New world note in Earth   作:YUKANE

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合計UAが前作を超えました。1年足らずで越えられたので、より多くの人に読んで貰えてる程に成長したとだと自己満足に浸ってます。

今回から日東の合同演習に関わる話で、今話は日本の参加戦力を語った回なのですが思ったよりも短くなりました。次話で各国の参加戦力について語った後に演習という名のドンパチパートへ行こうと考えております。


Episode.38 自衛隊の嘆き

海軍の町として日本一有名な横須賀には現在も海上自衛隊と米海軍の基地が置かれており、朱雀戦争の北方領土奪還に貢献した第1機動部隊と首都防衛に特化した第6護衛艦隊・国外に展開する米海軍で唯一原子力空母が恒久配備されている第7艦隊が駐留していた。

転移で母国を失った第7艦隊はその立場を危うくされてはいるも、横須賀基地ではいつもよりも忙しい仕事に追われる日々が続いていた。

 

海自五大基地の一つに数えられるでは多くの隊員が日々の業務をこなし、昼になると基地内の食堂に長い列が出来るのが転移前からの日常光景だった。

「DDH-185 あまぎ」艦長から護衛艦隊主席参謀になった桐島龍樹 一等海佐も、空自時代ですら経験の無い長い列には時間経過につれて慣れていったが、受け取った食事にはこれまでとは違う変化が見えていた。

 

「漸く飯の量が戻ったか───とは言え、減量さえた飯に慣れた腹が受け入れるやら。」

「うちらデスクワーク組はキツいかもだが、乗組員は大喜びだろうなw」

「ただ大盛りは禁止ですから、現場組は物足りないでしょうねw」

 

1枚に全てを載せるステンレス製の食器盤ではなく、お盆に載せられた白い樹脂製の皿にそれぞれ盛られた給食の様なランチを受け取った桐島は、元通りになった食事量に減量された食事に慣れ切った自らの胃が受け入れるかボヤく。

桐島のボヤきに同僚で一緒に並んでいた情報主任幕僚 長嶺(ながみね)英輔(えいすけ)一等海佐と、監理主任幕僚 甲崎(こうざき)海斗(かいと)一等海佐が減量飯に一番苦しんだであろう乗組員を労る発言を被せる。

 

桐島ら3人は雑談しながら食堂に並ぶテーブルの一角に陣取り、チキン南蛮がメインのランチを食べ始める。

 

「ふと思ったが飯の量が戻った理由って、燃料と同じく自衛隊に優先供給されたからか?」

「どうだろうな? 日本救援船団はもう2桁に達したってのに大食い料理の提供や自家用車の利用自粛は継続だし。」

海自(ウチ)だって護衛だけじゃなく、「AOE-426 おうみ」や油槽船1号型も送って貢献しているんですがね。やっぱり1億人を養うのは並大抵の事じゃ無いな。」

「自衛隊だって空き地に畑を作っているのにな───最も戦時中の光景だとネットで言われてるのは納得できん。」

 

桐島と長嶺・甲崎の3人は国内の燃料事情や自衛隊も食料確保に貢献している事を話のネタにしながら、元の量に戻った昼食を食べていく。

 

「そう言えば今度の合同演習で東和側に連絡仲介と解説役として行くのは、沢上(さわがみ)に決まったらしいぞ。」

「沢上でよかったよ。もしかしたらまた俺が選ばれる可能性だってあったし。」

「流石にそこは配慮したんだろう。それにお前さんは国内でも引っ張りだこだし。」

「それもそうだな。にしても陸海空合同で幾つもの国と演習するのは前例が無いんじゃないか?」

 

不意に長嶺が話題を変え、それにつられて他2人もその話題へ乗っかっていく。

日本は東和との国交締結から間もなくTRM諸国も加わった合同演習の話を持ち込まれ、周辺国との交流も兼ねて日本側も承諾していた。日本の軍事力を見せつける意味も込めてか陸海空全ての参加が決まり、前例の無い案件に護衛艦隊司令部も戸惑いながら話を進めていた。

 

「確か海自の演習は南座(なんざ)環礁でやるんだっけか?」

「南瑛諸島から南南東200kmに位置する環礁だ。既に「AGS-5106 しょうなん」が周辺海域の海底地形と海流・水質のデータ観測に向かっている。」

「海保から“日本周辺の海域調査を行っている中で引き抜くのか!”って苦情が来たがやむを得ないな。」

「こっちだって残る「AGS-5104 わかさ」と「AGS-5105 にちなん」を送っているんだし、それで我慢してくれないかね。」

「海保だって日本救援船団の護衛に駆り出されてるんだ。ウチらにフラストレーションが溜まってるだろうな。」

 

桐島の発言に2人は笑う。喋っている間に皿に盛られた食事は徐々に減っており、無意識ながらもさっきの不安が杞憂だったと証明していた。

 

「にしても、あんな戦力は環太平洋合同演習(リムパック)でも送らないよな。」

「第2機動部隊の半数に第3潜水隊、掃海隊群の第1掃海隊と第2輸送隊、それと訓練支援艦と潜水艦救難艦・補給艦・多目的支援艦。

航空戦力は艦載機を除くと第81航空隊のUP-3Dだけだとしても、観艦式と間違う程に多いな。」

「陸自も北海道の第2師団をメインに、第1特科団と対戦車ヘリコプター隊が参加。空自は第3航空団のF-2Aと第7航空団のB-1Jを主体に、早期警戒機(AWACS)と空中給油機・電子戦機が付随するしな。正しく自衛隊に刻まれる大演習だ。」

 

海自は西側諸国との演習よりも多い戦力を送り、陸自と空自もそれ相応の戦力を派遣する今回の演習は、正真正銘前例の無い事例だと言えた。

暫く前であれば野党や反戦団体からの抗議が来たであろうが、それら団体は転移による混乱や影響を抑えるべく与党と手を組んで奔走している為に、ネットを除いて目立った動きを見せていなかった。

 

「そう言えば東和やチャルネスの参加戦力の情報って来てるか?」

「来てるかもしれないが、俺は知らん。衛星も海底ケーブルすら無いから、東和との連絡は短波頼りで面倒だったからな。」

「つい先日、佐世保〜暮田の海底ケーブルが繋がったから今後は楽だろうが、改めて海外と簡単に繋がれた事に感謝しなきゃな。」

「「ARC-483 むろと」も駆り出されるぐらいにTRM諸国との海底ケーブル敷設は切羽詰まってるしな。宇宙航空研究開発機構(JAXA)もやる事が多すぎてパンクしているとか聞いているが。」

 

かつては重要でありつつも、現在は洋上航空無線や船舶無線・アマチュア無線でしか使われていない短波でしか通信出来ない面倒さに対する愚痴がこぼしている間にも、3人は昼食を食べ終える。食べ終えた食器を載せたお盆を返却口に返した3人は、食堂を去って自らの職場へ戻っていく。

 

護衛艦隊は転移によって中国による領海侵犯や北朝鮮からの弾道ミサイル発射に備える必要が無くなるも、TRM諸国との大演習に向けた対応に追われて仕事量自体は変わっていない処か、寧ろ増えていた。




・長嶺英輔と甲崎海斗
今作から登場した新キャラです。護衛艦隊が出てくる際に一緒に出てくるであろうと構想してます。沢上についても次がその次で出てくるでしょう。
横須賀基地は海自最大の基地なので食堂はありますよね?···寧ろ無かったらヤバいんじゃ。

・大食い料理の提供自粛
これは劇中では“転移によって食料を無駄にしないという働き”という形ですが、本質は作者が大嫌いな大食い料理をフィクションでも潰したいと言うメッセージです。
大食い料理って何人前の食材を何分で食べきる遊び感覚で使うのが不快で、しかもそれを残されると食料ロスにもなるので不快極まりないです。なので私の作品では大食い料理や食べ物を無駄にする描写は絶対にやらないと決めてます。

・油槽船1号型も送って······
設定上では第二次日本救援船団に加わっていたのですが、本文ではその言及すらされずにカットされたので、ここで言及させました。
この船って結構好きなんですけど、出す機会が難しい····

・「しょうなん」がデータ観測に向かってる
海自は演習海域の情報を東和から受け取ってはいたのですが、東和の技術では見つけられない暗礁がある可能性があった為に海自最新の海洋観測艦を送ってデータ収集を行ってます。
劇中で書いた通り、海洋観測艦は海保や民間の観測船と一緒に周辺海域の海底調査に駆り出されてます。

・B-1J
前作で切り札的登場を果たしたB-1Bが百里基地に正式配備された為に改称された。部品供給をアメリカだよりにしないべく、一部部品が日本で生産されている。

・東和との通信の現状
海底ケーブルは国際通信の99%を担っているので、海洋観測艦の周辺海域調査が終わった海域から敷設が始まってます。新たな海底ケーブル敷設ついでに、ぶった斬られた海底ケーブルも利用すべく回収してます。
海底ケーブル敷設完了まで短波で通信していた展開は漫画版日本国召喚と同じですねw
JAXAに関しては後の回でより詳しく語る予定です。
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