けたたましい轟音が鳴り響く。
ソイツを追いかける様に、その巨大な破壊音は次々と鳴り響く。
「う、く、来るなァ!ぶっ殺すぞォ!」
虚勢を貼って脅そうと、せめてもの牽制として手榴弾や閃光弾をばら撒いても、それでも音は鳴り止まない。
やがてソイツが行き止まりに辿り着く。
「く、クソ!他に道は…っ!!!」
破壊音が止まる。
静寂が当たりを支配して、辺りからは音が一切なくなる。
「___っ」
それに呼応するかのように、ソイツも物音を一切立てない。
逃げ切れたのか?そんなありえない事を想像しながら、ただ時間が過ぎるのを待っている。
そして___。
ドゴッ!
「見ィつけたァ」
「ひゅごっぉおおお!!?」
壁際に追い詰められていた獲物を、壁を打ち抜き、その首をつかむ。
空いた壁穴から獲物を覗き込み、狂気的な眼光がソイツの目に入った。
「賞金首…ゲットォ♪」
「はい、ご協力ありがとうございました」
「うっす。今後ともアビドスをご贔屓に」
白目を向いて泡を吹いた賞金首を引き渡し、俺はヴァルキューレの引き渡し場所から金を受け取ってそこを出る。
今の俺は、賞金稼ぎ
黒い帽子と白シャツに黒ズボンを身につけ、背中にショットガンを背負っただけのただの俺だ。シャツの背中にはアビドスの校章がある。
昨日から始めた事だが、たった一日で数十人の少額から高額の賞金首を捕まえてきたことで、俺はそれなりに話題の人物となっているらしい。周囲の会話を盗み聞いて得た情報だ。
なんでも悪魔やら鬼やら魔王やらと言われているらしいが、それはそれで好都合だ。俺の目的の重要な要素になる。
俺達の学校に必要なのは、金もそうだが何より知名度が致命的に足りない。
去年の時点でユメパイセンが他の自治区に行ってパンフレットや勧誘をしないと存在すら知られていなかったレベルらしいし、そんな現状不良しか知らないような知名度では、いずれ不良しか立ち寄らない魔境となるのは間違いない。
故に、まずは知名度を上げようとした。
しかし、パンフレットや勧誘ではアビドスの事を知ってもらうには限界がある。学校のことを簡潔にまとめ、ちょっと嘘を交えて情報を共有するくらいではアビドスの表面上しか知ってもらえない。
だから、アビドスを自分で調べようとすれば良いんじゃないかと。そう思い付いた。
以前俺が建てた虫除け。あれがそうだ。ちょいと目的は違うが、アレを建てることによって
ならば、良い方法で知名度を上げる方法はないか。それが賞金稼ぎだ。
悪行を繰り返し、その末に金を出してまで捕まえて欲しいと思われたヤツら。当然モブよりは強いし、中にはネームドまでいるかもしれない。
じゃあ、ソイツらを圧倒的にぶちのめす賞金稼ぎがいたら?
当然話題になるし、ソイツの所属校でさえ調べようとするだろう。
ゲームでもそうだったが、こういう世界で有名になるには結局腕っぷしが一番早い。
だからこそ、アビドスの名を借りて、俺は賞金稼ぎを始めたのだ。
金も貰えてアビドスを知ってもらえる、一石二鳥なナイスな考えだと俺は思う。
さて、アビドスに帰ろうかと俺は帰り道を歩いている訳だが…。
まだあと一仕事残ってそうだなァ?
「オイ、殺気がダダ漏れてチクチク鬱陶しいんだよ。奇襲なら意味ねえからやめとけ」
「…フフフ、やはり一筋縄では行きませんね…東雲アスカ…!」
俺の斜め後ろに位置するビルの影から出てきたその女。
狐の面を被り、ミニスカ調の和服を身につけ、苛立っているのか肩に担いだ銃剣でトントンと肩を叩くその仕草…一年前に見たことがあるな。
「復讐か?狐坂ワカモ」
「えぇ、えぇ。貴方に敗れてから早一年。あれから私は貴方を倒す為だけに強くなりました。そして今日、貴方が賞金稼ぎとして動き始めたと聞いた時、思わず飛んできてしまいました…!」
「ククッ、そりゃご苦労なこった。だが嬉しいぜ?またお前を豚箱に打ち込めばまた稼げるからなァ…!」
「減らず口を…!死になさい、東雲アスカァッ!!」
「また俺に敗れろ、狐坂ワカモォッ!」
振りかぶられる銃剣と、背から取り出したショットガンが衝突し、開戦の合図を打ち鳴らした。
ギチギチと音を立てる銃剣とショットガン。鍔迫り合い状態となった俺とワカモは言葉を交わす。
「聞いたぜ?お前、また賞金が上がったらしいじゃねえか。何したんだァ?」
「フフフ…少しばかりヴァルキューレの倉庫を漁って爆破しただけですわ…!大したものもありませんでしたし、完全な無駄骨でしたけれども…!」
「ククッ、なんだ、そんなことかよ…ちょっとがっかりした、なァ!」
ショットガンを押し込み、ワカモを下がらせる。
下がった途端銃口を向けてきたが…、
「っ、いな…下ッ!」
「遅ェ!」
ドパンッ!
神秘を込めた散弾がワカモに降りかかる。
ワカモはギリギリの所で上半身を後ろに下げて回避した。
その隙にもう一発…っぶねっ!
上半身の勢いを利用したムーンサルトが俺の肩を掠めて通り過ぎる。
ケッ、中々身体の動かし方の繋ぎが上手くなったじゃねえの…でもよォ!
通り過ぎようとした足を掴み、そのまま持ち上げる!
「ふんっ!」
「っく!?」
勢いよく反対側の地面に叩きつけようとしたが、叩きつけられる前に片手をクッションにして勢いを殺され、また手を軸に力を入れて蹴りを放ってきた。
俺は更に握る力を強くして、蹴りが来る前に手に持つ脚を捻る。
すると関節の関係上ワカモの身体はぐにゃりと曲がり、蹴りは勢いを弱めて俺の目の前を通り過ぎた。
「俺に掴ませたら最悪の悪手だぜ?」
「っ痛___はァッ!」
真下から迫り来る銃剣の切先。
俺は持ち手を蹴り上げることで銃剣を蹴り飛ばし、最後のとどめとして指先を向け、神秘を溜め込む。
「…今回はあんまり撃ってこなかったな、なんでだ?」
「ふ、フフ…いや、前回あれだけ撃って弾かれたり避けられたりしたら銃の意味もないかと思いまして。今回は剣に重きを置いたのですが、よりダメでしたね…次は、私が勝ちます」
「ほざけ、俺との勝負に於いてお前の勝利は無い」
___パンッ!
神秘の弾丸を受けたワカモは仮面を吹っ飛ばして気絶し、ヘイローを消した。
はーやれやれ、まぁ前回とは違ってまぁまぁ強くなっとるようやし、今回は捕まえんといてやるか。
そこら辺のゴミ捨て場のゴミに埋めとけば見つからんだろ。
そうして俺は、ワカモをゴミ捨て場の底にワカモを沈めた後*1ゴミの入ったゴミ袋を被せてその場を後にした。
そういえば結構重いゴミもあったし、生ゴミもあったかもしれんが…まぁ大丈夫だろ。生ゴミ塗れになったとて俺には関係ねえし*2、一応袋の破れは確認したからゴミを蹴り飛ばすか殴り飛ばさん限り大丈夫だ。*3
さて、もう学校は終わっとるだろうし、今日は帰って寝るかァ。
《side 狐坂ワカモ》
…暗い?…いや、柔らかい…なんでしょう、これは。
あの強者と戦った後、私は敗れ、てっきりまたヴァルキューレに引き渡されたのかと思いましたが…。
恐らく…埋まっている?何に?とりあえず出れそうか試してみましょうか。
目の前のそれを少し押すと、少し重い感触がする。押しのけるように力を込めると、少し光が漏れて来る。
どうやら、浅い場所らしいですね。それにしても、この黒い袋は…、
確か、あの強者と戦った場所は一般人が滅多に通らない裏路地。記憶違いでなければ、近くにゴミ捨て場が…ゴミ捨て場!?
私は急いで抜け出そうと目の前のゴミ袋を押し飛ばそうとした。
しかし、気が動転していた私は、そんな力を込めたら袋など容易く破れることに気付かず…
バッシャァッ!
結局己の手で袋を破ってしまった私は、仰向けの体勢のまま顔に生ゴミを被ることになりました。
…フ…フフ…フフフフフフフフフフフフフフフ…。
仮面越しに生ゴミの臭いが鼻につき、圧倒的な不快感を与えてくる。
上半身には妙に冷たい生ゴミの感触がへばりつき、更に不快感を与えてくる。
「フフフフフフフフフフフフフ」
貴方は完全に…完全に…!
私を怒らせましたよォ…!
「東雲ェ…アスカァッ!!!」
※ヴァルキューレの根城の近くで大声を上げてしまった私は、結局ヴァルキューレに見つかって捕まってしまいました。しかも捕まえられる途中、生徒が「うっ、臭い…」と呟きながら手錠を掛けていたので、更に心が折れました。とりあえず東雲アスカは絶対に殺します。*4
戦闘描写苦手なんスよ(•᷄ὤ•᷅ )