奴隷虐待してみた 作:ヤンデ・レー・メーン
「そうだ、虐めよう」
そう思い立ったのは、俺が異世界に転生してから十年経ったある春の日だった。
俺は生前……いや、俺の前世なんてどうでもいい。とても平々凡々としたものだったとだけ言っておこう。
とにかく俺は何の因果か、あっけなく事故死した後、地球とは別の……魔術が使え、エルフやドワーフといった亜人が存在する、いわゆる異世界に転生していた。
最初は疑った。体が上手く動かないのはそれ相応の怪我をしているからで、寝ている場所が硬いコンクリではなくフワッフワなクッションに包まれているのは病院だからだろう、と。
しかし一年も経てば流石に状況は受け入れられた。オムツに直接漏らすのは受け入れ難かった。
何がとは言わないが
どうにか歩けるようになった頃には、貴族の子供に生まれたらしい、と薄々理解した。
しかも辺境伯。ラノベでは結構な権力を持っていたはず。この異世界でもそうだった。
貴族に異世界転生しちゃった俺だが、当然のように、よくあるラノベのように最強に向けて頑張ったり、知識無双で自領を豊かに導こうとした。
結果的に言えば、両方とも出来た。
教師役を勤めてくれている宮廷魔術師には「こんな逸材は見たことがない」と言われ。
朧気で頼りない知識を総動員した結果、自領は大きく発展を遂げた。
天才。神童。
それが大衆が、皆が五歳のガキに付けた称号だった。
しかし、それから少しして、
今、俺が無双出来ているのは、転生という絶大なアドバンテージがあるから。それが無くなれば、俺はただの凡人だ、と。
それから俺は、狂ったように努力した。
魔力。生まれついての資質。俺はこれが平均よりも少し多いくらいで、圧倒的ではない。こればっかりはしょうがない。魔力操作や魔術の精度をとにかく上げよう。
現代知識を活用しての開発。これは当分底が尽きることは無いだろうがいつかは尽きる。そして、ボロが剥がれる。だから、古今東西のあらゆる知識知見を吸収する。幸い本は家にたくさんあった。
こうして俺は毎日毎日、夜も昼も、日に日に色々と増やしながら努力を続けた。ボロを出さないよう更に着飾った。当然ながら結果は出た。
なぜこうにも狂うのか。
それは自分でも分からない。もしかしたら、『神童』なんて言われて嬉しかったのかもしれない。それで、それが嘘なんだと、ただの『ズル』だと気づかれるのが怖かったのかもしれない。褒められるのはこばゆくって好きだった。
……そうして、俺が生まれてから十年。
着飾るのにも慣れ、しかし心の中では限界だった。
もうムリ……まぢ無理……いつバレるのか冷や冷やだヨ……おっと変なテンションになってたな、失敬。とにかくストレスが溜まってるんだ俺は。
そんな中。俺の、古今東西のあらゆる叡智の詰まった頭に! 天啓が降りた!!
「……ッ! ……そうだ、虐めよう」
誰かが苦しむ姿を見て、ストレス発散すればいいんだ!!!!
簡単なことじゃねえか!!!!
ッシャオラァ!!!! やるぞやるぞ!!!! 一般人はダメだから奴隷買って虐めるぞ!!!!
「うし、そうと決めたら」
「坊っちゃん、何処かに行くので?」
おっと、お付きのメイドちゃんがやって来た。扉から覗いている。どう返そうか……はっ。
俺は外用の爽やかスマイルを向けて「ちょっと街へ人助けに」、と言ってメイドちゃんの横を通った。
気のせいだと思うけど、「はううっ」って変な声が聞こえたな?
次! 次は虐待入ります!! あんなことやこんなことをして虐めますよ……!