非日常的で日常的な青春の記録を刻む物語   作:よるくろ

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砂被りの銀狼

 

 

 

「ほら、早く行くよーアスカ。後輩ちゃんが待ってるんだから」

 

「まーてよ、こちとら徹夜明けなんだよ…」

 

 アビドス高校への通学路で、口調の柔らかいホシノと徹夜明けの俺が急ぎ足で学校へと向かう。

 

 昨日丸一日で終わった依頼は無事成功したのはしたが、依頼の都合上丸一日掛かった挙句に連続戦闘、その上終わったのが朝の五時とかいう寝るに寝れねえ時間に終わりやがったせいで、俺は昨日から一睡もすることなく学校へ向かっている。

 

 途中で合流したホシノに急かされ、学校へ向かう中、俺はホシノに質問した。

 

「んで、その後輩ちゃんはお前のお眼鏡に叶ってんのか?」

 

「んー、まだ完全に信用したって訳じゃないけど…そうだね、良い子だよ」

 

「ふぅん、まぁどっちにしろ、俺はお前の意見に従うだけだ。そういうのは俺に向いてねえからな」

 

「なんで?私よりも頭がいいのに?」

 

「そいつが悪い奴だろうが、俺なら力で言う事聞かせるだけだから」

 

「あぁ…」

 

 ホシノが納得したような声色で声を漏らす。なんだァ?テメェ。

 

「それに、だ」

 

「?」

 

「お前が良い子って言うなら、なんも心配はいらねえだろーよ」

 

「ありゃ…嬉しいねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして!十六夜ノノミですっ!」

 

 ベージュのロングヘアが全部真下に垂れるほどのお辞儀を挟んで、目の前のお嬢様は自己紹介をした。

 

 なるほど、第一印象的には確かに善人だ。

 

「おう、俺ァ東雲アスカ。よろしく」

 

「ちょっとー、簡潔すぎじゃない?」

 

「そうか?つっても後輩に何話せばいいんだよ」

 

「もっとこう…趣味とか特技とか?」

 

「賞金稼ぎしかねえんだが」

 

「もっとあるでしょー。例えば…例えば…」

 

「つーわけで無い。まぁ、お前がここに居続けるなら可能な限り助けてやるよ。改めてよろしく」

 

「あはは…はい!よろしくお願いします!」

 

 にしても…何がとは言わんがデカいな。パイセンと張れるかもしれん。いや今も張ってるが…つまんねー事思っちまった、自戒自戒。

 

 助けるっつっても、何も無いところで何を助けりゃ良いんだって話だけどな。勉強もホシノがいるし、ヘルメット団もホシノがいりゃ余裕で対処できる。それに加えて…。

 

「…」

 

「?」

 

 壁に立て掛けてあるM134ミニガン。名前を「リトルマシンガンⅤ」というらしい。何がⅤなのかは知らんが、本体だけで約18kg以上、更に弾薬や駆動用のバッテリーも含めると一気に100kg以上を上回る重量のそれを持ち運ぶ事を踏まえれば、こいつの類力はそこらのやつよりは遥かに上であるとわかる。

 

 それにミニガンという武器な以上、殲滅に向いている為ヘルメット団を迎撃するときには十分活躍する事だろう。

 

 …あれ、俺何もする事ねえな、こいつに対して。

 

「なぁホシノ」

 

「なぁに?アスカ」

 

 小声でホシノに呼びかける。

 

「今思ったんだがよ、勉強も襲撃もお前一人とコイツだけで一年間持たせられるんじゃねえのか?」

 

「それは…うん、恐らくね」

 

「つーことはよ、言い方は悪いがぶっちゃけ俺は用済みだろ?」

 

「そんなことはっ…ない…と思う、けど」

 

「いや、そういうんじゃなくてよ、賞金稼ぎとか依頼の仕事をもっと熟す為に学校にくる日数減らそうと思ってんだよ」

 

「…別に、借金についてだったらもう充分貯まってるんじゃない?学校の隠蔽してる口座に一年半位の利子払える分は入れてるんでしょ?」

 

「借金もそうだが、一番の目的は弾薬費を始めとした武器周りの消耗品の充実化だ。仮にまた生徒数が増える場合、ポピュラーな武器がMG系の銃な以上一番掛かるのは弾薬費だろ?」

 

「…なるほど、そっかー、それがあったかー」

 

「ただでさえ今年に入って襲撃が幾分か増したんだ、消耗が激しいのならこっちも補充を早めるしかない。つーわけで今の提案なんだが、いいか?会長」

 

「…うん、いいよ。ただ、そっちにかまけて後輩とのコミュニケーションを怠ったらキレ散らかすからね」

 

「えぇ?」

 

 んな理不尽な…ってこともないか。

 

「まぁ最初のうちは一日二日伸ばしたりする程度だ。そっからしばらくして一週間とか、最悪一ヶ月とか時間を貰うかもしれんが。…あ、そういや家の管理もしねえと、つっても場所が場所だしな…」

 

「…そういえばアスカの家ってどこにあるのさ。方角的には私と同じだけど、朝全然会わないよね?」

 

「あー…ミレニアムの近く…?うん、近くだな」

 

「え、遠くない?…っと、そろそろ内緒話はやめよっか。ノノミちゃんが拗ねそうだし」

 

 言われてノノミの方を見れば、なにか膨れっ面になっている。どうやら少し話し過ぎたみたいだな。

 

「おっと、すまん。えー、そうだな。今のは今後の予定について話してた。別に隠すことでもないから聞いてくれても良いぞ」

 

「じゃあ、一つよろしいでしょうか」

 

「おう、いいぞ」

 

「先輩方って付き合ってるんですか?

 

「…あん?」

 

 付き合ってるって…あれか、男女交際の話か?妙な事を聞くもんだな。

 

「別に付き合ってな___」

 

「だ、だッ、誰がこんな性悪で怪力馬鹿と付き合うんですかッッ!」

 

「うーっさ」

 

 毎度毎度鼓膜爆発するかと思ったわ。なんやねんいきなり。

 

「のののノノミちゃんっ。いきなり変なこと聞くもんじゃないと思うなっ!」

 

「あれ、ホシノ先輩って敬語が素なんですか?」

 

「おだまりっ!しばき回しますわよォ!」

 

「おいホシノ、何焦ってるかは知らんが流石にキャラブレブレ過ぎるだろ」

 

「ななな何言ってるかわかんないなー。何?おじさんのどこが焦ってるって言うんだい?ちょっと聞かせて欲しいなオラ聞きたいなら表出て拳で語ってあげるから早く出ろや」

 

「落ち着け雑魚チビ。後輩の前ではしたないだろ」

 

「はっ、いけないいけない。いやーおじさんも歳だねぇ、まさかこんな事で取り乱すなん今雑魚チビっつったかテメェ

 

「ブチギレで草」

 

「ふ…ふふふっ」

 

「お?」

「ん?」

 

「ふふっ…いえ、とても仲がいいのですね」

 

 その言葉に、俺たちは顔を見合わせた。

 

「そりゃ、まぁ」

 

「一年間ほぼ毎日合わせてる顔だしねぇ」

 

「親の顔より見た気がする」

 

「親の顔もっと見てあげなよ」

 

「ふっ、ふふふふふふふっ」

 

 もっと楽しげに笑うノノミに、俺たちは笑い合う。

 

 もうわかりきった事だった。

 

 この子(ノノミ)は悪いのではないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は飛んで数日。

 

 二つ程依頼を終え、余った時間に賞金首をぶちのめした俺は、余過剰分の金をどう使うべきか悩んだ末に、たまには同級生と後輩を巻き込んでショッピングにでも連れて行ってやるかと思い、ホシノとノノミの二人を誘ってモールへと出掛けた。

 

 女の買い物は長い事は知っていた為、その覚悟だけをしておいてあとは文句も言わずに二人の荷物持ちやら服屋で人形ごっこの被験体なんかもした。でもやっぱ覚悟していたとは言え平気で一つの店で二時間も使うとは思わなんだ。

 

 で、今はその帰り道。俺の金で買った商品を俺に持たせて、二人は前で会話に華を咲かせている。

 

「いやー、最近必要なものがなくて行ってないからあれだったけど、行ったら行ったで買いたいものが沢山あったねぇ」

 

「そうですね、新しいお洋服もいっぱい買っちゃいましたし、もっとお洒落が出来そうです♪アスカ先輩、今日はありがとうございます♪」

 

「気にすんな、ちょっとした臨時収入だから何に使おうか迷ってたとこだったからな。仲間の為に使うのも悪くねえ」

 

「うへ、嬉しいこと言ってくれんじゃんー?」

 

「うっせ。…んで、それより、だ」

 

「…うん、いるね」

 

「…?」

 

「ノノミ、一応銃抜いとけ。相手は一人だが、ちっと強え」

 

「! はい!」

 

 その返事に、バレたことに気付いたのか砂を撒き散らして現れた襲撃者。

 

 砂のヴェールで身を隠しているうちに接近してくるそいつはまっすぐ俺の方に向かってくる。

 

「はいダメー」

 

「っぐ!?」

 

 しかし俺の側に近づく事すらなく、そいつはホシノのシールドによって弾き飛ばされる。

 

 そのまま流れるように拘束に持ち込んだホシノ。相手は踠くが、アビドス、いやキヴォトスでも最強に近い実力を持つホシノの膂力はそう簡単に引き剥がせるものじゃない。

 

 少し経って、襲撃者…いや、その少女は、まるで狼のように威嚇をしている。

 

「ぐるる…!!」

 

「はいはーい、落ち着いてー。このまま離すから、どうか暴れないでねー」

 

 ホシノがそっと離れると、少女はバッと起き上がってこちらを見据える。

 

「お名前は?」

 

「…砂狼、シロコ」

 

「所属の学園と、学年は?」

 

「…わからない」

 

「…どういうことでしょう?」

 

「わかんない。ねぇ、わからないって?」

 

「…三日前に目覚めてからの記憶しか、ない。それ以前の記憶が…思い出せない」

 

「これって…」

 

「記憶喪失、だな」

 

 やはり、原作が大きく変わろうとこの出会いは原作のままか。

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