翌日。
ホシノとパイセンの質問攻めをのらりくらりと交わした俺は、二人が納得せずともその場を後にし、学校をサボった。
いつも偶にサボる時はあるが、険悪な雰囲気の中でサボると何故か俺が逃げたみたいで、少し苛立ちが募る。
別に、ホシノとパイセンが悪りい訳じゃない。ただ俺が考え無しで、何も考えずにもっと先のことを考えずにやらかしたのが原因だ。
好きなことを好きなだけやる、か。
俺が生きていく上で決めた生き方なのに、今じゃその目標が灰色に色褪せている。何故だ?
俺の望む好きなこと。それは青春を楽しむこと。ホシノやパイセン達のような可愛い女の子と接したり、かっけー事やりまくって、たまにだせー事して、最後にはハッピーエンドを迎えられるような、そんな人生を送ること。
今じゃなんだ。こうして逃げていると錯覚しながら苛立ちを募らせ、不満足にしている。
あー、自分に腹が立つ。望んだ生き方ができねえってのは、こんなにもイライラするもんなのか。
こういう時、前世では何してたっけ…。
…あぁ、思い出した。
少し重い足取りで、俺はそれがあるだろう場所に足を進めた。
「…あった」
アビドス自治区の郊外に位置する、俺の通学路を少し逸れた場所。
色々な鉄屑が置かれた鉄廃場だが、一番多く置かれているのは積み重なった錆だらけの車なので、多分ここは廃車ヤードだ。
前世だと、俺の家のすぐ近くにあったから、何か不都合が会った時にはここで車の上によじ登ったりして遊んでいた記憶がある。
楽しくない時や、辛い時や、悲しい時や…とにかく、前世ではお世話になった場所だ。前世の青春の大部分だった場所だった。
酷く懐かしい感覚に身を寄せながら、俺は一番高く積まれた廃車の上に跳ぶ。
衝撃を完全に殺し、着地する。少し揺れるが、わざと揺りでもしない限り崩れはしないだろう。
ボンネットに足を伸ばして、屋根に座り込む。
本当に懐かしい。まるで前世に戻った気分になる。
青春の日々が、次々と脳裏に過ぎる。
友達のいない日々、ちょっぴり近所の子供達の遊びに混じってはいつのまにか消え、一人で遊ぶ日々。高学年になるにつれ、そういうことができなくなり、一人孤独に暇を潰していた日々。
中学生になり、少し大人な気分になっていた日々。イジメや喧嘩を見て、助けようと思ったにも関わらず結局関わらなかった日々。自分の無力に、仕方が無いと割り切っていた日々。
高校生、大人になり、青春という言葉すら忘れ、大人としての普通を追い求め、普通に日常を過ごしていた日々。
そして…まだ未来ある子供を助け、未来へと紡がれる青春を己の命を賭して救ったあの日を。
俺は、たまらなく青春が好きだ。
それは満足していないから、満足せずに過ごしてしまったから焦がれているだけで、きっと満足すれば青春なんてものをまるで紙屑のように心のゴミ箱へと捨てるのだろう。
だけど、俺はそうはなりたくない。一度好きになったのだから、今まで好きだったのだから、その好きを死ぬまで大事にしたい。
今の俺の青春を飾るものはなんだ?
俺の砂に塗れた青春を飾る人は、居るじゃないか。
きっと俺の青春を、より彩ってくれる人が、まだ居るじゃないか。
ホシノ、ユメ先輩。同じく砂に塗れた青春を過ごす大切な仲間。そいつらを守るためならば俺はなんだってする。
俺にあるものはなんだ?
女神様がくれた、強い身体と神秘。前世の俺から継いできた、青春への想い。ユメ先輩から貰った、
「…ククッ」
それだけありゃ十分だ。お釣りがくる。
あー、大分調子が戻ってきた。そうだ、俺は後先考えず、俺のやりたいことだけをやれば良いんだ。後のことは後の俺が好き勝手やるさ。
じゃあ、後の俺よ、今からどうする?
___とりあえず、二人に謝ってくるか。
そうだな、そうしよう。
そんな自問自答をして、俺はギラギラと輝く太陽へと顔を向ける。
相変わらずあちぃ日差しだ。だが、それが心地良い。
…でもまぁ、あちぃのはあちぃから消え去って欲しいのは事実だけどな。
「すまなかった」
と、俺は頭を軽く下げる。
目の前にはユメパイセンとホシノ。二人は何故俺が謝っているのか分からないようで、二人で困惑した表情で顔を見合っている。
「俺は最善の策を打った…と思っていたが、その実は浅はかな考えによるものだった。もう次は、昨日のような真似はしないと約束する」
「…顔をあげて?アスカくん」
ユメパイセンにそう言われ、顔を上げる。
俺を見つめるユメパイセンの表情は、とても優しげだった。
「ちゃんと自分で反省できることは偉いことだよ。前回、今回がダメでも、
「…あぁ、分かった」
「…私は」
ホシノが呟く。
「アスカがなんであんな真似をしたのか、全く分かりませんでした。なんのためにしたのか、なんでやったのか。…でも今になって、アビドスに為にやったことだと分かりました。…次は一人でせずに、ちゃんと私達も頼ってください」
「……あぁ、分かった。次は、もっとお前も、先輩にも頼る」
あぁ、なるほどな。改めて、俺の青春は色鮮やかになっていると実感できた。
「よし!じゃあ仲直りもできたし、みんなでどっかにお出かけしようよ!モールに新しいケーキ屋さんが出来たらしくて、丁度行ってみたいって思ってたの!」
「良いと思いますよ。アスカもそれで良いですか?」
「甘いものはあんま得意じゃねえが、ケーキ屋ってんなら多少の注文は出来るだろ。出来ればビター系のもんが食いてえな」
「へぇ〜、大人舌だねぇ。確かチョコレートも種類があったから、アスカくんが欲しいのもあるかも!じゃあ早く行こ行こ!」
「あ、待って下さいよユメ先輩!」
「競争だー!」と言いながら教室を出ていく先輩と、それを追いかけるホシノ。
俺はその光景に苦笑し、置いていかれないように小走りで二人を追いかける。
俺の青春は、まだ色褪せてねえ。これからもっと紡いでやるんだ。
ビナーでも黒服でも、なんでもこい。俺の友達に手を出すやつは、俺がこの手でぶっ飛ばしてやる。
タイトル考えらんなかったんスよ( ・᷄ὢ・᷅ )