New world note in Earth   作:YUKANE

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インドとパキスタンの空戦結果は衝撃でしたね。第4世代のJF-17でも空対空ミサイル(AAM)次第で、第4.5世代のラファールを撃墜出来るなんて誰が予想出来たか。

てか、仮に中国機と空自機が戦ったらどうなるのでしょうか。空自機が落とされる展開もあり得なくないと思ってしまいます。

あ、UA15000突破ありがとうございます。


Episode.39 演習前の宴

東和国の最東端に位置する南瑛諸島の中心地 暮田。今まで辺境の地であったこの諸島は、日本の転移で一番大きな影響を受けた地と言えた。

北と西以外が未開だった辺境の諸島は日本救援船団によって日東貿易の中継地と言う重要な地位を確立し、牧都や京逆に次いで日本製品が輸入される最先端の都市へ変貌していた。

 

また対馬から500kmしか離れてない立地を活かして、商船三井さんふらわあが引退予定だった「さんふらわあ しれとこ」を用いた東和〜大阪を結ぶ航路の経由地となり、転移前は下関と釜山を結んでいた関釜フェリーによって下関への航路が開設された事で、東和の玄関口の地位も確立した暮田の沖合に多くの軍艦が錨を下ろしていた。

 

暮田港を作り出した早紀派(さきは)海峡には大口径の大砲を何門も積んだ軍艦が犇めく様に停泊し、艦橋よりも高く聳え立つマストに掲げられた各艦の母国の国旗は、白い月明かりに照らされながら風ではためく。

 

「暮田の海がここまで埋まったのはいつぶりだろうか。」

 

暮田海軍基地の庁舎から突き出たベランダに佇む基地司令 錫先(すずさき)天鬼(あまき)大将は、森林を思わせるかの如く並ぶ軍艦群を眺めて感想をこぼす。

最東端に構える暮田基地が持つ2艦隊分を停泊可能な港湾設備は全て埋まり、海峡上にも定期航路を遮らない様に軍艦が停泊する光景は彼ですらも数える位しか見たことが無かった。

 

「正に壮観の一言ですな。生きている間にこんな勇ましい軍艦が並んでいる光景を見られるとは。」

「私ですらもう一度見えるか分からない光景です。石見司令も是非脳裏に焼き付けて下さい。」

 

白い月光に照らされて佇む錫先の元に、第2機動部隊司令官 石見惣一海将がやって来る。彼自身も招かれた立場ではあるのだが、地球では居なくなった筈の大口径砲を幾つも携えた軍艦が勢揃いした光景に圧倒されていた。

 

「今回、海軍戦力を送ったのは日東と茶瑠祢須(チャルネス)の大国以外ですと、狩須(カリス)蟻涙(アリルン)だけですが、5カ国だけでも壮観ですな。」

「5カ国だけでこんな景色を見れるのでしたら、全ての国が揃った光景も一度は見てみたいと思ってしまいます。」

「同感です。海軍大臣もこの光景を見たかったでしょうね。人間ドックと被ったのは不幸としか言えません。」

「副大統領と空軍大臣がその悔しさを晴らしてくれるでしょう。そろそろ晩餐会が始まるみたいですから、我々も戻りましょう。」

 

錫先と石見はベランダの欄干に並んで腕を置き、並ぶ軍艦を眺めながら他愛もない雑談を交わす。今回の演習に海軍を送った国々や、演習の見学に訪れる政府要人について語り合った2人は煉瓦(レンガ)造の基地庁舎へ戻っていく。

基地庁舎の大会議室では演習に参加する艦隊の司令官や観戦武官らが一堂に介しており、海自向けに用意されたテーブルへ石見が着席した事で演習前の晩餐会に参加する面々が集まった。

 

「この晩餐会の音頭はこの錫先が取らせて頂くが、まず一言。“日東大演習”と名付けられたこの度の演習への参加して下さった国々へ御礼申し上げる。

皆も知っての通り、この度の演習は5ヶ月前に現れた我らが新たな仲間 日本国との軍事的交流を深めるのが主な目的となっているが、ここまで大きな演習は東冷共栄圏(TRM)設立後でも過去に例が無いであろう。

私はTRMが新たな時代へ突入する証明になるであろう演習に参加出来る名誉を誇りに思っている。挨拶はこれぐらいにして、晩餐会を始めよう。では、乾杯!」

 

錫先の挨拶が終わると面々は立ち上がり、東和で名のしれた楢原産マスカットで作られたシャンパンが入ったグラスで乾杯を交わす。

黄金色に輝くシャンパンを飲み終えた面々が着席すると、正装で着飾った水兵が金縁の陶器皿に盛られた前菜が運ばれてくる。

 

「“花玉菜(キャベツ)のバター焼き”ですか。長瀬が言ってた通り、高級料理並の美しい盛り付けだ。」

 

今回の演習で海自側の旗艦を務めるあまぎ型航空母艦「DDH-186 かつらぎ」の艦長 葛城辰馬一等海佐は、東和へ初めて降り立った日本人の一人でもある「DDH-185 あまぎ」艦長の長瀬竜也一等海佐から聞いていた通り、高級店かと見間違う程に美しく盛られた前菜を見てお褒めの言葉を漏らす。

シャンデリアの光で輝く銀製のナイフとフォークを持ち、バターで焼かれたキャベツを食べようとした葛城だったが、そんな彼に後ろ側から声がかけられた。

 

「葛城艦長。少々お聞きしたい事があるのですが、宜しいですか?」

「第3艦隊司令官の津賀崎(つがざき)大将ですね。そこまで下手に出なくとも大丈夫です。階級は貴方の方が上ですし、この場は聞きたい事を聞く場でもあるのですから。」

「では、単刀直入に聞かせて頂きますが、葛城艦長は昨年度の朱雀戦争で最前線にいたと聞いております。ミサイルの撃ち合いであったその戦いについて、教えて頂けないでしょうか?」

 

葛城の反対側に座る第3艦隊司令官の津賀崎(つがざき)春陽(はるみ)大将から、話を振られた葛城は持ったばかりのナイフとフォークを置いて津賀崎へ向き合う。

 

「確かに現代艦同士の戦いは地球ですらも珍しく、ミサイルが実用化されていないTRMであれば無知な世界でしょう。

良いでしょう。どうせならば、この晩餐会へ参加している皆様も是非お聞き下さい。」

 

津賀崎の頼みを聞き終えた葛城はそれに応え、この大部屋にいる全員に聞こえる様に問いかける。演説の様に大袈裟な葛城の様子に引かれてか、晩餐会に呼ばれた面々は葛城の方を向く。

 

全員の視線が集まる中で、葛城は朱雀戦争の経験談を語り出す。演習中に朱雀列島が占領された事から始まり、シ連潜水艦や航空機の襲撃・シ連の奇襲攻撃で本土の基地が破壊された事・列島に上陸したシ連軍攻撃の失敗・シ連潜水艦による補給艦の大破・シ連と同盟を結んでいた中国の裏切り・対艦ミサイルの飽和攻撃によるシ連艦隊殲滅・日中合同の朱雀列島再奪還といった僅か3日間の出来事を語った。

 

「といった感じでかなり要約いたしましたが、朱雀戦争の話は以上となります。」

「大変素晴らしいかった。大国同士の戦いを僅か3日間で終わらせるなど信じ難かったが、貴殿の話で事実だと分かった。」

 

葛城が語り終わると大会議室内に響き渡る拍手が巻き起こる。錫先が面々を代表して感想を述べ、それを受け取った葛城は会釈した後に自らの席へ座る。

葛城はすっかり冷めた前菜を食べ始め様とするも、津賀崎の右隣に座っていた男が彼へ話しかけた。

 

「素晴らしいお話をありがとうございます。私は第2艦隊司令官の沢目(さわめ)縄彦(なわひこ)大将と申します。

話の中で対地砲撃を行ったと仰りましたが、あの単装砲でやったのでしょうか?」

「えぇ、我々の護衛艦が唯一搭載している主砲で砲撃を行いました。それが何かありましたでしょうか?」

「私は大口径砲の虜だと自称してまして、海自の皆様にも大口径砲の魅力を是非伝えたいのです。」

 

葛城は現在の主流であるMk.45 5インチ砲や一世代前のオート・メラーラ 127mm砲を思い浮かべながら話していくと、沢目は身を乗り出すかの様に自らの思いをぶつけ始める。

 

「無論、海自には我々とは異なる戦闘教義(ドクトリン)があるでしょうし、貴方がたの護衛艦が勇ましく無いとも言いません。

ですが大口径砲は対地砲撃にて単装砲やミサイルよりも圧倒的な効果を発揮し、砲艦外交でも言語を問わずに多くの人々に一目で威厳を見せつける事が出来るでしょう。」

 

大口径砲に取り憑かれた、大口径砲が具現化した人物と揶揄さえる沢目の熱弁を真正面から受けた葛城は話を挟む隙間が無いほどに圧倒されていた。

 

「な、なるほど······」

「大口径砲ですか······一応護衛艦隊()に話は振っておきましょう。」

「こいつはこう言う奴なので、気にしないで下さい。」

 

葛城と石見が答えに困っている様子を見てか、津賀崎が呆れながらも助け舟を出す。沢目の思考が津賀崎へ移った事で解放された石見だったが、それを狙っていたかのように別の人物が話しかけてきた。

 

「いきなりとんでもない話を振られて災難でしたね。」

「最もです。貴方は───チャルネス海軍の方ですか?」

「えぇ。第2艦隊で司令官を務める湯版(ユハン)吃寝姿(チェイネス)中将です。是非、貴方と話したいと思いまして。」

 

小綺麗な正装にチャルネスの国旗や勲章を付けた湯版から話したいと言われた石見は、彼の要望に応えるべく身体を向ける。

 

「今回の演習には艦隊を送った5カ国以外も観戦武官を送っていますから、過去一の規模の演習でしょう。

貴方がたにとっては周辺国を知れるいい機会になるでしょうな。」

「そうですな。周辺国との交流のきっかけになるでしょう。それにそれぞれの海軍も特徴があって、見てるだけで面白いです。」

「同感です。国ごとの国防方針が反映されておりますから。」

 

石見と湯版は白ワインを呑みながら、周辺国海軍について語り合う。

 

「戦艦を持っているのはやっぱり東和とチャルネスだけですか?」

「えぇ。ただ、海防戦艦であればサリバーやシーリア・フィルラントも持っております。今回参加するカリスやアリルンは巡洋艦を海防戦艦代わりに使ってます。」

「主力艦だけでも各国の個性が見えて興味深い。」

 

湯版と各国の個性的な主力艦について語り合った石見は白ワインで喉を潤す。空になったワイングラスを白布が被さったテーブルへ置いた石見は、海自の面々が質問攻めにあっている光景を見た。

 

「やっぱり新参者に興味があるみたいだ。」

「それは人間の(さが)ですよ。葛城殿と話しているのはカリス海軍の西部艦隊司令官を務める圍朱(イシュ)治実(ハンミ)中将ですね。」

「潜水艦隊や練習艦隊は東和の同職と話が盛り上がっている様でなりよりだ。」

「石見艦隊司令。お話中、宜しいでしょうか?」

 

まるで囲う様に集まった人々と話す周囲を見回していた石見に、新たな人物が語りかけてきた。

 

「彼はアリルン海軍第2艦隊司令官のチャウヒ=ヨウケンオ少将です。」

「お初にお目にかかります。是非、貴方に聞きたいことがありまして。」

「私に答えられる範囲であれば、お答えできるかと。」

「日本国が元々いた世界には我が国に似た国家があると政府から聞きました。その国の海軍はどの様な海軍を持っていたか、ご存知でしょうか?」

 

湯版の自己紹介を受けたチャウヒの質問に、石見は左手を顎に置いて暫く思考する。

 

「貴国と似た国家はベトナムと呼ばれていました。同国の海軍は空母こそ持ってはいませんが、まあまあの戦力を持っていたと記憶してます。確か一番大きい艦がフリゲートでしたね。」

「地球ではフリゲートであってもミサイルを積んでいるとお聞きしております。フリゲートでも充分な戦力なのでしょう。」

 

うろ覚えながらも答えた石見にチャウヒは満足した様な表情を浮かべる。

 

日東大演習と名付けられた世紀の大演習前に行われた晩餐会は、日本への質問攻めが印象に残る結果となった。




・暮田へ向かうフェリー
関釜フェリーによる定期便に関しては設定段階では下関〜氷海間の航路を結ばせてましたが、氷海より近い暮田に航路が無いのは不味いと判断して急遽変えました。
氷海行の航路に関しては、関釜フェリーと同じく博多〜釜山を結んでいたカメリアラインが航路を開設しています。
因みに作者はここ最近フェリーに乗りたくなっています。

・楢原
平炉南50kmに位置する都市で人口は15万人。
三栄平原を流れる白鷺川に面していた為に、平炉産の作物を東和へ運ぶ河川舟運の拠点として発展した。また気温の変化が大きい特性を利用した葡萄やマスカットの生産が盛んで、それで作られた葡萄酒は東和で広く流通している。

・葛城辰馬
前作で桐島のライバル兼理解者?的立ち位置だった葛城は、艦長の役職をそのまま引き継がせました。

・海軍士官ら
今回だけで何人も海軍の艦隊指揮官を登場させました。果たして全員を使いこなせるか····


余談ですが、今回は中々難産で纏めも無理矢理な気しかしませんw

プロットでは今回登場した新キャラの行動も記載していたのですが、いざ書いてみると全く役に立ちませんでしたw
プロットをガチガチにやらずにある程度出来たら連載するってやり方もありだと思えました。
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