New world note in Earth 作:YUKANE
今作は「New Japan Fleet」の続編になります。前作から大幅に作風が変わりますが、前作を読んだことがある人も新しく来た人もどうぞ読んでいってください。
1話という事なので一応前作のリンクを貼っておきます。
https://syosetu.org/novel/210834/
2025年11月29日:本文の一節を訂正
Episode.0 星は繋がる
太陽系で唯一生命が存在している蒼き星 地球。地球最大の大陸 ユーラシア大陸の東に、幾つもの島で構成された日本列島は位置していた。
列島の中で一番大きく細長い島 本州の中央部に、日本の首都が1000年も置かれた古都 京都があり、そこから山を幾つも越えた先に京都府最大の港町と日本海最大規模の軍港である 舞鶴があった。
縄文時代から人々が住み始めた土地で、明治時代からは軍港として発展したこの都市には今でも海上自衛隊の基地が存在しており、コンクリートで造られた埠頭には第2機動部隊や第14護衛隊の護衛艦が複数隻泊まっていた。
泊まっている艦は全て灰色を纏っているが、その中でも航空機を運用する為に平らな飛行甲板と数階建てのアイランド式艦橋を持った海上自衛隊初の航空母艦で、第2機動部隊旗艦を務める「DDH-185 あまぎ」は静まり返った舞鶴の町並みに混ざりつつも強い存在感を持っていた。
第2機動部隊には
2基の蒸気カタパルトと
「長瀬
「寝る前に艦内を見回っていて、その途中で寄っただけだ。何の問題もないか?」
「えぇ、何も変わりありません。」
「そうか。何も無いなら良かった。」
艦長がここに来た理由を知った照山の返事に答えた長瀬は、不意に艦橋の窓から月が見えない黒い空を眺めた。
「1年前のあの時も空は変わらなかったな。」
「"1年前のあの時"というと、朱雀戦争ですか?」
長瀬が零した独り言に照山が反応した。2024年2月24日。日本海の大和堆 北50kmに位置する朱雀列島に突如としてシベリア社会主義連邦ことシ連が上陸して、列島全体を占領した。
この事態に日本政府は初となる防衛出動を宣言して自衛隊に出撃命令を出したが、シ連に対する抑止力として機能していた第2機動部隊は対潜水艦戦を皮切りに、戦闘機同士の航空戦・対地攻撃・シ連海軍太平洋艦隊への飽和攻撃といった戦闘を僅か2日の間に繰り広げた。
第2機動部隊の奮戦や朱雀列島への陸自上陸・中国の裏切りもあって、2日後には日本の勝利で戦闘は終結した。
「自衛隊初の実戦。あれを気に俺達も日本も変わったよな。」
「朱雀戦争をきっかけに世界の勢力図も変わった······いや、変わりすぎましたね。」
朱雀戦争によって空母1隻を含む海軍艦艇や陸上・航空戦力を大幅に失う大敗を喫したシ連の国内各地では、戦闘終結直後から兵士の反乱や暴動が次々を起きた。元々シ連に対する不満が蓄積されていた国民と兵士は、日本への大敗を気にシ連へと反旗を翻した。
国内での反乱多発をきっかけに、ウラル山脈を国境として対峙していたロシアから多くの航空機や陸上部隊が次々とシ連国内へと侵入していき、兵士すらも裏切られたシ連の崩壊は間近に迫っているかに見えたが、シ連と講和会議を望んでいた日本の要望に応えた国連の介入によって無慈悲にも伸ばされる事になった。
大韓民国の首都 ソウルで開催された日本とシ連の講和会議 "ソウル会談"で、中国やロシアの後押しを受けた日本側に屈服したシ連は北方領土の返却や多額の賠償金支払いを認めるしか無かった上に、崩壊前に賠償金を貰いたい日本や直ぐ様シ連へと侵攻したいロシアと中国の圧力によって賠償金を直ぐに全額払わざる負えなかった。
日本への賠償金支払いが完了した旨が伝えられると、間もなくしてロシアが侵攻を再開した上に、朱雀戦争時に裏切りを表明した中国も陸軍部隊や各種航空機をシ連領内へと送り込んだ。
シ連領内へと侵攻したロシアと中国は反乱した兵士や民衆を味方につけた事で、予想よりも順調に進軍を進めた。
シ連の最高指導者である書記長だったレジェーブ・レフトスは、首都が置かれていたイルクーツクから密かに逃亡した後に消息不明となっているが、中国側がシ連の建国者であり初代書記長であったアスーラ・チェイコフを確保出来た事から、シ連を建国した彼によってシ連の解体は宣言された。
戦闘終了後に戦勝国となったロシアと中国の間で
領土割譲や資源採掘権といった観点で揉める事が予測されたが、予測に反して領土は全てロシアへと編入して、旧シ連領内の資源採掘権やウラジオストク港の利用権を中国が確保する形であっさり終了した。
本来の領土を取り戻したロシアは朱雀戦争やシ連崩壊時で荒廃した都市や農地・港を直す事に尽力しているが、それらが復興すればシ連に代わる北の脅威になると、鈴村総理率いる日本政府は判断していた。
朱雀戦争勝利の立役者となった第2機動部隊は牽制相手がシ連からロシアに変わっただけで、日本の国防で重要な役割を担っている事に変わりなかった。
「まさかあの大国が、あんなに脆く崩れるとは思っていなかったな······正しく歴史の教科書に乗る出来事を目の当たりにしてたよ。」
「世界情勢も変わりましたが、この第2機動部隊も大きく変わりましたね。」
返事を返す照山は、この1年の間で役割が大きく変わった人物の1人 長瀬を向いていた。
朱雀戦争で実質的に艦隊を率いた「あまぎ」艦長の桐島龍樹は、戦争半年後に自衛艦隊司令部へと自らの意志で異動した為に副艦長だった長瀬が繰り上げで艦長になり、空いた副艦長の座に照山が転入していた。
「あまぎ」以外にも第2機動部隊に所属した艦の艦長は、朱雀戦争で得た経験を他の部隊にも広めるべく、半数以上が入れ替わっていた。
また艦長以外にも多くの人事が変わっており、朱雀戦争時から在籍する隊員の方が少ないとまで言われていた。
「この艦隊の役割も世界情勢も艦内の顔ぶれ·····これじゃあかきかま変わっていない物の方が少ないな。
全く·······数年前の自分にこんな事が起きると言っても絶対に信じるわけ無いな。」
「そりゃあ誰も信じませんよ。神が言ったら信じるかもしれませんが、そもそも神なんて居るかどうか。」
照山がそう言い切ると艦橋内に笑い声が起きる。長瀬も笑っていたがふと左手の腕時計を見ると、長針と短針のどちらもが0の文字へと差し掛かっていた。
「そろそろ日付が変わるな、それじゃあ後は頼む。俺はそろそろ休むことにする。」
腕時計を見た長瀬が艦橋を去ろうとした足を踏み出した瞬間、その声は聞こえてきた。
『Th3jhygGんbh51khgCtfぶっgyT』
「な、なんだこれは!?」
唐突に聴こえてきた声に長瀬は足を止めて周囲を見回し出す。長瀬と同じく声が聞こえた照山ら
聴こえた声は女性の物だと直ぐに分かったが、誰が・何処から・何を話しているかといったそれ以外の全てが理解出来ていなかった。
「な、なんだこの声····」
「一体何を言ってるんだ·······」
「どこから聞こえてんだこれ······」
艦橋にいる全員がこの声に戸惑っている中、先程の解読不能な声が再び聴こえてきた。
『RynkgmjAyげHf41jhRgkjrFrgd5-jyt』
2回目の声が途切れた瞬間、墨で塗り潰された様に黒く染まっていた空に轟音を立てながら亀裂が入った。空に広がった亀裂の隙間からは紅い光が漏れ、停泊中の護衛艦隊や疎らになっていた明かりが再度付き始めた舞鶴の町・揺らぐ海面を不気味に照らし出した。
自分たちの常識を軽々とぶち壊すかのような光景を目の当たりにした長瀬らや、航空甲板にいた隊員達は言葉を発さずにただただ見つめるしか出来なかった。
『Himby5kYfrgh84jGrgdsgんtfdSh』
再び発した声が途切れた瞬間、亀裂で覆い尽くされた空が轟音を立てながら壊れていき、亀裂の隙間から覗かせていた紅い光が強く輝いて全てを覆いつくした。
紅い光は20秒ほど経つと消え去り、空を破壊した筈の亀裂も消えて、再び暗闇が支配する世界へと戻っていた。
体が無意識の内に光の眩さから守るべく動いていた長瀬らは、閉じていた瞼を開いて艦橋の窓越しに周囲を見回しだした。
「な······何があったんだ?」
「まさか·····核爆発!?」
「核爆発なら俺らはもうあの世に行ってるぞ! それに核爆発に詠唱が必要な訳無いだろ!!」
「空がひび割れたなんて······あり得るか!?」
長瀬ら艦橋に居た隊員は動揺しつつも周囲を見渡して現状を確認する。周辺の地形や停泊していた艦艇に変化は無く、舞鶴の町並みにも大半の住宅に明かりが灯った事以外の変化は見られなかった。
「取り敢えず
「空を見上げろ? 甲板の奴ら何言っt······え?」
しかしながら、微かに感じた違和感や甲板乗組員に釣られて上空を見上げた隊員が絶句して、固まる様に空を見続けた。
「どうした!?」
「艦長········つ、月が!!」
上空を見ながら驚きの表情を浮かべている隊員の視線を追いかけた長瀬らは言葉を失った。
今日の月は右半分が光輝く右弓張月と呼ばれる姿をしていたが、彼らが見上げていた先に見えた月は左側の端しか光っていない有明月だった。
「月の形が変わっているだと········」
「確信は持てませんが、なんか星の感じも変わっていませんか? さっきまで見えていたさそり座も何処にあるか分かりません。」
「確かに·······上手くは表現出来ないが、星の感じが違っている様に見えるし、さそり座も見えなくなってるな。」
「ということは、ここは地球じゃ無いって事か?」
「さっきのヒビ割れが我々を地球から別の星へ連れ去ったって事か?」
艦橋要員は厳しい訓練を耐え抜いた猛者だったが、説明不能な現象を目の当たりにして困惑を隠せずにいた。大声を上げながら動揺する彼らに秩序は存在してない様に見えたが、拳が金属へぶつかった大きな音で静まり返った。
「落ち着け!! 俺達海自がそんな動揺していたら国を守れんぞ!!」
大きな音を出した張本人である長瀬は金属を叩いた痛みを隠しつつ、艦橋要員を落ち着かせるべく語尾を強めて語りかける。
長瀬の思惑通り、彼の言葉を聞いた照山ら艦橋要員は落ち着き始めた。
「取り敢えず数日の間に出港の指示が出るのは間違いないだろう。いつ出るなど分からないが、いつ出ても対応出来る様に準備するぞ!!」
長瀬の宣言を聞いた艦橋要員はさっきの動揺からは想像出来ない程にキビキビと動き出す。いつもの仕事っぷりを取り戻した艦橋要員を長瀬は安心した様に眺めつつ、艦内電話を取る。
「艦長だ。石見司令と主席幕僚に艦へ来るように連絡してくれ·······他の艦も同じく出港準備を始めたか、了解した。」
電話を終えた長瀬は有明月が照らす黒い空を見上げた。月しか自然の光が存在しない漆黒は赤いひび割れが出来ていたとは思えなかった。
(あの声とひび割れは何だったんだ·······あんな現象は聞いた事など無い······)
「········何が起きてもおかしくないか」
長瀬の独り言は出港準備の喧騒に紛れて、誰にも聞こえる事なく忘れ去られた。
2025年7月1日。この日は日本と
解説と雑談
今作は後書きを解説と雑談コーナーとします。
・あまぎ級航空母艦
海自初の航空母艦。退役した米海軍の「フォレスタル級航空母艦」を日本が購入して、延命や近代化改修を施して現役復帰させた艦。
同型艦
CVA-59 フォレスタル→DDH-185 あまぎ
CVA-60 サラトガ→DDH-186 かつらぎ
CVA-61 レンジャー→DDH-187 いこま
CVA-62 インディペンデンス→DDH-188 かさぎ」
因みに艦記号が航空護衛艦を意味する"DDV"ではなく、ヘリ搭載型護衛艦の"DDH"なのは作者のミスで、前作の連載途中で気づきましたが、その時には結構な話数を書いていて修正が大変そうだったのでそのままいこうと決めました。
艦名が山なのは決める際に日本海軍の「雲龍型航空母艦」から取ったため············今思えば大鷹型から取ればよかったと後悔している。
・第2機動部隊
舞鶴を母港とする機動部隊。主にシ連を仮想敵としており、懸念されていた朱雀列島有事の際に主力としての活躍を期待された。
実際に朱雀戦争では戦闘の中心を担い、シ連崩壊後は仮想敵がロシアへと変更された。
戦後に艦不足を補うべく、第6護衛艦隊から「ゆうだち」が編入された。
艦隊編成
空母「DDH-185 あまぎ(旗艦)」
「DDH-186 かつらぎ(磯子で入渠中)」
ヘリ空母「DDH-181 ひゅうが」
イージス巡洋艦「DDG-203 たかちほ(長崎で入渠中)」
「DDG-204 あそ」
イージス艦「DDG-175 みょうこう」
護衛艦「DD-103 ゆうだち(第6護衛艦隊より編入)」
「DD-115 ながなみ(長崎で大規模修理中)」
「DD-117 ふじなみ」
「DD-124 はつづき」
「DD-125 しもづき(磯子で入渠中)」
「DD-131 しらぬい」
※今作から「ゆうだち」が艦隊に加わりましたが、実のところ今作の為に艦隊編成を再確認している時に「ゆうだち」が何処にも書かれていない事に気付き、急遽編入したという裏話があります。
・シ連(シベリア社会主義連邦)
ウラル山脈以東を領土とする架空国家。前作のメインヴィランだったが、今作では瞬殺された。
今だと架空国家を作るよりもそのままロシアが相手だった方が自然だと後悔しているので、プロローグついでに消えてもらいました。
・朱雀列島
大和堆に位置している7つの島で構成された列島。前作では主戦場になったが今作では多分空気。
・朱雀戦争
上述の朱雀列島を巡ったシ連との戦争の名称。詳細は「New Japan Fleet」を読んでもらった方が早い。
開戦してから凡そ2日で終了した為に「2日間戦争」と呼ばれている。
・第2艦隊要員の変更
これに関しても前作の反省点で、若いメンバーばかりを艦長にしたのは違和感が強すぎる気がしたので、かなりのメンツを変更しました。
・今日の月は右半分が光輝く右弓張月·····
これなんですけど、ネットでこの日の月について調べたので多分マジです。
◇
前作終了から約3年程経過しましたが、作者自身も世界も沢山変わりました。
作者は一人暮らしを始めて生活が大幅に変わり、ネット面ではTwitterを始めました。世界に関しては······言うまでもない位変わりましたね。
第三次大戦すらあり得そうな世界になった事も驚きが、個人的には近未来だった筈の年号に達している事の方が衝撃ですww