New world note in Earth   作:YUKANE

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今回は東和使節団側のお話です。出来れば今年度中にもう1話投稿したいですね。

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Episode.21 互いの考察

福岡タワーや九州国立博物館・太宰府跡・太宰府天満宮を見学し終えた東和使節団は、宿泊するホテル日航福岡内の鉄板焼店でコース形式の夕食を食べ終え、小さめの会議室で食後の休憩を取っていた。

 

「佐賀牛とやらは柔らかくて美味しかったですね。」

「私としてはオマール海老のポワレ*1が好みでした。あと八女抹茶のプディングも美味しかったです。」

 

使節団団長を務める風凪と経済監査官の井手浦は、派手な見た目では無いものの高級品の雰囲気を醸し出す椅子に座りながら、九州産の高級食材をふんだんに使った料理の感想を交換し合う。

使節団がいる会議室はシャンデリアこそ無いが高級感を存分に振りまいており、その高級感に怖気(おじけ)づかずに堂々とした雰囲気でいる様子は、彼ら彼女らがこの様な場に手慣れている事を知らしめていた。

 

「さて──休憩もここらにして、明日の確認と今日の意見交換でも始めようか。」

 

風凪の発言で面々のだらけていた姿勢は真っ直ぐになり、表情も仕事モードへ直ぐに切り替わった。

 

「明日は大分県の築城基地で日本の空軍である航空自衛隊によるデモンストレーションを見学した後、新幹線とやらで日本第二の都市 大阪へ向かう予定になっております。」

「唯でさえ燃料が無い状況にも関わらず、我々の為にわざわざデモフライトをして下さる辺り、何が何でも東和(我が国)と国交を結びたい様ですね。」

「あぁ、唯でさえ燃料が少ない現状でデモフライトなんかしたら、野党や馬鹿なメディアが黙っていないだろうにそれを承知でやる辺り、我々に国の行く末を託しているのだろうな。」

 

補佐官である積田が明日の予定を話すと、既に日本の燃料事情が厳しいを知っている井手浦と風凪がデモフライトに対して呆れつつも、厳しい選択を迫られている日本政府の苦労を案じた。

 

現在の日本は国内に点在する石油備蓄基地が蓄えてた燃料を放出した上で、自家用車の利用制限を筆頭とした出来る限りの節約を実施して何とか持ち堪える状況だった。政府自らの呼びかけと前代未聞の事態に陥っている事も相まって、国民も積極的に協力した事で、転移から約二週間が経った現在でも国民生活の維持に成功していた。

 

国民一丸で節約に努めている中で、燃料をバカ食いするジェット戦闘機によるデモフライトを行えば政府へ批判が向けられるのは目に見えていたが、東和に自らの凄さを見せなければならないにも関わらず、やった場合は国民から裏切り者として批判されるという難しい選択を政府は迫らせていたのだろうと想像出来た。

 

「まあ、折角やって下さるのであれば存分に驚かせて頂きましょう。」

「そうだな。羽沢が意識を保っていられるか怪しいが─」

 

場を動かそうと発言した交通統括局副局長の麻見田に応えた風凪は空軍代表の羽沢へ話を振り、いきなり話題を振られた羽沢は身をビクッと驚かせた。

 

「え、えぇ──昼間のT-4(アレ)以上の機体となると最早恐ろしいとか言えませんが·······」

 

到着時のT-4(レッドドルフィン)に大いに驚かされた羽沢であったが、見学の移動中に自らを驚かせた機体が非武装の練習機だと知ると、文字通り顔を真っ青に染めて絶句していた。

羽沢の反応に会議室の空気は気まずくなるが、それを察した麻見田が再び空気を変えるべく動き出した。

 

「まあ、明日の話はこれくらいにして今日の意見交換に移りましょう。」

「それもそうだな。取り敢えず今日の視察で得た専門分野の情報を共有しよう。」

 

麻見田の発言に乗っかった風凪によって話の内容は専門分野の意見交換へ移り、これでも麻見田が先陣を切った。

 

「じゃあ言い出しっぺの私から行かせて頂きます。今回我々の移動に使われたのは東横*2高速道路と同じ高速道路でしたが、日本全体の総延長は10000kmにも及ぶそうです。

しかも24時間開いており、転移前であれば真夜中でもトラックやバス以外に自家用車も沢山走っていたとの事です。」

「大陸国家の東和ですらまだ300km足らずなのに、小さな島国に10000kmの高速道路が開業しているとは信じられん──しかも24時間営業とは恐ろしいもんだ。」

「ですがあの様な高速道路が24時間営業であれば、軍隊の移動は非常に楽でしょうな。」

 

風凪が日本の高速道路事情に驚いている中、陸軍代表として派遣された西尾(にしお)回次(かいじ)少佐が話に割り込んできた。

陸軍大臣補佐官を務める前にTRM参加国へ軍教官として派遣されていた彼は、未発展の道によって派遣された軍の移動が困難になっているのを見ていたが故に、軍事的な面から日本の道路事情を素晴らしいと判断していた。

 

東和陸軍(我々)の移動は鉄道に頼り切っていると言って良いですが、移動する際には交通省に一々申し出る必要がある上に専用列車のダイヤ作成にかなりの時間を要しています。

ですが、高速道路を使えれば交通省の許可を得る事無く移動出来ますので、国防上かなり有利になるでしょう。」

 

西尾は国防の観点から高速道路の凄さを訴えたが、交通省との面倒くさい交渉をやり無くないという本心が滲み出ていた。特に交通省の麻見田は“交通の女王”と呼ばれている自らの上司を思い浮かべて苦笑いした。

 

会議室を苦笑いが包む中、井手浦が空気感を変えるべく切り込んだ。

 

「高速道路の24時間営業という点から無理矢理繋がせて頂きますが、日本中にはコンビニと呼ばれる24時間営業の小さなスーパーマーケットが複数の企業によって日本全国に何万と年中無休で営業しております。

現在は転移による品不足によって半数近くが閉まっているそうですが、それでも万単位の店が営業しているらしいです。」

 

井手浦の話を聞いた皆は年中無休で24時間営業をする店が万単位である事実に驚く。

 

「コンビニって町中を走っている時にチラホラとあった小さなお店の事ですか。結構短い間隔であった様に思えましたが、利益は出るんですかね?」

「24時間営業の店舗が何万もあるとか正気か······」

「そんな店があったら個人商店など潰れてしまうな····」

 

それぞれが抱いた感想を述べる中、井手浦の部下である古神がテーブルに品を並べる。人間の生命維持に不可欠な食品こそ完売していたが、辛うじて売れ残っていた文房具や生活雑貨・肌着などが次々と置かれていった。

 

「これはコンビニで売っている品々で大半が1000円以内の金額で売られています。」

「ボールペンに歯ブラシにビニール傘にパンストがあの小さなお店で売っているのか? ここまで種類が違う品が揃うお店など東和(我が国)には百貨店ぐらいだぞ!」

 

店の規模に対して品揃えが釣り合ってない事に風凪は驚き、他の面々も興味深く品々を眺めつつ触り出す。

 

「何だこのボールペン!? 書き心地が全く違うぞ!!」

「このビニール傘は指しても周囲が見れるのは高評価だな。是非輸入したい物だ。」

「このパンストがスーパーで買えるんですか? 東和だと専門店で売ってる代物ですよ。」

 

コンビニの品々に触れた面々は、この品質の品が百貨店や専門店でなく日本中何処にでもある店で買える事実と、無資源国がこれ程までの品々に囲まれた恵まれた生活を送っている事に驚かされた。

 

「·····やっぱり日本人って色んな物を一つに纏めるのが好きみたいですね。」

「一つに纏めるたがるのは同意ね──やっぱりってこういうのが他にもあるの?」

 

東和に関する情報の統括を担当する情報省から派遣された藍浦(あいうら)美葉(みよう)が、ボソリと呟いた発言に井手浦が反応する。藍浦は常にかけている眼鏡を指で押して位置を上げると、重要だろうと判断した情報を書き記したメモ帳を見ながら一同に向けて話し出す。

 

「日本人の大半が持っているスマートフォンとやらは携帯電話と呼ばれており、文字通り手に持てる程に小さいながら電話が出来ます。

ただ現在主流のスマートフォン以下スマホは電話だけでなく、カメラや電卓・ボイスレコーダー・地図・辞書・メモ帳等々が内蔵されています。あの小ささでこれらが内蔵されているモノを作れる国に東和は敵わないと言い切れます。」

「あの薄いモノに今言ったのが全部入っているのか?──デマであって欲しい代物だな。」

 

薄い板に多すぎる程の機能が詰め込まれている事に一同は困惑し、風凪の発言が藍浦以外の全員の心境を現していた。しかしながら、日本の案内役やドライバー・訪れた場所の職員ですら持っているのを見ていた事が藍浦の話が事実だという証明になっていた。

 

「初日でこの驚きようか──こりゃあ首都に行ったら驚きの連続かもな。」

 

風凪の発言は全員の総意であり、これからどれ程の驚きが待っているか期待と不安が入り混じりながら意見交換は続いていった。

 

 

「本日の見学と夕食に東和使節団の皆さんは満足してくれたそうです。」

「それは何よりです。あの方々が日本の生命線を握っている以上、ここで機嫌を損ねる様な失礼があってはいけませんので。」

 

東和使節団が意見交換を行っている中、ホテル日航福岡のツインルームでは案内役を任された脇山衆一と補佐の関根優希が、博多を見学した使節団の反応について話し合っていた。

国内で食糧を自給出来ている上に化石燃料と鉱物が埋蔵している東和の機嫌を損ねる事は日本の最後の希望が絶たれる事と等しい為に、使節団側の反応が良い事に2人は安堵していた。

 

「このまま機嫌を損ねずに会談まで持っていきたいものだ。」

「そうですね。話は変わりますが園田さんから聞いた通り、東和の人々は英単語を使ってましたね。」

「聞いただけでは信じられなかったが、いざ生で見るとああまで自然に使っているとは驚かされたな······」

 

東和の人々が難なく英単語を使いこなしている話が事実だと認識した2人は驚かされたが、表情に出て驚きを悟られない様に内心に留めた。

 

「TRMとやらには英語を使っている国が無いらしい以上、絶対に何か裏があるのは間違いないが今は黙っていた方が良いな。」

「関係悪化が致命傷となる以上、その方が間違いないでしょう。それと単位に関する話も確信が取れました。」

 

話を切り替えた関根は自らのスマホで撮影した写真を脇山へ見せる。

スマホの画面に写っていたのは二つ折りに出来る木製の折り畳み定規と、一般的な透明のプラスチック製定規をピッタリくっつけて並べた写真だった。密接して並べられた2つの定規の値はピッタリと一致しているが、折り畳み定規は地球と縁もゆかりも無い筈の東和製だった。

 

「風凪団長の補佐を務めている積田さんが携帯定規を持っていたので、拝借して撮らせて頂きました。ついでにこっちのスタッフも持っていたので、並べて撮ってみたところこうなりました。」

「並べてみると値が寸分の狂いなく一致しているのが、ハッキリと分かるな。単位が同じなのは楽ではあるが、ここまで一緒だと恐ろしく感じてしまうな。」

 

東和とはつい先日知り合ったばかりにも関わらず、言語や単位に一致点が存在しているのは不可解な疑問と恐怖を抱かせた。日本と東和両国の言語や単位が一緒であれば話し合いや輸出が楽な反面、余りにも出来過ぎているが故に神の様な人智を超えた存在が日本の為に作り上げた存在だと疑わざる終えなかった。

 

「聞きたい事は山程あるが、下手に聞いて機嫌を損ねては国家存続に関わるから今は辞めておこう。」

「聞くのであれば国交成立から1年後ぐらいでしょうかね?」

 

2人は矛盾としか言えない疑問という私情を国家存続の為に切り捨てる。ツインルームを静寂が包む中、さっき聞いた話を思い出した関根が脇山へ話しかけた。

 

「そういえばさっき報告を受けたのですが、日本全土で食料不足の中、東和使節団に豪華な食事を提供した事に非難の声が上がっているらしいです。」

「馬鹿馬鹿しい──あの方々らによって日本をいつも通りに戻せるかもしれないのに。まあこういう人は自分の鬱憤を政府にブツケたいだけなので無視していいでしょう。」

 

この状況であっても政府を批判する人々に呆れ返る脇山の言葉に関根は頷く。使節団の機嫌を損ねずに会談へ持っていきつつ、国民からの批判を受け流すという重荷を背負わされた2人は溜息をついて明日へと備えようと決めたのだった。

*1
表面をカリッと焼き上げる技法

*2
東和と横灘浜を結んでいる為に両都市の頭文字を取って名付けられた




・ホテル日航福岡
このホテルは実在しており、博多の豪華ホテルで調べたら一番最初に出て来たので選びました。ふと宿泊金額を調べたら一番小さいであろうシングル・スタンダードでも2万円近くとか嘘でしょ········
実在しているホテルって事で察した方もいるかもしれませんが、東和使節団が夕食を取った鉄板焼き屋も実在しています。店名こそ出しませんが、メニューは店のものを使わせて頂きました。

これ訴えられないよね?·······

・築城基地での空自デモフライト
展開がまんま日本国召喚ですが、東和との地理関係上こうするのが一番自然だったので気にしないで下さい。

・現状のコンビニ事情
前に書いた通り、転移の混乱で商品の買い占めが起きて販売出来る品が少なくなった上に、食料品については殆ど入荷しなくなって従業員の給料と売り上げが釣り合わなくなっていた為に、近くに別のコンビニがある店舗は臨時休業措置を取られています。
その為にコンビニの距離が近い都市部では結構閉まっているが、コンビニ同士の距離がかなり離れている田舎では開いているという逆転現象が起きている。

因みに作中で売れ残っていた商品として上げた物は自分の勝手な想像なので、実際にこうなったら何が残るのやら·····

・脇山衆一と関根優希
今作から登場したこの2人にはモデルがいます。モータースポーツ好きでしたらDENSOと39でモデルが誰か分かると思います。

・豪華な食事に対する批判
これ実際にあり得そうだから笑えないんだよな〜
どうやって食品を集めたとかは考えてないので、読者の想像にお任せします。


本編とは全く関係ないですが、フランス海軍機動部隊の沖縄来日に衝撃を受けてます。イギリスとイタリア空母に続いての来日とか数年前なら信じられませんねw
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