New world note in Earth   作:YUKANE

2 / 70
僅か4日でUAが150超え、6人もお気に入り登録して下さるとは思っていませんでした!
読んで下さる人の期待に答えられる様に頑張っていきます!


Episode.1 未知への議論

深夜という暗闇に包まれた1時過ぎの日本はどこも静まり返っているが、今日は人工の灯りと騒然が深夜の日本を支配していた。

理解不能な詠唱と赤いひび割れという不可思議な現象を目にした人々は恐怖を抱き、その直後から衛生通信やGPS・国際通信が出来ない事に気付くと未知への恐怖は混乱へと変わった。

 

不幸な事に1年前の朱雀戦争の記憶が色濃く残っていた市民は、24時間営業の店舗は疎か営業を終えた店にも駆け込んでまで、食料や医薬品・生活必需品を買い占める光景が日本全国で見られていた。

 

また仕事や出稼ぎ・旅行などの様々な理由で日本に滞在していた外国人は、あの現象後を目にした上に母国との連絡が取れなくなった事で大きな混乱に陥り、自棄になって暴動紛いの犯罪を起こして大勢が逮捕される事態が日本全国で多発していた。

 

1時間も立たずに日本全土が隅々まで混乱する中、1400万近い人口を抱える東京都はより一層酷い混乱に包まれていた。

深夜ながら人々の騒ぐ声とパトカーや救急車のサイレンが混じった騒音によって、静かさが消え失せた東京の一角に位置する首相官邸は重厚な警備に囲まれている為か、辛うじて混乱に巻き込まれてるのを防いでいた。

 

しかしながら、首相官邸の内部は日本全国から寄せられた無数の情報への対処で混乱しており、四方八方から怒声の如き大声が響いていた。

 

「駄目だ·······アフリカ諸国も繋がらない!! アジアとオセアニアと一緒なのか!?」

宇宙航空研究開発機構(JAXA)から全衛星との通信が途絶したとのこと!! 日本は疎か世界中の衛星とも連絡がつかない模様です!!」

「日本上空を飛んでいた機体から無数の緊急着陸(ダイバート)要請が出て、管制が麻痺寸前の模様!! え、北九州空港でオーバーラン事故!?」

「横浜市内で外国人による暴動が発生したとの情報!! 鎮圧として陸自の出動を要請しています!!」

 

日本全国の各種機関から寄せられた情報はどれも無視出来ない深刻な物で、その情報に対応する間もなく新たな情報が寄せられる悪循環が起きていた。それらの対処を任せられた政府職員は深夜故の眠気こそ醒めていたが、要求過剰な現状に猫の手も借りたい状況になっていた。

 

「これは酷い·······メディア無しでここまで騒がしい官邸は始めてだ······」

 

第100代目の内閣総理大臣を務める鈴村隆治(たかはる)は、官邸とは思えない程の喧騒に唖然とするしか無かった。

朱雀戦争を2日で終わらせた偉業から70%もの支持率を得た彼は、開戦当日の官邸到着が連絡を受けてから2時間程経ってしまった事を重く見て、首相官邸に隣接した内閣総理大臣公邸に移り住んでいた。災害や戦争といった有事の際に直ぐに駆けつけられるという目録が功を奏し、現象発生から1時間という短時間で官邸へ到着出来た。

 

十年近くに渡って官邸にいた彼ですら見たことが現状に唖然していると、総理に気付いた職員から連絡を受けた総理秘書官の本庄香月と官房長官 大洋洋司が駆けつけた。

 

「総理!! お体に異常はありませんか!!」

「見ての通り、何処にも異常はない。それより官僚らとは連絡が取れているか?」

「全員と連絡が取れています。急いで官邸(こちら)に向かっているが、混乱で到着時間は未定らしいです。」

「そうですか·······取り敢えず今いる人だけで情報を出来る限り纏めましょう。にしてもお二人は私よりも早く着いていたのですか?」

 

官邸の隣に住んでいる鈴村よりも2人が早く着いていた事に彼が驚嘆していると、その2人は意気揚々とその理由を答え出した。

 

「そりゃ我々2人は赤坂の宿舎で寝泊まりしてますから、直ぐに駆けつけられますよ!!」

「24時間365日いつでも駆けつける覚悟が出来ております!!」

 

大洋と本庄の年中夢中で働く宣言を聞かされた鈴村は、この事態が落ち着いたらどうにかして2人に休暇を取らせる方法は無いか考える羽目になった。

 

 

官僚らが官邸に全員集まるまでには2時間ほどの時間がかかり、朱雀戦争時と余り変わらない3時頃から地下一階の危機管理センターで緊急の会議が始まろうとしていた。

 

「取り敢えず現状を簡単に纏めると全地域の諸外国と通信が途絶した上に、国外問わず全ての人工衛星とも繋がらなくなったので、事実上日本が孤立したと言っても良いでしょう。」

 

現状を端的に纏めた鈴村の言葉に危機管理センター内の官僚や職員らの顔色は暗くなる。全ての諸外国や人工衛星と連絡が取れなくなった事は日本の孤立を意味しており、この様な状況に陥るなど日本史どころか世界史でも存在していないだろう。余りにも奇想天外な現状にセンターの全員が理解を受け入れ難い表情を浮かべるしかなかった。

 

「それとJAXAからの人工衛星との通信途絶と一緒に受けた連絡ですが、あの現象の前後で月の形が変わり、星の位置も変わっているらしいです。」

「星の位置が違っている?」

 

鈴村の発言に副総理兼内務大臣の大森弘正が反応する。センターにいる全員の総意でもある疑問に鈴村は本庄から渡されたJAXAの報告を見ながら説明する。

 

「この時期の空にはさそり座やへびつかい座などが見えるらしいのですが、あの現象後に見えなくなったらしい。それどころか星の位置が地球上の何処とも一致していないという連絡も受けている。」

「ひび割れ後の星が全く違っている······まるでここが地球では無いみたいですな?」

「あの現象で日本だけが地球とは別の星に飛ばされたというのですか? 正直信じられませんね。」

「だが、宇宙に関するスペシャリストが集まっているJAXAがそう言っているのであれば間違いないのだろう。」

 

鈴村の話を聞いた大洋や音次辰馬経済産業大臣・栃木昇司防衛大臣がそれぞれの意見を述べるが、どうにかして現状を受け入れるべく納得出来る仮説を作り出す者と、その仮説を受け入れ難いとする者に分かれていた。

世界中のどの神話にも書かれていないであろう現象に、無理矢理でも納得出来る仮説を作らなければならない彼らの表情は重かったが、農林水産大臣を務める城山茂が口を開いた。

 

「でも官房長官の言った通り、ここが地球で無ければ全ての辻褄は合いますな。あの光で日本だけを切り取って別の星に移したのであれば、諸外国や人工衛星と繋がらない事も星の位置が変わった事も説明がつきます。」

 

組ませた両手に顎を載せながら述べられた城山の意見に、センター内の全員が納得しつつもその事実が受け入れるのを拒んでいる重苦しい表情になった。

 

「確かに周りが消えたより、日本が地球から消えたという方が説明はつきますが······」

「いざ信じろと言われるとな······」

「ですがあの亀裂を見てしまったら、信じられる様な気もしますがね·····」

 

官僚らが城山の意見を受け入れる事を示し出すと、鈴村もそれを前提として話を進め出す。

 

「では日本が地球では無い星へ転移したと仮定して話を進めますが、諸外国と連絡が取れなくなった事は食料や資源の輸入先が消えたも同位です。」

「総理の言う通りです。現日本の食料自給率は多く見積もっても40%で、残る60%を海外からの輸入に頼っています。もし、食料輸入国が全て消えたのであれば、この国では半分の国民を生かす食料すらも確保出来ない事でもあります。」

 

城山の厳しい現実を突きつける発言に官僚の顔は重苦しくなる。人類の生存に不可欠な食料を国民の半分以下しか養えない程の食料自給率しか持ってない日本の現状から目を背けていた事を悔むしか出来なかった。

 

「食料だけではありません。無資源国である日本にとって海外は資源の輸入先である上に、重要な輸出国でもありました。それが全て消えたとなれば日本経済は崩壊の道しかありません。」

「海外が消えたならドルやユーロも価値を失うからな·····こりゃあ経済の大打撃は免れないな。」

 

効果的な打開策が思いつかず重苦しい官僚らにとって、音次と大洋の発言は追い打ちに等しかった。日本国民を飢えさせないだけの食料と、経済を支える資源を得る事が最善の答えだがそれが不可能であるのは誰もが理解していた。

 

「既に皆もここに来るまでに知った通り、国民には混乱が起きています。本庄君、そうだろ?」

「47都道府県全てで食料品や燃料・医薬品・生活必需品の買い占めが起きています。国民の殆どがあの現象を目にしたと思われるので、朱雀戦争時よりも酷い状況になっていると思われます。」

「アレよりも酷い状況か·······警察だけの対処ですむのか?」

「それに関しては防衛大臣経由で陸自に治安出動*1を出しています。野党から批判は来るでしょうがやむを得ません。」

「この状況を批判出来る野党なんているんですかね?」

 

大森の発言にセンター内に笑いが出る。開幕から重苦しさが支配していた会場の空気が少し緩んだ事を感じた鈴村は、微かに笑いつつも真剣な議論を再開した。

 

「皆も分かっている通り、我々に必要なのは食料と資源を日本へ輸入可能な存在だ。それを見つける為にも海上自衛隊の艦隊を出撃させるべきだと考えます。」

「でしたら空自や海保・在日米軍にも要請しましょう。探す数が多ければ見つけられる可能性も上がるでしょう。」

「しかし、その最中に領海侵犯とか起こしてしまえば問題になるのでは?」

「それに関しては総理である私が責任を取りましょう。それに“別の星からやって来たばかりで、何も知らなかった”として言い逃れ出来るかもしれませんからね。」

 

鈴村の発言に再度笑いが出る。しかしながら、日本の命運がかかっている緊急事態である事から総理の提案は実行に移される事となり、防衛大臣を経由して各地の海自艦隊や空自・海保部隊に出撃命令が出され、在日米軍に関しても外務省を経由した要請で周辺海域へ出撃する事になった。

*1
警察だけでは対応出来ない場合に治安を回復すべく、内閣総理大臣の命令で自衛隊の展開を行う事




・1年前の朱雀戦争の記憶が色濃く残っていた市民は····
正確には1年半程前ですが、戦後初の戦争が起きたら嫌でも記憶に残るだろうと考えてこうしました。

・首相官邸に隣接した内閣総理大臣公邸に移り住んでいた
前作では公用車で登場する展開でしたが、あの戦争を経験すると緊急時に素早くつけるかが重要になると思ったので、あの1年で移り住んだ事にしました。
最も官邸横に公邸があるのなら使ってやろうと思ったのが大きな要因ですがねw

・赤坂の宿舎で寝泊まり····
宿舎の存在は今話を書いている時に調べて初めて知りました。赤坂の宿舎は官邸からめっちゃ近かったし、菅さんも官房長官時代に住んでいたらしいので官僚の中でも重要な2人はそこで住んでいる事にしました。

・副総理兼内務大臣の大森弘正
前作では副総理という肩書だけでしたが、調べてみたら副総理だけの官僚は存在してなさそうなので内務大臣の役職を与えました。

・農林水産大臣を務める城山茂
彼は今作から登場したキャラですが、前作の内閣にもいたという設定です。
彼にはモデルがいますが、名前だけで分かりそう······
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。