New world note in Earth 作:YUKANE
今回は2話前で書いた通り、本作の舞台である2025年に開催されるビックイベントを出します!! 現実では色々揉めているみたいですが、いざ開幕すると行きたくなるであろうあのイベントですww
500系に揺られて大阪についた東和使節団は予定通りあべのハルカスや大阪城・住吉大社を見学し、宿泊するザ・リッツ・カールトン 大阪内の鉄板焼きで大阪名物のお好み焼きを食べて、満足して日本滞在3日目となる7月14日を終えた。
翌15日は同じくホテル内のイタリアン料理店で朝食を取ると、休む間もなく昨日の大阪見学でも使われた公用車に乗り込んだ。
博多で乗ったレクサスの親会社 トヨタが販売する高級大型ミニバン ヴェルファイア AGH3型を使った3台の公用車は、巨大な車体に東和使節団を載せて目的地へ向けて、阪神高速2号淀川左岸線を大阪県警の護衛と共に走っていく。
「今日は何処に行くのか知らされてないが、このままだと海の方へ向かうな?」
「脇山さんと関根さんが“地球について知ってもらう”と言っていたので、国際交流的な場所へ連れて行かれるのでしょうか?」
「国際交流───まさか至ることで見たアレか?」
LS600hよりも大きく広いヴェルファイアの座席が3列並んでおり、最後列の折り畳み式座席に座っていた農水省の平炉農林支局局長の
3日目の日本滞在にして今回の様に行き先を知らされない事は始めてな為に不安こそあったが、2人は話し合っている内に案内役の盗み聞きと昨日の見学中に飽きるほど見た広告を結びつけていた。
真ん中の列には交通省交通統括局副局長の麻見田龍二郎と、情報省国外情報局職員の藍浦美葉が座っていたが、話し合っている後部座席とは違って麻見田だけが喋り続けていた。
「これが日本の高速道路──見ただけでも凄いと確信したが、乗ってみると想定以上に凄まじい技術だな!! こんな明るいトンネルなんか東和に無いですよ!!」
「高速道路だけでこんなに盛り上がれるとは──なんて幸せな男なんだか。」
公用車に乗ってからずっと煩い麻見田にウンザリした藍浦は、ライトで照らし出されたトンネル内をずっと眺めて喧騒から離れようとしていた。
暫くして約3600mにも及ぶ
「何あれ──もしかしてアレが行き先?」
「え!? 何処ですか?」
「
「アレか!! 間違いなく行き先はアレだ!!」
高速道路が此花大橋を渡るべく高所へ上がって、視界が開けたが故に発見できたソレに食いついた他の3人がその姿を見るや否や大いに盛り上がる。藍浦はその盛り上がり様とそうなった原因が自分だと言う事実に思わず嫌気が差していた。
そうこうしている内に此花大橋を渡りきると、廃棄物処理場を土台とした人工島
舞洲と同じくゴミの埋立地を元にした夢洲へ踏み入れた車列はある広場で止まり、自動で開くスライドドアから降り立った使節団の前には幾つもの入り口が並び、その入り口を覆う屋根に立体文字を載せた西ゲートが鎮座していた。
「やはりコレか──薄々気づいてはいたが、いざ目の当たりにすると迫力が凄いな。」
「万国博覧会こと万博──こんなをTRMでもやってみたものだ。」
別の公用車から降りた外務省の風凪神路や経済省の井手浦麻日奈も、それぞれの部下と一緒に目の前に佇む巨大な会場に興味津々な目を向けていた。
「皆さん、到着致しました。こちらが2025年度大阪・関西万博会場です!!」
使節団の公用車とは別の車から降りた案内役の脇山衆一が行き先である大阪・関西万博の会場を示す。
様々な紆余曲折を経て日本で20年ぶりとなる万博として開催されていたが、転移後は政府からの資源・食糧節約要請に応えるべく真っ先に中止されていた。しかしながら、地球全国家の8割近い158ヶ国が参加している事から、“東和の人々に地球を知ってもらうには丁度良い”として
使節団面々は脇山が説明している間に関根が渡した大阪万博のパンフレットを見ていたが、興味深いパビリオンを見つける度に声が上がっていた。
「昨日の見学中に何処でも目に入ったから気になっていたが、150もの国が参加しているとはたまげた。
「我々としても地球の説明にここまでうってつけなイベントを使わない訳に行きませんからね。」
風凪の感謝に脇山が答える。万博を使った理由には前述した理由以外にも、開催中止によって無くなっていた万博関係者の雇用を復活させる意味も込められていたがそれらは敢えて伝えなかった。
脇山の先導でゲートを通って、万博会場内へ入った使節団の前に紺色の体と赤い円が組み合わさったマスコットキャラクターが出迎えた。
「あ、ミャクミャクだ!!」
歴史や文化・世界との繋がりを引き継ぐ意味が込められた大阪万博のマスコットキャラクター ミャクミャクに、羽沢零季が駆け寄る。
5つの眼球に代表される怪異感と愛くるしさを混ぜ込んだ賛否両論別れる姿のミャクミャクを女性陣は可愛がった。
◇
14時まで自由行動となった使節団面々は、各々が興味を抱いたパビリオンを回っていた。各国が描く未来像や思考を表現したと言えるパビリオンはそれぞれが個性的なデザインで形作られ、その中では国自慢の最新技術で掲げるテーマをお披露目していた。初めて触れると人種や技術・国々の多さに使節団の全員が圧倒されていた。
「夜になっても太陽が沈まないから一日中明るい
「この北欧があるスカンディナヴィア半島の海岸線はフィヨルド*1が沢山あるらしい。京逆や牧都みたいな地形が無数にあるのは面白いな。」
「世界幸福度ランキングの上位10国の中に北欧が5つも──それだけ不自由ない生活が出来る幸せな地域なんだな。」
陸軍大臣補佐官の西尾回次や海軍横灘浜海軍基地副司令官の嵯峨浦明二・空軍第1航空師団第54航空隊第2飛行隊飛行隊長の羽沢零季ら
17mもの高さの木造パビリオンは北欧が誇るデザインと
「小木浦さんはさっきからずっと地図を見ていますが、何か気になることでもありましたか?」
「あぁ、一応軍の人間として攻めたらどうなるのか考えていた。」
「流石陸海空軍全てを相手する技術研究局だ。個人的な感想はどうですか?」
羽沢に話しかけられた小木浦は、自身の意見をお披露目すべく手に持っていた地図をテーブルへ置く。
「まずフィヨルドがある西部と北部は侵攻が難しく、南部は攻められる場所が少ない事からも攻めにくいでしょう。ですが、東部はロシアとか言う国と国境を接している事から攻め込むならここだろう。
もし仮にロシアと北欧が戦ったら、直ぐに征服されかねん印象だ。」
「お兄さん、それは違うぜ。フィンランドが80年前にそのロシアと戦争になった時は3年間も善戦したんだぜ。さてお待たせしました、スウェーデン名物の“ヤンソンの誘惑”と、アイスランド名物の“リブラルビールサ”・フィンランド名物の“ピィマ”・スカンディナヴィア名物の“ティスロルテ・ポンピケル”です。」
小木浦の話に流暢な日本語で割り込んできたデンマーク人のパビリオン職員は、両手に持っていた料理を手慣れた手つきでテーブルへ置いていく。きつね色の焦げ色がついたグラタンと綺麗な焼き目に包まれた茶色のソーセージ・液状になったヨーグルトの飲み物・ヘーゼルナッツやアーモンドでデコレーションされた白いデザートに4人は興味を引かれた。
「
「ここに来れた我々だけの特権ですね。暖かい内に頂きましょうか。」
西尾の宣言から間もなくして4人は目の前に置かれた料理を食べ出した。
「おぉ〜クリーミーな馬鈴薯とクリームに塩辛いアンチョビが美味く絡み合っている!!」
「内臓を使っているからか、知っているウインナーとは違う食感だ!」
「ホイップクリームとラスクとアップルソースの層が独特の食感になっている!!」
「んっ·······正しく飲むヨーグルトだな。」
初めての味と食感を感激して味わう4人の姿に男性店員は微笑む。デンマーク人の彼は国賓でもある彼ら彼女らが満足している事に内心ホッとしていたが、北欧料理を食べている4人の目線が時折自分に向かれている事に気付いた。
「私の顔に何かついているでしょうか?」
「あぁ、すいません。私達は白人を見るのが初めてでして。」
嵯峨浦の発言に男性店員はハッとさせられた。東和の人々は所謂
白人を初めて見たという地球ではあり得ない体験をした男性店員だったが、内心でも一切喜ぶ事なく複雑な心境に陥った。
「そうでしたか、まるで動物園の動物を見るような視線を向けられたのは初めてでして。」
男性店員は言葉こそ冗談交じりではあったが彼の目は一切笑っておらず、その瞳は深淵の如く漆黒でドロドロに冷え切っていた。
目の前の店員が忘れようにも忘れられない悲劇に直面したにも関わらず、営業スマイルと気さくな雰囲気で無理矢理隠している様に感じた3人は、思わず冷や汗をかいて自分らの発言を後悔した。
「もしかして、無理して頑張っているのに気づいちゃったかな·······」
「え、えぇ··········」
「そりゃ母国に帰れない悲しみなんか隠せねえよな······」
店員の話は4人の良心に鋭く突き刺さり、自らの行いを瞬時に後悔させた。
万博の開催期間中に起きた転移は各国パビリオン職員や海外からの来場者に母国を失わせた。転移によって母国との繋がりを全て絶たれた彼ら彼女らは一生母国へ戻れない悲劇を目の当たりにして錯乱した。一部の外国人は生存の為に強盗・略奪といった犯罪に及んだが、中には自暴自棄になって自殺する者もいた。
「俺は家族が日本にいるからまだ大丈夫だが、家族と生き別れた奴は悲惨だよ──国に家族を置いて出張して来た同僚はショックの余り転移の3日後に首を吊って死んじまいやがった·····」
「そんな·········」
男性店員の話に羽沢は思わず言葉を失う。今まで使節団の面々が接していたのは日本人だけで、現実味の無い転移にショックを受けつつも住み慣れた母国にいる為か平常心を保っていた。
だが、日本で転移に巻き込まれた外国人は、いきなり告げられた母国との永遠の別れで絶対に治せないであろう傷を負わされた。母国に帰る事も連絡を取る事すら出来ない為に日本で生きるしか無くなった外国人の衝撃は凄まじいものであったと予測でき、旅行や仕事で訪れていただけの人が感じた衝撃は4人に想像出来ないものであったであろう。
「········なんかすいません。」
「いえ······私も悲しいですが、悲しいからこそ、こうして仕事をして少しでも気分を晴らしているんです。」
嵯峨浦の謝罪に男性店員は応えつつ、決して拭えない悲しみを紛らわす為に仕事をしていると明かす。余りにも重すぎる話に4人の空気は重くなるが、その空気感を原因でもある男性店員が薙ぎ払った。
「そんなに暗くならないでくれ。この星へ転移していたのであれば、いつか再び地球に帰れるかもしれないしな。可能性は少ないにしろ、そんな奇跡を起こしてくれと毎日神へ祈っているさ。」
「いつかその奇跡が起きる時が来ると良いですね。」
男性店員が希望を捨ててないと知った小木浦が声をかけ、2人は固い握手を交わした。
・ヴェルファイアの公用車
日本には色んな車種があるので、どうせなら移動する度に変えようとして選択しました。
一応調べてみたら岐阜県知事や兵庫県知事の公用車として使われているので、リアリティも問題無いと判断してます。
・栗濱と大富士・小木浦
この3人は今話初登場させました。このままだと初登場が遅れそうなので、思い切って出した。
多分これで東和使節団の名前は全員お披露目した······と思います。
・大阪万博
予想出来た方もいたかもしれませんが、2025年を代表するイベントとして大阪万博を出しました! 世界の半分以上の国家が集まるイベントが折角あるのであれば、出さない訳が無いが無いですよね!!
作者的にはミャクミャクは可愛げがあって好きです。
・北欧パビリオン
当初はアフリカ系やトルコを出す予定でしたが、大阪万博のサイトで国外パビリオンの紹介を見てみると、北欧パビリオン内にカフェコーナーがあるので変更しました。
カフェのメニューも分かってないですが、今回出てきた料理が出てくるかは分かりません。
・白人を見るのが初めてでして
これは人種差別的要素として入れるか悩みましたが、前話で明らかになったTRM諸国からも分かる通り、黄色人種しかおらず白人はおろか黒人すらも見た事が無い為に、東和人の経験を表すべく入れました。
そして、これが日本国召喚との大きな差異だと思ってます。あちらは作品コンセプト上、外国人の描写がほぼされていませんが、今作は転移で日本に取り残された外国人の描写を積極的にやって行く方針です。
◇
話は変わりますが、先日Xでキティホーク級が解体の為に牽引される動画が流れてきたのですが、余りのボロボロさに驚きました。放置されていたのもありますが、あそこまでボロボロになった姿を見るとアレが半世紀以上前の船だと思い知らされました。
さて今作ではキティホーク級どころか前任のフォレスタル級ですらも現役なのですが、現役であの具合だと劇中でもかなりボロボロ具合ですよね·········なるだけ早くに後継艦出さないと。