New world note in Earth   作:YUKANE

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前話で書いた通りUA13000達成致しました。ここまで読んでくださる人に感謝しかないです。

今話は民間人目線から日本の様子を描きます。記者に関する描写は映画 空母いぶきから発想を得ましたが、一般社会の様子を自然に描けるので使い勝手が良いです。

就活云々が忙しすぎて更新が遅れた様な気がします。


Episode.36 影響は何処(いずこ)にも

日本救援船団が東和から輸入してきた資源で少しばかり生活が改善されつつある日本。ごく僅かではありつつも日常が戻りつつあったが、この一ヶ月で劇的変貌を遂げてしまったものも多い。

中古車市場もその一つであり、都内に数え切れない程ある中古車屋にORE journalの木戸新一が新米記者を連れて取材に訪れていた。

 

「来た時から思ってたんですが、車が動けない程にビッチリ並べられてますね。」

「えぇ、政府の利用自粛で手放す人が増えたんです。持ってるだけで自動車税がかかるなら、手放す気持ちは分かりますが。」

 

木戸の質問に中古車販売店のディーラー 明田(めいた)志郎(しろう)は淡々と答える。木戸が訪れた中古車屋には車種やメーカーを問わずに車が隙間無く並べられており、最早(ひし)めくとしか表現出来ないその光景は異質と言えた。

 

「自動車税ですか───倒産やらリストラで職を失った人も多いらしいので、乗れないのに金がかかるなら手放したくなる気持ちも分かります。」

 

木戸の横で手帳にメモを取っていた新米記者 須崎五月(いつき)が感想を述べる。2025年(今年)の新卒として入社した彼女だったが、いきなり幼馴染のコネを活かして大手作家 上川冬馬の連載を持ってきた事から、荻窪は“大物になる”と確信していた。

 

「こんな状況でしたら新車も売れませんよね。」

「メーカーの方は悲惨の一言でしょう。車が売れないなら作っても在庫を抱えるが、作るのを辞めても会社の業績は落ちていく。ドッチをとっても損失しか生まない状況です。」

 

日本の転移は世界に誇る自動車産業にも甚大な影響を及ぼした。国内は燃料不足によって自家用車の利用が低減した事で新車が売れなくなり、輸出先も失った為に各社は創業以来類を見ない大損失に直面していた。トヨタやホンダ・日産といった自動車メーカー各社はガソリンを使わない電気自動車や水素自動車の売り上げや車両修理・自動車以外の事業で損害を補填しようとしていたが、大きすぎる損害故に回復出来る見込みは立っていなかった。

 

「分かってはいた筈だが、やっぱし転移はとんでもない影響を持っていますね。」

「食料や資源ばかり注目されてますが、転移で影響を受けてない場所は無いと想いますよ。」

「あの〜お話中良いですか?」

 

木戸と明田が転移が齎した大きすぎる影響について話している中、黙々と取材を行っていた須崎が声をかける。2人が話を中断して須崎の元へ向かうと、彼女は隙間無く並べられた車の一つを指差していた。

 

「これってCMで見るトヨタの新車ですよね?───国産車なのに何で左ハンドル何ですか?」

「これは海外向けの輸出車です。海外向けに作ったものの、転移で売れる国が無くなったので中古車市場に流れてきたんです。」

「手放した車に海外向け車が一気に流入───そりゃ中古車の相場が崩れる訳だ。」

 

転移によって地球諸国との繋がりを絶たれた日本の様々な箇所に埋められない傷を負ったが、自動車産業もその一つであった。自動車は日本の輸出品目の上位に入っており、万単位の自動車を世界中へ輸出していたが、転移によって輸出先は全て失われた。輸出される筈だった車達は行き場を失い、解体するにも新しすぎた為にやむなく中古車市場に流され、中古車価格を暴落させる要因となった。

 

「やむないとは言え、もう少し何か出来なかったのかと考えてしまいますね。」

「転移なんておとぎ話でも無いんだから、みんな手探りでやるしか無いんだ。ウチらが責めてももっと良い結果になる保証は無いよ。」

「そう言ってくれると我々も安心できます。」

「志郎? そん中にタクシー会社で使えそうな車ある?」

 

木戸の誰も責められない発言に安心した明田に中古車会社の女性職員が大声で声をかける。所々にピンク色の衣装を身に纏った職員と明田が話している中、木戸と須崎は雑談を交わす。

 

「“転移で影響を受けない場所は無い”ですか───確か取り残された外国人が住む場所を求めた結果、空き家が一気に減少したんでしたっけ?」

「あぁ、所有者不明の空き家も自治体が引き取って、販売して良いとか。転移で社会が混乱する一方で、社会問題が解決されるとか皮肉だよな。」

「観光地も外国人が来なくなって、静かになったとか聞きましたよ。あと自動車の代わりに自転車を使う人が増えたとかも。」

「今の俺らみたいにな。でも自転車の窃盗が増えているから、気をつけないと。」

 

転移によって不可抗力的に齎された変化について話し合う木戸と須崎だったが、中古車屋傍の歩道を中国人が中国語で話しながら通りかかった光景を見たことでそれまで忘れてたある事を思い出した。

 

「そう言えば今頃編集長は東和の戦艦を見ているんだな。」

「編集長大丈夫ですかね? 現役の戦艦なんか見たら暴走しかねませんよ。」

「まさに暴走機関車ならぬ暴走編集長だな。」

 

2人は編集長が暴走してない事を祈りながら、当の本人がいるであろう方向を向いた。

 

 

東和との国交締結を終えた日本は、同国との貿易開始や大使館開設と同時に文化的な交流も開始した。日本と似て非なる東和からは送られた品には文学作品や外来種の調理法と言った手軽な物ばかりだったが、交流の大目玉として東和海軍の軍艦の来日が含まれていた。

 

国交締結に伴う親善訪問として来日した艦隊は東和海軍第4艦隊から抽出された6隻で構成されており、博多から始まって神戸・名古屋の順で各地へ来港して、メディア向けの見学回が行われていた。それぞれの都市で大きな注目を集めた第4艦隊は次なる来港地に選ばれた横浜港の大桟橋埠頭で停泊していたが、都内から1時間で来れる立地も相まって多くの見物者が訪れていた。

見物者は第9駆逐隊の風潮(かざしお)級駆逐艦 4隻や戸妻級巡洋艦の「定休(じょうきゅう)」を物珍しさから自らのスマホやカメラに収めていたが、一番注目を集めていたのは地球でいなくなった筈の戦艦であった。

 

埠頭で身を休める東和海軍最新の夏姫級戦艦「築城(ついき)」は、全長が276mにもなる5万6800tの船体に43.1cmの三連装砲を艦首前と艦尾に2基ずつ、中央に1基備えた巨大な戦艦の艦影は深夜ですら見物者が来る程のインパクトを見せていた。

現役バリバリの戦艦に無知な国民やメディアすら注目していたが、軍事知識を身に着けた人は見れず筈の無かった現役戦艦により一層盛り上がっていた。盛り上がる人々の中には、見学回に入れるメディアに選出されたOREjournalの荻窪大介編集長も含まれていた。

 

「これが現役の戦艦───感激······としか言えんな。」

「流石編集長。正に暴走機関車ね。でもこの姿はインパクトが凄いわ。」

 

取材そっちのけで興奮している荻窪を眺める瀧川は呆れつつも「築城」の艦上構造物を見上げる。

中心軸に設置された三連装砲と艦橋の両脇には、駆逐艦の主砲と同口径の単装砲と連装高角砲が剣山の如く並び、12基の43mm三連装機銃も相まって針鼠の如く無数の砲を並べた姿は、護衛艦すらも超える威圧感と恐怖を醸し出していた。

 

「まるで動く要塞ね。」

「戦艦は大砲もデカいし、装甲も厚いし、正に動く海上要塞だな。お、艦橋上のアンテナはレーダーだな。」

 

瀧川の漏らした言葉に荻窪は反応しつつ、艦橋上に見つけたアンテナに視線を向ける。荻窪の様子に他のメディア関係者だけでなく、「築城」に乗っているであろう水兵らも面白げな目線を向けており、集まる視線など一切気にしてない荻窪に瀧川は頭を抱えていた。

 

常に何処からか視線を向けられていた荻窪は「築城」の木甲板を歩いていき、愛用のデジタルカメラで巨大戦艦の姿を収めていたが、あるモノを見つけるとソレへ一目散に向かっていく。

 

「お、おおぉ!? これはロケット発射機か! こんなもんまで積んでいるとは驚いた!」

「これは40mm20連装ロケット砲です。航空機への対空射撃がメインですが、対空弾だけでなく電波欺瞞紙(チャフ)火炎弾(フレア)を詰めた弾も撃てますよ。」

「成る程〜汎用性が高いですね。ありがとうございます。」

 

ロケット砲の傍で立っていた水兵と話す荻窪を少し離れて眺めていた瀧川は、聞こえる話を手帳に記しながら軍隊用語と思われる単語の意味を知るべく、水兵と話し終えた荻窪へ質問した。

 

「編集長。チャフとフレアって何ですか?」

「あれ、説明してなかったけ? チャフってのは小さくて薄い金属の纏まりで、大気中に撒いてレーダーやミサイルの電波を妨害する役目を担うんだ。

フレアは文字通り熱源で、チャフと同じく大気中に撒かれるんだが、こっちは赤外線で誘導されるミサイルから守る為と役割が異なるんだ。」

「なるほど·············ん?」

 

荻窪の説明を愛用の手帳へ素早く記していた瀧川だったが、ある疑問が思う浮かぶと思わず書く手を止めた。

 

「フレアって赤外線で誘導されるミサイルに使われるんですよね。」

「一般的にな。領空侵犯への警告や曲芸飛行の演出で使われる事もあるが。」

「東和やチャルネスって赤外線誘導のミサイルって持っていますかね?」

「間違いなく持ってないな。持っていたら積んでいるだろうし────ん?」

 

瀧川の連続していた質問に答えていた荻窪だったが、その最中に瀧川が抱いた疑問を彼も見つけた。

 

「なんで()()()()()()()()()()のに、()()()()()()()()()()()()んだ?」

「編集長も気づきましたか。ミサイルを使う相手がいないのに何で積んでいるのはおかしくありませんか?」

「おかしいどころの話じゃない。オーパーツを積んでいる様なもんだ。」

 

存在している筈のないものが積まれている事実に行き着いた2人は甲板上で話し合う。ミサイルが攻撃手段になっている現代艦では当たり前の装備だが、ソレが未だ砲撃を主体とする東和の戦艦に詰まれているのは場違いと言っても過言ではない。

 

「もしかしてだが、東和は日本に何かを隠しているかもしれないな。」

 

荻窪は思わずそう溢すが心には拭いきれない違和感が詰まっていた。一方の瀧川はこの矛盾を解く手段になるかもしれない鍵を持っているのを思い出し、ソレを最大限使う手立てを考える事となる。




・明田志郎
特撮好きには分かったと思いますが、昨年度の戦隊ブルーがモデルです。名前がほぼそのまんまになってしまったのは、仕方なし。
ピンク色の衣装を身に纏った女性職員も同じ戦隊のあの人です。

・須崎五月
こちらも数年前の仮面ライダーヒロインがモデルです。モデルと仕事も似ているし、最初の方に幼馴染が登場しているので分かりやすいかも?

・転移後の自動車産業
本文で書いた通り、自動車は転移による影響をモロに受けた分野にしました。諸外国と会えなくなった以上、買う手段が無くなった海外車の価値は高まってそうですね。
バイクに関しては全く知らないので言及しませんが、同じ状況になってそうですね。多分自転車は逆に売り上げ上がってそう。

・東和海軍艦艇の来日
プロットでは第一次日本救援船団の復路で同伴して来たと言う設定です。暫くの話は日付を曖昧にしているので、そのままでも何とか成り立つか?

・風潮級駆逐艦
東和海軍駆逐艦の草分け的存在となった前級をベースに各種性能を上げた駆逐艦。
船首楼甲板が中央まで伸びた船体は防護巡洋艦を超える全長となり、前級で石炭との混焼式だったボイラーは重油燃料式へ変更されている。
主砲や4連装魚雷発射管・爆雷投射機といった武装一式は前級から引き継がれたが、旧式駆逐艦で使われていた単装砲を艦橋前に搭載する事で火力を強化している。
速力以外は前級を上回る性能を有していた為に後継として主力艦隊に配備され、後継艦が出た現在も主力駆逐艦として運用されている。
スペック
排水量:3400t
全長:113m
全幅:11.3m
吃水:4.92m
主機:AK-19型蒸気タービン 2基
ボイラー:六十一式重油ボイラー 4基
出力:69000馬力
速度:33.1ノット
武装:13.4cm連装速射砲 3基
   8.4cm単装速射砲 1基
   65cm4連装魚雷発射管 2基
   43mm3連装機銃 1基
   爆雷投射機 2基
   爆雷投下軌条 2基
レーダー:六式水上レーダー
     六十三式対空レーダー
ソナー:五十八式探信儀 1基
    五十七式水中聴音機 1基
乗員:260名

余談ですがこういうスペックって後書きで書いた方が良いですかね? 一応一章終わったら設定集を出す予定ですが。

・ミサイルを持ってないのに、フレアの概念を知っている
果たしてこの疑惑の答えはいつ出せるのか·······
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