New world note in Earth   作:YUKANE

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UA14000到達ありがとうございます。もうそろそろで前作のUAを超えそうですw

今回は相当シビアな問題にも突っ込んでいきますが、フィクションなのでノーカンですよね?


Episode.37 各国が引き込みたいもの

東和大陸から北西400kmに位置する冷軽(レヴィンガル)大陸は東西5700km・南北2500kmの広大な面積を持ち、T字型の大陸に乱立した山脈や高原によって多種多様な気候帯が存在していた。

そんな冷軽大陸の主として君臨していたのが、北東一帯を治める茶瑠祢須(チャルネス)共和国であった。この国は9000万にもなる人口と、東西3000km・南北2000kmにもなる広大な国土から得られる農作物と化石燃料・鉱物資源を用いた発展によって東和に次ぐ国力を得ていた。

 

東和に正面から戦える唯一の存在である国の首都 減噴(ペルファン)は国土の中央に位置し、国土を流れる2大大河 高寧(コウネイ)川と目根伏(メネフィス)川を繋ぐ派染(パシム)運河によって国内の水運が集まる要所として古くから栄えていた。

首都になってからは大規模な都市改造が行われ、市内を取り囲む環状道路や中央から各地へ伸びる路面電車・トロリーバスが整備され、市内には最新技術を詰め込んだ劇場やスタジアム・学校が建てられただけでなく、各地に設置された電光掲示板や自動信号機・ナトリウムランプを用いた街灯はチャルネスの技術力を見せているかのようだった。

 

著しい人口増加を改善すべく数年前に四方へ伸びる地下鉄が開業する等、発展が止むことのない減噴の中央には減噴城を改造した議会場が佇み、ソレを囲うように各行政機関の庁舎や各国大使館が存在していた。

その中にチャルネスのトップである国家主席の居住地も構えられており、つい先日やって来た日本からの外交使節も訪れた場所に非公式で日本からの来客が訪れていた。

 

「始めまして(ヂョウ)駐日大使。どうですか、我が首都減噴(ペルファン)は?」

「素晴らしい都市の一言ですな。我が首都 北京にも劣らないであろう発展性を秘めているでしょう。」

 

現国家主席の慈英(ジェイ)野園(ノエン)の出迎えに、招かれた在日中国大使 (ヂョウ)治宇(ハオユー)は母国の首都と絡めた感想を述べる。

彼は駐東大使館の手配で確保された茶瑠航空の定期便に乗って中国人として始めてチャルネスへ降り立ち、政府職員の案内で減噴市街を回った後に国家主席の居住地へ来訪していた。

 

「そう仰って頂くと作った甲斐がある。どうぞ、お座り下さい。」

「ありがとうございます。今回はお招き頂きありがとうございます。些細ではありますが、お土産を持って参りましたのでどうぞお受け取り下さい。」

 

見るからに高級そうな国産椅子に座った周は、慈英に感謝を述べつつ部下が持っていた箱を手渡す。箱は傍に控えていた女性職員が受け取り、確認の為に開くと彼女は目を見開く。

 

或乃(アルノ)、何が入っていたかい?───おぉ、これは文房具かね?」

「これは日本製の文房具でして、我々が使うという名目で持ち込めました。日本の技術を知るのであれば充分過ぎる品々だと思います。」

 

或乃(アルノ)と呼ばれた女性職員に続いて箱を覗いた慈英がビッシリと詰められた文房具に驚いていると、周が持ってきた意図を含め説明する。

 

「確かにこれは日本を知るには良い代物だ。良かったな、或乃(アルノ)。こんな簡単に日本製品が手に入るとはな。」

「えぇ、東和にいる諜報員(部下)に頼んで密輸出する筈でしたから手間が省けました。」

 

周の説明を聞いた慈英と或乃は喜びを隠せずに話し合う。蚊帳の外に置かれた周はその光景を眺めていたが、2人の会話から或乃が秘書官ではなくちゃんとした役職持ちだと推測出来た。

 

「紹介が遅れました。私は 或乃(アルノ)世恋邪(セレンジャ)と申し、情報局局長を務めております。」

「彼女は優秀な諜報員でして、私の対抗勢力を内部崩壊させた実績を持っています。現在は情報局局長として自ら諜報員の育成を行っているんです。

或乃、下がって良い。彼に危険は無いようだし、その文房具を調べたいだろう。」

 

紹介を終えた或乃は慈英の助言もあって執務室を後にする。彼女が去った後の執務室内には慈英と周だけが残されていた。

 

「おぉ、美味い茶だ。中国(本国)でも充分通用するレベルだ。」

「それは于吉(うきつ)産の茶葉を使ってまして、国内外でも高級品ですよ。

さて、貴殿を招いた理由だが、端的に言うと中国と貴方がたの現状を知りたいからだ。」

 

茶葉に関する会話でアイスブレイクを終えた慈英は、周を招いた理由に関して話し出す。

 

「無論日本との国交締結を行うつもりだが、その前に一度同じ言語を話す者と会ってみたくね。」

「それに日本だとどこから聞かれているか分からないからと言うものありますかね?」

「ソレもある。盗み聞きに警戒する辺り、チャルネス(我が国)中国(貴国)でやっている事は変わらんな。」

 

付け加えの説明をした慈英は周の返答に似た者同士だと思わず笑う。慈英の話題に周の顔にも思わず笑みが浮かぶ。

慈英が一通り笑い終えると、周は中国や転移後の同胞について分かりやすく説明する。外交窓口にもなる大使故か理解しやすい周の説明を慈英は黙って聞いていた。

 

「成る程、よく理解出来た。似通っている箇所もあれば、全く違う箇所もある。正に似て非なるものだな。」

「全くです。言語だけ同じ別の国だと思った方が宜しいですな。」

「如何にもだ。それにしても90万近い中国国民が取り残されているとは········」

「観光客も含めればそれ程いくでしょうな。日本政府は中国国民への対処を大使館へ丸投げしてますから連日残業です。」

「それは大変な事で·····」

 

周の説明を聞き終えた慈英は話の内容を理解し、転移で母国へ帰れなくなった90万もの中国国民の対処を一任させられた大使館の苦労を(ねぎら)った。

 

「ところで話は変わりますが、先程の会話から日本の技術力を欲しがっている様に見えましたが、どうですか?」

「御名答だ。流石は同じ言語を使う者同士、考える事も一緒になるかもしれん。」

 

いきなり話を変えた周の目つきは、昨年の朱雀戦争でシ連を裏切って日本との共同戦線を持ちかけたのと同じだった。その目つきに慈英も気付くも、ソレを毛嫌うどころか乗ろうとしていた。

 

「だが、技術を導入出来るかは怪しい。特に東和は我々が高い技術力を得るのを恐れているのは間違いないから、邪魔してくるだろう。」

「それならば良い方法があります。日本に在住する中国人を受け入れる事です。」

「これはいきなり突っ込んで来たな。大方察しはつくが、理由を聞いても?」

 

周の突っ込んだ発言に慈英は驚かされるが、この場で提言したのであれば何かしらのメリットがあるとして理由を問う。

 

「最大の理由としては中国(我が国)と言語が一緒で、文化も似通っている事です。

先程も仰った通り、転移によって90万もの国民が母国へ帰れなくなり、強制的に日本で暮らす事になりました。祖国を失った挙句、いきなり他国へ放り出された人々は深い悲しみとストレスに(さいな)まれるでしょう。

しかし、言語が同じで文化が似通ったチャルネス(貴国)ならば、難民と化した我々の第二の母国に成り得るのではと考えております。」

 

周の熱の籠もった説明を時折頷きながら聞いていた慈英は、彼がこの考えを本気で実現しようとしていると察しつつも、それをスンナリと承認出来ない葛藤に歯痒さを感じていた。

 

「貴殿の意図も国民らの相違も充分理解出来た。確かに我が国には90万を受け入れるだけの土地と食料・仕事はあるであろう。

ただ、我々としてそれだけで受け入れる訳にはいかない。国益に繋がるメリットを提示して頂きたいが──それが日本の技術力か?」

「その通りです。日本に住む同胞の中には同国の技術力に直結する仕事をしている者もいますし、旅行で訪れていた同胞の中にも技術系の仕事をしている者がいるでしょう。

彼らがこっちに来るだけでも技術力を手に入れられる可能性がありますし、同胞の移住で輸出が禁じらえた日本製品も輸入出来るかもしれません。」

「なるほどな───諜報員が命がけで密輸出するよりはハードルが何倍も低いな。」

 

周の力説を聞き終えた慈英は顎に右手を当てて考え込み、無言になった間に周は冷めきった于吉茶を飲む。暫く熟考した慈英は閉じていた目を開き、周へ向き直る。

 

「在日中国人の受け入れを容認しよう。日本の技術力も凄い魅力だが、母国を失った者の新たな母国になれるのであれば閣僚も国民も誇らしいだろう。」

「なんと───ありがとうございます! 貴国が受け入れて下さるのであれば、同胞も安堵するでしょう!」

「異なる星で同じ言語を使う者同士、手を取り合いましょう。」

 

中国人を受け入れる事を国家的にも人道的な面からも決めた慈英と、新たな母国を得る事に成功した周は固い握手を交わした。

 

 

冷軽大陸から何千kmと離れた日本の古都 京都を県庁所在地とする京都府で、唯一海に面している町 舞鶴市。朱雀戦争で主役だった海上自衛隊第2機動部隊の母港が置かれた人口7.8万人が住む町中に、国立病院機構舞鶴医療センターは存在する。

舞鶴市内で最大の病床を持つ病院には転移関係なく多くの患者が入院していたが、その中の1人である男は与えられた病床に寝っ転がりながらタブレットを眺めていた。

男は日本語ではなくハングルが書かれたタブレットの画面から目を上げ、病室の窓から下を眺めると彼の病室を指差しながら話す入院患者達が目に入る。彼が見ている事に気付いた入院患者らは去っていくが、話の主題になっていた彼 (キム)京周(キョンジュ)は思わずため息をつく。

 

(何を話しているかさっぱり分からないが、私に対する軽蔑なのは確実だな)

 

韓国国籍の彼は転移に巻き込まれた被害者ではあるが、在日組とは()()()()()()()()()為に日本だけでなく同胞からも毛嫌いされた目つきで見られていた。

自らの立場を恨みたくなる現状にハズレくじを引いたと後悔していた彼だったが、不意に病室の扉がノックされたかと思えばスライド式のドアが開く。病室に入ってきたスーツを身に纏った男を見た金は、やって来た者が同胞だと直感的に察した。

 

*1お初にお目にかかります(キム)さん。わたくしは駐日カリス王国大使として赴任した(ウェン)目里(メノサ)と申します。」

 

やって来た男 云の自己紹介を聞いた金は目を見開いて驚き、手に持っていたタブレットを置いて云へ向き直る。云は入院見舞いの花束を置き、病室に備えられていた椅子に座る。

 

「常識であれば果物を持ってきた方が良かったのでしょうが、生憎食糧不足な状況なので花束で許して下さい。

独島(どくと)で2週間近く生活して衰弱されたと聞いておりますが、ここまで回復してなりよりです。」

「今は竹島と呼ばれた方が宜しいかと。独島と呼ぶ国は無くなったので。」

「貴方が言うのであればそうしましょう。」

 

云は金の味わった地獄を労う発言をするも、金自身は発言の一部を訂正する。

韓国軍大佐の彼は警察官の身分を与えられて竹島こと独島に駐屯する独島警備隊で指揮官を務め、日韓に根深く刻まれていた領土問題の最前線に存在していた。しかし、それが災いしてか島ごと日本の転移に巻き込まれ、母国と強制的に引き離されてしまった。

 

後ろ盾と言う名の母国を失った独島警備隊は転移当日から孤立し、日本へ協力を求める派閥と自給自足して籠城する派閥に分かれて対立する混乱に見舞われた。だが、2週間も経てば食糧と医療物資の不足から栄養失調と病気が蔓延し、隊員の生死に関わる事態になった為に指揮官である彼が日本へ救援を要請した。

守備隊の救援要請に海上保安庁第八管区海上保安部の「PLH-10 だいせん」と「PL-22 みうら」が急行し、「MH914 まいづる」の名が与えられた「だいせん」の艦載ヘリ S-76Dによって救出された警備隊隊員は、医療設備を持つ「みうら」で簡易的な措置を受けた後に現在入院している舞鶴医療センターへ運ばれていた。

 

現在は入院から一ヶ月が経過した為か金含め栄養失調に見舞われた隊員らは全員回復してはいたが、彼らの役職や経緯が絡み合って入院患者からは良いようには見られていなかった。

 

狩須(カリス)王国の大使が何故一人の軍人にやって来たか、疑問を抱いてるでしょうから端的に要件を伝えましょう。貴方を我が国へ招きたい。正確に言えば我が国の軍が貴方を欲しがっている。」

 

未だに一国の大使が自らの元へやって来た理由を掴めなかった金を思ってか、云は訪れた要件を手早く伝える。金自身は想定外にも程がある中身に目を見開いて、大いに驚かされた。

 

「まるで子供のように驚かれますな。」

「すいません───内容が余りにも予想外すぎて」

「無理もないでしょう。ですが、我が国にとって貴方の様な人材は何としてでも欲しいのです。」

 

金の驚くようを少し茶化していた云だったが、暫くすると真剣な眼差しで問いかける。

 

「貴方もニュースで知っていると思われますが、我がカリスは東和とチャルネスの大国に挟まれており、両国間でもし戦争となった場合には間に位置する我が国は間違いなく戦場となるでしょう。

その為に我が国は大国との戦争に備えて軍事力を強化せざるおえません。」

「軍事力強化の一環として韓国軍士官の私を招きたいという訳ですか?」

「大まかにはその通りですが、軍部としては教官として教える立場につかせたいと仰ってました。」

「私が教官か··········」

 

云から要件の詳細を聞き終えた金は思考べく目を瞑るも、その時間はごく短時間であった。

 

「その話お受け致しましょう。」

「良いのですか!?」

「えぇ、韓国人(我々)は母国を失った身。言語が同じ貴国であれば第二の母国になれるでしょう。

それに我ら独島警備隊は日本人からの印象が良くなく、このまま日本に暮らす方が生きづらいでしょう。」

 

金の即決に云自身が驚かされるも、その理由を聞かされるとスンナリと納得した。

 

「了解しました。是非宜しくお願い致します。貴方の部下達も我が国へ移住させましょうか?」

「是非お願いしたい。こちらこそ素晴らしい話を持ってきて下さって感謝しか無い。」

 

それぞれの意図と利益が一致した2人は病室で固い握手を交わした。

*1
少し前の話と同じく日本語で書きますが、朝鮮語で話しています。




減噴(ペルファン)
チャルネスの中央に位置する首都で人口は1100万。
国土を貫く2大大河 高寧川の畔に位置している為に古くから水運の要所として栄え、王政時にもう一つの大河 目根伏川に繋がる運河が開通した事で国内の水運が集まる都市となり、民主国家への移行に合わせて遷都された。
減噴城を改造した議会場を中心に都市が作られ、市内には地下鉄や路面電車・トロリーバスといった公共交通機関が張り巡らされているが、人口増加に対する混雑緩和には至っていない。
現国家主席によって高寧川に貨客船が直接入れる様に拡張工事が行われ、遷都後から敷かれた鉄道網は同都市に集まる様に作られた為に、大陸外からも人と貨物が集まる冷軽大陸最大の都市として君臨している。

東和以外の国家の都市にはモデルがありますが、減噴に関しては明言しなくても分かりそう。

慈英(ジエイ)国家主席
チャルネスのトップが遂に登場しました。今作の中国は女性の主席ですが、こちらは男性にしました。
この話だけでもかなりきな臭い動きをしてますが、果たしてどうなるやら······

・日本製の文房具
日本の文房具って海外でも評価が高いらしいので元から輸出品に選んでいたのですが、日用使いする文房具なら劇中の名目で自然に国外へ運べるのではと思いついたのでやってみました。

或乃(アルノ)情報局局長
2話前に登場した具江名(グエナ)米練(メイネン)が話に出していた上司が彼女です。立場的には東和の風原と同じです。

于吉(ウキツ)
減噴の南80kmに位置する都市で人口は97万人。
古くから茶葉の名産地として知られており、町の周辺に広がる平野を活かして3000m級の滑走路を有する飛行場と航空工廠が建設され、チャルネスの航空技術開発の中心地となった。

・独島
前書きで書いたシビアな問題がこれです。日韓関係を扱うには避けて通れない話題で、今作では竹島の日本と一緒に転移しています。
まあ前作でどさくさに紛れて北方領土を奪還しているので、案外大丈夫だったり?
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