New world note in Earth   作:YUKANE

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今話は前話と展開が似ていた事もあって、後半は面倒くさくなってかなり適当になりました。


Episode.12 規格外の存在

滝原と照山が東和海軍艦艇を見学している頃、2つの艦隊が停泊している暮田海軍基地の湾内を1隻の小型艇が進んでいた。自らを載せている艦の名前が白い平仮名で書かれた11m内火艇は、艇体の後ろに備え付けたエンジンを回していつもより狭い湾内を通っていた。

7kt(約13km)の速力で海面を駆けている11m内火艇は水飛沫を上げており、水飛沫の弾幕は載っていた面々へと降り注いでいた。

 

「来賓を乗せるであれば部屋付きの艇の方が良いのは間違いですが、生憎うちのは艦載して持ち運ぶ事を想定してないのでこれしか用意出来ません。簡易の遮蔽物も無いので水飛沫は不可抗力として下さい。」

「我々も艦載の内火艇はこんな感じで、乗り慣れているので問題ありませんよ。」

 

11m内火艇の艇首側に乗る第2機動部隊司令官の石見惣一海将の謝罪に、艇の真ん中に乗る第4艦隊司令補佐官 出月マキ少佐は飛んで来る水飛沫が当たる中、社交辞令で返した。

津田基と一緒にいるが故に内火艇へ頻繁に乗る彼女は艇の揺れも水飛沫にも動じていなかったが、その後ろにいた茶色いパイロットスーツを着た青年は顔を青くして外を向いていた。

 

「もしかしなくても船酔いですか?」

「海軍の人間が船酔いなんて笑い者にしかならないわよ。」

「私は空軍から移った人間です。それにパイロットからすれば小型艇に乗る事に慣れてないので。」

 

見るからに具合が悪い様子に心配する石見と、海軍にも関わらず船酔いする事に呆れている出月の視線は当人の木内芳気(ほうき)大尉へと向いていたが、彼自身は辛うじて顔を上げて言い訳が混じった返事をした。

言い訳と現状が釣り合っていない木内の様子に石見と出月がどう対処するか悩んでいると、この艇に乗っているもう一人の東和海軍兵が木内へと話しかけた。

 

「だから酔い止めでも貰ってきたら良いって言ったのに。()()()()()()()()()()貴方がそんな姿だったら、海上自衛隊の皆様もガッカリしますよ。」

「分かってます、分かってます。裏戸さんは酔ってないんですか?」

「そりゃ酔うカメラマンなんか使い物になりませんから。酔ってる中で写真なんか撮ったら全部ピンボケになって、上司からフィルムの無駄遣いだと怒られるでしょうね。」

 

木内に話しかけた第4艦隊専属の広報員 裏戸(うらど)回夜(かいや)准尉は、愛用しているフィルムカメラを防水加工を施した革製のカメラカバー越しに見せながら堂々と宣言する。

酔わないが故に重要な役割を任された事を自慢する裏戸の姿に木内が苛立つ中、4人を載せた11m内火艇は1隻の護衛艦へと近づいていた。

 

艦首から艦尾に至るまで平坦な裟浪甲板型ながらも、ヘリコプター甲板として使われる艦尾に「ミニ・オランダ坂」と呼ばれるなだらかな傾斜を有する船体に、八角形の艦橋を中心に構成された全鋼製の艦上構造物を備えた日本初のイージス艦 こんごう型護衛艦の3番艦「DDG-175 みょうこう」の艦影を出月ら3人はマジマジと見上げていた。

 

「上空から見ると小さく見えたが、いざ近くで見ると中々大きいな·······うっ」

「酔っているんですから無理しないで下さい。確かに艦橋は大きいですけど、意外と船体も大きそうですね。石見司令、この艦の排水量って分かりますか?」

「こんごう型護衛艦の排水量は満載で9500ですね。「あまぎ」と「あそ」(あの二隻)がデカすぎますが、これでもデカい方ですよ。」

「9500? 意外と小さいですね。我が海軍ですと樟葉級ぐらいしかいませんね。」

「うちの艦って意外と1万超えが多いからね〜あぁ、樟葉級は一世代前の装甲巡洋艦でして、現在は主に練習艦として使われています。」

 

話の内容がいつの間にかにこんごう型から東和海軍の装甲巡洋艦へと変わった4人を載せた11m内火艇は、「みょうこう」へと横付けして泊まる。

石見を先導に出月ら3人は暮田海軍基地から借りてきたタラップを上がり、艦橋前の甲板へ降り立つ。艦と同じく灰色に塗られた甲板には第3種夏服を着ていた乗組員が整列しており、石見ら4人が上がり切ると一斉に敬礼した。

 

「彼が艦橋の舘 黒太一等海佐だ。貴海軍の大佐だと思って頂きたい。」

「ご紹介に預かりました舘黒太です。ようこそ「みょうこう」へ!!」

 

酔って青ざめている木内の様子に戸惑いつつも自己紹介をした舘に出月らが敬礼する。石見は敬礼を終えた舘へと小声で話しかけた。

 

「見て分かると思うがお客の中に船酔いするのがいたんだ。酔い止めを頼む。」

「了解しました········」

 

木内に対する事務連絡を終えた石見は出月らの視線を艦橋へと向けた。3人には八角形の艦橋そのものが異質だったが、舷側に対して斜めになっている面にだけ張り付いていた亀の甲羅に似た板が興味を引いた。裏戸は革製の防水カバーを取った愛用のフィルムカメラで、艦橋を見上げる様にして撮影し出す。

 

「亀の甲羅みたい板はなんでしょうか?」

「艦橋を守る装甲とかの類ですかね?」

「あの板は装甲ではなくレーダーのアンテナになっていまして、1面辺り4000ものアンテナ素子によって数百km先の目標を視認し、10以上の目標へ同時に対処出来ます。」

 

こんごう型護衛艦最大の武器とも言えるAN/SPY-1D フェーズドアレイレーダーの説明を聞いた出月らは目を丸くした。

 

「あの平べったいのがレーダー!? 数百km先まで見えるとかどう言う事ですか!?」

「いや、それよりも!! 10以上の目標を同時に対処出来るんですか!?」

「えぇ、勿論。最も対処するのは主砲ではなくこちらですが。」

 

石見に促された3人の視線は、艦首甲板に埋め込まれたMk.41 Mod6 垂直発射システム(VLS)へと移る。出月らは蓋が32個もついたこれの正体を分かっておらず、各々が思い思いの推測を行った。

 

「これで10以上の目標に対処出来るですか? 正直乗組員の寝床にしか見えませんが·····」

「縦に寝るとか罪人の苦行じゃない。でも、対処って事は攻撃する事だから自動装填する主砲の弾薬庫かしら?」

「弾薬庫って部分は当たりです。正解は弾薬庫を兼ねた対空誘導弾の発射機でして、3つの再装填クレーンを除いた29セルの蓋の下には対空用の誘導弾が装填されています。」

 

石見の説明に3人は目を見張って驚く。

 

「対空の誘導弾がここに入っているのですか!? どう言う事ですか!?」

「どう言う物かは見てもらった方が早いでしょう。石見だ。セルを1つ開けてくれ。」

 

石見がインカムへ話しかけて間もなく、Mk.41VLSの蓋が1つだけ開く。出月らが開かれたセルを覗き込むと、1本のミサイルが尖った先端を上にして鎮座していた。

 

「これは航空機向けのRIM-66M-5 スタンダードミサイルですね。航空機向けは一般的にSM-2と呼ばれています。」

「SM·······あぁ、Standard Missileの略ですか····他にも潜水艦用もありますが、これら誘導弾で撃墜出来なかった場合は主砲である127mm砲の出番になります。」

 

出月がSMの略称を直ぐに見抜いた事に石見が驚きながらも、3人を次に紹介する物へと誘導し出す。石見の目論見通り、3人はVLSの前に置かれているオート・メラーラ 127mm砲へと向く。

後部も根元が引き締まった独特な形状の砲塔に54口径の砲身が収められている姿を裏戸は撮影したが、3人は首を傾げていた。

 

「127mmって駆逐艦より小さいですね。しかも一番古い雪波級ですら3基6門なので、砲撃力だけなら東和海軍(うち)の圧勝ですね。」

「でも誘導弾を実用化出来ているのですから、これも何かしら凄い性能かもしれないですよ。」

 

装甲巡洋艦並みの艦が駆逐艦よりも小さな主砲をたった1門しか装備していない事に裏戸は疑問を覚えたが、出月はVLSの経験から何かしらの優れた物を持っている可能性に辿り着く。

石見は出月の様子に感心しながら、たった1つの主砲が持つ性能について話し出した。

 

「中々察しが宜しいのですね。この砲は連射力に優れていて、毎分辺り45発です。」

「毎分45発!? 最早機銃ですよ!!」

「確かにその連射速度なら一門でも······木内さん!! パイロット目線だと毎分45発の主砲ってどうですか!」

 

「みょうこう」側から提供された酔い止め薬を飲んで酔いから立ち直りつつあった木内は、裏戸の質問にオート・メラーラ127mm砲を見上げた。

 

「確かに毎分45発は脅威でしかありません。ですけど、その連射性能が一定の向きでしか出来なかったり、旋回速度が遅ければ勝機がありますが·····それに関してはどうでしょうか?」

「これも説明する様に見て貰った方が良いですね。」

 

石見がインカムに短く指示し、出月らが離れるとオート・メラーラ127mmの単装砲身が動き出す。砲身が素早く上下に動き、主砲そのものも回転しだす。

旋回しながら素早く動く砲身を見た3人は口を開けて唖然としていた。

 

「この旋回速度で毎分45発······しかもあのレーダーとリンクしているなんて····」

「これは一門で戦艦より強力な対空砲火を撃てますな····もう1門あったら大変な事になるぞ。」

「でもあそこにこれを2門備えている艦がいますよ。」

「えっ、あ、マジだ······」

「いぶき型イージス巡洋艦の「あそ」ですな。日本は疎か元の星でも珍しい主砲2基の軍艦です。」

 

ふと零した冗談がいぶき型イージス巡洋艦として具現化している事に木内が頭を抱え、それを指摘した裏戸がレンズのズームを伸ばしていぶき型の写真も撮ろうとする中、出月は右手を顎に当てたポーズでずっと黙って思考していた。

 

「あの旋回性でしたら対空性能は申し分ないでしょうが、正直対艦戦には向かないように思えます。精密性で武装だけを射抜くか、対艦用の誘導弾があったりしますか?」

「またしても御名答ですね。艦中央に載っていた4本束の筒が対艦用の誘導弾で、本艦が積んでいるRGM-84D(ハープーン)はマッハ0.85の速度で150km先まで飛ばせます。」

「それも百発百中ですよね? 最早驚き疲れました。」

 

短時間ながら護衛艦の性能を思い知らされて短時間で驚き疲れた出月と、フィルムカメラで護衛艦を撮りつつも第2機動部隊側の広報が持っていたデジタルカメラに興味を示した裏戸と、船酔いから回復した木内の3人は石見の先導で「みょうこう」の見学を続ける。

 

艦橋前の銃座に鎮座するファランクスや4本一纏めで積まれた艦対艦誘導弾(SSM)・俵積みされた短魚雷発射管等の自軍艦艇には積まれていない装備を見学した3人は、艦尾のヘリコプター甲板へとやって来た。

こんごう型護衛艦は格納庫を持っていない為にヘリコプターの常時運用こそ出来なかったが、現在のヘリコプター甲板にはあまぎ航空隊所属のSH-60K(シーホーク)が4枚のローターを回した状態で出月らの到着を待っていた。

 

「これが回転翼機(ヘリコプター)······我が軍の研究所で研究されていると聞いてますが、やはり実用化してましたか。」

「前に回転翼機の試作模型を見た事がありますが、その何倍も大きいですね。私が乗る六十四式攻撃機よりデカい気がします。」

「ここまで真っ白な機体も珍しいですね。汚れが目立ちそうですが········雲に紛れる為、なるほど。」

 

目の前で自らのローターを回し続けるSH-60K(シーホーク)に思い思いの言葉をかけた3人は、ローターに当たらない様に背を屈めて乗り込む。

SH-60Kの写真を撮影した裏戸が乗り込み、座った座席のシートベルトを締めた事を確認すると重い扉が閉まり、石見と出月らを乗せたSH-60K(シーホーク)は複合素材製のメインローターによって上空へと舞い上がった。

 

2000越える馬力を出せるT700-IHI-401C2ターボシャフトエンジンの稼働音が響く機内にいる出月らは、ガラス越しに暮田海軍基地に停泊する第2機動部隊の姿を眺めて、裏戸はカメラのシャッターを押していた。

3人が護衛艦を見ている間に遊覧飛行を兼ねた短いフライトの目的地上空へと到着し、ターボシャフトエンジンの出力を操って「DDH-185 あまぎ」の飛行甲板へと降り始める。

 

「デカいとは聞いてましたが、これほどデカいなんて······下手な飛行場より大きいですよ。」

「ですから言いましたよね、飛行場並みの航空母艦がいるって。まあ飛行隊の仲間達も見るまで信じてなかったみたいですが。」

「そりゃあこんな大きな艦がいる方が可笑しいのですから、その反応が自然ですよ。私も初めて見た時は唖然としましたから。」

 

300mを超える「あまぎ」の大きさに3人が驚いている間にSH-60K(シーホーク)は飛行甲板へと降り立つ。発艦用のカタパルトと、着艦用のアングルド・デッキが一体化した巨大な飛行甲板に降り立つと、「あまぎ」艦長の長瀬竜也一等海佐が敬礼で出迎えた。

 

「数時間ぶりですね、長瀬艦長。今度は隅々まで見せて頂きます。」

「我々は歓迎致します。今すぐ見学したい所ですが、その前に昼食ですな。今日は本艦自慢のチキンカレーと(あじ)のメンチカツです。」

「ありがたく頂かせて貰います。」

 

長瀬と対談した出月に率いられて木内と裏戸は艦内へ入っていく。食堂へ向けて艦内を歩く3人は長瀬へ色々な質問をした。

 

「言うのは悪いかもしれませんが、艦内は案外古めかしいですね。意外と古参だったりしますか?」

「えぇ、この船はアメリカ合衆国という同盟国が使っていたのを買い取った物で、今年で就役から70年目のおじいちゃんですよ。」

「就役から70年目!? 正気ですか!?」

「俺より爺さんより年上だ·······そんな艦が未だに主力なのですか!?」

「デカすぎて代艦が作れないとかですか?」

 

この巨大艦が艦歴70年目だった事に3人は驚き、三者三様の反応を示す。その反応を分かっていた長瀬は木内の推測に返す。

 

「木内さん正解です。現在の我が国には代艦になれる空母を建造可能な造船所がありません。

転移前から本艦の老朽化は問題視されていましたが、本国のゴタゴタ具合から退役は更に伸びそうです。」

 

哀愁を感じさせる長瀬の発言に3人が何にも発言出来てない間に、目的地の食堂へと辿り着く。食堂は国産護衛艦と違って、米海軍のバイキングスタイルを引き継いでいたが、料理を載せるお盆や皿が置かれた棚の上にはデカい文字が書かれた張り紙が貼られていた。

 

「“取る量はいつもの半分にする様に”、これは何だ?」

「そのまんまの意味です。食事の量をいつもの半分にして食糧を出来る限り長く保たせようという足掻きです。」

「食事量がいつもの半分·····だから皆さんの顔が暗いのですね。」

 

出月らの視線には半分しか載っていない料理を前に溜息をつく乗組員の姿が移る。その姿に憐れみを感じた3人だったが、出月がふと何かを思い出した。

 

「この暮田基地は艦隊2個分の食糧を備蓄しているのですが、それを分けられるか相談しますか?」

「それが出来ればありがたいですが·······良いんですかね?」

「艦艇を見せてくれたお礼って事で説明はつくと思いますよ。」

 

話している間に料理の取り分けを終えた長瀬と出月らは同じテーブルに座り、食事を開始した。




・部屋付きの艇の方が良いのは間違いですが、生憎うちのは艦載して持ち運ぶ事を想定してないので······

海自自体も12t交通艇や6t交通艇といった部屋付きの小型船を持ってますが、どれも艦載出来ないらしいので出しませんでした。
あまぎ級(フォレスタル級)やしょうかく級(キティホーク級)なら積めるかもしれないけどイケるか?

・木内芳気
上に点をつけて強調しましたが、第2機動部隊と初接触したキウチ編隊を率いていたのが彼です。
初接触した人物という事で出しましたが、船酔い設定はその場でつけました。読み返すと不自然っぽいけど良いよね?

・防水加工を施した革製のカメラカバー
革に水って大敵じゃね?と思ったけど、調べてたら防水加工した革製品は普通にあるらしいので採用しました。

・暮田海軍基地から借りてきたタラップ
東和海軍艦艇と護衛艦の艦舷が合うとは思えませんが、ここはご都合展開という事で······

・館黒太
彼は艦も変えずに前作からそのまま登場させました。半分以上の艦長が入れ替わっているので、かなり貴重ですw

・六十四式攻撃機よりデカい気がします····
確認したところ、六十四式攻撃機こと九七式艦上攻撃機が10.3mで、SH-60Kは19.8mなので2倍ほどサイズが違ってます。

・今日は本艦自慢のチキンカレー·····
Wikipediaで確認出来ますが、劇中の7月4日が丁度金曜日なのでカレーにしてみました。
てか、劇中が7月4日だと一言も言ってなかった····

・今年で就役から70年目のおじいちゃんです
これに気づいた時はどうしようと思いましたね。70年前の艦を第一戦力として使っている海軍なんて、一次大戦以前に遡ってもいないと思います。
もしリメイクするからいっそニミッツ級にするか···

・食事の量をいつもの半分にして食糧を出来る限り長く保たせよう····
前話でも言いましたが実際に出来るかは分かりません。取り敢えず国民が飢えているのにいつも通り食べていて良いのかという罪悪感が、こんな行動をさせたという事にしときます。
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