New world note in Earth   作:YUKANE

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陸自向けの輸送船が進水しましたが、予想外すぎる艦名でしたねw
どんな性能の船かは詳しく知りませんが、出来れば今作でも出したいです。


Episode.15 焦る東和

第2機動部隊の首脳陣と外交官で会議が行われている中、会議の舞台になっていた「DDH-185 あまぎ」をガラスを介して眺める複数の人影があった。

 

「信じられんな······あれが艦歴70年目のオンボロ艦だと。」

「練習艦ならまだしも戦力の一環として第一線にいる辺り、物持ちは良さそうですね。」

石見や長瀬(あちら方)の話によると、予算不足や造船所選定の問題で代艦建造が出来てないらしく、老体にムチを打って使っているらしいですよ。」

「やっぱ星が違っても予算不足は海軍の大敵か·····」

 

南瑛諸島唯一にして最大規模を誇る海軍基地 暮田海軍基地の長官室には、ここを仕事場とする基地司令の錫先(すずさき) 天鬼(あまき)大将と、津田基(つだき) 湧洞(ゆうどう)大将を筆頭とした第4艦隊首脳陣・日本とのファーストコンタクトを担当した(はざま) 藤吉(とうきち)らが集まっていた。

 

日本とのファーストコンタクトを終えた彼らは、日本の情報を共有すべくこの場に集まっていた。海軍が第2機動部隊の護衛艦について話している間に、間と部下の連月マナハは園田姉妹との対談で得た日本の情報をテーブルへ広げていた。

 

「こちらが日本側から提供された資料一覧です。国土の様子から国内の情勢・経済情報・技術力等の情報がここに出されています。」

 

間の言葉で窓際に集まっていた海軍のメンバーは資料がビッシリと並べられたテーブルへと向かう。一日足らずでテーブルを埋め尽くす程の資料が集まった事にちょっぴり引きつつも、その資料をまじまじと見始めた。

 

「確かに唯でさえ狭い国土の大半を山脈が占めている。こりゃあ食料自給率が低い訳だ。」

「その癖、島国なのにマトモな油田を持たない。これで先進国になれたのは凄いとしか言えないな。」

「国家の経済情報が諸刃の剣だけで説明がつくなんて始めてみました。」

「こんな無資源国家が転移したのであれば、血眼で国家を探すのも無理はないか。」

 

資料を見た各々が日本に対する感想を述べていく。東和と言語が一緒で、文化も似ているにも関わらず、文字通り真逆になっている国土の様子に興味を示していた。

 

「ご覧になった様に日本は無資源の島国国家です。かつては国内で石炭や鉱石の採掘が盛んでしたが、今は行われてないと言っておりました。

ただ、国土より広い排他的経済水域の海底には膨大な資源が眠っているらしいですが、転移の影響で無くなっている可能性もあり得るとも言っていました。」

「海底資源が無くなってたら文字通り詰みだな。」

「だからこそ、日本(彼ら)東和(我が国)からの食料と資源の輸入をいち早く望んでいるのでしょう。出来なければ国自体が持たなくなるのが目に見えてますから。」

 

間の話を聞いた海軍メンバーは日本が置かれた状況に同乗するが、その中の1人だった錫先はふと何か気づいた。

 

「なあ、もし東和(我々)が食料や資源を輸出したとしたら、日本の生命線という事だよな?」

「そうなりますな。」

「という事はだ。我々が実質的に日本を支配してるって事にならないか?」

 

錫先の発言に長官室にいた全員の目が見開かれる。

 

「言われてみればそうだな。山がこんな多ければ食糧増産の農地にも限界が来るだろうし、そもそも少ない資源なんて尚更だ。」

「つまり我々が輸出しなければ日本は消滅するから、日本は実質的に我々の傘下になる。」

「もしそうでしたら、あの護衛艦や垂直離着陸が可能なジェット戦闘機を東和海軍(我々)が手に入れられる可能性もあり得るって事ですか?」

「あの技術を独占出来れば茶瑠祢須(チャルネス)なんか敵じゃありませんな。」

 

錫先以外のメンバーは先進的な技術を持つ日本を、実質的な傘下に入れられる可能性に納得した。加えて見ただけで分かる程に優れている日本の技術を、東和が独占して取り込めるかもしれないと妄想した。

捕らぬ狸の皮算用に浸る海軍士官を間ら外務省の面々は呆れた様に見ていたが、その妄想に唯一加わっていなかった広報員 裏戸(うらど) 回夜(かいや)が意を決して錫先へと話しかけた。

 

「妄想に浸っている中で悪いのですが、東和が日本を傘下にするのは不可能だと思います。寧ろ我が国が傘下になるかもしれません。」

「なにっ!?·······そこまで言い切るのであれば何か根拠があるのかね?」

 

ハッキリと断言した裏戸は、彼の態度に興味を示した錫先の手元に2枚の写真を置く。それぞれ端にA・Bと書かれた2枚の写真は解像度こそ違っていたが、どちらも暮田港に停泊する護衛艦「DD-131 しらぬい」を写した物だった。

 

「この2枚は第2機動部隊の護衛艦を写したカラー写真ですが解像度の高いAは海自側が日本製のカメラで撮り、解像度の荒いBが私が愛用のカメラで撮影しました。」

「解像度が違いすぎる········日本製と比べたら我が国製のカメラは子供の玩具じゃないか。」

 

裏戸の説明を聞いていた錫先は2枚の写真を見比べ、自国製と日本製カメラの比べ物にならない技術の差に唖然とした。錫先から写真を渡された津田基と出月も、素人ですら一目で分かる程の違いに目を見開いて驚いた。

 

「それだけではありません。日本製カメラの大半はフィルムの代わりにSDカードと呼ばれる物を使っており、撮影した写真をその場で確認出来る上に削除・加工まで可能だそうです。」

「現像せずに写真を見れるとは凄いとしか言えんな·····しかも加工までカメラだけで出来るとは····」

「分かって頂けましたか。我が国のカメラ技術は日本に完敗していると断言出来ます。そしてこれ程までに高性能なカメラを作れる技術が他に流用されない訳ありませんよね?」

 

広報員として日常的にカメラを使っている彼の完敗宣言には、それ相応の重みと納得感が存在していた。そして、これ程までに優れたカメラを作れるのであれば、他の分野も東和より優れた製品を作れる事は容易に想像できた。

 

「裏戸君。君がもし日本製カメラを使い出したら、東和製カメラに戻す気は起きるかね?」

「100%起きないでしょうな。あんな便利な物に触れてしまったら、我が国製のカメラなんて不便でしか無いのですから。」

「だろうな········」

 

裏戸の回答は分かり切っていた答えだったが、錫先にある確信を抱かせるには充分だった。錫先の確信を外交官の直感で察した間は彼へ話しかける。

 

「つまり日本へ資源を輸出したら、見返りとして格段に優れた日本製製品が導入されて、我が国製品を追いやるという事ですか?」

「あぁ、人間ってのは一度楽を覚えてしまえば何が何でもしがみつく。確かに東和(我が国)は日本の生命線のなり得るが、その日本が持つ技術で寧ろ我々の方が骨抜きにされるかもしれん。」

「それはマズイ! あんな優れた技術が大量に入ってくれば、我が国の産業が壊れてしまう!」

「唯でさえ茶瑠祢須(チャルネス)企業の進出によってTRM圏内での売上が下がっているのに、これ以上下がったら経済が崩壊してしまいます!」

 

外交官が故に自国産業の現状を把握していた間と連月は大いに慌てる。海軍のメンバーも実感こそ無いが、新聞で話だけは知っていた。

これまでTRMで一強だった東和にチャルネスが対抗可能になった事で独占していた地位が脅かされる事になり、そこにより優れた日本が介入すると全てが日本に奪われるのは目に見えていた。

 

「まあ、政府がこれに気づかない訳無いから対処は政府(そっち)にやってもらうとして·······問題は日本と戦争になった場合だ。

彼らの監視を担当した定喜君としてはどう思うかね?」

 

錫先は第4艦隊の旗艦を担う戦艦「夏姫(なつき)」で艦長を務める定喜(さだき) 荷稲(かいな)大佐に話を振る。

錫先と津田基が第2機動部隊からやって来た滝原と照山を歓迎・案内している間、万が一の事態に備えて「夏姫」の艦橋で待機していた彼は第2機動部隊の艦艇を敵として見定めていた。

 

「私としては油断しているであろう今なら、沿岸砲台や陸上魚雷発射管も総動員した奇襲で第2機動部隊を殺れるでしょう。

だが、問題は報復でやって来るであろう艦隊です。奇襲を食らったのです報復として、誘導弾とやらを容赦なく我々の射程外から発射するでしょう。攻撃を受けた我々は何処からの攻撃か分からずに、反撃出来ぬまま全滅して南瑛諸島も占領されると考えております。」

「この諸島ごと占領されるとは相当な度胸だな。日本が本土を占領する可能性はあると思うか?」

「日本の陸上戦力については何も知りませんが、あそこまで優れた誘導弾と航空機を運用可能な技術力を持っている以上、陸上戦力もそれ相応の物を持っていると考えた方が妥当かと。」

「つまり我々が日本へ勝つ手立ては無いと·····これはとんでもない国家と相対する事になってしまったな。」

 

陸海空の全てで日本国に勝てる見込みが存在しない事実に、錫先らは最早呆れるしかなかった。優れた技術力によって国内産業を破壊される可能性もあり、はたまたその技術に支えられた強大な軍事力で侵攻してくる可能性もあり得る為に、東和の命運を握る相手だろうと面していた事実を認識させられた。

 

日本(彼ら)に敵意が無くて良かったよ。あの装備で帝国主義の覇権国家なら、我々はなす術無く敗れてた。」

「無資源国家なら尚更でしょうな。我が国には日本が求める油田と鉱山・耕作地帯がありますから。」

 

日本が温和な姿勢で接してきた事に錫先が感謝すると同時に、彼が普段使いしている机に置かれたダイヤル式卓上電話のベルが鳴る。錫先は黒く塗られた受話器を直ぐに取り、暮田島産の(ヒノキ)で作られた机に肘を付きながら電話相手の話を聞く。

 

「はい······はい······分かりました。横灘浜(よこなだはま)からの電話だ。第2機動部隊に食料を提供する話の了承が降りた。」

「おおぉ! 良かったですな!」

「良かったです。私が食べた時は皆沈んだような顔をしていたので、解消できるだけでも良かったです!!」

 

受話器を本体へ置いた錫先の言葉に海自側の苦しい食料事情を聞かされていた津田基と、苦しい事情を目の当たりにした出月は喜ばしい表情になる。

 

「基地の食料提供は始めてですかね?」

「無論そうだ。まさか私が長官の時に行われるなんてな·····人生って分からないもんだ。」

 

間の質問に答えた錫先は座っていた椅子から立ち上がり、停泊中の第2機動部隊を再度見始める。

 

(ファーストコンタクトから1日しか経っていないのに、ここまで驚かされるなんて信じられんな·······過去の自分に歴史に載るであろう事件を目の当たりにしているなんて言っても、信じないだろうな·····)

 

錫先の独白は日が沈んで暗闇が支配する空へと消えていった。




・艦歴70年目のオンボロ艦
フォレスタル級って朝鮮戦争中に建造が始まったので、劇中の2025年だと就役から70年目の艦が主力を担っているという事になります。
正直今作の設定を作っている際に気づいて青ざめましたw 間違いなく代艦作るか、ニミッツ級を受け取った方が現実味ありそうw

茶瑠祢須(チャルネス)なんて敵じゃ······
チャルネスやカリスなどの冷軽大陸国家には漢字表記を設けていましたが、初登場時にはすっかり忘れていたので今話で初登場させました。
雑な当て字なのは気にしないでくれ·····

・暮田島産の(ヒノキ)で作られた机
暮田島の特産品で作られています。本当は檜等を栽培する林業で栄えている街の設定もあるけど、数話後に出す予定なのでそこまで取っておきます。

横灘浜(よこなだはま)からの電話だ
いきなり出てきた地名ですが、モデルが明白すぎるww
勿論、突発的に考えた訳じゃありませんし、登場予定もあるので詳しい話はそこまでお待ち下さい。
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