【急募】勇者トークンです マスターがヤンデレ精霊達に襲われない方法探してます   作:アラメシア

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間話 浸りて沈むほどの恋

「……」

 

「眠いですか?」

 

 

 こくり、こくりと、彼が少しずつまどろみの世界へと向かっている。

 

 

「ん……」

 

「大丈夫です、安心してください。ここにあなたを害するものはありません、存在させません」

 

 

 疲れる筈です。

 目覚めてからというもの、彼は警戒を怠らずほとんど起きた状態でいましたから。

 その証拠にほんの少し混ぜた眠り薬にすら抗えないほど、彼は疲れている。

 

 

「どうして、そこまで頑張るのですか?」

 

「……」

 

「あなたが傷付くばかりなのに、あなたが得られるものは何もないのに」

 

 

 まどろんだ彼に、かねてよりの疑問をぶつける。

 倒れるこの人を優しく、そして安らげる様に抱きとめて。

 

 

「……疲れるよ、この世界は」

 

「そうですね」

 

 

 少量の眠り薬と、ほんのわずかな幻覚の薬によって聞き出せた、彼の本音。

 

 ため息混じりの、彼の声。

 それは初めて会った時よりも、ひどく落ち着いていて。

 ……それは、それほど激しい経験をしてきたということで。

 

 

「でも、頑張るんだ。頑張らなきゃいけない」

 

「どうしてですか」

 

「それは」

 

 

 体勢故に、顔は見えないけれど。

 なんとなく、彼が嗤っているように感じる。

 

 

「……約束が、ある」

 

「約束、ですか?」

 

「ああ」

 

「こんなになってまで、守らなければならない約束なんて    

 

「キトカロス」

 

「……」

 

 

 初めて彼が、名前を呼び捨ててくれた。

 ……もう、こんな場面でなんてずるいですよ勇者さん。

 

 

「大切な、約束なんだ」

 

「誰との約束なんですかっ」

 

「……それは」

 

 

 勇者さんが顔を上げた。

 目が覚めたわけではなく、まどろみの意識で私の目を見ようとしている様だ。

 

 

「……あんたを見ていると、朧げに思い出せるな」

 

「それって……」

 

「忘れたのに、思い出せる    青い、髪の……あの……」

 

 

 再び、私に身体を預けてしまう勇者さん。

 ……限界を迎えてしまったみたいですね。

 

 

「……おやすみなさい、いい夢を見てくださいね」

 

 

 抱きとめた体勢のまま、彼を優しく撫でる。

 聞きたいことは、聞けましたから。

 

 

「やはり、彼女が関わっていたのですね」

 

 

 元々分かりきっていたことではありました。

 世界を繋いだりする力を持っていて、勇者さんが力を尽くす相手なんて1人しか居ないんですから。

 

 

「水遣い」

 

 

 聖殿の水遣い。

 私と同じ髪と、彼が言ったであろう相手。

 

 

「他にも沢山いるみたいですが」

 

 

 彼が誰よりも敬う相手、何を置いても約束を果たそうとする相手。

 

 ……忌々しい……。

 

 

「……だめ、落ち着いて」

 

 

 荒んだ心を、落ち着ける。

 今の私は感情に左右されやすい、だからこそ心を律する必要がある。

 

 

「こんなものを彼に見せたくありません」

 

 

 嗚呼、勇者さんはこんな私も受け入れてくれるでしょうか。

 記憶にのみ残る、"彼"の手段を真似て力を得た私を。

 

 

「私(・)達(・)は、あなたを    」

 

 

 そこまで言って、口をつぐんでしまう。

 どうせなら起きている時に言いたいというのが、私の本心。

 

 

「ふふ、でも言えませんね」

 

 

 義務があるし、こんな状態の彼にそんなことを言ったって困らせるだけ。

 そして何より、私が恥ずかしい。

 

 

「私の勇者さん」

 

 

 哀しみに暮れる私を、笑わせてくれたあなた。

 

 怒りを持て余す彼女(わたし)を、受け止めてくれたあなた。

 

 喜びに狂いかけた彼女(わたし)を、諌めてくれたあなた。

 

 

「私(・)達(・)は、あなたを守ります、絶対に」

 

 

 私の、全てを賭してでも、必ず。

 水遣いにも、絶対に負けません。

 

 

「一体彼女は、何を見たのでしょうか」

 

 

 勇者さんと約束をして、以前の記憶を曖昧にして。

 向こうの世界で、何を。

 

 そしてなぜ彼女は、戻って来ない?

 

 

「もしかして」

 

 

 ふと浮かんだ考えに、冷たいものが過ぎる。

 

 

「……戻って、来られない    ?

 

 

 分からない。

 けれどその考えが確かなら、向こうの世界が一筋縄ではないということは確かでしょう。

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