非日常的で日常的な青春の記録を刻む物語   作:よるくろ

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勧誘

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へいお待ちっ!」

 

 ドンッ!

 

 勢いのある御決まりの掛け声と共に、俺の目の前に置かれた一杯のラーメン。

 

 待ってましたと言わんばかりに俺はすぐさま割り箸を割り、片手で器を掴んで器の中へ一気に箸を突っ込んだ。

 

 掴み取る麺。絡み付く黄金のスープが滝のように流れ落ち、俺は全て流れ落ちる前にそれを口へと含んだ。

 

 ズルルッ!

 

「…美味いッ!」

 

 ラーメンっつったら王道の豚骨!見た目からして後味ありまくりの脂っこさを想像してしたが、全然そんなことはなかった!

 

 油で口と喉を滑りやがる癖に、濃厚な豚骨の味とぶってぇ麺の噛み応えが半端なく味覚を刺激しやがる!そのくせ後味が全然無い!箸が止まらねえ!

 

「替え玉一丁ッ!」

 

「あいよぉ!」

 

 注文する時地味に勇気がいる替え玉!せずにはいられないッ!まだ俺の腹は満ち足りていないんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃん…財布がすっからかんだよぉ…」

 

「ご馳走様でした」

 

 俺の食いっぷりを隣の席で見ていたユメパイセンは食欲が失せたらしい。その上俺が替え玉をしまくるもんだからどんどん加算されていく料金を見て青ざめていた。草。

 

 それにしても、原作通り柴大将は良い人*1だったな。食いっぷりも褒めてくれたし、「沢山食べてくれたお礼に次は替え玉三玉はサービスしてやるよ!」ってサービス券*2くれたし。

 

 俺この世界に来て最初に食った飯柴大将のラーメンで良かったよ。

 

「はぁ〜………あっ!そういえば、自己紹介してなかったよね!?」

 

「ん?いや、してるぞ。花子さんだろ?」

 

「誰っ!違うよ!?私の名前は梔子くちなしユメ!アビドス高等学校の二年生だよ!」

 

「年上だったのか。俺は東雲アスカ*3来年から高校生だけど未だ所属高校すら決めてないプー太郎だ」

 

「え!?年下だったの!?」

 

 というか今驚きの事実が発覚したぞ?マジ?ホシおじまだ入学してねえの?

 

 え、だってホシおじが入学する時期って、ユメパイセンが三年生の時だろ?じゃあ今まだ入学してないやんな。マジか。

 

 ってかあれ、俺今自分の年齢分かってないはずなのにサラッと年齢言ったけど大丈夫か?…いや、合ってるな。恐らく女神様が神秘やらの記憶と一緒に俺の肉体の記憶も入れといてくれたんだろ。ありがてー。

 

「てっきり大人びてるから三年生かと…」

 

「ところがどっこいって奴だな。さて、腹は…まぁまぁ膨れた事だし、俺ァ今度こそ帰るとするぜ」

 

「あ、待って待って!最後に良いかな!」

 

 なんだよ!何回呼び止めんねん!

 

「こ、これ!良かったら受け取って!」

 

「…これは?」

 

 明らかに手書きのそれを二枚渡されて、俺は戸惑う。だって、その紙に書かれているのは…。

 

()()()()()()()()()()()()()と、()()()()!行きたい高校が無かったら、ウチに入ってくれると嬉しいかなって!」

 

 マジ?なんか勧誘されちゃったんですけど。

 

「じゃあね!また会おうね!」

 

 あ、行っちゃった。

 

 えぇー、どうしよ。まさか勧誘されるとは微塵も思ってなかったわ。

 

 入っても良いんだろうけど、なぁ。嫌な訳じゃないが、原作のストーリーとかを考えると、入っといた方が良い学校なんかもあるわけで。

 

 パヴァーヌ編とか調印式とか、そこらへんの事考えるとミレニアムとかトリニティに入りたいし、欲を言うなら連邦生徒会に入って全面的な先生へのサポートをしたい。

 

 しかし原作には生徒会への入り方の描写は無かった。俺が見逃しているだけかもしれないが、対して情報のない現在では出来ることが少ない。本格的に動けるとしたら、ある程度情報の揃っている来年からだ。

 

 難しいな。ハッピーエンドへの道は。ゲームだと物語を追うだけでハッピーエンドだっつのに、現実となるとこんなにも難しくなっちまう。

 

 …そもそも俺ァ何の為にこの世界選んだんだったか。

 

 あぁ、思い出した。

 

 知っていた先の苦しい展開を気にしすぎて、いつのまにか本来の目的を忘れていたな。

 

 思いついた事全部を力一杯やってバカをする。悔いのない青春をハッピーエンドのその先へ、命の限り送り続ける。そんな人生を。

 

 思わずパンフレットと入学届けをじっと見つめる。

 

 手書きで苦し紛れ染みたアビドスの良い所が書かれたそのパンフレットを眺めて、思わず笑みが浮かぶ。

 

「砂に塗れた青春も、悪くない」

 

 2枚の紙を大事に折りたたみ、懐に入れる。

 

 さて、今度こそ住処に帰ろう。

 

 そして来年に備えて、目一杯鍛えまくろう。

 

 来年にはどうせ、()()()と戦うことになるんだからな。

 

 

 

 

 

*1
人ではない

*2
多分手書き。字が上手い

*3
四話目で主人公の名前発覚ってマジ?







 ※アスカ君は替え玉だけでなくサイドメニューを鬼ほど頼みました。(完食)
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