New world note in Earth   作:YUKANE

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前話でUA12000突破した筈が、1週間程度でUA13000間近に行ってて驚きました。それだけの人に見てもらえる様になったと言う事ですかね?
しれっとお気に入りの数も増えているのは嬉しいですし、連載の励みにもなります。


Episode.35 変わる港湾と動く周辺国

東和大陸の南側にはフィヨルドを思わせる細長い湾が幾つも連なっており、切り立った崖に挟まれた立地は風を遮る為に古くから船の停泊地として使われていた。

それらの大半は時代が進んだ今であっても何かしらの港として使われ、その中の一部は国内でも有数の港湾都市へ成長を遂げており、日本救援船団の寄港先に選ばれた牧都(まきと)もその中の一つであった。

 

21万にもなる人口を抱えるこの都市は東和最大の鉱山都市 奥羽(おくは)に最も近い港であった為に、製鉄所や製錬所・火力発電所が幾つも建設された事で国内随一の工業都市へ変貌した。

製錬施設の多さと市内には専用線や構内鉄道の線路が張り巡らされている光景と、常に金属の匂いが充満している事から“金属に支配されたまち”という別称が与えられたこの町に第四次日本救援船団の船舶が到着していた。

 

石炭の運搬に特化した石炭船「ALE LYNC(エール・リンク)」は、黒黒とした石炭をベルトコンベアで船倉へ積み込んでいた。1万トンにも満たない排水量の「ALE LYNC」は国内だけ航行可能で海外航路に入れない内航貨物船であったが、第一次船団の結果から特例の条約改正が実施された事で日本救援船団に組み込まれていた。

 

日本と東和の距離が1000kmしか離れてない為に成し得た荒業で来航した石炭船の近くには、日本国籍の船がもう一隻停泊していたがその異質な姿は多くの港湾関係者の目を引いていた。

 

「それにしてもスゲェ船だな。船の真ん中が浮いていやがる。」

「両脇のアレで浮いてるって事だよな。なんだか不安な見た目してるな。」

「これ知ってるぞ、双胴船って奴だ。2つの船を繋ぐからデッカイ甲板を作れるし、航行する速度も速いんだ。」

「史郎さんは物知りだな〜」

 

史郎と呼ばれた港湾関係者の言う通り2艘の船を横に並べた双胴船(カタマラン)の高速カーフェリー 「ナッチャンWorld」は積んできた車両群を次々と牧都港へ降ろしていた。

青函航路に使われる筈が採算の関係で撤退し、防衛省のPFI事業*1で設立された特別目的会社 高速マリン・トランスポートで運航される高速フェリーから降ろされた車両群は、ショベルカーやブルトーザー・トラックと言った工事車両やそれを動かす燃料を運ぶタンクローリーであった。

 

「にしても、どれもデカいな〜こんな大きなショベルカーは始めて見たよ。」

「これでも中くらいですよ。海外の鉱山とかだと、ビル位の大きさのショベルカーを使ってますよ。」

「ビル位にデカいショベルカーか〜いつか見てみたいもんだね。」

 

牧都港の港湾工事を担当する大林組の若き責任者 吾野(あがの)道金(みちがね)は降ろされる車両群を確認しながら、日本の重機に興味を示す牧都港側の港湾責任者と話を交わす。

第三次日本救援船団以降の寄港地を選ぶと同時に選ばれた港に日本の船が乗り入れる様に工事を行う事が決まり、その事前準備として大林組や鹿島建設・清水建設と言った総合建設会社(スーパーゼネコン)が日本製重機を連れて東和へ上陸していた。

 

「そう言えばここに建てる予定のガントリークレーンって言うのはどんなクレーンだ?」

「ガントリークレーンってのはデッカイ移動式クレーンで、日本ではコンテナの移動に使われてます。

こちらの準備が終われば「邪馬台(やまたい)」って言う重量物運搬船で運んできて、一緒にやって来たクレーン船 「武蔵」で港へ降ろす計画です。」

「成る程な。どんなモノか楽しみだ。」

 

ガントリークレーンについて聞いた港湾責任者は他部署への連絡をするべく吾野の元を去っていく。吾野は降ろされて整列する工事車両群を眺めるが、その顔には少しばかりの憂鬱が浮かんでいた。

 

「東和は日本に似て違う───ホームシックになりそうだ。」

 

日本に似ている様に見えて違っている異国 東和にやって来た吾野は、日本へのホームシックを抱くのではと嘆く。日本からレトルト食品こそ持ってきたが、東和に1日でも早くコンビニエンスストアが開店するのを心で祈っていた。

 

 

日本の進出が始まった牧都から南西に直線距離で200km離れた位置に、日本救援船団の寄港地に選ばれた京逆(きょうぎゃく)は存在する。

18万の人口を抱えるこの都市は牧都と同じくフィヨルドを思わせる湾の最奥に位置しており、湾の海底から油田が発見された事で石油プラットフォームや製油所・石油化学工場・貯蔵タンクなどで構成された国内最大級の石油化学コンビナートが整備されていた。湾内に佇むプラットフォームからコンビナートへ伸びるパイプラインが象徴的な京逆にも、日本救援船団の内航貨物船が訪れていた。

 

石油精製の一環で採取された液化石油ガス(LPG)の輸送を専門とするLPG船の「エネルギー ナビゲーター」と「クイーン シリウス」が、パイプラインで受け取ったLPGを圧力で液化して溜めている中、近くの埠頭では第四次日本救援船団で旗艦を努めた海上保安庁の巡視船「PLH-21 ふそう」が身を休めていた。

就役から40年が経過して老朽化が進んでいた為に練習船になっていたが、日本救援船団の護衛戦力が不足した事から止むなく事実上の現役復帰をして投入されていた。5300tにもなる船体を埠頭で休める「ふそう」は船の心臓であるNKK-SEMT 14PC2-5Vディーゼルエンジンを動かすA重油を受け取っていたが、青の文字が刻まれた白い船体は大いに目立っていたが為に京逆市民の注目を集めていた。

 

「日本の船って白地に青なんて派手ね〜」

東和(うち)の軍艦くらいにデッカイし派手けど、大砲を積んでいる様には見えないな。」

「馬鹿だなぁ、お前。船体にCOAST GUARD(沿岸警備隊)って書いてあるのが読めないのか?」

「沿岸警備隊なら軍艦じゃなくて海洋省の警備船って事か。それにしてはデカすぎるぞ。」

 

京逆市民は思い思いの感想を述べて会話する中、黙って「ふそう」の姿を見ていた男は懐から不意にマッチ箱を取り出す。そのマッチ箱は東和で流通するメーカーの外装であったが、箱に開けられた不自然な丸はソレがマッチ箱の姿を借りた何かだと証明していた。

 

ソレがマッチ箱では無いのを証明するその穴を男は「ふそう」へ向け、暫くするとマッチ箱擬きを閉まって人混みから離れる。男は物珍しさの野次馬にウンザリしながら京逆の町を歩いていく。

 

京逆の街には石油に関する一切を担う石油企業 嘉味田(かみだ)石油の社員やコンビナートの勤務者・貨物船の船員が訪れるが為か、その様な人々向けの施設が集まった街並みが作られていた。

男は仕事客向けのビジネスホテルやカプセルホテルなどの宿泊施設が建ち並んだホテル街を歩くが、歩道脇の道路では日本企業によって轟音を立てながら工事が行われていた。

 

日本から持ち運ばれたダンプ車から流されたアスファルト混合物は、舗装専門の建設機械 アスファルトフィニッシャで道路へ敷かれ、ソレを作業員が均していた。

男は物珍しい光景を眺める人混みに紛れ、再び取り出したマッチ箱擬きの穴を作業光景に向ける。先程と同じく暫くしてからマッチ箱を仕舞い、その場を去っていく。

 

一般人のふりをしながら不自然な行動をしていた男はホテル街から、手軽に食べれる立ち食いそば屋や遅くまで営業する居酒屋といった飲食店が建ち並んだ飲食店街へ向かう。

男は常に何処かしらのお客が訪れている店の前を通り、その中にあるチャルネス料理店に入る。

 

「いらっしゃい──お、あんたか。同僚は奥の個室だよ。」

「いつもありがとうな。」

 

日本(東和)語で店長と話した男は奥の個室へ向かう。東和語と中国語(チャルネス語)で書かれたメニューが掲げられた廊下を通り、奥の個室を遮る暖簾(のれん)を潜ると褐色の急須に入れられた烏龍茶(ウーロンちゃ)を飲む男がいた。

 

它怎么样(どうだった)?」

人群非常拥挤,但我还是设法拍下了照片(人だかりが凄いが、何とか撮れた)

 

個室にいた米練(メイネン)字理須戸(ジェリスト)の問いかけに、やって来た男 具江名(グルナ)佐連酒妬(サレシュト)はチャルネス語で答える。

 

*2俺も来る途中で工事現場の人混みを見たけど、ありゃスターが来たような賑わい様だな。」

「工事現場も一応撮ってきたぞ。ピンホールだから上手く撮れてるか分からんが」

 

米練は湯呑みに入れられた薄いオレンジ色の烏龍茶を呑みながら人混みに愚痴り、ソレを聞いていた具江名は懐からマッチ箱に偽装した小型カメラを取り出す。具江名が取り出したピンホールカメラはオーク材のテーブルに置かれ、ソレを米練が静かに回収する。

 

「育成所で高い写真撮影技術を発揮したお前なら大丈夫だ。最も失敗したとしても、今回の仕事は急遽入ったものだから上だって分かってくれるだろう。」

「京逆の石油技術や入港する船の情報を調べるだけだったのに、いきなり日本に関する情報を集めろって無茶ですよね。」

 

米練と具江名は京逆へ出稼ぎに来た労働者という肩書ではあるが、その本質はチャルネス国内の情報を司る情報局の諜報員であった。

厳しい訓練を受けた2人は与えられた任務を果たすべく東和へ訪れているが、日本救援船団開始を受けて日本に対する調査も請け負う事になった。

 

「政府も日本に関する情報が欲しいんだろうな。」

「あの局長ですから諜報員(うちら)を送り込みつつ、何かしら動きそうですがね。」

 

具江名は急須に入った烏龍茶を注ぎながら、国家主席の腹心でもある局長の話をしていると、チャルネス人の店員が個室へ入ってくる。

 

「ご注文はどうしますか?」

「俺は炒麺(チャーメン)で。」

「俺は叉焼飯(チャーシューライス)を。」

 

注文を受け取った店員は去っていく。米練と具江名は店員が去っていくと、本来の仕事で巡った京逆の町に関して話し出す。

 

「それにしても日本製の重機って中々の代物ですよね。あれ輸入出来ないですかね?」

「どうだかな。でもアレって本国へ持って行っても、動かせるのか?」

「確かに───地上にタンクを置いた簡易ガソリンスタンドが作られている事からも動かせないかも·······」

「案外厳しいな───それ以外の日本製品の話って手に入れたか?」

 

日本から持ち込まれた車両に関する話を終えた具江名は、それ以外の話があるか思考する。

 

「そう言えば化学工場の専用線に日本製機関車を入れるとか聞いたな。」

「化学工場って無火機関車がいるあそこか。火気厳禁のあそこに何いれるんだ?」

「さあ? 実際に来るまでお預けですよ。」

「もどかしいな───ただ、流石は日本製品を積極的に取り入れる実験都市に選ばれただけある。その話は本国に伝える中身だ。」

 

具江名の話を聞いていた米練は話しながら、横に置いてあるスーツケースを触る。スーツケース自体は一般で売られている既存品だが、中身は無線機へと改造されているのを2人とも知っていた。

 

「本国に伝えるより先に母国の飯を食べましょう。」

「ここは母国風の味付けの料理が食べれる希少な店だからな。話していると来たみたいだ。」

 

長らく母国へ帰れてない具江名と米練が馴れしたんだ母国料理について話していると、先程注文を受け取った店員が2人の料理を運んでくる。

具江名は米の上にタレのかかったチャーシューが載った叉焼飯を、米練は中華麺を野菜や肉と一緒に炒めた炒麺を味わった。

*1
国や地方公共団体が行っていた事を民間に委ねる事。

*2
表記は日本語になりますが、中国(チャルネス)語で話していると思って下さい




・牧都
前々から名前だけ出ていた牧都が遂に出しました。
今回は書けませんでしたが、こちらも鉄鋼系の大企業によって開発が行われていたり、厳しい環境対策が行われています。

フィヨルドの様な地形になった理由は、東和の地図を書いた際に起伏のある地形にしていたらそうなってました。なのでフィヨルドみたいな地形云々は全て後付けです。

・第四次日本救援船団
編成
ばら積み貨物船:「PACIFIC(パシフィック) ROSE(ロゼ)」・「クリスタル・オーバー」
冷凍船:「OCEAN(オーシャン)STAR(スター)」・「CHIKUMA・REEFER(リーファー)
LPG船:「エネルギー ナビゲーター」・「クイーン シリウス」
護衛
ヘリコプター2機搭載型巡視船「PLH-21 ふそう」
大型巡視船「PL-93 わかさ」

日本救援船団の第4段として9月8日に横浜を出港し、11日に東和や京逆・牧都・氷海へ入港、15日に帰国するスケジュールで実施された。積み荷は砂糖や海産物・果物などの食品やLPG・石炭など。

因みに前回の一次船団の貨物船は架空なのですが、今回は冷凍船2隻と「エネルギー ナビゲーター」は実在する船です。

・ナッチャンWorld
実質防衛省が保有している輸送船なので、東和への車両輸送に合わせて素早く用意出来たという設定です。描写こそありませんが、同じ会社の「かいおう」も投入されています。

・吾野道金
今作からの登場人物ですが、前作と同じくとある仮面ライダーに出てくるキャラがモデルです。仕事とかそのまんまなので、分かりやすいかも?

・東和に1日でも早くコンビニエンスストアが開店
国交開設と同時に東和への渡航者向けにコンビニエンスストアやファストフード店・ドラックストア・100円ショップ等の出店が計画されてます。

・京逆
こちらも前々から単語だけ出てましたね。こちらに関しては防衛部隊以外の設定は出せた気がします。

嘉味田(かみだ)石油
京逆湾で発見された油田を有効活用すべく当地の財界人が出資して設立された会社で、京逆に本社が置かれている。
湾内の石油プラットフォームから採掘された原油はパイプラインでコンビナートの製油所へ運ばれ、ガソリンや重油・軽油・LPGなどへ石油精製された後にタンク車や貨物船で国内外へ運ばれている。
東和最大の石油企業である為に国外の油田開発に協力しており、TRM各国に本社が置かれている。

・具江名と米練
チャルネスは東和に次ぐ大国なので、諜報員を送り込んでいます。無論東和側も密かに対策を行ったり、逆に諜報員を送り込んだりしてます。
マッチ箱型カメラやスーツケース型通信機はスパイ道具を出したかったので、出しました。スパイが使う道具ってカッコいいよね?
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