New world note in Earth   作:YUKANE

35 / 70
UA12000突破感謝です。

前話で国交締結出来たので、今話は日本への食料・資源輸送のお話です。
やっとこさ海保や自衛隊が出てこれるパートになったよ····

今回は第一次船団の描写だけを描く予定でしたが、それだけだと余りにも短すぎたので、次回に入れる予定だった内容も追加しました。


Episode.34 救援船団の苦難

日本と東和の国交締結から間もなくして、東和から日本へ各種食料と資源を輸送する計画が実行へ移された。国交締結以前から進められていたこの計画は複数隻の貨物船で船団を作り、東和で積み込んだ物資を日本へ運ぶと言う単純なモノであった。

 

しかしながら東和の入港先や使う外航貨物船の手配に始まり、どのタイプの貨物船を使うか、単独で行かせるか船団にするか、船団に護衛は必要か、護衛するなら何処から用意するか、そもそも日本の貨物船が東和の港へ入れるか等の山積みされた課題を先延ばしに(早急に解決)して実行に移すことが出来た。

最終的に複数隻の外航貨物船と数隻の護衛で構成された船団は「日本を救う重要物資を運ぶ」事から“日本救援船団”と名付けられ、その第一陣となる第一次日本救援船団は転移から一ヶ月が経過した8月5日に神戸港を出港した。

 

船団を構成する貨物船は一隻の民間タンカーと4隻のばら積み貨物船で、この一隻以外に丁度いいタンカーを確保出来なかった為に、海自第1海上補給隊のとわだ型補給艦「AOE-424 はなま」が急遽投入されていた。

護衛には転移によって戦力過剰になった海上保安庁第十一管区から「PLH-04 うるま」と「PL-85 たらま」・「PS-34 しぎら」の3隻が抽出され、不審船への対処や遭難時の救助を任されていた。

 

途中で佐世保を出港した「はなま」と合流した船団は中継地の暮田を経由して西進し、9日には東西300kmにもなる東和湾の東側に位置する東和港へ到着した。

事前に船団入港を通達していた事でいつもより往来する船が少ない東和港へ入港した船団は、休む間もなく積み込み作業を開始する。

 

船団の旗艦を任せられたつがる型巡視船の4番艦にして、2度に渡る改名の末に沖縄の雅称(がしょう)を与えらえた「うるま」は、300km離れた横灘浜までをも巻き込む広大な東和湾の東端でヘリコプター1機を搭載可能な4000tにもなる船体を休ませながら、積み込みが終わるのを待っていた。

 

「「ABUKUMA GAWA」より連絡。“石油積込が完了した。これより移動を開始する”と。」

「漸く半分か。積み込みの遅延は思ったよりも酷いみたいだ。」

 

「うるま」船長にして船団司令も兼任する片岡(かたおか)龍彦(たつひこ) 二等海上保安査は、通信士の報告に顔色を悪くする。

 

今回の船団ではタンカーは石油を運び、ばら積み貨物船は小麦や大豆・トウモロコシ等の穀物類と化学肥料の原料になるリン酸とカリウムを積み込む事になっていた。

しかしながら、日本が用意した貨物船はどれも国外向けの大型船だった為に、東和港が保有している積み込み設備で積み込めるかが問題視された。

石油積込のポンプは延長ホースを付けて対応出来たが、ばら積み貨物船に関してはクレーン船を用いる変則的な積み込み方が実施された。結果的に積み込みは何とか実施出来たが、始めてやる方法が故にトラブルが多発して、当初の積み込み時間を大幅に狂わせていた。

 

「いくら多めに時間が取ってあるとは言え、これは中々マズいぞ。」

「えぇ、唯でさえ遅れ気味なのに、これ以上にトラブルが起きたら混乱は避けられません。」

「それは避けたいが───なんだ!?」

 

遅れ気味の現状を副長と嘆いていた片岡だったが、唐突に鳴り響く轟音に驚かされる。轟音が聞こえた方向に双眼鏡を向け、倍率を上げると排水量36000tの「WILD WAVE」へ穀物類を積んでいたクレーン船が写るが、ぶっとい鉄骨で組まれた根元から黒煙が立ち昇っていた。

 

「クレーンから黒煙───嫌な予感が。」

「東和港管理部より通信! “五号クレーン船のエンジン部がオーバーヒート! クレーン船の稼働は不能”と!」

「そらきた、最悪の展開だ。「しぎら」に積み込みを終えた3隻を港外へ誘導させて、「たらま」はその3隻を避難先の千月(ちづき)島へ連れて行かせろ。」

 

副長の予感は東和港管理部からの通信で予言となる。通信を受けた片岡は最初に軽口を叩きつつも、配下の2隻に素早く指示を出す。

 

片岡の連絡を受けて「うるま」と同じく東和港の傍で待機していたしもじ型巡視船4番船「しぎら」は、主機のニイガタ16V20FXディーゼルエンジンを素早く稼働させる。

宮古島に伝わる姫の物語に由来する総排水量200t程度の小型船は、2基のウォータージェットによって出された25ノット(時速46.3km/h)の高速で既に積み込みを終えた2隻の元へ向かう。

 

小麦を積み込んだばら積み貨物船「TEMPEST STORM」と、カリウムを積み込んだ「磐梯丸」は沖合で止まっていたが先程の連絡で落としていた錨を上げ、「しぎら」の進む向きへ5桁にもなる船体をディーゼルエンジンで動かし出す。

 

ダグボードに引っ張られていた「ABUKUMA GAWA」も3隻の船列に続く様に転舵し、東和湾の出入口がある南へむけて進んでいく。

青い海に白い波跡(ウェーキ)を描きながら航行していた4隻の前に、白い船体に青字で“JAPAN COAST GUARD”と刻まれたくにがみ型巡視船7番船「たらま」が現れる。宮古列島の南西端に位置する島の名を預けられた排水量1700tの巡視船は、「しぎら」が先導していた3隻を受け取ると避難先に指定された千月島の千月(ちづき)港へ向けて進み出す。

 

「「たらま」より通信。“3隻の湾外脱出を確認。これより秋生都港へ誘導する”と。」

「ご苦労だったと伝えてくれ。我々の方は出来る限りやったが、東和港(あっち)は相当悲惨な事になっていそうだ。」

 

「たらま」から通信を受け取った片岡は安堵するも、直ぐに未だ悲惨な東和港の様子を思い出す。

 

「通信によると入港予定だった船舶に横灘浜港や千月港への変更を行っているらしいです。」

「唯でさえ港を空けてもらっているのに、更に迷惑をかける事になってしまった。これは日本でも批判されちまうw」

「仕方ないですよ。今回は日本の外航貨物船が使えるかどうかを調べる役割もあるんですから。

現に今回は余裕を持ってスケジュールが組まれてますし、第二回は貨物船の大半が東和船籍で行われるんですから。」

「それはそうだが───取り敢えず罪悪感がな。」

 

副長の指摘を受けても片岡の罪悪感は拭えなかった。

 

結果的にクレーン船の故障は直った為に無事6隻への積み込みを終えられたが、この混乱の影響で日本への帰港は1日遅れの15日へ遅れる事になった。

 

第一次船団は一隻も欠けずに物資を運ぶ事は出来たが、大きな混乱を起こした結果から直ぐ様問題点の解消が図れた。日本でも東和港に混乱を齎した事を批判する報道こそあったが、大量の生活物資を日本へ運べた功績に押されて小さくなっていた。

 

問題点が余り報道されなかった日本に対して混乱の当事者となった東和では、港湾関係者や貨物船船員の抗議が各種メディアで取り上げられた。

第一次船団は外航貨物船の入港や港湾への一極集中と言った様々な実証実験を兼ねていたとわ言え、大きな混乱を齎した結果はラジオや新聞で厳しく非難されると言う、日本とは真逆の報道が成された。

 

 

「ラジオと言い、新聞と言い、先日の第一次船団に対してかなりの批判が集まっているぞ。」

「メディアには情報省を通じて実証実験だと言ってたのだが、余り聞いてなかったようだ。メディアってのはつくづく扱いづらいものだ。」

 

東和港が混乱に包まれてから2日目後、東和市街の中心に位置する大統領官邸で休んでいた東川源二大統領は、東和新聞の朝刊を持ってやって来た阿多機庵治の愚痴に答える。阿多機が持ってきた10日(昨日)の朝刊の一面には、第一次船団に対する批判がデカデカと載せられていた。

 

「“一歩間違えば国内を騒がす大惨事”か───中々辛辣な発言をするもんだ。」

「それはまだマシな方だ。ラジオではコメンテーターが“次は無い”とか言ってたぞ。」

「それは直球すぎるな。寧ろそっちに批判が集まらないか?」

 

縁側に寝そべりながら東和新聞の一面を読んでツッコミを入れる東川に、座布団に座る阿多機は意見を述べる。ラジオではより辛辣な意見が言われたのに苦笑いしつつ、東川は起き上がる。

 

「それでこれを見せにわざわざここに来たのか? それともお前も批判しに来たのか?」

「どっちかと言えば批判だな。ここまで混乱を招いてしまっては日本に対する批判が強まる。

私含め日本を知らない人間が国内の大半を占めている。これ以上問題が起きたら、日本に対する不信感や日本との関係を重視する政府への批判が強まる事になるが、どうする気だ?」

 

阿多機は東川の疑問への解答を畳み掛ける。東川は共に政界入りして、政治の荒波を乗り越えてきた戦友でもある阿多機へ向き合う。

 

「それに関してだが──昨日中に大使館開設で移住していた日本の駐東大使が訪れてきた。

冒頭に混乱に対する謝罪をしてきたが、訪れた本当の理由は日本側の改善策を伝える為だ。」

「改善策をもうか?」

「恐らく事前に改善策を考えていたのだろう。第一次船団は懸念の確認も兼ねていたのだろう。」

「この混乱は分かりきっていたと言う事か」

 

阿多機は日本が素早く改善策を持ってきた事に驚きつつも、日本側は混乱が起きる事を予測していたのだと呆れた。

 

「まずこれ以降に出発する救援船団には国内向けに使われている内航船を使うらしい。加えて受取先を京逆と牧都・氷海に増やして対処したいとの事だ。」

「使う船を小さくし、港を分散させて混乱を最低限にする訳か。簡単ではあるが、中々有効的な対策じゃないか?」

「現に20日から開始される第二次日本救援船団は大半の貨物船が我が東和船籍で、寄港先も京逆と牧都に増やされている。それでの結果から、第三次船団の編成と寄港先が決定される流れだ。」

 

東川が日本側の改善策を述べると、その内容に阿多機も好印象を覚える。事前に混乱を招くと予測していたが故に、ちゃんとした改善策を素早く提示出来たのだと阿多機は推測した。

東川も使い慣れた自国の貨物船を使って行われる第二次日本救援船団をやった上で、この後の流れが決まると意気込んではいたが、その顔は優れていなかった。

 

「どうした? 先日の様な混乱が再び起きるのか不安なのか?」

「いや、今回の混乱が再来するのは無いだろうが、我々政府と国民に日本に対する認識の差がかなりあるのだと認識させられてな。」

「と言うと?」

「我々は日本を“世界を変える存在”だと認識しているが、副大統領含め我々東和国民の大半は日本を“ポッと出の言語が同じ国”だとしか認識してない。

それは日本からの認識も同じで、日本は我々を“救世主”だと一方的に盲信している。つまり日東両国で認識に齟齬が出ているんだ。」

 

東川が淡々と語った話を聞いていた阿多機は、彼が訴えたい内容を理解した。

東川ら政府閣僚陣は実際に日本人と会っている上に、日本が持ってきた資料を見たが故に日本に対する解像度はかなり鮮明なのに対し、大半の国民は日本についてラジオや新聞と言った限られた資料でしか認識していない為に、政府と国民で日本に対する理解にズレが生じていた。

 

「要は国民と政府の日本に対する認識の齟齬を何とかしたいと言うのか?」

「流石は阿多機だ。直ぐに言いたいことを理解したな。」

「褒め言葉はいい。何か策はあるのか?」

「取り敢えずは日本人の東和進出を進める事だな。日本人が来れば、国民らの間違いも訂正されるだろう。」

「ありきたりだな。それだけで良いのか?」

 

阿多機は東川のまっとうな意見に苦笑いしつつ、納得する。ただ、東川はありきたりな意見だけで済ませるわけが無いと阿多機は分かりきっていた。

 

「言葉が分からなくても我々の意思を伝える方法ってなんだと思う?」

「愚問だな。銃やナイフ・槍と言った武器だ。」

「そうだ、言葉が分からなくても銃や武器を使えばある程度の意思疎通が取れるように、日本の軍事力を見せつければ国民の考えも変わるかもしれないと思わないか?」

 

東川の意味深な質問に答えた阿多機は彼が言いたいであろう事を理解した。

 

「───11月を目処に日本と合同で陸海空の大演習を行う予定だ。それの一部を国民も見学させて、日本が唯の隣人では無い事を証明させる。」

「日本と東和の合同大演習か───確かに軍事力を見せれば認識も改めさせられるな。」

「そうであって欲しいが───お前も行くか?」

「日本との国交締結に反対した嫌味か? でも副大統領も行けば、来る国民が増えるかも知れんからありだな。」

 

合同大演習に阿多機が興味を示した様子に東川はしたり顔をする。東川のしたり顔に阿多機はしてやられたと再度苦笑いする。

 

「どうせならTRM諸国も招けばどうだ? 日本の軍事力を見せつつ、圧をかけられるかもしれん。」

「ありだな。あっちだって日本について知りたいだろうし、一石二鳥どころか三鳥の利益を得られる機会だな。」

「そんでもって我々と日本の関係性を強調すれば───」

 

東川と阿多機の古くからの戦友同士は、東川の自宅で日が沈むまで東和の今後について深く語り合った。




・第一次日本救援船団の編成(この中は排水量)
タンカー:「ABUKUMA GAWA(51000t)」・「はなま」
ばら積み貨物船:「WILD WAVE(36000t)」・「磐梯丸(24000t)」・「SARD DIAMOND(29000t)」・「TEMPEST STORM(27600t)」
護衛
第十一管区:ヘリコプター1機搭載型巡視船「うるま」
      大型巡視船「たらま」
      小型巡視船「しぎら」

当初は日本海沿岸を管轄する第八管区を護衛に回す予定でしたが、東和の位置を日本の北から西へ移した関係で第十一管区へ変更しました。

・片岡龍彦
果たして次回の登場があるか怪しいキャラですが、彼のモデルは同じ苗字のレーシングドライバーです。

・変則的な積み込み方
正味こんな方法で積み込めるか分かりませんが、ご都合主義として暖かい目で見て下さい。
まあ結果的に大トラブルになったので、問題があったという事で。

千月(ちづき)
東和大陸から南300kmに位置する東西180km・南北110kmの島で人口は110万人。
島の北東と西に山々が聳え、南にはマングローブ林やサンゴ礁が広がっている。気候が比較的温暖な為にバナナやマンゴー・カカオ等の熱帯植物が栽培されたり、近海に熱帯魚が生息している。

千月(ちづき)
島の北東に聳える千月山地と西に聳える高津山に挟まれた平野に位置する街で人口は26万人。
双方の山々に挟まれた秋積(あきせ)湾に面している為に古くから島内の玄関口兼貿易港として栄え、現在も東和と氷海行の定期船が運航されている。
中心部には島内の行政機関や会社の支社・大学・病院が置かれ、市街地には多くの飲食店やホテル・土産屋が建ち並んでいる。郊外には軍民共用の千月飛行場もある為に観光客だけでなく多くのビジネス客も訪れているが、人口密度が高い為に市内には路面電車の路線が張り巡らされている。

・東和新聞
東和市内向けの新聞を発行すべく東和市長らが出資して設立された会社で、東和に本社が置かれている。
現在は国内中に新聞を発行しており、チャルネスやカリスにも支社が置かれている。

・大使館開設で移住していた日本の駐東大使
国交締結から間もなくして実行に移されました。実際に大使館開設ってどのくらいかかるんですかね?

・言葉が分からなくても銃や武器を使えばある程度の意思疎通が取れる
これは作者の持論です。
言葉で話し合えば分かり合えると言っている人がいますが、話し合おうとした相手が我々の言葉を理解していなかったら意味が無いですよね。ですけど、武器は万国共通なので使えば言葉が分からない相手でも取り敢えずの意思疎通が取れますよね。
ですから、相手と話し合うにしても何かしらの武器が必要だと思っています。

・日本と東和の大演習
これが前々から言ってた自衛隊のドンパチパートです。自衛隊だけでなく、東和やチャルネスの兵器群も出すので早くここに行きたいですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。