New world note in Earth   作:YUKANE

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UA7000突破ありがとうございます!!

今回は東和使節団側の話ですが、前述した築城基地でのデモフライトは完全に省略します。東和陸軍と同じく描写を今度に取っておく意味もありますが、ただ単にカットする描写を多くしないと唯でさえ遅い話が進まないと判断した為です。

何気にニュースを見てたら2025年(今年)の7月に参議院選挙が控えている事に気が付きました。本作では転移というイレギュラーな事態に対応すべく延期されているとでもしましょうかね?


Episode.24 最古で最速な新幹線

日本滞在2日目となる14日を迎えた東和使節団は、泊まっていたホテル日航福岡内の日本料理店で和風の朝食を食べ終えると、昨日も乗ったレクサス・LS600で本日最初の目的地 築城基地へと向かった。

 

築城基地では当基地を根拠地とする第8航空団第6飛行隊のF-2AとF-2B 2機ずつと、隣県の新田原基地に配備されている第5航空団第305飛行隊のF-15Jと第307飛行隊のF-35JA 2機ずつが待機しており、基地上空で東和使節団へデモフライトを見せつけた。

ここを訓練場とするF-2はコンバットディパーチャー*1や低空からの対地攻撃デモンストレーションを披露し、F-15Jも負けじと高速旋回と宙返りを使節団へお披露目すると、大トリを任せられたF-35JAはソニックブーム*2が発生する程の高速飛行を見せつけた。

 

航空祭でも見せないようなアクロバットな飛行は使節団面々に強烈な印象を与え、築城基地から次の目的地に行く道中でもずっとデモフライトに関する話が続いていた。

 

「我が国が初めて単葉戦闘機をお披露目した際はとある新聞社が“彗星の如し速さ”と書いてましたが、あれこそが正に彗星の如し速さですよ!!」

「軍部や製造会社には悪いですが、あんなもの見せられたら七式ですら玩具(おもちゃ)ですよ。」

 

行きと同じく黒塗りのレクサス・LS600に乗っている西尾(にしお)回次(かいじ)少佐と嵯峨浦(さがうら)明二(めいじ)准将は、白い革張りの後部座席に座りながら未だにデモフライトについて熱く語り合っていた。

それぞれ陸軍と海軍に所属している2人は航空機の専門知識を持っていなかったが、素人の2人であっても空自の戦闘機は自国の戦闘機を圧倒する実力を持っている事を分からされた。そして軍部から派遣された3人の中で、唯一航空機の専門知識を有する羽沢(はざ)零季(れいき)は助手席でずっと顔を青ざめさせていた。

 

「あれを富来空軍大臣が見たらどう反応するのだろうか?」

「羽沢さんと同じくソニックブームを見て腰を抜かすかもしれませんねw──あれ? 顔が青くなってますが酔いましたか?」

「いえ、酔っては無いのですが·······机上の空論でしかなかったソニックブームを目の前で見せられたら腰抜かしますよ·········あぁあんな機体馬鹿げたを上は信じてくれるだろうか。」

 

自らも戦闘機に乗る羽沢はデモフライトの機体がどれ程の脅威か明白に理解したが故の恐怖と、この事実を自分の上司が受け入れてくれるかという不安に(さいな)まれていたが、彼女の話を聞いた西尾と嵯峨浦もアレが敵になった時にどれ程の存在になるか考えさせられた。

 

「よくよく考えると、あんなのが敵になったら勝ち目が無さそうだ······」

「幾ら低空で爆撃するとはいえ、あんな速い機体を撃墜なんて不可能だ。弾を当てただけでも奇跡になるレベルだ。」

「しかもアレらは日本独自ではなく、アメリカという外国の機体をベースにしていると聞きました。つまり地球にはアレみたいな機体を持つ国が山程あるという事です。」

「沢山の国々がアレを持っている·······無茶苦茶な世界だな。」

 

自分達が最強だと信じてした艦隊や航空機を圧倒的な差で捻じ伏せれる存在を、限られた超大国だけでなく中小国すらも持っている地球が如何にイカれているか3人が呆れてものも言えなかった。

突きつけられた現実に悲観して無言の3人が乗ったLS600hは次の目的地である小倉駅へ到着した。

 

九州で3つしかない政令指定都市の北九州市最大の駅で、九州の玄関口として機能する為に博多駅に次ぐ利用者数を誇る巨大なターミナルに車から降りた使節団の面々はその迫力に驚かされる。

駅ビルとしては大きすぎる地上14階建ての駅舎は使節団を圧倒し、ビルの2階へ突き刺さる様に伸ばされた北九州モノレールの線路は見たものに近未来感を実感させた。

 

この規模の駅が首都どころか地方の中心地でもない事に驚かされている使節団を、案内役の脇山と関根が小倉駅の中へ連れて行く。

厳しい燃料統制によって自家用車が使えない今の日本では各種交通機関が移動手段になっており、新幹線だけでなく博多や大分へ伸びる路線が集まる小倉駅には平常時より多い人が集まっていた。

 

そんな大勢の利用者で混雑している小倉駅の構内を警備員の壁で仕切られた通路を通っていく東和使節団の姿は非常に目立ち、駅にたまたま居合わせた人々は初めて見る東和人の姿を自分自身やスマホの瞳に収めていく。

 

「あれが東和の人々か─あんま日本人と変わらん見た目だな。」

「あの見た目じゃあ日本人と区別つかないねw」

「異世界の人なんだから魔法とか使えたりしないのかな?」

 

初めて目撃した東和人を動物の様に珍しい物を見る目つきで眺めた国民はそれぞれが勝手に抱いた印象を述べていき、その身勝手な空想は雑踏の中を歩き続ける使節団の面々にもしっかり聞こえていた。

 

「動物園の動物ってこんな目線で見られているんですね····」

「あんな変わんないって──別世界の人間はどんな見た目しているって思っていたのやら·······」

「魔法とか使えてもこんな見た目してて良いとは思わんないか?」

「何だかすいません───市民からすれば異世界の人間を初めて見たので、ご了承ください。」

 

動物や人外の様に見られて弱冠不快になっている使節団は、謝罪する脇山に連れられて小倉駅の中を歩いて新幹線ホームへ向かっていく。

使節団は4階に設置された2面4線の新幹線ホームにエスカレーターで上っていき、大阪や名古屋・東京方面の上り列車が発着する13・14番線ホームへ着くと、黒縁眼鏡をかけたスーツ姿の男が近づいていく。

 

「東和使節団の皆さん初めまして。私は皆様にここから乗って頂く専用列車と、専用列車が走る山陽新幹線の説明を任されました国土交通省鉄道局の南川陽介と申します。」

「使節団代表の風凪です。専用列車とはわざわざありがとうございます。」

「これが噂の新幹線ホーム──お、おぉあれが新幹線!! 何てスタイリッシュな車両なんだ!!」

 

南川と風凪が名刺を交換して握手している間に交通省の麻見田は新幹線ホームを興味深く見回し、反対のホームに新幹線が入ってくるとその姿を舐めるように眺めた。

博多や鹿児島方面に向かう下り列車が来る12番線に入ってきた新幹線は、デュアル・スプリーム・ウィング形と呼ばれる左右にエッジを立てた前面形状を持ち、アルミニウム合金をダブルスキン構造にした車体を包む白地は青い帯が刻まれ、奇数号車の側面には輝かしい金色のシンボルマークが描かれていた。

 

「あちらは東海道・山陽新幹線で最新のN700S系です。既存の車両をベースに最新の技術を取り入れた車両で主力を担っています。形式のSはスプリームから取られています。」

「アレが最新車両でしたか! 最高速度は何キロでしょうか?」

「営業での最高速度は300km/hとなっています。」

「300キロ!? ちょっと前の飛行機並みじゃないですか!?」

 

南川の説明に麻見田は目を見開いて驚く。眼前にいる車両が黎明期の飛行機より走れる上に、その最高速度はお客を乗せた日常の営業列車で出せるのだから、本気ならばそれ以上の速度を出せるのだろうと確信させられた。

麻見田と南川の話を眺める面々も所々聞こえてくる話の内容から、前もって聞いていた新幹線の話が事実だと受け入れ出す。

 

「確かにあそこまで尖った車両ならば300キロ出せるかもしれませんな。」

「これに乗れば4時間で1000km先に行けるとか実感出来ませんな······」

「しかし、こんな飛行機みたいな電車なんて初めて見ましたよ。電車と言えば東和都市圏の通勤路線でしか使われてない四角い奴だったのに。」

 

各々が新幹線に対する感想を述べる中、経済省の井手浦が何気なく発した発言が気になった南川は彼女へ話しかける。

 

「井手浦さん──でしたか? 電車は東和都市圏?でしか使われてないと仰いましたが、本当ですか?」

「えぇ、東和で電車と言えば通勤路線や路面電車ですね。本線クラスは全部蒸気機関車で運行されてます。」

「ディーゼル機関車や電気機関車も作れはするが、政府()から圧がかかっているとかなんやら。」

「な、なるほど······」

 

井手浦の部下 古神によって、単なる興味から聞いた話が政府が絡んだ都市伝説めいた内容に変わった事に南川が対応に困っていると、ホームを覆う屋根を支える柱に付けられたスピーカーからチャイムが流れ出す。

 

『間もなく14番線に団体列車が到着致します。黄色い線の内側までお下がり下さい。』

 

駅員の肉声アナウンスから間もなくして専用列車に使われる車両が、ブレーキが車輪を抑えた際に生じる耳障りな甲高い金属音を響かせながら14番線に入ってくる。

ライトグレーにダークグレーと青の線を引き、グレイッシュブルーを天井から被せたアルミハニカム製の車体は丸みを帯び、鋭く尖った15mものロングノーズは色彩も相まって翡翠(かわせみ)を彷彿とさせた。

日本初の営業速度へ到達すべく無駄を削ぎ落とした結果、独創的で唯一無二の姿を手に入れた新幹線に麻見田のみならず使節団全員が釘付けになる。

 

「到着致しました。こちらが皆様にご乗車頂くJR西日本 500系です。

発展著しい航空路線に対抗すべく速度向上に特化した新幹線として設計され、実際に日本初となる300km/hの営業最高速度で東京〜博多間を4時間49分で結びました。

現在は各駅停車に使われているので300km/hを出せるスペックは失われていますが、この独特な見た目から今でも人気の高い新幹線となっています。」

「な、なんてカッコいい車両なんだ!! こんな見た目の乗り物は初めて見た!!」

 

目の前に現れた500系の説明を南川が終えるや否や、興奮を抑えきれない麻見田が舐め回す様に500系を見始める。鉄道の知識を余り持たない他の面々も500系の特異なデザインに魅了されたのか、その姿を瞳に焼き付ける。

 

「こんな列車に乗せて下さるなんて本当にありがとうございます!!」

「喜んで下さって嬉しいです。500系も引退前にこんな大役を果たせて誇らしいでしょう。」

「引退間近!? 先ほど各駅停車に使われていると言ってましたが、まさか既に最新鋭では無いのですか!?」

「えぇ、500系は登場から28年が経過しまして、現在は日本の新幹線でも最古参となっています。」

「この見た目で登場から30年も経っている最古参·····」

 

東和の未来予想図に出てきそうな程な近未来感を醸し出す車両が、山陽新幹線は愚か日本の新幹線としても最古参の部類に位置する事実に麻見田は絶句するしかなかった。

暫くして車体に合わせて丸くなったプラグドアが開き、東和使節団は南川の先導で500系の車内へ入っていく。

 

丸くなった車体が故に少しばかり窮屈さを感じさせる車内を物珍しく眺めながら通っていき、使節団の座席として用意された6号車へ辿り着く。元グリーン車だったが為に肘掛けにテーブルが内蔵された豪華な椅子に使節団は座っていく。

 

「これは中々良い座り心地だな。」

「同意です──おぉ、肘掛けからテーブルが出てきましたよ。」

 

使節団面々は500系の外見だけでなく、中身にも満足してくれたと感じ取った南川は内心で大いに喜んだ。

 

「お気に召してくれたようでなりよりです。間もなくこの列車は大阪へ向けて発車致します。ダイヤに無理矢理組み込んだ為に、通過列車の待ち合わせを幾度も行うので所要時間はかなりかかりますのをご容赦下さい。」

「いえいえ、こんな素晴らしい列車に長く乗れると考えましょう。して、大阪ではどの様な事をするのかね?」

 

南川の事前謝罪に快く返した風凪の質問に、南川の説明中はずっと後ろにいた脇山が答える。

 

「大阪についてからは市街を一望出来る高層ビル あべのハルカスや、大阪繁栄の礎となった大阪城・三大住吉の一つに数えられる住吉大社を回って頂く予定です。」

「なるほど。大阪は日本第二の都市と聞くから、博多より凄いものが見れそうだ。」

「皆様の期待にはお答えできると思います。さて、皆様には車内でお昼を取っていただくという事になってまして、色んな種類を用意致しましたのでどうぞご選び下さい。」

 

そう言った脇山が手を向けた反対側から、部下の関根がカートを押しながら現れる。近年に相次いで廃止・縮小された為に使われなくなっていた車内販売のカートには、様々な種類の駅弁がギッシリと詰まっていた。

 

「おぉ、駅弁じゃないか。こんなに種類があるのかね?」

「国内一の沢山の弁当を販売していると謳っている東和横断鉄道(TCR)より多い様な·····」

「お肉から海鮮まで種類が豊富ですね〜こんな多いのは選ぶ楽しみがありますね。」

 

使節団の面々はカートに積まれた種類豊富な駅弁に興味津々な目線を向け、各々がそれぞれの好みな駅弁を見つけるべく積まれた駅弁を立体パズルのように動かしていった。

 

「喜んで下さってなりよりです。やはり東和にも駅弁があるのですか?」

「勿論です。特急列車や寝台列車には食堂車がありますがお値段がお高めですので、我々の様な一般市民が乗る鈍行にはついてないので車内で食べるなら駅弁が一般的ですよ。

おぉ!! 牡蠣づくしとありだけに牡蠣が一杯だ!!」

 

南川の質問に麻見田が答えた頃には使節団の面々は駅弁を選び終えており、脇山や南川がカートに残された中からお昼の駅弁を選ぼうとするとホームから発車メロディが鳴り出す。

日本が誇るSF作品 銀河鉄道999のサビを使った発車メロディが鳴り終わると、車体に仕舞われていたプラグドアが閉まり、使節団を載せた500系は550km先の新大阪駅へ向かう旅へ出発した。

*1
編隊での離陸直後に戦闘隊形へ移行すべく、左右に分かれて編隊の間隔を広げる機動飛行

*2
大気中を音速で飛ぶ物体によって発生した衝撃波の轟音




・築城基地のデモフライト
築城基地でデモフライトをやる展開は日本国召喚と全く同じなので、少しでも差異をつけるべく空自の主力戦闘機を集結させました。
東和と初接触した3話の後書きで書いた通り、新田原の航空団には架空のF-35部隊を配置しております。今作の空自は戦闘機部隊の配置が現実とはかなり違うので、違いを出す度に書いていこうとは思ってます。

・小倉駅の利用者
劇中描写から“封鎖しとけよ”と思う人がいると思いますが、皇室や国賓が来る時も駅の完全封鎖は行ってないのでそれに倣った形です。
また、劇中日本は自家用車が使えないので、小倉駅を封鎖するメリットよりデメリットの方が大きいと判断しました。

・500系新幹線
国賓を乗せるのであれば最新のN700S系を選んだ方が良いのでしょうが、大阪から東京への移動でも乗せる都合上、同じ新幹線に2度も乗せるのは不服だったので、山陽新幹線でしか乗れない車両として選びました。

去年の9月に広島〜岡山間でハローキティラッピングの500系の元グリーン車に乗りましたが、めっちゃ良かったですと言っておきますw

・大阪見学
博多と同じ様に市街を一望出来る高い建物と歴史的建築物・由緒正しい神社を巡る感じですが、博多と同じく丸々カットします。
ただ、次回は2025年の大阪で開催されるとあるイベントに参加させますので、大阪市民は期待しといて下さい。

・駅弁
2週間近くに渡る食糧不足の中で幾つもの種類を作れるかは分かりませんが、鉄道利用者の増加で優先配給されたという形ですかね?
車内販売カートで運ぶ描写は執筆中に思いつきましたw
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