ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

89 / 593
89話 彼らに極上のプレゼントを

「ねー、いーじゃん。 キミだって高級レストランでおいしいもの食べたいでしょ?」

 

「や、別に。 僕はそのへんの野草でも」

「あはは、冗談が上手だねぇ」

「本当ですよ?」

 

なんか気前が良すぎるらしいお兄さん。

 

僕もダンジョン初日でどかっとお金が入って、ちょっとだけそういう気持ちが出て来て……だからあんなに良いお肉食べたから良く分かる。

 

お金があると、ちょっとご機嫌になるし、気前も良くなるよね。

 

このお兄さんもきっとそうなんだ。

 

幸せのおすそ分け。

僕、そういう人たちからよく声かけられるんだよね。

 

……残念だけども、みんながダメって言うから行かないけどさ。

 

あと、やっぱり申し訳ないしさ……たかるのって。

 

「ほら、この野草は食べられる野草。 そっちのは見たことないのだから多分ダメ。 あ、これはおいしいんですよ」

 

「えっ。 う、うん……そ、そうなんだ……」

 

「ユズちゃん……」

「貧乏……本当なんだね……」

 

バイトできるまで……田中君のお父さんに頼んで、こっそり中学から働かせてもらってお金を貰えるようになるまで。

 

最後に身長が伸びてた小学校時代――あのときは高身長も行けると思ったんだけどなぁ――は、学校の行き帰りは貴重な食料採取の時間だった。

 

図書館で食べられる野草とかサバイバルとかの本を読み漁って、道端に落ちてるのでも食べて良いのを探して歩いてたんだ。

 

もちろんお母さんには見せられないから、たくさん採って貯めといて、お母さんが病院とか行ってるスキにまとめて煮たりして栄養補給。

 

草は草でもお腹が膨れるからおいしいんだ。

塩とか醤油とかコンソメがあれば、それなりにおいしいし。

 

あれはあれで楽しい時間だったっけ。

 

……さすがにバレてお母さんに本気で泣かれて、そのあと呼ばれてきた光宮さんと田中君が絶句してて。

 

それからは何かと理由つけて差し入れくれるようになっちゃって。

 

……うん。

 

ダンジョン潜りで稼げるようになったら、ちゃんと返していこう。

僕が一人前に稼げるって伝えられるし、恩も返せるもんね。

 

「で、でもキミさぁ……」

「あ、おごりたいんだったらそっちの2人はどうですか?」

 

「え?」

 

「えっ」

「えっ」

 

「僕よりも体が大きいですし、きっとおなか空いてるので食べっぷりは気持ちいいと思いますよ?」

 

「え」

「え」

「え」

 

僕の華麗な提案で、3人はごくりとつばを飲み込んで視線を合わせ合う。

 

そうだよね、そういうのはどうせなら育ち盛りの男子。

それも、体が大きい方が食べるんだから。

 

「じゃあ僕はそういうことで……」

「いや、ちょ、ま、待って」

 

「……そうだなぁ、俺お腹空いたな!」

「お前!?」

「……ユズちゃん、自然に帰らせる、駅前の交番」

「! ……じゃあ俺もお願いしますよーせんぱーい!」

 

「誰がお前たちの先輩だっ! 違う! お前たち不味そうな血の男なんか」

 

「まあまあ、とりあえず駅前行きましょうよ駅前!」

「そうですよ、こっちにはお店なんかないですって!」

 

自分たちがおいしいのをおごってもらえるって分かって、食欲に負けたらしい2人がお兄さんを両方から腕でがっちりとホールド。

 

男子高校生の食欲はすごいね。

 

お兄さんは、そのままずるずると駅の方へ連れて行ってる。

 

「よっぽどお腹空いてたんだねぇ」

「きゅひ……」

「ぴ……」

 

「だから! オレ……ワタシはっ! 可憐なキミを――」

 

今日の疲れが出たらしく、気が付いたらぐったりしてたおまんじゅうたちを撫で撫でしながらとぼとぼ歩き出す。

 

……おいしいの、お腹いっぱい食べたかったなぁ……。

 

 

 

 

「なんで! そんなことがあって! すぐに! 連絡!」

「いや、だって他にも人とか居たし……」

 

「そもそも! なんで! 私を振り切って!」

「1人で考えたいときあるんだって。 よく言ってるでしょ? あと女の子の下着に囲まれるのはやだってば」

 

家に着いた僕を待ち構えてたのは、下着屋に連れてこうとしてた光宮さん。

 

で、「いつも通り、なんにもなかったよね?」って聞かれたから「あったよ?」って言ったらなんか怒ってる。

 

ちゃんと本当のこと言ったのにね。

お母さんも光宮さんも、いつもそうだ。

 

「怒らないから」って言って怒るんだ。

女の人って嘘つきだね。

 

「だから顔見知りの男子たちだって」

「名前も学校も知らないんですよね!?」

 

「え、でも、1回会ってお話ししたからもう友達だよ?」

「……そういうとこは先輩のいいとこなんですけど。 なんですけどぉ……!」

 

なにやら悶えてる光宮さん。

 

「……理央ちゃん」

「お母様!」

 

その後ろから出て来たお母さんは、今日も元気。

 

……いや、さすがにちょっと調子は落ちてるかな。

でもまだ杖とか使ってないし、元気な方。

 

「柚希はね……他人事なら私よりずっと賢いのに、自分のことになるとああなの……」

「ええ……知ってます……」

 

「だからね? いつでも好きなときに、好きにしちゃって良いからね……? 本当に……」

「……ありがとうございます……でも私、やっぱり最初は柚希先輩からって……」

 

「ふぃー、ただいまーっと」

 

いつもみたいにお母さんと光宮さんが仲良く内緒話してる横を通って家に上がる。

 

「……それは、無理じゃないかしら……?」

「無理じゃなくなるまで、何年も待つんです!」

 

女性同士は良いよねぇ……ひそひそする楽しみがあるから。

 

けっ。

 

いいもんいいもん、僕は孤高の男なんだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。