New world note in Earth   作:YUKANE

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前に初登場した兵器の解説が後書きで出来ないと嘆いてましたが、《ref》を使えば注釈で登場兵器の紹介が出来るのでは?と思いついたので、試験的にやってみます。

先日の総火演で25式偵察警戒車や最新兵器が色々発表されましたね。この車両類も本作に出したいです。

UA17000突破感謝です。何か毎話書いている様な気が······


Episode.42 導かれし流れ星

0時丁度から始まった日東大演習が一区切りしたタイミングで、参加艦隊は燃料や弾薬類の補給を実施する。

海自や茶瑠祢須(チャルネス)海軍は専用の補給艦から、狩須(カリス)海軍は民間のタンカーから、蟻涙(アリルン)海軍は特設巡洋艦からと、各国の海軍がそれぞれの方法で補給を受けていた。

 

東和海軍第2艦隊と一緒に参加していた第3艦隊は停泊して、直属の角木級補給艦*1の「藪芽(やぶめ)」と「野火祢(のびね)」から補給を受けていた。

工作艦ベースの船体上に2本ずつ建てられた補給ステーションから伸ばされたプローブは軍艦を動かす重油を受け渡し、同じく片舷に2基ずつ設置された5tデリックは防弾板で守られた弾薬庫から弾薬を渡していた。

 

「司令。重油の補給は完了しました。第2艦隊も10分以内に弾薬と食料類の積み込みが完了するとのこと。」

「艦長、ご苦労だった。」

「船の形が違っても、補給のやり方は同じなのは面白い。」

「船が進化しても、補給はこのやり方が最適解なのでしょう。」

「5時方向に試作飛行艇を視認!」

「来たか、空軍の姫君。」

 

東和海軍の第3艦隊司令官 津賀崎(つがざき)春陽(はるみ)大将と、第2艦隊から移動してきた海自の艦隊幕僚 沢上一等海佐は補給のやり方が同じだと話し合っていると、艦橋脇の見張り台(ウイング)で周囲を見張っていた見張り員が飛行艇の到着を報告する。艦橋の面々が5時方向を見上げると、深緑に塗られた1機の飛行艇が水色に透き通った空を舞っていた。

超々ジュラルミンと高力アルミニウム合金をリベット接合した胴体は鯨の如く膨らみ、海水に浸かる下部には波消し用の突起が生えている。胴体と一体化した金属と布が混在した主翼には2050馬力の空冷星型14気筒エンジンが4つも取り付けられ、全備重量で25tにもなる機体を空へ浮かび上がらせた。

 

「二式大艇が飛んでいる········」

「日本では二式大艇と呼ぶのですか。世界が違うのに、名前以外は一緒なのは何か縁があるかもしれませんな。」

 

空を舞う飛行艇を見た沢上は、思わず鹿児島県の鹿屋基地に世界で唯一保存されている二式大艇にそっくりだとこぼす。その発言に沢目が気になっている中、飛行艇は第3艦隊唯一の戦艦である旗艦 「狂兎(きょうと)」の傍に駆逐艦 2隻が旋回して作り上げた波の無い海面へ着水する。

機体は油圧で動作する主翼の親子式二重フラップで減速し、波消しの突起も相まって巻き上げる海水の量も少ない様に見えた。穏やかな海面に降り立った飛行艇に「狂兎」の内火艇が向かい、機内に乗っていたお客を受け取ると戻って来る。

 

「お久しぶりね、津賀崎艦隊司令。海軍の最新飛行艇は乗り心地が良かったわ。」

「ありがとうございます。富来空軍大臣。」

「貴方が日本の海上自衛隊の士官ね。我が国の機体はどうかしら。」

「見ただけで分かる素晴らしい出来です。是非乗ってみたいです。」

「お世辞が上手いわね。日本の機体の方が凄いって知っているのに。」

 

国賓として日東大演習に招かれた空軍大臣 富来祐子元帥は、津賀崎ら第3艦隊の面々に挨拶すると、初対面の海自士官へ話しかける。話しかけられた沢上は当たり障りの無い言葉で返すも、既に日本の飛行機について調べた富来はお世辞だと笑う。

 

富来大臣の来艦から間もなくして第3艦隊は錨を上げ、補給を終えた第2艦隊に続けて、黒煙を上げながら大海へ進み出す。同じく補給を終えた海自やチャルネス海軍・カリス海軍・アリルン海軍の艦隊は、次なる演習海域へ舳先を向ける。艦隊が到着した海域には幾つもの気球を付けた1隻の防護巡洋艦と、2隻の貨物船が海面に止まっていた。

 

「標的艦はお古の貨物船と巡洋艦かしら?」

「いえ。「国府津丸(こうづまる)」は特設敷設艦、「第二大字喜丸(だいにおおじきまる)」は特設工作艦として海軍が使ってしていましたが、老朽化で西日湖に係留していたのを東和とチャルネスの標的艦として引っ張りだしました。

防護巡洋艦も西日湖に係留していたモノで、日本の標的として持ってきました。」

「わざわざ軍艦を用意するなんて意地悪ね。」

 

海面に浮かぶ標的艦が東和とチャルネスが貨物船ベースなのに対して、日本は古いとは言え軍艦な事に富来は意地悪そうな笑みを浮べる。

 

富来と津賀崎が話している中、東和唯一の機動部隊として5隻も配備された大鳥級航空母艦の「黒鳥(くろとり)」が航空隊の発艦作業を始める。左舷側に3基設けられたエレベーターで飛行甲板に上げられた機体は戦闘機・艦爆・艦攻の順に並べられ、艦首側に並列して取り付けられたNT-01型蒸気式カタパルトで空へ飛び立つ。

 

最初に飛び立った第3空母航空師団第5空母戦闘航空隊第622飛行隊の七式戦闘機に続いて、350kg爆弾を積んだ第4空母攻撃航空隊第711飛行隊の六十五式襲撃機が飛び立ち、最後に五十八式航空魚雷を積んだ第5空母雷撃航空隊第823飛行隊の六十四式攻撃機が舞い上がった。計22機の航空機は機体の目的ごとに編隊を組み、気球を付けた標的艦へ向かっていく。

 

「綺麗な編隊ね。良い腕をしているわ。」

「この第3艦隊のパイロットは海軍でも優秀な面々が集められてます。空軍にも負けない腕前でしょう。」

 

空軍大臣の前で自信満々に言い切った津賀崎に、富来は思わずニヤける。その間にも標的艦の付近へ到着した機体は、それぞれの目的を果たすべく動き出す。

 

敵艦隊上空の直掩機を排除して攻撃隊の進路を切り開く8機の七式戦闘機は、機首の六十七式二十一粍機関砲と翼内の六式十三粍機関銃で標的艦上空の気球を全て撃ち落とす。

気球が撃ち落とされて進路が切り開かれると、標的艦の遥か上空へ展開した7機の六十五式襲撃機が緩降下を始める。翼端が楕円形になった主翼下側のダイブブレーキを広げ、機体の速度を落としながら緩やかに降下していった襲撃機は1発ずつ抱えていた350kg爆弾を切り離す。重力を味方に落下していった航空爆弾は3発が「国府津丸」に直撃し、9400tの船体に幾つもの爆発を起こす。

緩降下爆撃によって炎上し、黒煙を上げる「国府津丸」から襲撃機が離れると、入れ替わりで6機の六十四式攻撃機が攻撃体制に入る。細身の全金属製胴体にインテグラルタンクを備えた片持ちの低翼配置の主翼を持った機体は、先導機に従って海面スレスレまで降下していく。可変ピッチプロペラで巻き上げられた海を割いて進む先導機に続く3機から五十八式航空魚雷が投下され、海中へ潜っていく。海中に潜った航空魚雷はエンジンで進んでいき、未だ無傷だった「国府津丸」の艦底に命中し、マストを遥かに超える白い水飛沫を上げた。

 

「おおぉ!! 魚雷が命中した!」

「一発は外したが、素晴らしい腕前ね。」

「自慢の搭乗員です。お、「国府津丸」が沈没していく。甲板上の乗組員は「国府津丸」に敬礼!」

 

緩降下爆撃と雷撃を絶えずに受けた「国府津丸」は船体を引き裂く不愉快な金属音を響かせ、魚雷の破孔から侵入した海水によって少しずつ沈んでいき、船首を上げて海中へ姿を消していった。

 

「良いものを見せてもらったわ。沢上さんはどうだったかしら。」

「東和海軍航空隊の素晴らしい腕前に感動しました。個人としても、この様な光景を見れるとは思っていなかったので。」

「ソレはなりより。次はチャルネス海軍航空隊だ。」

 

富来に問われた沢上は、私的の感情を交えて東和海軍航空隊による攻撃の感想を述べた。津賀崎もその感想に満足している中、演習は次の段階へ移行する。間もなくして第3艦隊の上空を

 

「あれがチャルネスの航空機·····」

「胴体が後ろに窄まった機体が最新の海燕(カイエン)戦闘機*2。機首が尖った機体が天神(テンジン)軽爆撃機*3、固定脚の機体が冷昴偵察機*4です。チャルネスは液冷機を積極的に使っているのが特徴です。」

「液冷は性能が良い代わりに、製造や整備が面倒だって聞いているけど、ああして実用化しているのは素直に尊敬するわ。」

 

チャルネス海軍第2艦隊の来苑級航空母艦*5のネームシップ 「来苑(ライエン)」から発艦した空母飛行隊第1戦闘隊の8機と、第1軽爆隊の8機、偵察隊の1機で構成された航空隊は、固定脚ながら少し前の戦闘機を超える最高速度を持つ偵察機の先導で標的艦へ向かっていく。

 

海燕戦闘機は七式戦闘機と同じく軽爆隊の進路を切り開くべく、機首と主翼内に2基ずつ内蔵された天槌-2戊型 14.8mm機関砲で標的艦周りの気球を射抜く。

気球は機関砲の弾痕から空気を抜けて萎んでいき、障害が無くなると標的艦の上空へ展開した天神軽爆撃機が垂直に降下を始める。上に緩く曲がった主翼に付いたダイブブレーキを抵抗にし、減速しながら垂直に落ちていく8機の軽爆は一定の高度に達すると、細身の胴体に内蔵された爆弾倉から300kg爆弾を切り離す。爆弾を切り離した天神軽爆は頑丈さも相まって急激な引き上げに耐えて高度を上げていき、投下された爆弾は「第二大字喜丸」に命中して次々と爆発を起こす。

 

重力を味方につけて高速で命中した5発の航空爆弾は貨物船ベースの船体に深く入り込み、船内から6900tの船体を破壊する。急降下爆撃の衝撃と船内からの爆発・商船構造が交わってか、船体は金属の軋む不協和音を響かせながら海水を取り込んで沈んでいく。

 

「急降下爆撃だけで船が沈むとは········」

「海自には急降下爆撃が無いのですか?」

「海自どころか地球上で使っている軍は無いでしょう。」

「急降下爆撃が廃れるなんて驚きね·······でも、ソレはリスクの高い急降下爆撃をやらなくても良いって裏付けかもしれないわ。」

 

沢上は急降下爆撃の強烈なインパクトに浸り、富来と津賀崎は地球上から急降下爆撃が無くなった理由を考察する中、「第二大字喜丸」は漁礁として南座環礁沖に没する。東和とチャルネスの空母飛行隊によって2隻の標的艦が沈められ、海域に浮かんでいるのは灯花(とうか)級防護巡洋艦*6餘利野(よりの)」だけだった。

 

「遂に海自の航空攻撃が見れますな。」

「別世界の航空機見せて貰うわよ。是非驚かせて頂戴ね。」

「皆様方の予想を超える衝撃と驚きを見せてくれるでしょう。」

 

富来と津賀崎は本命と言える海自航空隊による攻撃に期待を寄せ、沢上は2人が驚く未来を予想する。暫くして空間を振動させる程の重厚な音が聞こえてくる。

 

「来た様です。」

 

沢上がそう零して間もなく、「DDH-186 かつらぎ」から発艦した1機のF-35JCが第3艦隊上空を高速でフライパスする。

 

「あれが日本の戦闘機!! 速度の次元が違う!!」

「これがジェット機! こんな高速を出せるのか!?」

「司令! レーダー手から先程の機体を捉えられなかったそうです!!」

「レーダーが捉えなかっただと!? 高速過ぎて捉えられなかったのか!?」

 

初めて目の当たりにしたジェット戦闘機に富来は感激し、津賀崎は艦隊司令補佐官からの報告も相まって、上空を飛ぶ機体を現実として受け入れられないと言わんばかりの表情になっていた。

第3艦隊首脳陣をたった1機で混乱されたF-35JCは、ライトニング(電撃)の如き速度で艦隊上空を飛び去った後に旋回して向きを変え、標的艦と相対するや白い煙を吐く空対空ミサイル(AAM)を放つ。

 

平べったい胴体に内蔵されたウェポンベイに格納されていた2発の90式空対空誘導弾(AAM-3)は、切り離されて直ぐに固体燃料ロケットに火を灯し、白い航跡を描きながら飛んでいく。マッハ2.5の速度で飛翔した国産の空対空ミサイル(AAM)は、二波長光波ホーミング(IR/UVH)が捉えた気球(標的)に向けてダイレクトドライブ式電動サーボアクチュエータが制御し、2発とも着弾する。

空対空ミサイル(AAM)によって障害物の気球を排除したF-35JCは、空力特性よりステルス性を重視した菱形翼のハードポイントに装着していた空対艦ミサイル(ASM)を切り離した。退役済みながら訓練用として残されていた80式空対艦誘導弾(ASM-1)は、点火した固形燃料ロケットで空を裂く様に飛んでいき、終末誘導のアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)に従って標的艦へ着弾した。

 

4400tの防護巡洋艦に着弾した80式空対艦誘導弾(ASM-1)は、150kgの弾頭が破壊を齎す。旧式化したとは言え、日本初の空対艦ミサイル(ASM)の破壊をもろに受けた防護巡洋艦は金属の破壊音と爆発音を混じらせながら壊れていく。

着弾の光が晴れる頃には着弾した装甲巡洋艦は前後で真っ二つに裂け、艦首と艦尾を上げながら海中へ消えつつあった。

 

「「餘利野(よりの)」を一撃で沈めた·······古いとは言え、防護巡洋艦だぞ!」

「あれがミサイル··········あんな高速性と全弾命中の精度で襲ってくるなんて!」

「言ったでしょう。貴方がたの予想を超える驚きを見せてくれると。」

「えぇ────これは完全に想定外だったわ。」

 

空軍の長たる富来と、機動部隊運用のスペシャリストが集められた第3艦隊首脳陣が目の前の光景に戸惑い、混乱する。艦橋で落ち着いていたのは、この光景を予想していた沢上だけだった。

たった1発で標的艦を爆沈させたF-35JCは、自らの機体を見せびらかす様に参加国の艦隊上空を旋回して「かつらぎ」(自らの巣)へ去っていく。それを目の当たりにした各国海軍士官らは、電撃(ライトニング)の如き衝撃を目の当たりにした。

 

戦闘機とミサイルによる隔絶した性能差を海自以外の海軍は思い知らされたが、次なる演習は無慈悲にもその差をより深く刻みつけるものであった。

 

「あれが訓練支援艦とやらか───訓練用の艦艇をわざわざ新造するとは大したものだ。」

「我々の演習は高度になっているので、既存艦の改造だけでは対応出来ない部分もあるのです。ただ、地球上であっても珍しい存在ではありました。」

 

津賀崎が自らの双眼鏡で次なる演習の要として合流した「ATS-4203 てんりゅう」の艦影を物珍しく眺め、沢上が彼の疑問点を補足する。

現時点では海自最新の訓練支援艦である「てんりゅう」は自らの本領を発揮させるモノが、艦尾の標的機発射甲板に移動式ランチャーで運ばれてくる。ソレは弾頭以外の全身を視認性に長けた鮮やかなオレンジ色に染め、胴体から生えた2枚翼と推進部の3枚翼はソレがミサイル型の何かであると知らしめていた。

 

「あれが我々が用いる無人標的機 BQM-74E チャカⅢです。これから皆様にもミサイル攻撃の恐ろしさを味わって頂きます。」

「先程の光景を我々が疑似体験するという事ね。結果は見えている様だけれども。」

「標的機自体が鮮やかなのが幸いです。」

 

沢上の説明に富来が見え透いた結果を予測し、津賀崎が視認性の良さを情けだと感じている中、規定された発射位置まで運ばれたBQM-74Eは発射される。

オレンジ色の標的機が飛び立ったのとほぼ同時に、暮田空軍基地から離陸した第31航空群第81航空隊第812飛行隊のUP-3Dが演習海域上空へ飛来する。電子戦訓練支援機の役割を与えらえた日本独自の改造機は、飛来して直ぐにその真価を発揮した。

 

「司令!! レーダー類と無線が全て使えなくなりました!!」

「全てやられただと!? これが電子対抗手段(ECM)····」

「驚かされたでしょう。大半の護衛艦はこの能力を持っていますとだけ言っておきましょう。」

「確かにこれは脅威だ······第2艦隊との連絡手段を手旗信号と発光信号に切り替えろ!」

 

初めてのECMでレーダーと無線類が使えなくなった第3艦隊と第2艦隊は、連絡方法を原始的な方式へ切り替える。赤白の手旗を一定の位置に配置する手旗信号と、艦橋脇の見張り台(ウイング)に据え付けられた小さなライトを一定間隔で点滅させる発光信号で両艦隊が意思疎通を取る中、BQM-74Eは真っ正面から突っ込んできた。

 

「0時方向から標的機が来ました!」

「来たか! 各艦対空射撃始めぇ!!」

「対空射撃始め!!」

 

津賀崎の指示が第3艦隊に伝えられる。旗艦の「狂兎」も艦長の比衣島(ひえじま)李紅(りこう)大佐の指揮で、13.4cm連装高角砲と43mm三連装機銃が一斉に火を吹く。

駆逐艦の主砲弾と同口径な高角砲弾は時限信管で青空に黒い花を咲かせ、機銃弾の赤い線が幾つも重なり合う。何重にも重なった対空網は敵機の侵入を防ぐ強力な壁を作り出したが、BQM-74Eは「てんりゅう」に積まれた標的機多重管制装置(TMCATS)とCICの標的管制員の操縦によって、対空網の小さな穴を潜り抜けていく。

 

「対空砲火が当たりません! 速すぎます!!」

「これがミサイルの速さ───!?」

 

弾薬量が少ない演習弾とは言え、濃密な対空砲火に1発もせずに突き抜けるBQM-74Eの速度と回避能力に津賀崎は圧倒される。対空砲火の雨を潜り抜けたBQM-74Eは第2・第3艦隊の上空を通り過ぎていく。

 

「たった一発のミサイルでこの有り様·······これじゃあ一方的にやられるだけじゃない。」

「朱雀戦争ではこれが2桁単位で襲ってきました。国次第では3桁を一斉に撃ち込んでくるでしょう。」

「あれが2桁どころか3桁単位で撃ち込まれる───この艦隊だけでは、勝敗なんて見え見えだな。」

「なら、今度は我々海自の力をお見せしましょう。いつもは判定だけですが、今回は破壊する許可が出ておりますので、一発で撃墜する様子を見せて上げましょう。」

 

無人標的機の航空機すら凌ぐ速度と、対空砲火の豪雨を1発も当たらずに避けられる回避性能を見せられた富来らは、今の自分らではたった一発のミサイルですら対応出来ないと思い知らされた。

青ざめる東和の人々を更に追い詰める発言をした沢上だったが、アレを撃ち落とすと豪語した彼が指差した先には、「てんりゅう」に同伴していたあきづき型護衛艦の「DD-125 しもつき」がいた。

 

対空戦闘能力に特化した「しもつき」の前甲板に設置された32セルのMk.41 mod.29 VLSのハッチが1つだけ開き、1つのキャニスターに4本積載されたRIM-162 発展型シースパロー(ESSM)が1発だけ発射される。セル横の排気口から赤い炎を上げながら空へ放たれた艦対空ミサイル(SAM)は、艦橋上部に埋め込まれた00式射撃指揮装置3型(FCS-3A)に導かれて、身軽に飛びながら標的へ突き進む。

 

尾部から赤い焔を排出しながらマッハ2.5もの速度で飛んでいった発展型シースパロー(ESSM)は、セミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)に従ってBQM-74Eへ向かい、交差した瞬間に指向性爆風と破片炸薬で組まれた41kgの弾頭を爆散させる。

ESSMは青空に赤い花を咲かせ、遅れてもう一つの花が咲き誇る。ミサイルの破片は海面に落下していくが、その中にオレンジ色の目立つ破片があった事で、富来や津賀崎はBQM-74Eが撃墜されたのだと認識させられた。

 

「一撃で撃ち落とした········」

「あんな高速で小さい物体に当てたとは······」

「言ったでしょう。「みょうこう」や「たかちほ」と言ったイージス艦は100以上のミサイルを捕捉出来ますので、飽和攻撃にも難なく対応出来ますよ。」

「100以上のミサイルか───笑うしか無いな。」

 

自らを嘲笑った存在が軽々と落とされ、沢上から異次元的な説明を聞かされた津賀崎は笑うしか無かった。

 

BQM-74E(チャカⅢ)撃墜から間もなく、「てんりゅう」が装備するもう一つの無人標的機 BQM-34AJ(ファイヤビー)が3機発射される。

3機のBQM-34AJは両艦隊に擬似的ながらミサイルの飽和攻撃を実施し、それぞれの旗艦に撃沈判定を下した。戦艦にトドメを差した無人標的機は、まるでスズメバチに熱球で対抗する日本蜜蜂の様だった。

*1
角木級補給艦

それまで使われていた貨物船改造の補給艦が速度が遅くて艦隊に随伴出来なかった為に、艦隊に随伴出来る速度と様々な物資を補給出来る性能を持った補給艦として建造された。

工作艦から流用した船体の中央に設けられた全溶接の燃料タンクは、防弾板製のバラストタンクで囲われている。船体前部には食糧庫や医薬品庫・真水タンク・海水淡水化装置を、船体後部には防弾板に囲われた弾薬庫や部品庫・潤滑油タンクが設けられている。

甲板上には物資の積み込みに用いる20tの大型クレーンと4基の5tデリックが設けられ、両舷には洋上補給に用いるプローブとハイライン移送に使うウインチを設けた補給ステーションが2本ずつ建てられている。

艦隊に随伴出来る速度を出せる上に、航行しながら戦艦クラスの艦艇に給油や補給を行える設備と搭載量を持っていた為に、艦隊直属の高速補給艦として配備された。

スペック

排水量:10900t

全長:175.2m

全幅:27.2m

吃水:5.01m

機関:YN-18A型ディーゼルエンジン 8基

出力:10400馬力

速度:18.6ノット

武装:13.4cm三連装速射砲 1基

   13.4cm連装速射砲 2基

   43mm三連装機銃 5基

補給物資:艦船燃料 1800t

     航空燃料 500t

     潤滑油 300t

     弾薬.400t

     真水 150t

     食料 30t

乗員:214名

*2
海燕戦闘機

東和が開発した七式戦闘機の対抗馬として液冷エンジンの戦闘機開発が指示されるも、実用化までにかなりの期間が必要だと見込まれた為に、その間を繋ぐ単翼戦闘機として于吉航空工廠で製造された。外見モデルは二式戦闘機。

大口径の空冷星型エンジンを搭載した胴体は表面抵抗を抑えるべく細く絞り込まれ、尾輪も引込式になっている。垂直尾翼は射撃時の安定性を高めるべく、水平尾翼の後方に配置している。機体サイズに対して小さめで、引込脚を備えた関係で付け根が折れている主翼は、前桁と後桁をコルゲート補強材で繋げた多格子型応力外皮構造を採用した為に高い頑丈性を持っている。

防弾装備として風防前面を40mm防弾ガラスにし、座席後部には15mmの防弾鋼板を装備している。機内と翼内の燃料タンクは外装を積層ゴムで包んだセルフシーリング式になっている。

堅実な設計と革新的な技術で作られた本機は高い速度と上昇力・加速力・急降下性能を持っていた為に、本命完成までの繋ぎとして空軍と海軍に配備された。本命の配備後も高速と上昇性能を生かして、爆撃機迎撃やスクランブルを主任務とした部隊に配備される事が決まっている。

スペック

全長:9.17m

全幅:9.88m

翼面積:16.4m²

重量:2250kg

エンジン:響-17丁 空冷星型14気筒エンジン(1200馬力)

最高速度:612km/h

航続距離:1840km

乗員:1名

武装:天槌-2戊型 14.8mm機関砲 4基(機首・翼内2基ずつ)

   300kg爆弾 1発

   150kg爆弾 2発

*3
天神軽爆撃機

空軍の攻撃機や艦爆には東和製の複葉機が使われていたが、東和海軍が六十四式攻撃機を採用した事で性能差が明確になった為に、六十四式と同等の性能を発揮出来る艦上攻撃機として案念航空工廠で製造された。外見モデルは九八式軽爆撃機。

爆弾倉を備えた細身の胴体や上に緩く曲がった主翼は全金属製で作られており、固定脚ながらチャルネス初の全金属機になった。

エンジンには国産戦闘機に搭載された水冷エンジンを液冷へと改良した物を積んでいるが、改良によって整備性が更に悪化した上にトラブルも多発し、エンジン下部に搭載されたラジエーターにも水漏れなどの不具合が頻発した。

整備性が悪い上にトラブルや故障も頻発する整備員泣かせで稼働率もあまり高くない機体だったが、チャルネス初の全金属製機で軽爆撃機として優秀な性能を持っていた為に、空母航空隊以外にも空軍の攻撃機隊にも配備された。

スペック

全長:12.2m

全幅:15.8m

翼面積:35.1m²

重量:2620kg/3940kg

エンジン:迅-33戊 液冷V12エンジン(1030馬力)

最高速度:468km/h

航続距離:1400km

乗員:2名

武装:天雨-12乙型 8.4mm機関銃 2基(機首・後部座席)

   300kg爆弾 1発

   150kg爆弾 3発

*4
冷昂偵察機

チャルネス空軍は攻撃機と兼用した偵察機を運用していたが、東和との全面戦争を見据えて基地や艦隊の偵察に特化し、高高度性能と最高速度を重視した戦略偵察機として臣京航空工廠で製造された。外見モデルは九七式司令部偵察機

最高速度を少しでも上げるべく空気抵抗を出来る限り減らす事が求められた為に機体は鎮頭鋲で作られており、風防も段差が無い観音開きが選ばれている。主翼も重量増加と少しでも薄くする為に敢えて固定脚が選ばれ、流線形のスパッツで空気抵抗を少しでも減らしている。

滑走距離が長い上に前方視界が悪い欠点があったが、戦闘機すら上回る最高速度を持っていた為に空軍以外にも空母航空隊に配備された。戦闘機の速度向上で速度の優位性が無くなった為に後継機に置き換えられ、現在は練習機や連絡機として使われている。

スペック

全長:9.08m

全幅:12.97m

翼面積:22.08m²

重量:1690kg/2260kg

エンジン:羽-46甲 空冷複列星型エンジン(1180馬力)

最高速度:547km/h

航続距離:2870km

乗員:2名

武装:天雨-12型 8.4mm機関銃 1基(後方座席)

*5
来苑級航空母艦

チャルネス海軍初の航空母艦である前級から得られたデータや経験を元に、航空機運用能力を拡大・向上させた航空母艦として建造された。

戦艦を上回る全長の船体に改良型の機関を搭載しており、船内の弾薬庫や燃料タンクに装甲が施されている。船体の上には2層構造の格納庫と予備艦橋が設置されており、その上に航空甲板と3基のエレベーター・島式艦橋が設けられている。

東和海軍の大鳥級より一回り小さいが船体の大型化で武装や艦載機数の増強が行われた為に、前級よりも実戦向けの空母として配備されている。

スペック

排水量:22000t

全長:238m

全幅:22.9m

吃水:8.57m

主機:天元-55乙型蒸気タービン 4基

ボイラー:神武-四乙型重油ボイラー 10基

出力:158000馬力

速度:34.8ノット

武装:10.4cm連装高角砲 9基

   32mm4連装機銃 5基

   32mm3連装機銃 8基

艦載機:海燕戦闘機 30機

    天神軽爆撃機 16機

    王神攻撃機 16機

    冷昴偵察機 3機

    計 65機

航空装備:エレベーター 2基(中央)

     着-3甲型着陸制動装置

装甲:舷側 62mm

   甲板 28mm

   弾薬庫・燃料タンク 97mm

乗員:1250名

*6
灯花級防護巡洋艦

未開拓地近代化政策(BMP)で現地展開する艦隊に属して、現地の治安維持やシーレーン警備を迅速に行える速力と機動力を重視した防護巡洋艦として建造された。

高い速力を得る為に船体は細く作られ、艦首も凌波性に優れたクリッパー型が採用された。速力を上げるべくタービン機関の採用が計画されたが、試作品の性能が芳しくない為に既存のレシプロ機関が搭載された。

主砲には装甲巡洋艦で副砲として使われている17.2cm砲を艦首と艦尾に備え、両舷に8門の速射砲を備えている。魚雷発射管を両舷と艦尾に搭載しているが、装甲巡洋艦と違って艦上に置かれている。

高い速力や機動力と充分な攻撃力を持っていた為に現地の動乱鎮圧や艦隊偵察の先遣隊として使われたが、機関部の上にしか装甲を設けていなかった事からチャルネスとの海戦で舷側に直撃弾を食らった艦が轟沈した。現在は戸妻級巡洋艦が就役した事で艦種変更して使用されている。

スペック

排水量:4400t

全長:122.4m

全幅:15.84m

吃水:5.97m

機関:神原N-74型レシプロ蒸気機関 2基

ボイラー:五十三式混焼式ボイラー 10基

出力:37000馬力

速度:24.1ノット

武装:17.6cm単装砲 2基

   8.4cm単装速射砲 16基

   58cm単装魚雷発射管 3基

装甲:甲板傾斜部 85mm

乗員:407名




・第3艦隊
今話から登場ですが、演習には最初から参加していました。東和海軍唯一の機動部隊として、大鳥級航空母艦が5隻も配備されています。

・二式大艇似の新型飛行艇
こちらは正式名称をまだ公表しないので、詳細やスペックは次の出番になるでしょう。

・国府津丸と第二大字喜丸
どちらも海軍の特設支援艦ですが、海軍に入るまでの経緯は異なります。
国府津丸は経営難で発注がキャンセルされた貨物船で、第二大字喜丸は保有していた海運会社が倒産した為に安価で売却された貨物船で、それを買い取った海軍が改造して運用してました。

・チャルネス軍機の命名法
今話で一気に3機登場しましたが、戦闘機は◯燕、軽爆撃機は◯神、偵察機は◯昴になっています。
余談ですが、3機の説明文を入れたら本文字数が1万の大台を超えた····

・F-35JCが発射した90式空対空誘導弾(AAM-3)80式空対艦誘導弾(ASM-1)
どちらも現実では運用出来ない兵器で、片や引退済みの兵器なのであり得ない描写です。今作ではシ連の存在で冷戦が継続していたので現実より配備数が増えていたり、搭載出来る兵装の種類が増えています。

・暮田空軍基地から離陸したUP-3D
東和の基地から自衛隊機が離陸出来るのか?とお思いでしょうが、最東端だった暮田基地は滑走路が長く頑丈に作られているので難なく行けました。離着陸機器類については空自の器材を持ってきたのでしょう······
因みに今作ではUP-3Dの後継としてP-1をベースにしたUP-1Bも存在しています。

・BQM-74Eの破壊許可
「てんりゅう」には操縦不能になった標的機を撃墜する76mm砲があるので、破壊しても良いと判断しました。こっちは小さいので価格も低いでしょうし······
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