New world note in Earth   作:YUKANE

34 / 70
宣言通り今話で国交締結まで持っていきます。国交締結まで半年以上かかるとか馬鹿すぎる。

余談と言うか確認ですが、冷軽大陸諸国の国名は漢字の上に読みを入れる形で書いてましたが、これをやるのは1話で最初の1回だけで良いですか?


Episode.33 閣僚会議

「定刻だ。これより1671年度第二十九回閣僚会議を開始する。」

 

東和国大統領の東川(とうかわ)源二(げんじ)の宣告で、東和政府閣僚が一同に介した閣僚会議は始まった。毎週土曜に行われる定例のモノであり、いつもであっても自然災害への対処や国外の事象が東和に影響するのかを話し合う重要度の高い会議なのだが、7/19に開催された今回はその重要度が一層高まっていた。

 

「今回の議題はズバリ日本国との国交締結だ。日本の使節団が帰国して2日となる今日にでも、我々の使節団も帰国するであろう。

以前から話している通り、日本との国交締結はほぼ確定しているが、国交締結に伴う要求や影響について話し合いたい。」

 

東川が一言目にして会議の内容を閣僚らへ突きつけると、外務大臣にして日本使節団とも会談した寺済(てらずみ)広言(こうげん)が立ち上がって、補足するかのように説明を始める。

 

「日本が我が国に求めているのは食料と化石燃料・鉱物となっています。

要求量こそ我が国だけで賄えるモノですが、国内経済の状況や周辺国関係の兼ね合いからTRM全体で賄う方針な為に我々が輸出する量は少なくなる見込みです。

それに関して農林大臣・海洋大臣・内務大臣問題無いでしょうか?」

 

寺済の問いかけに農林大臣の比楽木(ひらき)龍顕(たつあき)と、海洋大臣の味田原(みたはら)友福(ともふく)は無言で頷く。寺済に問いかけられた内務大臣 八木党(やぎとう)上里(かみさ)は、日本使節団との会合に参加した2人が無言で頷く光景を見た後に噛みついた。

 

「私としましても、無資源国である日本への化石燃料・鉱物輸出は長期的な利益が得られる為に賛成です。

ただやろうと思えば増やせる食料まで輸出するのは、少しやりすぎではありませんか?」

「内務大臣の意見に同意だ。私は業務をやっていた故に日本使節団には会っていないが、大統領は彼らの訴えに(ほだ)されている様に見える。」

 

各種鉱山の統括だけでなくインフラ整備や観光資源開発等の多種多様な業務を任される内務省トップの発言に、副大統領の阿多機(あたき)庵治(おうじ)が同意する。

副大統領の発言は閣僚らがうっすらながらも抱いていた想いであり、容易には聞けないであろう質問を東川を長らく支えた阿多機が代弁していた。

 

長年一緒にいるが故に阿多機の意図を汲み取った東川は、それに対する解答を話し出す。

 

「皆の思っている通り、資源だけでなく食料まで輸出するのはやり過ぎだろう。それは私自身が一番分かっているが、そうしてまででも得たい利益が日本にはあるのだ。」

「両国の経済を潤すだけではないと言う事ですか?」

 

東川の言い切った発言に、経済大臣の須江崎(すえざき)杜道(もりみち)が反応する。経済監査官として様々な不正や談合・汚職を見抜いた功績を持つ須江崎の意見は、再び閣僚らが抱いた疑念を代表しているようだった。

 

「あぁ、寧ろ私はココからがメインの理由になるだろう。端的に言えば、私は日本の技術を求めている。」

「日本の技術───電話や辞書・電卓・地図が詰まった薄い板があるとは聞いてますが、そう言うのを求めていると解釈して宜しいか?」

「あぁ、その板はスマートフォンと呼ばれ、日本国民の大半が持っていると言われている。

仮に食料を輸出した見返りとしてスマートフォンを手に入れられたら、我々としては大きな利益になるとは思えないかね。」

 

阿多機が話題に上げたスマホを用いて持論を説明した東川に閣僚らは納得しつつも、一部の面々は符に落ちていなかった。

 

「確かにスマートフォンとやらが普及すれば国民は多いに喜ぶでしょうが、国内の産業が大打撃を受けかねません。」

「その通りだ。スマートフォンとやらを作れる国なら他分野の技術も凄まじいだろう。そんな国の製品が輸入されてしまえば、国内産業が衰退しかねない。

大統領は我が国を農業と鉱山のモノカルチャー国へ変えるおつもりですか?」

 

八木党の指摘に反応した須江崎は、強い口調で大統領へ問いかけた。

経済に触れているが故に誰よりも国内産業の安定を望む彼の発言を受けても東川は動じない。

 

「無論そんなつもりは一切無い。現に先ほど例に挙げたスマホも恐らく輸入出来ないであろう。

だが、それ以外のモノであっても()()()()()()我が国に利益を充分齎せる。私は寧ろソッチを狙っている。」

 

東川の発言に須江崎と八木党は安心する。2人が安心したのと入れ替わりで、阿多機が口を開く。

 

「大統領。日本製品を手に入れると仰いましたが、輸入だけでは無くライセンス生産も行われるおつもりですか?」

「当たり前だ。輸入だけなら国内産業を破壊する国賊だが、我が国の企業に生産させればソレを防げる。」

「確かにソレなら国内産業も維持出来ます。しかし、ライセンス料が払われるとは言え、輸出先を何としても得たい日本が受け入れるでしょうか?」

「その不安は無用だ。この要求を日本は受け入れる──いや、()()()()()()()()()()と踏んでいる。」

 

東川の言い切った発言に閣僚らはざわめく。阿多機や寺済らも驚きつつ、その真意を問う目線を向ける。

 

「これに関しては私ではなく、情報省が結論づけたモノだ。風原、説明をお願いする。」

「説明を受け継がせて頂きます。情報省がこう結論付けた理由は3つ。我が国にTRMとの仲介を任せる事と、我が国を恒久的な輸出先とすべく技術差を無くしたいこと、我が国を輸出に対する実験場にしたいからだ。」

 

東川から説明を受け継いだ情報省トップの情報大臣 風原(かざはら)勘三郎(かんざぶろう)は説明を始めたが、それを聞いた閣僚らは納得するどころか更にざわめき立つ。風原自身はこのざわめきを予想していたのか落ち着いており、3つの理由に関して一つずつ話し出す。

 

「まず1つ目のTRMとの仲介を任せる事ですが、これは日本がより多くの輸出先を得る為に必ず任せるだろうと判断しました。

彼の国は転移によって補填不能な程の経済的打撃を受けており、この損失を補填すべく輸出先を一国でも多くするだろうと言う考えに至りました。」

「これは使節団から聞いた話ですが、日本は1500兆もの外貨を持っていたとのこと。これが全て失われたとなれば、経済的打撃の規模がとんでもないとおわかりになるかと。」

 

風原の説明に寺済が補足の発言を加える。そこで日本が失った外貨が具体的な数字で出てきた事で、閣僚らは転移で被った経済的打撃を知った事で東川の自説に現実味を抱き始めた。

 

「確かに1500兆もの外貨を失ったのならば、何としてでも補填すべく自国製品を輸出したがりますな。」

「1500兆となると補填出来るか分かりませんが───()(かく)、1つ目に関しては分かったとしても、2つ目の意味はどういう事ですか?」

「それに関してですが、前提として日本の輸出品目について知る必要があります。」

 

1つ目の理由を理解した須江崎と八木党の更なる質問に、風原は2つ目の説明に関する前提を話し出す。

 

「転移前の日本の輸出品目で一番多いのは自動車で、次が電子部品となっており、この2つで15%の割合を占めていました。しかしながら、自動車と電子部品共に先進的すぎる為に我が国のみならず、TRM諸国でも使える代物ではありません。

代替の輸出品はあるでしょうが、一番の稼ぎ頭を失うのは日本も受け入れ難いと踏みました。」

「それならば我が国に日本と同じ技術レベルを持たせて、自動車や電子部品を輸出出来るようにするのが妥当──と言う事か?」

「正にその通りです。」

 

風原の説明を聞いていた阿多機は情報省の考えを言い当てる。言い当てられた風原は阿多機を褒めつつ、彼の鋭い直感に改めて感服した。

 

「確かに先進的な技術を渡されても、ソレを使える体制が無ければただのガラクタになりますな。」

「スマホとやらもただあるだけでなく、機能を活かせる環境と直せる設備が無いと使えないという訳ですな。」

「須江崎の言う通りだ。ただ渡すだけじゃ輸出とは言えない。我々が使いこなせばこそ輸出されたと言えない。」

「これも使節団から聞いた話ですが、転移によって人工衛星とやらを失った事で、スマホの一部機能に支障が出ているとのこと。

日本ですら制限を受けている状態で我々が使いこなせると思えますか?」

 

須江崎と八木党の発言に東川が同意し、寺済が補足を加える。長年政権運営を行っているが故に可能な連携プレイで、会議は進んでいく。

 

「最後の3つ目に関しては2つ目と繋がっており、日本製品をTRM諸国へ輸出した場合の影響が計り知れない為に、まずは我が国で試してから踏み出すのではと推察しました。」

「やってから大失敗するよりかは、一度試してからやる。合理的ではあるが、東和(ここ)でやられるのは·····」

「ここ以外試せる場所が無いんだ。それに国民の利益にもなるんだから、やらせて上げようじゃないか。

願うのであれば──この実証実験で、日本は我が国から離れなってくれればありがたい。」

 

風原の説明を理解しつつ苦言を呈す阿多機を東川が嗜めるが、最後の意味深発言に寧ろ閣僚らはざわつく。

 

「最後の言葉はどう言う意味ですか。」

「そのまんまの意味だ。もし我が国での実証実験が失敗すれば、TRM諸国への輸出品は限られる。

だが実験台になった東和には日本製品を使える土壌が出来上がっている。もし、そうなったら、我々はTRM諸国よりも多くの日本製品を輸入出来るのだよ。」

「なるほど───内容自体はぶっ飛んでますが、転移という事象自体ぶっ飛んでいるからあり得なくもない······」

「最もこれが実現する確率は相当低いと見積もられているので、ただの与太話と思って下さい。」

 

東川の説明はぶっ飛んだものだったが、国丸ごと転移すると言う誰もが予測出来ない事象に触れた閣僚らは納得してしまいまい、風原が補足混じりのツッコミを入れる事態になっていた。

 

「兎にも角にも我が国は日本へ食料や資源を輸出すれば、日本は我が国で輸出に向けた実証実験を行う。

つまり我々東和は日本へ資源を渡す立場ながら、日本経済の根幹となるわけだ。」

「前例の無い事例ですが、国内が潤う以上やる以外の選択肢はありませんな。」

 

阿多機の問いかけに閣僚全員が頷く。

 

「決まりだな。外務大臣、国交締結式典の調整を行え。私も参加するが、調印はそっちに任せる。」

「かしこまりました。」

「国交締結は決定したが、今日決めるべきことはこれだけで無い。

日本は国交締結後直ぐに食料や資源の早急な輸出を求めている。我が国はこれに答えようと思っているが、交通大臣──日本の貨物船が泊まる港や、物資を港まで運ぶ貨物列車の手配をお願いする。」

「かしこまりました。」

 

東川の指示にそれまで黙っていた交通大臣の夜右(よみぎ)月海(るあ)が即答で答える。

 

「陸軍には積み込み中の港警備を、海軍は貨物船の護衛を、空軍には船団周辺海域の哨戒を依頼する。万が一何かが起きたら、関係が悪化しかねない重要な役目だ。陸軍大臣、海軍大臣、空軍大臣くれぐれも気をつけてくれ。」

「勿論でございます。」

「承知した。」

「お任せ下さいませ。」

 

港湾警備を任された陸軍大臣 秋野(あきの)忠大(ただひろ)元帥と、護衛を任せられた海軍大臣 谷澤(やざわ)栄次郎(えいじろう)元帥、空軍大臣 富来(とみき)裕子(ゆうこ)元帥の3人がそれぞれ答える。

 

「問題無いな。それでは第二十九回閣僚会議は───」

「お待ち下さい。情報省から耳に入れて頂きたい話があります。」

 

話し合う内容が全て終わった為に東川は会議を終わらせようとしたが、風原が待ったをかける。

 

「これは不確定要素ですので忘れて頂いても構いませんが、情報省内では“日本がかのシャルハでは無いか”と言う疑惑が上がっております。」

「何ですって!?」

「日本がシャルハ!? 根拠を説明してくれ!?」

 

風原の発言に八木党が大声で驚き、味田原が問い詰める。東川から驚いた表情を見せる中でも、当の風原は何事も無かったかのように落ち着いていた。

 

「まだ確定ではありませんので落ち着いて下さい。それに我々が持つシャルハの情報と似た部分があるだけで、明確に異なる要素もあります。

我々としては国交締結後に詳しく調べる予定ですので、皆様には先程と同じく都市伝説的な与太話と思っておいて下さい。」

「相分かった。それに関しては情報省に任せる。ただ、仮にシャルハと日本が同一であれば、とんでもない事になりそうだ。」

 

1671年度第二十九回閣僚会議は最後にとんでもない爆弾を残して閉幕した。閣僚会議の翌日に使節団はそれぞれの国へ帰国し、それから6日後の7/26、南瑛諸島 暮田で国交締結の式典が行われた。

東和側の代表として東川大統領や寺済外務大臣が参加し、日本からは安川孝之外務大臣が空自の第1輸送航空隊第401飛行隊のC-130Hで来訪し、それぞれの外務大臣が調印して正式に国交が結ばれた。転移から26日目の出来事であった。




・1671年度第二十九回閣僚会議
プロットでは閣僚会議だけ決まってましたが、年号や回数を入れた方がリアルだと判断してこうなりました。
回数に関しては今年度のカレンダーで実際に数えた数になっています。

・閣僚陣
今話で東和の政府閣僚陣は全員登場したと思います。東川や寺済と同じく一部閣僚は外見モデルが入るので載せておきます。
分かる人には面々でどの作品から持ってきたかバレそうだ
阿多機庵治→小栗旬
八木党上里→小池栄子
須江崎杜道→小林隆
風原勘三郎→中村獅童
秋野忠大→新納慎也
谷澤栄次郎→佐藤浩市
富来裕子→宮澤エマ

・シャルハ
少し前の東和散策回では“シャトラ”と書いてましたが、この名前へ変更していたのをすっかり忘れてましたw
初登場回も訂正しましたので、これからはシャルハで行かせて頂きます。

・C-130Hで来訪
国交締結式典が暮田で行われる事になったが、船で行くとかなりの期間がかかる為に航空機で行く事となり、不整地着陸能力の高さで万が一の事態にも対応可能なC-130が選ばれた。

正味両国の国交締結式典を何処でやるか決めておらず、日本と東和の間にある南瑛諸島が相応しいとしました。その場合の行き方も決めてなかったので、C-130なら何とかなるだろうと判断しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。