New world note in Earth 作:YUKANE
今回では読者が感じているであろう違和感や、何気に語られた無かった日付について言及していきます。
東和国最東端の地 南瑛諸島は夜を迎えつつあった。暮田から諸島内や本土の間を行き来する船も姿を消し、人工の明かりで煌々と輝いていた暮田の港と町並みも徐々に暗くなり始めていた。
「こうして見ると日本の地方都市にしか見えんな。」
「大砲ガン積みの軍艦がいなければ間違いなく騙せますね。」
艦隊司令の石見と艦長の長瀬は、現在停泊している暮田海軍基地やリーズナブルなビジネスホテル位しか明かりが無くなった暮田の街並みを見ながらそう言う。
彼ら海上自衛隊にとって暮田は異国の地であったが、雰囲気だけでなく言語まで一緒だった故に母国にいる安心感が芽生えていた。その安心感は錯覚でしかなかったが、未知の相手との接触に緊張を張り巡らしていた乗組員に取って安らぎを与える結果になった。
外を見ながら
「これで全員揃いましたね。じゃあ、東和に関する情報の共有回と題して始めますか。」
「そのまんまじゃないですか。」
首席参謀 滝原のツッコミに微かな笑いが溢れる中、園田姉妹の長女 園田凜音が
「我々と東和の会談では双方の国について地図を用いて説明し合いました。
それによって東和の西側に10もの国がある冷軽大陸が存在している事が判明しました。これらの国々は東和が主体となっている東冷共栄圏 通称TRMに加わっており、技術供与や文化の保護・災害時の共同支援が行われているらしいです。」
「なんか先進的だな······」
凜音の説明を東和側から頂いた地図を見ながら聞いていた長瀬が思わず呟く。TRMは名前からしてASEANやEUに酷似していたが、戦後に出来た組織と同じ概念が戦前と思わしき東和で出来上がっていたのは驚きとしか言えなかった。
「技術供与や災害支援はまだしも、文化の保護は意外ですね。戦前と言えば新しい物こそ正義で古い文化を嫌うのが主流だと思ってましたが、世界遺産や
「それなんですが······この資料によるとチャルネスやカリス以外の冷軽大陸諸国は、東和が推し進めたBMPという計画によって近代化したらしく、一方的に押し付けたお詫びとして保護していると。」
「BMP? ソ連系装甲車の名前みたいですが、その略語の意味と内容は分かりますか?」
副艦長の照山は東和の先進性に驚き、それに園田姉妹の妹 麗音が補足を加えるとそこで新たに出て来た単語に滝原が興味を示した。その反応を予測出来ていた麗音は、東和国の情報を纏めた資料を見ながら答え出す。
「BMPとは東和国が推し進めた“未開拓地近代化政策”の通称で、政策名の英語である
政策の内容を要約すると、専属の部署であるBMP局の職員が海軍の艦隊によって現地勢力と友好的に接触し、円滑に進んだ場合はBMP局へ派遣された各種専門家が行った調査を元に近代化計画が立案されます。もし、現地勢力が歯向かって攻撃してきた場合は海軍艦隊と護衛の陸軍部隊によって鎮圧してから調査を行うという流れだそうです。」
「確かにこれは押し付けてるな······お詫びに現地文化を保護するのも納得と言えば納得出来るな。」
「文化保護の概念はあるのに近代化を押し付けるとか、東和って戦前と戦後がごちゃまぜになっていますな。」
麗音の説明を聞いた石見らは戦前の帝国主義を思わせつつも、戦後に出来た制度が存在している事に何とも言えぬチグハグさを感じざるおえなかった。
第2機動部隊の首脳陣が抱いた矛盾は園田姉妹も抱いていたが、外交官が考えても意味が無いと割り切って会談の結果とそこで得た東和国に関する情報を第2機動部隊首脳陣へ分かりやすく説明し出す。
地図を見ながら国内の様子や政治体制・国内の資源状況について説明を受けた第2機動部隊首脳陣は、東和の様子に感心を寄せつつも日本とは似ても似つかない姿に驚くしかなかった。
「何と言うか、似たようで似てないな······」
「国土だけじゃなく政治体制や食料自給率がここまで違っていると、言語だけしか合っていないと言った方が良いかもしれないな·······」
「島国で食料自給率が低い上に無資源の日本に対して、大陸国家で高い食料自給率と大量の地下資源を持っている東和は正しく真逆とか言えないですな。」
「こんなに資源があれば転移しても日本みたいな混乱は起きなかったでしょうね······」
石見を筆頭に第2機動部隊首脳陣が各々の意見を語り出す。日本と似た雰囲気を醸し出しつつも、日本とは似ても似つかない要素を目にした事で東和が異国なのだと認識させられた。
東和に対する意見を述べた首脳陣の興味は、東和大陸の地図と並んで置かれていた冷軽大陸の地図へと向けられた。
「それに冷軽大陸のチャルネス共和国?とやらもまんま中国だよな。」
「チャルネスを中国とすると、半島のカリス王国は朝鮮・フィルラントはフィリピンという事になりますね。」
「という事は、冷軽大陸の西側は東南アジアか。TRMは正に大東亜共栄圏の生き写しだな。」
「違いとしては中国が入っているか否かですかね?」
冷軽大陸に存在している国家が、転移前の日本が接していた周辺国に酷似しているとしか言えない事に、長瀬らは最早呆れるしかなかった。滝原がそれを全て抱え込んだTRMをかつての大日本帝国が唱えた大東亜共栄圏だと表現し、外交官故にそれを知っていた園田姉妹は顔を
「大東亜共栄圏みたいな形式上の連合じゃない事を祈っておきます。」
「そういえば日本が東和へ送る使節団に加わるのでしたっけ?」
「えぇ、一週間ぐらいでやって来る日本使節団に加わって、東和本土へ向かうらしいです。」
「とんでもないハードスケジュールだな······」
「東和と初めて会談したのですから、仕方ないのかもしれませんね。」
東和とのファーストコンタクトを担ったとは言え、ほぼ休ませる事なくこき使わせる外務省の判断に長瀬らはドン引きしつつも、転移によって人材不足に陥っている事は海自も同じだったので同意するしかなかった。
「確か明日は暮田島の見学も行かれると聞きました。お疲れでしょうから、会議を切り上げて休ませた方が良いかもしれませんね。」
「いえ大丈夫です!! 皆さんに共有したい重要事項がありますので!!」
「そ、そうですか······その重要事項って何ですか?」
体調を心配した石見をたじろがせる気迫を放った凜音は、カレンダーをテーブルの上に置いた。
「これはカレンダーだよな? これの何が重要事項なのだ?」
「確かにこれはカレンダーですが、よくよく見て下さい。」
凜音に言われて石見らはカレンダーを隅々まで見渡す。そのカレンダーは会議室にかけてある海自が出版した物と同じ配置だったが、じっくりと見ていると少しずつ違和感が浮き出てきた。
「あれ?·······よくよく見ると海の日が無いぞ。」
「1671年·····まさかこれは東和のカレンダーか!?」
「分かりましたか。これは東和のカレンダーなのですが、
凜音の言い切った事実に石見らは唖然とするしかなかった。東和と日本のカレンダーに祝日以外の違いが一切確認出来なかった上に、今年どころか数年に至るまで瓜二つという事実に驚きを通り越して、もはや恐怖すら覚え始まる程だった。
「今年どころか数年に至るまでカレンダーが一緒なんてな······そうだ! 東和の日付だと今日は何日だ?」
「7月5日です。
「日付まで一緒だと····最早神が合わせたレベルで都合が良いな······」
今日の日付まで一緒というあまりにも都合が良すぎる事実に、長瀬は呆れるしか無かった。他のメンツも長瀬と同じく呆れた表情になっていたが、凜音はそんな彼らを更に叩きのめす事実を述べだした。
「重要事項はこれだけじゃありません。これまで聞いた東和側の説明で違和感を感じませんでしたか?」
「違和感? 気づいた奴いるか?」
「もしかしてですが··········
滝原の発言に首脳陣はハッと気付かされた。東和側の人間は自然と英単語を口にしていたが、本国は疎か冷軽大陸・TRMの範囲内にも
「確かに······平然と入れてくるから気づかなかった···」
「英語を使っている国が無いのに使っている何ておかしすぎません?」
「使ってない英語は何処から来たんだ·····」
今までの会話を記憶から遡ると、ほぼ確実にナチュラルに英単語が出ていた事に気づいた石見らは頭を抱えるしか無かった。
そんな様子の首脳陣を見ていた凜音は更に畳み掛けた。
「最後に今いる暮田島には暮田鉄道という鉄道が通っているのですが、その鉄道は狭軌という軌間で敷かれています。この軌間の幅は分かりますか?」
「確か1067mmでしたっけ?」
「照山さんの言う通り狭軌は1067mmです。言葉だけ一緒なのか幅まで一緒なのか気になって、許可を取って測った結果がこちらです。」
凜音が差し出したスマホの画面には巻き尺が張られた線路が写されていたが、凜音に指によって拡大された巻き尺の値を見た彼らは目を見開いた。
「ピッタリ1067mmじゃないか!!」
「これは何かあるのが間違いないな。言葉だけじゃなく、こういう単位まで一緒なのはどうやっても言い訳出来ん。」
余りもの一致点の多さに首脳陣は驚きつつも、裏に何かがあるとしか言えなかった。
「一番自然なのは何らかの理由でやって来た日本人が広めたか?」
「あれですかね、神隠しにあった人が来たって感じですかね?」
「それで行けますかね? 例え天才が来たとしても、1人でこんなには出来ないだろうから何十人単位で一気に来てたのかもしれませんよ。」
偶然と言えない程に多すぎる一致に石見らは思わず咄嗟に思いついた意見を交わしていく。裏付け等一切存在しない仮定を話し合う首脳陣の様子に園田姉妹は呆れつつ、敢えて大きな声で咳き込んで彼らの話し合いを無理矢理終わらせた。
「我々は語学に長けた外交官ですし、東和の歴史にも触れた事が無いのでここまで一致点が多い理由は分かりません。
ですが、これは国交提携にあたって重要な要素になるのは分かります。本国に連絡しつつ、国交提携後に調べる必要性があるでしょう。」
「使節団が来るまで一週間ほどかかりますので、我々は南瑛諸島を見学しつつ調べようと思っています。第2機動部隊の皆様にも東和軍を通じて調査して頂けませんか。」
「無論だ。ここまで興味深い要素を調べない訳にはいきませんから。」
園田姉妹と石見らで一致点の多さに関する共同調査を実施する事が決まり、この会議はお開きとなった。
・リーズナブルなビジネスホテル
戦前の日本にビジネスホテルの概念があるか分かりませんが、東和は戦前の日本に似た外国なのでそこの所をご了承して下さい。
・TRM
当初は対処国同士での関税撤廃やパスポート無しの入国可能も書いてましたが、どちらも戦前に出来るか怪しかったので削除しました。
調べたら関税撤廃は出来そうなので、構想段階という事にしましょうかね?
・BMP
今回は要約ですが、国を独立させてる以外は帝国主義と全く同じなので、TRMの制度と違って驚いたかもしれません。
TRMと矛盾している不自然な要素しれませんが、これを行った理由も考えてありますので許して下さい。答え合わせが何時になるか分かりませんが····
・アジアとそっくりな冷軽大陸諸国
紹介段階で気づいた人もいると思いますが、これらの国々は東アジアと東南アジア諸国がベースです。
これら国々にも細かい設定が作っているので、公開していきたいですね。
・日本と東和のカレンダー
一致させた理由の本質は日付を変えると面倒くさい事になりそうだからです。
当初は日本の季節を真逆にする予定でしたが、こちらも面倒くさい事になるのが目に見えているので止めました。
・暮田鉄道
南瑛諸島唯一の鉄道ですが、形式に関する設定が全く作ってないという·····
ネタバレですが東和のSLは日本で見慣れた奴では無いので、外国の狭軌のSLで良いのってありませんかね?