New world note in Earth 作:YUKANE
前作の半分に至っているにも関わらずまだ殆ど進んでないの不味いな·······1話により内容や設定を詰め込むか?
TRM諸国との交流会を終えた日本使節団は東和市街の散策へ向かい、中心部に鎮座する330mもの高さを誇る東和タワーの展望台や、国内の歴史を纏め上げた東和最大規模の博物館 東和国立博物館を見学した。
東和の歴史や東和市街の全容を思い知らされ、東川大統領との会食も行った日本使節団は翌15日に再び東和大統領邸宅を訪れていた。昨日も訪れた場所ではあるが、大統領との会合が目的だった昨日とは違って、今日は国交提携に向けて重要な会談が行われる予定だった。
「国交締結は流石に緊張しますね·······」
「正に正念場だから、私も同じ気持ちです。ここで国交締結までいかないと、日本の終了を意味する。ソレだけは何としてでも避けなければいけない。」
外交官としても経験の少ないであろう国交締結へ望む事に緊張を覚える園田凜音に、使節団団長で農林水産省副大臣の国山太地が同情する。
日本としてもここで東和からの食料・資源輸出の約束を何としてでも取り付けないと、国家存続すら危ぶまれる為に重荷を背負わされた面々の表情は重苦しかった。
しかしながら、大使館職員として数々の現場に立ち会ってきた園田姉妹は、日本の未来と一億三千万人の命が何処へ行くのかを決める重大な会議に挑むべく仕事モードで皆を先導し、堂々と会議室へ入っていく。
会議室の中には白いテーブルカバーがかけられた長細い机の長辺側に椅子が並んでおり、日本側に用意された席に相対する窓側には東川大統領ら東和の政治を担っているであろう面々が座っていた。
「おはようございます、日本使節団の皆さん。昨晩の寿司は満足頂けたでしょうか?
「おはようございます、東川大統領。昨晩はアレ程に美味しいお寿司をありがとうございました。」
「あそこは私行きつけのお店でしてね。美味さが別格なのです。」
昨日とは打って変わってスーツ姿の東川大統領と園田凜音が昨晩の会食について話し終わると、国山を先頭に日本使節団の面々は一人ずつ挨拶していく。日本側の挨拶が終わると、東川の右隣にいた壮年ながらも老いを感じさせない若さを保つ男が立ち上がった。
「外務大臣の
外務大臣であった寺済が挨拶を終えると、その隣にいた老け顔の男が立ち上がる。
「経済大臣の
挨拶を終えた経済大臣 須江崎と入れ替わる様に、東川を挟んで反対側に座っていたスキンヘッドのイカツイ男が立ち上がる。
「農林大臣の
農林大臣 比楽木が座り終える前に、隣に座っていた物腰の柔らかそうな男が立ち上がる。
「海洋大臣の
味田原が挨拶を終えて椅子に座ると、長テーブルを挟んで対峙した両者は国交締結に向けた会談へ突入する。
会談開幕から直ぐに切り込んだ国山は、日本国内で製作した日本の食糧事情を纏めた資料を東和側の面々へ分配する。既に大まかな事情を知っている東川含めて全員が渡された読み出し、特に国内の農業と畜産業・林業を統括する専門家である比楽はページ1枚1枚を隅から隅まで丁寧に見て、日本の農業事業を興味深そうに得ていた。
「貴国の要望はよく分かりました。しかしですね──幾ら山がちな地形が多いとは言え、食料自給率が40%と言うのは如何なものでしょうか?」
「事前資料や暮田からの連絡で一億三千万の国民がいると聞いておりましたが、この食料自給率ですと国民がそこまでいるとは信じられません。」
最初に発言した比楽木に続いて寺済も意見を述べる。2人の発言に専門知識が豊富な国山が答える。
「悲しい事実ではありますが、それが事実なのです。無論長らく問題視されておりまして、我が上司である農林水産大臣は“食料自給率を上げる良いきっかけになる”と言ってました。」
「はは──中々大胆な人だ。いつか会ってみたいものだ。ところで、食品別の食料自給率に関しても分かる範囲で教えて頂きたいです。」
国家存続の危機を逆に利用して食料自給率上昇を画策する
「食品別の食料自給率ですと───米は100%を誇り、芋やキノコ含む野菜や鶏卵は70%超えとなっています。対して小麦や飼料穀物類は30%を切っておりまして、大豆に至っては7%となっております。」
「な、7%··········土壌で作れる作物が変わるとは言え、ここまで差があるとは。」
食品別だと三桁に達している物から二桁を切っている物まで、数値が大きくバラけた事実に比楽木は面食らうも、その動揺は顔に出さなかった。
比楽木が伝えられた情報を反芻すべく黙って間もなく、それまで黙っていた味田原が口を開く。
「話が切れたところで失礼しますが、水産物に関してはどうなっているのでしょうか?」
「ここ近年ですと魚介類に関しては60%前後、海藻類は70%前後で推移しております。」
「なるほど──やはり島国なだけあって高いですな。」
国山の発言に味田原は納得して頷く。食料自給率の低さに困惑する比楽木に対して、味田原は早々に繋がれる要素を見つけられたのか少しばかりの喜びが表情に現れていた。
「
「漁業は
「なんと·······」
味田原は日本と積極的な交流が可能だと
「
「海外からの輸入で成り立っていた国と言わざるおえませんな。」
味田原が話終えたと判断した寺済が自らの意見を述べ、間髪入れず須江崎も口を開く。須江崎の発言は針の如く鋭く尖った辛辣な物だったが、長年に至る日本の現実を的確に表した発言に使節団の面々は反論出来なかった。
「改めて再確認させて頂くが、食料自給率が100%を超えている我が東和から輸入したいという事で宜しいか?」
「勿論です。先程仰った通り食料自給率が40%程しか無い日本だけでは、一億を超える国民を養う事は出来ない。このままでは何十万にも及ぶ餓死者が出る地獄が起きるだろう。国交が無いとは言え、隣国でこんな悲劇が起きるのはあなた方も見たくない筈だ。」
東川の問いかけに国山は強い口調で感情に訴えかける。もし東和が輸入を認めなければ国が崩壊し、万単位の餓死者が出かねない悲劇になるだろうと強く認識させ、彼らの感情論を揺さぶるべく。
感情に訴える国山の話を黙って聞いていた東川は比楽木と味田原の方を向く。
「農林大臣と海洋大臣はどう思う?」
「正直な意見を言わせていただくと、貴国への食料輸出は輸出先が増える為に歓迎します。」
「わたくしも同意です。南方の海は未だ未開拓な為に海洋国家同士である以上、共同開発を行う事が両国にとって利益を齎すでしょう。」
「専門家がああ言うのですから、貴国への食料輸入は行えるでしょう。」
比楽木と味田原双方からの好反応とソレを信頼した東川の答えに日本使節団の顔は一気に明るくなる。彼の発言は日本国民を救うと宣言したに等しかった。
「ですが、我が国だけが食料輸入を行うのは流石にリスクが高いと思われます。そこでTRM各国からも輸入してみてはと提案します。」
「ソレには私も同意です。TRM各国には日本が求める各種化石燃料や鉱石資源も眠っている。食料と一緒に輸入すれば、貴国に足りない物は全て解決する事になる。」
誰から見ても分かる程に喜ぶ使節団面々に比楽木がTRM各国からの輸入を提案し、それに須江崎も同意する。国山や園田姉妹は東和だけを生命線とするでなくTRM各国も巻き込む事で、リスク分散や東和にかかる負担軽減を目論んでいると直ぐに理解したが、2人の意見に即座に賛同していた。
「確かに──東和だけに頼れば万が一の場合に再び窮地に陥りかねん。」
「それに食料や資源の輸出でTRM各国と繋がりを持つのは万が一の事態でも役に立つかもしませんので、我々にとっても悪い話ではありません。」
「了解しました。では、外務大臣であるワタクシめが仲介役となりましょう。」
国山と凜音が賛同の意を伝えるとすかさず寺済が仲介役を担うと宣言する。彼の宣言に国山や園田姉妹らは心の中で安心するが、間髪入れずに比楽木が鋭く突っ込んでくる。
「私個人としましてはこれを機に海外からの輸入頼りな状況の改善を望みます。
化石燃料や鉱石資源の乏しさは弁解の余地がありませんが、食料は別です。土地さえあれば工夫によって何かしら育てられますから、自給率向上に全力を尽くして頂きたいものです。」
「わたくしも同意です。食料不足が国民に染み付いたこの状況を利用すれば、自給率向上の取り組みが積極的かつ迅速に行えるでしょう。」
「この状況を利用するとは───転んでもタダでは起き上がろうとしない意思を感じます。」
国山の返答に話を振った比楽木ですら思わず笑う。比楽木の笑いにつられて他の面々も笑う。
「では我が東和から日本へ輸出する話は纏まりましたね。では、これからは見返りの話をしましょう。」
室内を包んだ笑いを区切りの機と睨んだ東川が話を纏め、次なる話へ持っていく。食料と資源の輸出を取り付けて一段落した日本使節団は、落ち着く間もなく日本から東和への輸出品という次なる課題を突きつけられたが、麗音が直ぐに取り出したタブレット端末を操る。
「勿論
現在も検討が続いていますが、輸出品の候補リストがこちらのタブレット端末に載っています。指で動かせるので是非ご覧ください。」
麗音は姉 凜音の説明が終わると、間髪入れずに輸出品候補リストが入ったタブレット端末を東川へ手渡す。東川が初めて触るタブレット端末を操って資料を一通り読み終えると、経済大臣の須江崎へ端末を渡す。
端末を受け取った須江崎は興味深く眺めながら丁寧に読み進め、時折感心した様な声を漏らした。
「拝見させて頂きましたが中々興味深いですね。伝統工芸品や衣類はよく見かけますが、文房具や携帯機器・耐震用品・インフラ設備の輸出は
「確かにインフラ設備や耐震用品は高い技術力が求められますから、ソレを輸出出来る事は国力の強さを表しているでしょう。」
資料を読み終えた須江崎の意見に東川が同意する。高い技術力の象徴とも言えるインフラ設備や耐震用品の輸出は、その国が高い技術力と生産力を両立した国力を持っている事を意味していた。
比楽木や味田原も輸出候補の日本製品に興味を示す中、須江崎から渡された端末を弄っていた寺済が凜音へ話を振った。
「私としてはタブレットとか言うこの様なモノを輸出して欲しいのですが、この様な品は輸出出来ないのでしょうか?」
「寺済大臣が持っているタブレットや我々が愛用しているスマートフォンは携帯通信端末と呼ばれているのですが、これらの輸出は私個人の推測ではありますが難しいかと思われます。
携帯端末は使える状態にするまでかなりの設備が必要な上に、現状としては国内の需要分が最優先される為に輸出までには年単位の月日がかかるでしょう。
その為に輸出出来る品としては腕時計や懐中電灯・電卓と言ったモノになります。私がつけているG-SHOCKは軍に採用される程に衝撃に強く、このモデルは太陽光によって充電した電力で動作します。」
寺済の疑問に答えた凜音は左腕につけたアナログ式腕時計を見せる。凜音が身につけるG-SHOCK MR-Gは重厚感のある見た目でありながら、強い耐衝撃性能と太陽光で動作するといった先進的な要素を持っていると聞いた東和側の面々は大いに興味を抱く。
「携帯機器の輸入が出来ないのは残念ですが、その様な腕時計を輸入出来るだけでもありがたいですな。」
「ですが、アレまでの高性能であれば国内の腕時計業界は大打撃を受けるでしょうな。他の品々もそのレベルであれば、国内経済は再起不能なダメージを負う可能性もあり得る·······」
「それは我々も危惧しております。日本企業と東和企業でライセンス契約を結ぶなどの対策が考案されているらしいですが、私は専門ではないので詳しい話は今後になるでしょう。」
須江崎の懸念に凜音が答えるが、専門分野ではないと言う逃げ道で話を切り上げる。
「取り敢えず話は纏まりましたね。東和は食料や資源を日本へ輸出し、日本は各種製品を東和へ輸出する。」
「えぇ、無事話が纏まって安心しました。」
凜音が話を終わらせて直ぐに口を開いた東川に国山が同意し、立ち上がった両者は固い握手を交わす。握手を交わす2人を麗音が寺済から返して貰ったタブレットで撮り、会議室内にいた東和側のカメラマンも国産のカラーフィルムカメラに収める。
「確か皆様は話し合いが終わったら、今日一日は自由行動でしたね。」
「えぇ、職員や護衛の同伴こそありますが、各々がこの東和市街で興味を抱いた場所を巡る予定です。」
「是非東和一の繁栄を誇る東和市街をお楽しみください。」
東川の日本使節団に向けた言葉で国交締結の会議は終了し、日本使節団は東和市街の自由行動へ向かった。
・昨晩の会食
当初は東川大統領と寿司屋での会食描写も考えてましたが、話をなるだけ進めるべく丸ごとカットしました。
寿司ネタに日本で外来種の魚が使われて驚く展開がやりたかったですが、数話前にやっていたのでやんなくて良かったような·····
・東和側の大臣
今回いきなり4人も登場しましたが、当初は須江崎経済大臣以外の3人だけの予定でした。書こうとしたら国交締結の会談に経済のプロがいないのはおかしいと思った為に、急遽登場させました。
比楽木農林大臣と味田原海洋大臣の見た目は全く考えてませんが、寺済外務大臣は迫田考也・須江崎経済大臣は小林隆です。
・一部の遠洋漁船は転移で置いていかれた
地球に取り残された日本人を明確に描写するのも日本国召喚との差異ですかね?
取り残された日本人はショックのあまり精神崩壊しそうで考えるだけで辛そう·······
・日本の輸出品
ここに関しては滅茶苦茶悩みました。日本が輸出している主力品目は自動車と半導体といった電子部品で、東和に簡単に輸出出来ない代物なのでそれ以外で何とか探しました。
本文で出た品々以外では主力品目に入っている鉄鋼や自転車・加工食品・医薬品・環境対策用品などがあります。他に東和へ輸出出来る代物ってありますかね?
・携帯機器
携帯機器は“携帯して使用可能な機器”の総称ですので、劇中で出た腕時計や携帯端末以外にもカメラや双眼鏡等も該当するらしいです(Wikipedia情報)
携帯端末が輸出されない理由は本文でも書きましたが、何処かの部品が海外だよりで国内では殆ど生産されていないと何かで言ってたので、多分ソレを作ろうとしているのでしょう。何処の部品か分かる人います?