】
【なぁにこれぇ……?】
【本当に何だよこの数字……?】
【エラーにしてもおかしすぎない??】
【落ち着け! テイマーは別枠なんだよ!】
【お】
【テイマーはテイムしてるモンスターのもカウントされることがあるんだ 条件は分からないらしいけど、多分今回はそうなんだろ そこの人も、多分テイマー相手に測ったことないんじゃないかな】
【なるほど】
【そういうことか】
【あーびっくりした】
【え? でもユズちゃん、高くてもひなたちゃんと同じくらいだろ? ってことは7くらいで】
【残りはこの2匹の分か?】
【ユニコーンは生まれたてでテイムしたから、多分ユズちゃんと同じくらいのはず】
【ならシルバースライムがめっちゃ高レベルなのか】
「……ってことらしいです……」
「そっかぁ、そうだよねぇ……あーよかった」
「……本当ね、ごめんなさいね。 マニュアルには本当にそう書かれて……私も見るまで知らなかったわ……」
「あ、いえ。 特殊なスキルらしいですから」
ほっとして力が抜ける。
そうだよね。
僕がそんなに強いわけないもん。
毎日1円単位でやりくりしてる家計簿に、ぽんっと1ヶ月分のバイト代相当の報酬が入ったこの前のときみたいに現実感のなかった僕。
でも、それがチョコのせいだって分かると安心。
「良かった良かったぁ……君、強いんだねぇ」
「きゅい?」
「ぴぴぴぴぴ」
「あははっ、何やってるの2人とも」
【かわいい】
【かわいい】
【ほっとして座り込んじゃったユズちゃんかわいい】
【ユズちゃんの胸の中で……そこ代われ偶蹄類!!】
【草】
【落ち着け】
【感情が乱高下している】
【モンスターに嫉妬してもしょうがないだろ草】
【ユニコーンの上に乗ってるシルバースライム……めっちゃ振動してて草】
【かわいい……】
【なんで振動してるの?】
【さぁ?】
【ユニコーンも首かしげてるな】
【けどなるほどな、シルバースライムはレベル50台……いや強すぎるだろ!?】
【完全に上位陣が攻略するダンジョンに出て来るモンスターだな……】
【ま、まぁ、基本人から倒されないんだし、魔力の濃いダンジョンでずっと徘徊してたら強くなるだろうし……】
【そ、そうそう、スライム系はアイテムとか吸収しても強くなるし……】
【レベルはめっちゃ高いのに、ユズちゃんに懐いてるんだな】
【ユズちゃん、そんなモンスターから好かれたのね】
【まぁテイマーってそういうもんだし】
【けど、ユズちゃんもレベル早く上げないと、いつ反抗されるか】
【あー】
【危なさそうなら他のテイマーに譲るか、ダンジョンの野生に返さないとダメかもなぁ……】