New world note in Earth 作:YUKANE
今回は日本使節団側の話で、海軍艦艇と航空機に関する設定をお披露目する自己満回になってます。
前話で伸ばし棒の繋ぎ方が分からないと書きましたが、“けいせん”と打てば繋げた奴を出せると知りましたので、ガンガン使っていきます。
長距離のフライトを終えて横灘浜海軍基地へ降り立った日本使節団は、基地司令の
南瑛諸島から長らく乗ってきたTP-01に別れを告げてる使節団の上空を七式戦闘機の編隊が飛んでいく。1400馬力もの空冷星型16気筒エンジンと出来る限りの軽量化を施した機体は優れた上昇力や軽やかな旋回性を見せつけていた。
「綺麗な編隊だ。かなり腕の良いパイロットが揃っている様ですね。」
「お褒めの言葉ありがとうございます。あとで彼ら空軍に伝えておきましょう。」
「空軍の機体でしたか。ここが海軍基地なので、てっきり海軍だと思ってしまいました。」
「ここは海軍の基地ですが、飛行場は空軍と共有しているのです。そういえば貴国は海軍と空軍で機体が異なっていると聞いたのですが、本当でしょうか?」
パイロットの腕を褒める松柳空将補に感謝した穂寿美は噂として聞いた話を尋ねた。空自のパイロットとして幾つもの国々の空軍との演習に参加した松柳は、脳内で海軍と空軍で機体を共有している国を引っ張り出す。
「我々の世界ではここ最近になるまで、海軍と空軍の主力戦闘機は別々の機体を使っているのが一般的でして、同じ機体を使っている国は数えられる程に珍しい存在でした。」
松柳は
松柳の説明を聞き終えた穂寿美は自らが珍しい事に内心で驚きつつ、我々よりも先進的な技術を持ちながらソレを両立した数少ない国々に感心を抱いた。
松柳が話し終えて間もなく、双発機が七式戦闘機に続くように彼らの真上を飛んでいった。ファウラーフラップや蝶型補助翼を取り付けた主翼を中翼配置した機体の胴体下に設けられた観音扉はソレに与えられた役目が爆撃機だと知らしめていた。
「確かアレは──六十八式爆撃機で合っていたでしょうか?」
「御名答です。最新の六十八式爆撃機は空軍の主力爆撃機として使われております。」
「最新鋭って事ですか。前任の機体も見れるでしょうか?」
「前任の六十一式爆撃機でしたら、あちらに駐機しております。」
穂寿美が指差した先には六十八式爆撃機と似た双発機が複数駐機していた。穂寿美が六十一式と呼んだ機体は沈頭鋲の使用で空気抵抗を出来る限り無くした胴体とガラス張りになった機首を持っており、使節団参加に伴って旧陸海軍の機体を頭に叩き込んだ松柳は瓜二つな機体を直ぐに導き出した。
「九七式重爆か······東和はよほど陸軍機が好きなみたいだ。」
「チャルネスは海軍が輸送機に使っていたDC-3を持っているみたいだし、あっちに零戦とかありそうだな。」
羽根崎との会話でチャルネスにDC-3がいる事を知った桐島は、あっちに海軍機を持っている可能性を仮定する。松柳も桐島の仮定に同意する中、使節団の案内役を任された
「おぉ······そうであったな。日本使節団の皆さん、時間も余り無いので海軍艦艇の見学にいきましょう。」
短い会話を終えた穂寿美はあからさまで無理やりながらも方針転換を目論んだ。奇しくもレトロな航空機に惹かれつつも、唯でさえ短いスケジュールに不安視していた他の使節団も頷いて同意した為に、穂寿美の先導で基地を歩いていく。
途中でTP-01をベースとした輸送機と遭遇しつつ隊列を組んで歩いていた日本使節団は、基地内に通された在来線よりも狭い線路の踏切に行く手を遮られた。
「赤く光るのは一緒だけど、音は鐘で鳴らしているのか·····」
「暮田も同じ方式でした。何かチグハグで面白いですね。」
交通を知り尽くした吉田と暮田で既に見ていた凜音が話す中、港の方から貨物列車が姿を現す。今の日本では使われていない有蓋車や無蓋車に吉田が感心を寄せいたが、幾つもの貨車を後ろから押す機関車が現れると吉田は疎か使節団全員の表情に驚きが現れた。
「おい、SLってもう少し煩いんじゃないのか?」
「だよな──しかも黒い煙を出して走ってないぞ。」
「何か変なSLですね。吉田さんはこれが何か知ってますか?」
使節団の皆が白い煙出しながら走っていくSLの写真を撮っていたが、車体前部のシリンダーから伸びるロッドによって動輪を動かす見慣れた構造にも関わらず、自らが知っているSLとは思えない程の静かさに使節団の皆は困惑していた。
使節団の中で唯一困惑せずに興味深そうに眺めていた吉田の様子に気づいた麗音が彼へ話しかけた。
「えぇ勿論。あれは
「“むか”機関車? なんですかそれ?」
「“火が無い”と書く通り、石炭や石油・天然ガスといった化石燃料を使わずに動くSLで、今通ったのは水蒸気で動くタイプです。火を一切使わない性質から工場やトンネルといった火気厳禁な場所で使われています。」
「SLって水蒸気で動かせるんですね·······」
吉田の説明に凜音が感想を漏らしている間に列車は過ぎ去り、彼らの行く手を遮っていた遮断棒が上がる。遮断棒が上がり切ると日本使節団は穂寿美と井都築に連れられて歩き出すが、線路の上で直ぐに立ち止まった。
「何だか線路の幅が大きいような気がしないか?」
「確かに──暮田は日本の在来線と同じ幅だったのに、これは大きいですよ。」
「パット見ですと新幹線の線路幅ぐらいありますが──井都築さん、この線路幅って分かりますか?」
「これは
「··········何ですって?」
経済産業省の八巻が抱いた何気ない疑問から生まれた問いに井都築が答えたが、それを聞いた吉田は絶句した。彼の異常な様子に気づいた麗音は思わず話しかけた。
「吉田さん、動揺しているみたいですが何かありましたか?」
「えぇ──1435mmの線路幅、所謂標準軌は新幹線や海外で使われている線路幅と一緒なんです。」
「··········はい?」
吉田の話を聞いた麗音は彼が動揺していた意図を理解した。東和は日本に似て非なる異世界の国家であるにも関わらず、線路幅が一寸の狂い無く同じという事実は最早不自然と言える程であった。
「東和もメートル法を使ってはいますが、ここまで一緒なのは単なる偶然じゃ説明出来ませんね。」
「えぇ──地球人がやって来て文明を作ったという説も現実味を帯びてきましたな。」
麗音と吉田が冗談として話していた話題が現実味を帯び始めている事を認識している間に、目的地へ到着した穂寿美は足を止めた。
「日本使節団の皆さん、ご覧ください。我が東和海軍が誇る大艦隊の姿です。ここ横灘浜には精鋭の第1艦隊と機動部隊の第3艦隊・後方支援を主任務とした第6艦隊の3艦隊が配備されています。」
自慢げに話す穂寿美が指差した先には灰色を身に纏い、巨大な砲塔を幾つも抱えた軍艦が桟橋や沖合といった様々な場所に何十隻と停泊していた。今の日本では見る事が無いであろう巨大な主砲を抱える姿は日本使節団の皆を圧倒する威圧感を醸し出し、倒す手段を持っているのも関わらず勝てないと思わせる程の覇気を放っていた。
「これが東和海軍───分かってはいた筈だが、ここまで大口径が並ぶと圧巻されるな·······」
「
「あんな大口径砲で撃たれたら一師団は軽々と消せるな·····」
「こんなのに挑んでいた旧軍のパイロットは命知らずとしか言えん·······」
桐島ら陸海空自衛隊から派遣された面々と防衛省の三田は、桟橋に停泊する夏姫級戦艦の姿に圧倒される。彼らはこれの射程外から一方的に倒せる兵器を知っているのだが、いざ間近で見るとソレが通用しないのではと言う疑惑を抱かせるには充分過ぎる重厚感と強さを見せつけられていた。
「そこまで驚かれるとは思ってもいませんでした。確か日本には戦艦が無いとお聞きしましたが、もしかして戦艦を初めて見られたのですか?」
「えぇ──一応何隻か保存されているのですが、現役の戦艦は初めて見ました。現役の戦艦がここまでの勇ましいとは思っていませんでした·······」
穂寿美は夏姫級戦艦に想像以上に圧倒されている面々に内心で驚きつつも、錫先から送られていた報告と桐島らの話を聞いて納得した。
主砲を1門しか持たない艦艇が大半を占める彼らにとって、ミサイル如く太い大口径砲を持つ戦艦は見た目以上の強さを醸し出し、それが現役であれば尚更勇ましく魅せられていた。
魅せられていたのは自衛隊関連の面々だけではなく、国山ら霞が関勤務の面々も思わず写真を撮る程に圧倒されていた。
「いやはやとんでもない迫力ですね。」
「ロンドンで展示されていた
「えぇ、あっちの船は三笠みたいな見た目ですね。」
「三笠みたいな見た目の船?」
麗音の発言を聞いた桐島が彼女の方を向くと、その先には主砲を背負い式で配置した一隻の戦艦が停泊していた。クリッパー形と呼ばれる凌波性に優れた垂直な艦首を持つその戦艦は、最新鋭の夏姫級よりレトロな雰囲気を放ってはいたが、計4基の32.6cm連装砲は護衛艦を一撃で沈められる覇気を放っていた。
「おぉ、一代前の戦艦だ。所謂弩級戦艦って奴だ。」
「えぇ、あちらは我が東和海軍唯一の
「練習艦でも現役の弩級戦艦を見れるとは·········ん?」
穂寿美と話した三田は何とも言えぬ違和感に苛まれたが、他の面々は違和感に気づくこと無く塩生級の後ろに停泊する軍艦に興味を示していた。
「塩王級の後ろは巡洋艦でしょうがかなりデカいですな──重巡と言っても過言では無いな。」
「あれは戸妻級巡洋艦でして、我が海軍唯一の巡洋艦です。」
「我が海軍唯一?──あれ一隻で巡洋艦を全て賄っているのですか?」
巡洋艦の説明を聞いていた桐島は疑問を抱き、その疑問に穂寿美が答えた。
「えぇ、我が海軍もかつては装甲巡洋艦と防護巡洋艦で分けられていましたが、現在は戸妻級によって両艦の役割が纏められました。」
「軽巡と重巡を共有しているとは興味深いですね。」
重巡と軽巡を纏めている東和海軍の独自性に興味を示した桐島が周囲を見回すと、対岸の埠頭に停泊した異質な艦が視界に入った。
周囲の水上艦と違って乾舷が低く、表面を滑らかに整えた船体と一体化した艦橋を持つ艦影から、元空自ながらも海自にどっぷりと浸かった桐島はその艦種を直ぐに見抜いた。
「おぉ、潜水艦だ。涙滴じゃない潜水艦は日本じゃ見れないから新鮮だ。」
「日本の潜水艦は形状が違うのですか?」
「えぇ、日本というか元いた世界では鯨みたいに丸っこい船体が一般的になってました。」
「鯨みたいな船体ですか──見てみたいものですな。」
日本が保有する鯨の様な潜水艦に興味を唆られた穂寿美に井都築が小声で話しかける。井都築の話を聞き、利き手の右手につけた腕時計に目を落とした穂寿美は驚いた小声を漏らす。
「思っていたよりも早く時間が来てしまった様です。皆様にはもう少し色んなモノを見て頂きたかったのですが······」
「これだけでも充分です。短い時間ながらありがとうございました。」
今まで空気だった国山が使節団代表らしく穂寿美へ感謝の言葉を述べ、握手を交わす。
「皆様にはこれから東和陸軍を見て貰いますので、横灘浜郊外の演習場に車で移動して頂きます。」
穂寿美への感謝を終えた使節団に話しかけた井都築の先には、黒塗りのIU-4がドアを開けた状態で止まっていた。要人を乗せるのを待ち侘びている様にも見えるIU-4に使節団は乗り込んでいき、暮田と同じく六十三式装輪装甲車の護衛を受けながら次なる目的地へ発進していった。
・空軍と海軍で同じ機体を使っている国
F-35の登場で変わってきましたが、ジェット機が主力になって以降だと空軍と海軍で同じ機体を使っている国って本当に少ないですね。
なおロシアは後書きを書いている際に思い出して急遽付け加えましたw
・六十八式爆撃機
東和空軍が運用する爆撃機で、外見モデルは一〇〇式重爆撃機 呑龍。
チャルネスが航続距離に優れた爆撃機を配備したのを受け、優れた防弾性能を維持しながら自衛火器や爆撃能力・航続距離を向上させた機体として名時航空工業で製造された。
爆弾搭載量増加や防弾装備の充実によって大型化した機体に最新のファウラーフラップや大口径化した自衛火器を備え、各種性能が前任の六十一式の上位互換だった為に空軍爆撃機の主力を担っている。
・六十一式爆撃機
東和空軍が運用する爆撃機で、外見モデルは九七式重爆撃機。
周辺国の近代化によってそれまでの爆撃機では充分な戦果を得られなくなった為に、最高速度と航続距離を高めつつ爆弾搭載量を増加させた機体として津宮飛行機で製造された。
内開きの爆弾倉や沈頭鋲・着陸脚の完全収納といった徹底的な空気抵抗削減を施す事で迎撃機を振り切れる速度を手に入れつつ、80mmもの防弾ガラスや窒素を用いる自動消火装置・燃料タンクを覆う防弾ゴムといった防弾装備を搭載して優れた防弾性能も保有している。
現在は六十八式爆撃機の配備で一線からは退いたが、爆撃練習機や対潜哨戒機として使われている。なお主翼やエンジン類は開発中だったTP-01に流用されている。
・
ネタバレにはなってしまいますが、チャルネスやカリスといった周辺国の機体も大半が旧軍機になっています。
暫くしてから出てくるので初登場した回の後書きで説明しようと思ってます。
・TP-01をベースとした輸送機
今回は名前を出しませんが、しっかり設定は作ってあるのでいつか出す予定です。
・無火機関車
東和軍では弾薬や食糧といった物資の輸送用に本線からの専用線が基地内に敷かれていますが、万が一弾薬に誘爆したら1944年の沖縄県営鉄道輸送弾薬爆発事故みたいな大惨事になるので無火機関車を使っています。特に戦艦の主砲弾といった弾薬の塊が山程あるので無火機関車必須だと思います·······
今作では沢山の種類のSLが登場する予定なので、蒸気機関車好きは楽しみにして下さいw 因みに作者のSLに関する話は基本的に64denden氏から仕入れてます。
・線路幅について
前々から点々で強調していたので気づいた人もいるかもしれませんが、東和と地球の線路幅は一緒にしてあります。あからさますぎるかもしれませんが、これも伏線になってますのでいつかの伏線回収を首を長くして待っていて下さい。
・塩生級戦艦
東和海軍が運用する唯一の弩級戦艦。
急速的に近代化したチャルネス海軍で単一巨砲やバイタルパートを採用した弩級戦艦の開発が開始された為に、同じコンセプトを用いた弩級戦艦として建造された。
石油と重油の混焼ボイラーと新開発された蒸気タービンを合わせた機関によって22ノットもの高速性を持ち、背負い式で配置された32.4cm連装砲はバイタルパートを集中させた事で防御性能を上げている。
それ以外にも駆逐艦の主砲を副砲に転用する事で砲弾の共有出来る様にし、後甲板には火薬式カタパルトと回収用クレーンを搭載する事で東和海軍初の航空機運用能力を得ている。
現在は夏姫級などの超弩級戦艦の就役で一線から退き、練習艦や上陸支援艦・試験艦・標的艦に改造されて運用されている。
・戸妻級巡洋艦
東和海軍が運用する巡洋艦。
それまで装甲巡洋艦と防護巡洋艦がそれぞれ担っていた役割を一隻で担える巡洋艦として建造された。
その建造目的から艦形は大型化しつつも、最新の重油ボイラーと蒸気タービンを搭載する事で30ノット超えの速力を有している。
新開発された21cm連装砲を主砲として背負い式で搭載し、駆逐艦と砲弾を流用可能な副砲と連装高角砲・爆雷投射器・爆雷/機雷投下軌条等も装備している。
巡洋艦として初めて水上機運用能力を得たことも相まって、多種多様な任務を単艦でこなせる万能艦として多数の艦が建造されている。
・東和海軍の潜水艦
今回は艦級名に関しては書きませんが、現在のところ2つの艦級が出来上がっているのでいつかの登場をお楽しみにしてください。
◇
今回は艦艇の簡易説明文も加えてみました。陸上兵器と航空機でやったのなら、軍艦もヤラないと失礼ですよね?
余談ですが韓国で厳戒令が発せられたかと思えば、イラクのアサド政権が崩壊するとかどういう事ですか?
こんな短期間で先進国の政権が2つも揺らぐなんてフィクションでもそうは無いですよ