アビドスに到着した。
ここに来るまでの道中の記憶が薄い気がする。そらそうか、誰にも絡まれる事なく、一応目立たないように路地裏とか地下を経由して偶に見えるミレニアムの地図見てアビドスの方角を確認しながら隠密してただけだし。ネームドにも出会わんどころか見もすらできんかったわ。
つーか本当に何も無いところやね。住宅街とか人の住んでいた形跡はあれど、ほぼ全部砂に埋まっている。終末世界ってこんな感じなんかな。
「うっぷ」
か、顔が砂にっ。違う砂が顔にっ。ぺっぺ!
クソ、こん中から地図無しでユメパイセンやらビナーやらアビドス高校を探さにゃならんのか。きっつ。
あっさり見つかってもーた。*1
え、何あれ。あれは…ヘルメット団か?ヘルメット被ってるしそうだろ。
んでそのヘルメット団の死体*2の山の上で、盾と銃を両手に構えたユメパイセンがいる。なんか顔にシャドウ入ってて覚醒した主人公みたいな風格出してんだけど、あれ声掛けてええんかな。
…いいや、パイセンの存在確認できたし。つまり今は最低でも原作の二年前って事だ。それが確認できただけでも僥倖僥倖。
さて、やる事は済んだし、住処に帰って修行だ修行。
ユメパイセンから視線を外し、くるりと踵を返す。
___ガタンッ!
「おろ?」
足先に僅かな衝撃。そして前方に飛んでいく錆だらけのなんらかの容器。多分ペンキかなんか。
結構大きな音したな今。そう他人事のようにカラカラと転がるペンキを眺めていると…。
「ごめんね」
「ッ!?」
ドパンッッ!!!
咄嗟に頭を下げた。
ド派手な音を立てて放たれた銃弾は俺の上を通り、先で転がるペンキ缶を粉々に粉砕した。
「あれ?外しちゃった」
外しちゃったじゃあらへんがなお前!?躊躇なく頭とか殺す気か!?
「危ねえだろ!」
「だって、君達はすぐに人を騙すから。そうやってヘルメットを被らないで無関係装うとしてるんだろうけど、私には通用しないよ」
「俺はヘルメット団じゃ…!」
「話は後で聞くね」
ドパンッ!
至近距離で素早くこちらを向いた銃口から放つ弾丸を首を逸らす事で避け、煙を上げる銃口を掴む。
「待て、お前は確実に思い違いをしている!」
「関係ないよ。それより、手、離してくれないかな…っ!」
振り払われる俺の手。くっそ、なんつー力だ!
攻撃せずに受け流しと回避だけで戦っていたが、盾と銃で繰り広げられる接近と中距離の戦闘が本当に上手い。真正面に立てばショットガンか盾の突進で距離を詰められ、盾を持っている方向や背後を取ったら取ったでノールックでショットガンでの牽制が来るし、マジで隙がない。
まるでマシンガンのようにショットガンを放ってくるユメパイセンの形相はさながら修羅の如く。つーかリロードクッソ早いな!リロードのワンアクションが一秒以内で終わるってどんな早業だよ!
「もー!良い加減当たってくれないかな!そろそろ銃弾が尽きそうなんだけど!」
「当たってたまるか!俺ァあのヘルメットと違うっつってんだろ!」
「信じない信じない!これまでどれだけ貴方達に騙し討ちされたと思ってるの!」
「だからそれは俺には関係無いと…!」
言ってんだろ!
神秘を拳に、一点集中!
向こうも俺が仕掛けてくると思ったのか、ショットガンを後ろに回し盾を押し出してくる。
それだけで…防げると思ったかッ!
「『黒…閃』ッ!!!」
ガッコォンッッ!!!
盾に拳が衝突した瞬間、黒い火花が咲き迸った。
ハッハァ!原作で言う通りノリとテンションでなんか出たぜ!*3*4
「っきゃあ!!?」
俺の拳を待ち構えていた盾は吹き飛ばされ、ユメパイセンは少し吹き飛びながら尻餅をついた。
手に残っているのはショットガンだけだが、どういうわけかユメパイセンは抵抗する素振りを見せずに俺を見上げている。
「…はぁ、これで終わりか?なら俺の話を聞いて欲しいんだが」
「う、うん」
「何回も言うが、俺ァヘルメット団じゃねぇ。ここにいるのは戦闘音が聞こえて来たから気になって隠れて来ただけだ。本当なら、隠れた名店っつー『柴関ラーメン』に行く予定だったんだがよ。迷っているうちにこんなとこに来てしまったっつーわけだ。分かったかおいコラ」
言い過ぎだって?いや初対面で言葉を交わさずに、ましてやショットガンとか攻撃力ヤバめな銃を迷いなく顔面にぶっ放して来やがったのにこれだけで済んでるだけありがたいと思って欲しいわ。
あ、やべ、ユメパイセン泣いてんじゃん。半泣きじゃん。ごめんね?ちょっと気が悪かったね?
「ご、ごめんなさぁい!わ、私、新入生を拉致したって言われて、それで…!」
「…つまりあれか、新入生を拉致したって言われて来てみたら、その新入生も元からいないただのヘルメット団だったってわけか」
え?コイツら普通にクズくね?
思わず死体の山*5を見る。原作よりゲスな行動とってるんだけど、やべえなコイツら。
「騙されちゃうし無関係の人巻き込んじゃうし、今日は散々だよぉ…」
ま、まぁ落ち着いたようだし、俺はこのままおさらばしようかね。
「じゃ、俺ァ行く。またな」
「え…あ!ま、待って!」
「おん?」
なんだ急に騒々しいな。
「柴関に行くんだよね!迷ってたって言ってたよね!じゃ、じゃあさ、私が案内してあげようか!?お詫びも兼ねて奢るからさ!」
「え、えぇ?」
いや、俺本当は柴関に用ないんだけど…あー、いや、ちょっと腹減って来たかもなぁ。パイセンもこう言ってるし…じゃあ…。
「…分かった。正直俺もこの鬱憤をどう晴らそうかと思ってたし、お前の財布をすっからかんにしてやろうか」
「ウェッ?!え、えーと…お手柔らかに…お願いします…!」
やなこった。
まぁホシおじのパイセンやしこれくらいは強いやろ(小並感)