見えない弾丸を、直感で避ける。
銃口の向き、微かに見えるトリガーに引っ掛けた指の動き、弾数を数えてから覚えたリロードの間隔。それら全てを覚えれば、後の動きは直感で殆ど避けることができる。*1まぁ、まぐれ避けとも言うが。
俺と距離をとって戦うアイツは、確実に俺を近づけさせない軌道で弾丸を放っている。
疲弊が目的か、それとも別の何かを待つための時間稼ぎか…しかし、それを待つほど俺ァ気が遅くねぇんだ。
「フンッ!」
バチッ!
距離感を一定にして弾丸を避け続けた事で、大体の
そして今更分かったことだが、コイツのハンドガンは速い弾を打つ物じゃねえ。文字通り、不可視の弾丸を放つ物だ。
原理や仕組みなんぞ分からん。そもそもヘイローや神秘なんてもんがある時点で、こんなファンタスティックな能力になんて説明なんぞつける方が無粋ってもんだ。
あの銃は透明な銃弾を放てる。それだけで良い。
さて、弾速は読め、銃弾は素手で弾け落とせるようになった。
後は近づきゃ勝ちだなァ!?
バチッ!バチッ!
続けざまに放ってくる不可視の弾丸を弾き、無銘の兵へと前進する。
そしてやがて踏み込めば拳が届く場所にまで辿り着いた俺は、神秘を拳に集めた。
「コイツで…終わりだッ!」
振りかぶられる拳。
銃を構えたまま微動だにしない無銘の兵に、俺は確実に勝利を確信した。
次の瞬間。
___ガコンッ!
俺の視界は一瞬にして天井を向いていた。
「…あ?…っ」
そして顎に走る痛み。
無銘の兵に目を向けると、そこには膝を上げたままのソイツがいた。
あの距離間で、あの一瞬で膝蹴りを俺に喰らわしやがったのか…!
体制を立て直し、後ろに擦りながら着地する。
コイツ、武器だけじゃなく体術まであんのか。
益々俺用に作られた兵器って訳だなァ?
もう一度超速で近づき、拳を繰り出す。
すると今度は片手で受け流し、無防備な所を銃床で殴りつけてくる。
俺は片手で防ぎ、右脚を軸に無理やり左脚で突き刺すような蹴りを放つ。
上半身だけを逸らすように避けられ距離を取られた。次の瞬間に放たれる不可視の弾丸。
クソ、めんどくせえなァ!
今の所、アイツがやってんのは俺の攻撃に対しての
この事に初手で気付けたのは運が良い。そんなら対処なんざ幾らでも取れる。
「___ラァッ!」
弾丸を避け、姿勢を地面と平行に限りなく近くさせて、超低空飛行を跳躍によって可能にさせる。
この接近はデータにないのか、二、三発近くは外していた。やっぱ、俺の今までの戦闘データに基づいて動きの最適解を常にインプットしてんのか。つまり、俺が今までやったことないような動きをすりゃ、もしかしたらバグるんじゃねえのか?
既に接近を終えた俺はそんなことを考えながら、足を思いっきり振り上げて地面へと踏み込んだ。
砕け散るコンクリートの地面。体制を崩された無銘の兵は、苦し紛れの発砲を行うが、全て俺から外れる。
今まで俺がコイツらにやって来たのは、ただただ近づいて殴る蹴るしただけ。だからコイツは俺の拳やら蹴りには体制を崩されようが対応できる。
だったら、拳や蹴りでない攻撃をすれば良い。
ここ十ヶ月間の間で発生した、計17発の『黒閃』*2を経て、漸く可能にした新たな攻撃。
神秘を拳に込め…それを
「『
刹那___音も光もない不可視の衝撃波が無銘の兵を襲った。
『ギギ』
体制を崩された無銘の兵が、そんな未知の攻撃に対応できるはずもなくそれは直撃。
俺の攻撃を受け止めはしなかったものの、受け流しさえできた装甲を剥がし、その上攻撃範囲内のコンクリの地面さえ捲りながら吹き飛び、この空間の壁際にまで吹き飛んでいった。
かく言う俺も反動で吹っ飛んでいるが。
「ちっと調整ミスったが…いいね、充分
立ち上がり着物の裾や袖を叩き、土埃を払い落とす。
向こうの土埃も晴れて来て…手足があらぬ方向に曲がりまくった無銘の兵がいた。
「すまんね、無銘の兵。ここを守りたかったろうに、俺のエゴでここを破壊することになっちまって。でも、これは未来への投資、未来への布石なんだ。俺が望むハッピーエンドへのな」
無銘の兵に向かって足を進める。
もう一度、拳に神秘を込める。
『ギ…ギギ…』
「また会ったら、今度は一緒に戦ってみたいな。…じゃあな、中々楽しめたぜ」
無銘の兵の前に立ち、拳を頭へと振り下ろした。
『…未…来……』
ガシャァンッ!!!
潰れる頭。弾け飛ぶ部品。
無銘の兵と呼ばれたオートマタは、俺の手で稼働を停止した。
…中々。じゃなかったな。
人生で一番、楽しめたぜ。
記念として、俺は無銘の兵の部品の一部を拾う。
もうすぐ俺は、ここを潰すからな。こいつの弔いも兼ねて、この空間を瓦礫で埋め尽くす。
最初に落ちて来た穴の下に辿り着き、俺はまた拳に神秘を込める。
今度はさっきの比じゃない、全力の神秘を。
___ゆら…
本気で込めた神秘は肉眼で目視できるほどに濃密で、空間を歪ませていた。
まだ、まだ込める。神秘の纏と圧縮を繰り返して、まだ俺の拳に神秘を込め続ける。
…うし、これで良いか。
「これが今俺に可能な、最大の一撃だ」
段々と黒く歪む俺の神秘を___。
「未来への礎となってくれ」
___放出した。
※無事に生還しています。