Q. 「お前はっ、何なんだ!真人!!!」 A.「お前こそ誰!もしかして俺ちゃんのファン?あらやだぁ♡」 作:槇緇櫓把
お久しブリブリ大根ですわ〜(気さくな挨拶)
そろそろ佳境なので似合わないシリアスです。
というかラストバトルでギャグとか無理ゲーでは?
宿儺の領域展開、伏魔御厨子は不完全な状態で顕現する。
それは展開時間の制限などを主とした縛りに加え、
虎杖は即座に己の陣営の急所である真人の元へ駆けつけ、簡易領域の構えを取る。
真人にとって魂を知覚する宿儺の攻撃は致命傷となり、加えて
幸い、宿儺の領域の出力が大幅に低下していたため真人や虎杖、乙骨らは大した手傷を負う事なく耐え凌ぐ。
そして90秒、宿儺の領域が縛りによって崩壊し始める。
宿儺の背後に聳え立った名状しがたき偶像が徐々にその形状を変えゆく中、高専術師達が攻勢に出る。
ああだが、悲しいかな。
「
元より宿儺は斬撃の理を以て、趨勢を定めるつもりはない。
既に条件は満たされている。
後はそう、炉に火をくべるのみ。
「
宿儺の誇る最大火力、
領域内の呪力を含む物質、含まない物質は宿儺によって解体され、その全てが
呪力的導線は彼の放った火によってジリジリと熱を伝播し、瞬きの間に全てを覆う。
いわば火薬塗れの空間に火を放り込むような行為、サーモバリック爆薬とも例えられたこの空間はまさしく竈の中である。
領域の展開地点、宿儺からの距離がある程度離れていた張相と真希は既に撤収し、再度機会を伺う。
だが真人、虎杖、乙骨は宿儺の至近距離にいた。
焔の矢は彼らが駆け出した時点で既に地を焼いている。
火が走り、一呼吸の間もなく世界が爆ぜる───
───より早く、
「……無為、転変」
男が、決死の賭けに出た。
「知らんのか?俺にそれは……ッ」
「1度目は許す、真人にはそう言っただろ?」
「な、に、を」
「さてとウニ頭、あんまりお眠さんだとアンタの大事な姉ちゃんのハジメテ俺ちゃんが貰っちゃうぜ?」
真人の言葉により不完全な領域は崩れ落ち、宿儺の最終奥義は
《あ、そう!縛り結べばいいじゃん!この俺ちゃん、誓って殺しはやりません!》*1
それは伏黒恵との間に結んだ、相互不可侵の縛り。
真人は他者の殺害を禁じ、
真人の術式効果を見誤っていた彼らは真人を無害と断じて、黙示によって真人の申し込みを受け入れた。
その縛りは、
無為転変により過度な干渉を行えば、本来縛りの対象に含まれない宿儺の魂からの反撃によって真人は死ぬ。
だが極々僅かな干渉であるならば、それこそ魂の心奥ではなく戦いにより浮かび上がりつつある伏黒恵と宿儺の混ざり合った魂の輪郭に触れるだけならば───
「ははは、マジで行けちゃったよ。今日のヒーローインタビューは俺ちゃんだね」
真人が無為転変で行ったことは一つ。
────────────────────────
「こ、これで皆助かるんですよね」
「そうそう良いアングルってなに勝手に回想してんの!?ちょっとカットカッ───」
「ゴホッ、そう……アンタいたのね」
「なんかどうでも良いみたいに言うのやめてもらって良い?傷心どころか今の俺ちゃん身も心もボロボロ、気分は甘党にタイヤグミ食わせた感じ」
「ふぅ、はぁ、それって、死に際の人間に聞かせる話?」
「貴女は死なないは私が活かすもの」
「アンタとの義理はもう果たしたって事で良いみたいね」
「あのさぁ、勝手に絶命の縛り結ぶとかマジ有り得なくない?
「うっざいわね、アンタとの縛りの所為こうなってるんじゃない」
「まあ俺ちゃんの場合は、万ちゃんが絶命の縛りかけても蘇生できるからどっちでもよかった、ていうか一々手間なんだよなぁ」
「何を言って……」
「無為転変」
「う、そ……殺せ、ないん、じゃ」
「絶命の縛りで死んだ人間を殺す?冗談はヨシコちゃんだぜ?死体から残った魂サルベージしてるだけだっちゅうの」
「あ、あああああああ」
「タンマタンマ、なんかそのCVで喘がれると股間にカルシウム溜まっちゃうって」
「だ、誰のんっ、所為、で」
「あーだめだめ万がエッチな感じになるのは多分誰も想定してないし、俺ちゃんも複雑だからお口チャックね」
「さっ、さとぉ、はぁ、はぁ……んっくぅっ、やりな、さい」
「ねぇ!さっきからワザとでしょ!俺ちゃんが興奮してるのはアンタじゃなくてその声帯に宿る精霊さんだからな!勘違いしないでよね!オラッ、さっさと逝け!!!」*2
「…………」
「ふぅ……おkあ、ずっと前から計画してた事だしぃ、別にやましい意味じゃないからね!一仕事終えて一息ついただけだから!」
「……………はあ?ちょっとち○ちん亭思い出した?逝けが、あー。おっと分からなかったそこの君は別のタブ開かなくて良いからね!はいはいシークレットタブ開かないの、開くならトイレでね」
「何を、一人でおっしゃってるんでしょうか?」
「あ、起きちゃった」
「いいかい津美紀ちゃん、一時的に君の魂の情報をしばらくの間
「だ、だからって服装まで……っ」
「形から入るのが大事なんだよ、呪術ってそういうトコから始まんの*3」
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ハゼノキとは全く別の黄櫨に偽装された、津美紀の生存報告。
伏黒恵の魂は、真人の決死の賭けに応じて再起する。
一縷の希望を得、沈んでいた伏黒の魂が蘇った事で魂の主導権、その一部が伏黒恵へと変換。
それに伴い、
任意に基づく強制。
伏黒恵がその負担を一部宿儺へ押し付ける事で、その効力は断片的に適用され、宿儺は伏黒恵の魂を再度沈めるまで
「タイガーちゃんに寂しいなんて言わせないぜ!」
「はぁ?」
「本当に成功するなんて……」
「ク、ククク」
「何、頭でも打った?とかいうと負けフラグになりそうだからやめとこ。嫌な予感するんだけど」
「皆、気をつけて」
宿儺の身体から
「反転術式が、復活してる」
「早くね?後2回くらい黒閃いるでしょ?」
「呪霊擬、正直に言って驚いたぞ。
「おいコラ、ナチュラルにセリフパクるな」
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メロンパンが新規の参加を打ち切ってくれたお陰で宿にゃんはハゼノキちゃんが一人しかいないと認識していたんだろうね。
ブチャラティ風に言うなら
「黄櫨は二人いた!」
「全く羂索め。つくづく趣味の悪いやつだ……
「何々、突如明かされる俺ちゃんの素性!?」
何々俺ちゃんの素性を宿にゃんに話させて尺を稼いで、あわよくば宿儺を回復させようって判断?
全くにくいねぇ〜、俺ちゃんの素性自体は気にならない事もないけど今の宿にゃんの発言で大体わかっちゃったのよね。
「真人さん今はっ」
「急かすな」
言われるまでもないね。
今の宿にゃんは術式が焼き切れている。
反転術式が復活したとはいえ、その出力は微々たるもので負傷した箇所……特に欠損した部位の復元にはかなり時間が必要と見た。
「あの呪霊、真人はそこにいる術師、真人の腹から生まれた
「【悲報】俺ちゃん経産婦な模様。シングルパパーに加えて国からの補助出なかったから家庭環境が荒れに荒れて、息子もグレてテロ起こすし……もう私どうすればっ!」
「って言えば満足?そうすりゃ、俺ちゃんはアンタのお友達の経産婦メロンパンとママ友になれそ?」
にしてもアイツめっちゃ煽るね、必死過ぎてウケる。
それはそうとして完全に反転の出力が回復する前に倒し切りたいところなんだよね。
………状況を総括すると俺ちゃん自身もウニ頭との縛りで宿にゃんを殺せないけど、アイツも俺ちゃんに命に関わるような攻撃が出来ない。
つまり、今が攻め時ってこと。
背後から憂憂と共に冥さんから贈り物が届く。
「姐様から伝言です。大事に使ってくれたまえよ」
「流石良いところで来ちゃったね、チップは弾ませとくって伝えといてね」
「それは烏か。随分と多いようだが、また
「いやいや冗談、それこそ無駄でしょうよ」
タイガーちゃんの背後からの蹴りを見事に躱わしつつ、シンジくんの刺突をお腹の歯で白刃取りした宿にゃんの視線は俺ちゃんに向けられている。
そしてギィギィと耳を塞ぎたくなる金属を擦り合わせた音の後、刀の折れる男。
俺ちゃんは6羽の烏達に細工を仕掛けて宿にゃんに突貫する。
なんだかんだ言っていまは殴る方が先決だしね。
タイガーちゃんの攻撃も宿にゃんにとっては無視できない。
シンジくんは刀折れちゃったけど、とりあえず持ち前の呪力でカバーしつつ、リカちゃんの復活待ちと言ったところかな。
やたら警戒されてるのは俺ちゃんの攻撃次第では宿にゃんに致命的な隙が生じるのは多分察してるからなんだろうなぁ……まだ秘策はいくつかあるけど、出来れば今後のために取っておきたい。
出し惜しみすんな?
しゃーねぇなぁ〜
「一回だけですよ……」
「白刃輝无」
今まさにシンジくんとタイガーちゃん首目掛けて放たれんとする術式を前に四条の黒輝が降り注ぎ、その指向性を逸らした。
俺ちゃんの背後に浮遊する四つ羽、もとい烏だった剣。
そして掌に握られた二対の剣。
「行くぞ、呪いの王───呪いの貯蔵は十分か」
「思い上がったな」
両者構える。
けど良いのかな?
俺ちゃん達にはアンタの天敵がいるんだぜ?
「シィッッッ!」
「小僧、貴様はつまらん。さっさと失せろ」
「うるせぇ!」
会心の卍蹴りを普通に防がれ、受け止められたまま斬撃を浴びせられるも怯まない。
前へ、前へ、前へ。
タイガーちゃんのスゴ味ってやつ?
頭が吹っ飛ばされても、殴り倒すっていう意思が離れた場所にいても感じるね。
今度俺ちゃん謹製の血が滲んでもバレないスーツ作ってあげよう。
あ、吹っ飛ばされた、
まあでも俺ちゃんも準備万端、これからは大船に乗ったつもりで読んでてくれよな!
てな訳で俺ちゃんマジモード、後はヨロシク!
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結論から伝えよう。
宿儺は当初の想定を遥かに上回る苦戦を強いられていた。
実質的な領域の無力化、最終奥義の封印。
これらを差し引いても宿儺であるならば高専術師達を蹂躙する事は可能であった。
多対一であれ
呪いの王であるが故に強者であり、強者であるが故に呪いの王。
それこそが史上最強の術師、両面宿儺である。
だが目覚めつつある伏黒恵の反発に加え、虎杖悠仁と真人、張相、禪院真希、術式の回復した乙骨憂太の再度の領域展開に巻き込まれ、後手に回りつつある。
(九相図兄弟(兄)を除いた全ての術師が俺への決定打を有し、更には反転術式を無視する手段すらも兼ね備えたときたか……中々に面倒だ)
通常莫大な呪力を消費する反転術式。
それをカバーしていた真人の術式により、高専術師各位の呪力残量は
そこに輪をかけて厄介なのが高専術師の装備だ。
特急呪具、釈魂刀。
禪院真衣が絶命の縛りと共に遺したソレは無生物の魂さえ観測覚して仕舞えば、あらゆる硬度を無視してその対象を切り裂くことができるというもの。
だがその真価は、魂をも引き裂くところにある。
魂の損傷は反転術式による治癒は叶わない。
真人はその釈魂刀を参考に冥冥と協力して特製の呪具を作り出した。
それこそが彼の振るう二刀と四本の刀剣である。
銘を白刃輝无。
真人の加工により魂へのダメージに特化した刃、それらは釈魂刀と同じく反転術式による治癒を妨げ、確実にダメージを蓄積していく。
「ジリ貧じゃない?wowo」
真人の言う通り、宿儺は追い詰められつつある。四方から飛来する真人の刃に警戒しつつ、虎杖悠仁の魂を揺さぶる打撃、乙骨憂太の邪混侮、リカの連撃、張相の補助、禪院真希の釈魂刀、これら全てを捌き切るのは流石の呪いの王といえども苦戦は必死だろう。
(このままでは俺は負ける。だが───)
それでも宿儺は勝機を見出す。
「まずは左眼貰ぃぃぃ!」
浮遊する呪具を足場に真人が跳躍し、鞭の如く腕を伸ばしながら刃を振るって宿儺へと攻撃を仕掛け、禪院真希がそれに合わせるように宿儺の眼を切り裂く。
重なるようにリカが地に拳を突き立てて土埃を上げ、宿儺の視界が覆われる。
煙の向こうから宿儺に見えたのは呪具を持った男の姿。
それの振るう斬撃を解をぶつける事で凌ぎ、背後へと意識を回す。
ビュンという刃の風を切る音。
しかしそれは空からの強襲。
三条の刃閃が突き刺さり、再び宿儺の集中を乱す。
「くっ」
横ばいから脇腹を抉る様にして放たれる拳が、宿儺と伏黒恵の魂の境界を大きく揺さぶる。
「小僧!」
「小僧だと思った?残念!俺ちゃんでした!」
「チィ!」
上空から放たれる虎杖悠仁の拳が宿儺の後頭部を捉えて重く響く。
脳へのダメージを受け、大きくグラつきながら宿儺は脳裏には
背中への斬撃、それと同時に真正面からの禪院真希の斬撃、リカの攻撃と虎杖悠仁の蹴り。
(不味いな、ペースを崩された。こいつらの攻撃をマトモに喰らい続ければ、いやそうか
背後へと裏拳を放ち、続く攻撃を迎撃する。
が───
「捌」
既に宿儺の正面に立っていた乙骨憂太が宿儺へ術式を発動する。
「好都合だ」
血飛沫が上がる。
「
領域が崩壊した。
乙骨憂太が領域内で手にした刀の術式が御厨子ではなくG戦杖、すなわち未来視であるならば、この事態は防げたであろうに。
「なんで宿儺が」
「御三家の秘伝だったか?そんな小技見れば分かるだろうに」
宿儺は切り取った乙骨憂太の頭部を投げ捨て、反転術式をフル回転させ、体勢を立て直す。
「龍鱗、反発、番いの流星」
「させっ!?ヤベッ」
「引っかかるのは二度目だな」
追撃に見せかけたフェイント、ではなく正真正銘放たれた世界を断つ斬撃。
真人目掛けて放たれたそれは彼の右腕を切断し、その余波で彼を遥か後方へと吹き飛ばした。
「領域展開、伏魔───」
領域の射程外に真人を放り出した事で、間髪入れずに片手で掌印を結び領域の射程内に残った術師の処理へと移る。
だが近すぎる。
「させるかぁぁぁぁ」
「シィッ」
虎杖悠仁の拳が宿儺の掌印を砕き、釈魂刀が宿儺の肺を突く───
───その直前に、
「チィ!」
「ゴッ」
虎杖悠仁と禪院真希目掛けて拳が突き刺さる。
前者には頭部、後者には腹部。
「黒閃」
禪院真希の肋骨骨を黒い火花が打ち砕く。
「うおおおおおお!」
幸い顎を軽く揺らした程度に留まった宿儺の攻撃に怯まず、虎杖悠仁は宿儺の指をへし折る事に成功するも、
「あ?」
虎杖悠仁の世界を強い衝撃が、
「貴様の下らん小細工だが、貴様には自分の技で死ぬのが似合っているぞ」
脳震盪。
敵前で初めて膝をついた虎杖悠仁に宿儺は躊躇なく呪力を込めた一撃を、
そして血を撒き散らしながら心の臓腑を引き抜き、熱を失った身体を真人と反対方向に投げ捨てる。
「そら、伏黒恵。お前のお陰でまた一人死んだぞ?」
「悠仁いぃぃぃぃぃいぃぃ!」
宿儺の背後にいた張相が、虎杖悠仁の方向へと走り出す。
宿儺は勝利を確信し口元を歪めた。
浮かび上がった伏黒恵の魂が沈む。
不戦の契りは最早、呪いの王を縛らない。
領域展開、伏魔御厨子
全てを巻き込んで、死が世界を覆う。
────────────────────────
やばいやばいやばいやばいやばいやばい!
シンジ君即死
リカちゃん消滅
真希パイダウン
タイガーちゃんはギリ間に合わない
お兄ちゃんは弟の側に
控えの面子じゃ火力不足だ。
しかも宿儺はさっきの黒閃で反転の出力が復活してる可能性高ぇし、領域展開してるし。
詰んだ?
それよりアンタら見た?
アイツ原作より無茶苦茶してないか?
何、ちゃっかり逕庭拳と落花の情使いこなしてんのよ。
「あーやべ、俺ちゃん簡易領域使えないのよね」
しかも今回の領域閉じられてるから外部からの干渉は無理、まあ憂憂と俺ちゃんが一緒にいれば無限バトル編開幕だしね。
ガチでゾンビ戦法なんて始めたら、多分真っ先にヤニカス女医の所狙いに行くだろうしね。
羂索に位置がバレてるのが致命的すぎるのよ。
要は危険すぎるから却下された禁断の禁じ手ってやつ。
さて、どうしようか。
まあこのペースだと俺ちゃんも空港送りになるワケだけど、もうかなり致命的だね。
まあ皆知ってると思うけど、俺ちゃんここにいる時点で元々宿儺の攻撃喰らったら即退場レベルなのよ。
はい、もう一撃喰らってるんだよね。
んで今からトドメのザシュザシュからのフーガだし、多分縛りも消えてるっぽい。
「ここから入れる保険とかなさそうだよね」
いつだって人生のエンドロールは急に下ろされるもんだし、映画館でポップコーンを食べながら眺めたりする事は出来ない。
何故って?
そりゃ画面の中にいるのが俺ちゃんで、全然他人事じゃないから。
だからまあ、必死になるんだよね。
「領域展開」
やったこと無いし、分かんないや。
けどまあ術師の成長曲線は緩やかなものじゃないんだろ?
精々俺ちゃんも作者の掌で踊ろうじゃないの。
まあ踊るってのは勿論、勝つって事。
無茶苦茶な縛りと黒閃バフでゴリ押しして、口腔内と背中から生やした腕で掌印を結んで、世界との調和を測る気分。
気分はまるで活動家。
ある男が言った。
「死ぬ時は前のめりにな!」
「死蒙偏頗賭」
────────────────────────
「ほぉ!」
宿儺の嬉色ばんだ感嘆の声が木霊する。
宿儺を起点に広がるは無数の牛骨と万死の厨房。
真人を起点に広がるは赤い汚濁、と積み上げられた掌。
赤黒い水平線に聳え立つ掌、その頂点に座す一台のパソコンに映し出されるのは巨大な脳漿。
「領域勝負と行こうぜ宿にゃん!舐めてかかるとハジをかくことになるから気をつけろよ!」
「啖呵切るには少々心許ないがいいだろう。精々俺を愉しませろ」
────────────────────────
斬撃の雨と屍肉の群れが動き始めたのはまったくの同時であった。
それは完全に逆転し、今まさに詰みの一手を決めんとしていた王の戯れであろう。
「む?これは───」
まず異変に気づいたのは宿儺であった。
領域が崩壊していないにも関わらず、僅か数秒で
「なんだ貴様、己が領域に必中命令を備えて無いのか」
「そりゃ阿呆の二の舞でしょうしなァ!恵ちゃんインスパイアだぜ!」
青息吐息の表情で血反吐を吐きながら真人が叫び、領域の維持に集中する。
必中命令を備えない領域、つまりは真人の領域では宿儺の領域を封殺する事は叶わない。
同時に必中ではないため、特級呪霊真人と同様に宿儺の魂に触れるという愚行は犯さずに済む。
更には幸いにも伏黒恵との間に結んだ不殺の縛りによる必殺効果の喪失に伴い、領域の特性として秤金次と同様に領域の押し合いには遥かな優位性を持つが……宿儺の技量はそれを凌ぐものであった。
「存外耐えるではないか、だがいつまで続くか見物だな」
「見せ物とちゃうぞオラァ!」
真人の領域は不完全であり、伏黒恵と同様に外殻を有さない。
肉腫を外殻として採用し領域を展開するという縛り、それは真人によって必要不可欠なものであった。
「ククク、杜撰な領域だが中々どうして粘る」
領域展開から30秒が経過。
内側と外側から斬撃を浴びせられるも、真人の領域の外殻は破壊されない。
核シェルターを想起させる程の厚さを持つ真人の領域の外殻。
領域の外殻でありながら術式対象であるソレを崩し切るには宿儺の斬撃では些か時間がかかり過ぎる。
外殻は瘡蓋のように傷つく度に暑く、硬く、癒える。
直接術式を叩き込もうとも外殻全体が損傷箇所を補う。
つまるところ宿儺が押し切るには一息に真人の領域ごと破壊する必要がある。
(再生する領域、中々の硬さだな。拡張子術式で奴ごと両断……否、隙が多過ぎるな)
反転術式の出力は既に復活しているものの真人の領域による攻撃で復元は遅々として進まない。
「魂に直接干渉するのではなく、自らを希釈し無尽蔵に肉腫を生成。領域に付与された術式を用いるが故にダメージによる術式の出力低下を無視しているな」
「分かっちゃう?早いねオタク」
それこそが真人の領域。
(
宿儺の最終奥義、
通常の領域を相手にするのならば、刻めるのは外殻と術者本人のみ。
些か火力不足という危惧がある。
(いいだろう。誘いに乗ってやる)
領域展開の時間制限、それこそが真人の狙いであると宿儺は踏んでいた。
領域の条件変更。
宿儺は即座に領域の規模を縮小する事でさらに領域内の術式の出力を向上、内部からの領域の破壊と共に真人への攻撃を敢行する。
どちらにせよ、残るのは一人。
戦線離脱した者達を除く他の術師達は既に60秒が経過した領域の術式に巻き込まれ、重症あるいは即死しており最早立ち上がることはない。
「さあどうする!」
12秒が経過。
真人の領域、その外殻が完全に崩壊し───
「続行!」
領域は崩れない。
「なっ!?ぐっおおぉぉぉぉぉ……っ小僧ォォォ!!!」
宿儺が驚愕の声を上げると同時に憤怒の形相をした瀕死の術師、虎杖悠仁が宿儺の腹に大きく拳をめり込ませる。
死んだはずの男が蘇った理屈を理解する暇も無く
「黒閃ッ!」
黒い火花が散る。
「お帰り、爺ちゃんに手振って貰えた?」
「ファンサかよ………
「なるほどね、そんじゃ気張るぞ」
「応!」
閉じない領域、それはキャンバスを用いずに空に描く神業。
真人にとって、
故に結界術を理解せずに領域を展開し、それを悟られぬ内に偽装用の外殻を生み出し、宿儺が領域の規模を縮小する事に賭けれたのだ。
真人の領域に付与されたのは無為転変。
それは変わらず領域内の魂の形を変え続ける。
死んだと思われた虎杖悠仁と
「っはぁ、はぁっ
竈が開かれる。
「そうはいくまい、呪いの王よ」
「これは!」
二度の拍手、真人が領域外に出た事により主を失った領域は雲散霧消し、奥義は再び不発に終わる。
虎杖悠仁の死によって再び沈み始めていた伏黒恵の魂が再浮上し、不戦の縛りが蘇った事で、再び宿儺は窮地に立たされる。
「東堂!」
「久しいなブラザー、だが今は」
黒閃を受け、想定より早く領域の維持ができなくなった宿儺の領域は既に崩れ始め、術式の焼き切れによる弱体化を強いられた。
「ねね、俺ちゃんは無視?」
「行くぞブラザー!」
「ああ!」
真人の領域のイメージとしてはカーズ様が纏う泡の鎧です。
爆速で新築代謝して、ダメージを垢に押し付けると考えていただければと。
ではでは面白ければ感想高評価、心よりお待ちしております。
作者のモチベに繋がりますので是非是非