非日常的で日常的な青春の記録を刻む物語   作:よるくろ

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閑話 ①賞金稼ぎ『Abydos』

 

 

 黒い帽子、白シャツに黒ズボン、背にショットガンとアビドスの校章を背負った姿が、賞金稼ぎとしての俺の姿。

 

 今日も俺は、日課と化したパトロールという名の散歩を行っている。

 

「あ!アビドスさん!チッス!」

 

「チッス!今日はゲヘナに来たんスね!」

 

「おう、リハビリがてらな。調子はどうだ?」

 

「アビドスさんが教えてくれたアレ上手くいったっすよ!お陰で銃も新品の買えたんスよ!ホラ!」

 

 そう言ってスケバンが見せたのは、ピカピカの新しい短機関銃。普通の店には置いてなく、ちょっとしたお高めな店にしかない代物だ。

 

「おぉ、良かったじゃねえか。ちゃんと手入れしてんだろうな?」

 

「してるッスよ!んでもってコイツで襲いくる風紀委員をボッコボコにしたったっス!」

 

「程々にしとけよ?じゃねえとお前の首に金が掛かっちまうからな」

 

「ゔっ。さ、流石にアビドスさん相手は無理ッスね…」

 

 さっきまで元気に動いていたポニテが急に萎んでいく。

 

 そうして話していると、隣の茶髪のアフロみてぇなスケバンがおずおずと手を上げる。

 

「あの、気になったんスけどリハビリって?」

 

「あ!そういやアビドスさんここ五日位来てなかったッスね?なんかあったんスか?」

 

「入院してた」

 

「えぇ!?どこのどいつに…な訳ないからなんか拾い食いでもしたんスか!?」

 

「殺すぞ。普通にヤり合ったんだよ。勝ったがその代わり全身複雑骨折な上に大量失血、挙句の果てには脳に出血もあったらしい。医者にはあと数分で御陀仏だったとさ」

 

 そう言うとスケバン二人は心底驚いたような表情をした。マスクであんま見えんけど。

 

「え、え、え、それってもう大丈夫なんスか!?てかそんだけの怪我五日位じゃ治らないッスよ!?」

 

「実際治ったから良いんだよ。それより、お前らそろそろ時間いいのか?」

 

「え?…あっ!やべえもうすぐ集会だ!すんませんアビドスさん!これで失礼します!」

 

「失礼します!」

 

 頭を下げて、すぐさま二人は走り去っていく。この時間帯は毎日行われるスケバン達の集会があり、そこで今日の成果やら報告をするらしい。

 

 不法なゲヘナの不良集団であれど、統括するヤツは相当な統率力を持っているらしい。実際、あんな暴走機関共をまとめ上げて、その上面倒臭そうな報告なんかを毎日させるんだ、かなりの影響力があるんだろうな。

 

 さて、見回りの続きでもしますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…驚くほどいつも通りだな」

 

 あちこちで爆発や銃撃は聞こえるが、それはいつも通りだ。

 

 いつもより大きな爆発音も大規模な銃撃戦もない。スケバン共も俺を見ては頭を下げてくるし、今日の俺の仕事はただゲヘナを散歩するだけになりそうだ。

 

 そう思った矢先だった。

 

「…うん?」

 

 俺に向かってくる銃弾の音を微かに捉えた。

 

 神秘で強化した裏拳で後頭部を狙った銃弾を弾く。

 

 視線を向けると、丁度移動を開始したヘルメットを被ったヤツがいた。

 

 …今の、明らかに防がれるのを分かっててやったのか?移動が早すぎる。

 

 罠か、それとも誘導か…いずれにしても、俺に手ェ出したんだ、それ相応の覚悟はしてるってことだよなァ?

 

「よろしい、半死半生で許してやろう」

 

 脚に神秘を流し、一歩踏み込む。

 

 コンクリートが足を中心に陥没し、その反作用で俺の身体は前方へと押し出された。

 

 街路を猛スピードで走り抜き、犯人がいたビルまであと1ブロックの所で、

 

「うわっ!?」

 

 おっとすまん。

 

 心の中で謝罪をしながら急に横から出てきたスケバンを跳躍して避け、そのまま横の壁を蹴って上へ上へと登っていく。

 

 最早壁を走り登り、その壁からまた跳躍して件のビルの壁に着地してまた走り登る。

 

 登り切って屋上へと辿り着いたが、当然そこには誰もいない。

 

 ビルから周囲を見下ろしても、ビルから離れていく人の中にヘルメットを被ったヤツはいない。

 

 数分程見ていたが、終ぞ犯人を見つける事はなかった。

 

「…逃げられた、か。飛び降りて逃げたならともかく、営業中のビルの中を通って逃げられたっつー事は…」

 

 結局、誘導や罠では無かったということか。しかし、じゃあなんであんな事をしたのかが分からない。

 

 次の襲撃に向けての事前準備なのか、それとも他の目的なのか…まぁいい。

 

 どっちにせよ、俺に掛かってくるのなら悉くを薙ぎ倒すまで。

 

「次に会った時はそのヘルメットごと粉々にしてやるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、日も暮れてきた事だ、そろそろ家に帰るとしよう。

 

 結局賞金首は見つからず仕舞いな上に突然の狙撃によって不完全燃焼だ。気にするのも面倒臭いし、早く帰って寝て忘れよう。

 

「あっ!まだいた!アビドスさん!」

 

「ん?」

 

 今日聞いた声だな?

 

 そう思って振り返ると、そこには何やら顔面がボコボコに腫れ上がったスケバンを片手に引き摺りながら、朝の黒髪のポニテの方のスケバンがニッコニコで走ってきた。

 

「おう、どした」

 

「いやッスね?集会が終わっていつも通りダチと駄弁りながら歩いてたんスけど、なんか急にコイツがぶつかってきたんスよ」

 

 顔面ボコボコ女を突き出す。

 

「ほう、んで?」

 

「イラついたんで胸倉掴んで強請ったら、なんか急にコイツが「魔王から逃げてんのに邪魔すんな!見つかったらどうする!」とか言ってたんでとりあえずノしてアビドスさんに引き渡そうと思ったんス」

 

「あー…ソイツの武器はなんだった?」

 

「なんか上等なSL持ってたッスよ。それも持ってきてるッス」

 

 …コイツじゃねえか、さっきのヤツ。

 

「なるほどな。確かに俺はソイツに襲われた。逃げられたままだったから助かったぜ。次見つけたら粉々にしようと思ってたが…見つけられただけでも良しとするぜ、ソイツはその辺に捨てときな」

 

「マジッスか。コイツも命知らずッスね」

 

 そう言ってスケバンは顔面ボコボコ女を道端に放り投げて、「コイツは貰っとくぞ」と言って代わりの安物の拳銃を雑に投げて上等なSLを奪った。

 

 俺も俺で鬼畜とは自覚しているが、コイツもコイツで中々の鬼畜だな。

 

「お前ソレ使えんのか?」

 

「いや、普通に高そうなんで売るッス。最近上納金が値上がりして金欠なんスよねー」

 

「ほーん。…そうだな、今回は一応お前に助けられたわけだしよ、今日はなんか奢ってやるよ」

 

「マジっスか!?よっしゃ!」

 

「あのお友達は呼ばなくていいのか?」

 

「呼んでもいいんスか!?じゃあすぐそこにいるんですぐに呼んでくるッス!」

 

 「おーい!」と叫びながら走っていくスケバン。ポニテが凄く荒ぶっていらっしゃる。

 

 さて、一応財布は持っているが…幾らあったかな。

 

 ひーふーみーよー……こんだけありゃ焼肉行っても余るか。

 

 うーん、さっきまで寿司の気分だったが焼肉思い出したら焼肉食いたくなってきたな。ゲヘナの焼肉屋っつーと…あぁ、あっこにあったな。

 

 食べ放題プランで思いっきり食いてえな、一番上のプランを三人分頼むとして…席を分けて食うか。多分俺の肉で網埋まるし。

 

 そうと決まりゃさっさと行くか。

 

「お待たせしたッス!」

 

「はぁ、はぁ、お前、早すぎ…」

 

「うし、んじゃ肉食い行くぞ。食べ放題頼むから思いっきり食え」

 

「いいんスか!?」

 

「え?なに奢ってもらえんの?マジッスか?」

 

「お前説明してなかったのか」

 

「待ちきれなかったんスよ!コイツマジで遅えんス!」

 

「報連相くらいしろや!」

 

「不良に社会人の常識求めんなや!」

 

「いや社会人としてより人としての常識だろ」

 

 

 ※この後一番高い食べ放題プランを奢ってもらえて喜んでいた二人ですが、一人で三十人分を平らげて店からオーダーストップを掛けられたアスカを見て軽くドン引きしたらしいです。でももっと憧れた。

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