New world note in Earth   作:YUKANE

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今作で日本が異世界へ転移した2025年7月1日を迎えました。近未来だった筈が、数年間の設定づくりによって過去へ······小説は行き当たりばったりで書くってのも間違ってないかもしれませんね。

余談ですが10式戦車への30mmRSWの搭載や、あぶくま型のフィリピン輸出が決まったようで驚きました。今作では発表直後や発表前に転移したので、どういった形で登場させましょうか?


Episode.45 前線を支える裏方達

特科と戦車による砲撃が終わり、陸上演習はスケジュール通りに次へ移行していく。

 

先程まで日東の戦車と自走砲が展開していた演習場には、日東それぞれの対空部隊が展開していた。

東和陸軍第3師団第5高射連隊第720大隊の六十七式対空戦車*1 5両は演習開始に備えて機関砲を据えた砲塔を左右に回し、六十八式牽引車で運ばれた第721大隊の五十八式八糎高射砲*2 6門と、六十六式高射機関砲*3 8門は射撃態勢のまま待機する。

 

「副大統領も見ているから、いつもより気合が入ってなりよりだ。だが、アレを見せられた後だと陸自が何を披露してくるか不安になる······」

 

第721大隊大隊長にして陸軍で数少ない女性士官の沙魚雪(はぜゆき)壬翅(みはね)大佐は率いる部隊に絶対的な信頼を寄せていたが、東和陸軍の左に布陣していた陸自部隊の姿に言いしれない不安が募っていた。

 

陸自の高射陣地は第2高射特科隊本部管理中隊の対空戦闘指揮統制システムを中心に構成され、第2高射中隊の81式短距離地対空誘導弾と、第1高射中隊の93式近距離地対空誘導弾・第3高射中隊の87式自走高射砲はそれぞれ4両ずつ展開し、3段階に分けられた濃密な対空網を形成していた。

 

「あんなものを見せられた後ですと、圧倒的な差を見せつけられる気しかありませんが、それだとしても我々の全力を出すだけです。」

「そうだな───大隊長がこんな調子ではいかんな。」

 

副隊長の助言も相まって、沙魚雪は落ち込み気味だった不安を掻き消し、大隊を率いる長として自信を立て直す。自信を立て直して間もなく、対空演習の開始時間を迎えた。

 

「聴音手が10時方向に航空機を確認!!」

「敵機は10時方向だ! 各砲射撃態勢のまま10時方向へ旋回!!」

 

ラッパ型の空中聴音機が航空機のエンジン音を捉え、第721大隊の高射砲と高射機関砲はハンドルを回す手動旋回で、大隊長の指示した10時方向へ旋回していく。

対空戦車もディーゼルエンジンの動力で旋回した先に、六十一式爆撃機 8機の編隊が姿を現す。第3航空師団第3爆撃航空隊第313飛行隊に属する東和初の単翼爆撃機は1機ずつ目立つオレンジ色で塗られた複葉機を曳航していた。

 

「我々の標的はオレンジ色の複葉機だ! 爆撃機には当てるな‼」

 

沙魚雪の忠告を聴きながら、第721大隊専属の高射射撃盤を操る捜査員は、標的機への的確な射撃角度を導き出す。導きだされた情報は高射砲と高射機関砲へ送られ、それを元に照準手が砲口や銃口を標的機仕様の五十六式練習機*4へ定める。

 

「目標補足!! 弾種、榴散弾! 時限信管の設定完了! 射撃準備完了!!」

「高射砲、てぇー!!」

 

沙魚雪の宣言を聞いた射撃手が綱を引き、6門の8糎高射砲が一斉に火を噴き、軽量化の代償で耐久性に問題を抱えた駐退機が後退する。

分離式の装薬によって上空へ撃ち放たれた演習仕様の榴散弾は、高射射撃盤を元に設定された時限信管が砲弾底部の炸薬を爆破させる。炸薬の爆発で砲弾内部に詰まっていた球型の散弾が四方へ勢い良く飛び散り、重力に逆らう鉄球の雨が標的機へ降り注ぐ。

散弾は五十六式練習機の木金混合の骨組みに羽布張りされた機体に幾つもの穴を開け、その内の1機は簡素化された翼間支柱を壊されたのか、2枚の主翼を折りながら落ちていく。

 

「1機撃墜確認!!」

「初弾で良くやった! 高射機関砲も撃ち方始めぇ!!」

 

幸先の良い結果に沙魚雪は満足しながら、六十六式高射機関砲にも発砲を命じる。命中率向上として連装になった21mm砲身から演習弾が標的機の編隊へ撃ち込まれ、六十七式対空戦車も4連装になった同じ機関砲を一斉射撃で撃ち込む。

対空戦車は金属製の非分離式弾帯で給弾しながら、高射機関砲は20発の弾倉を交換しながら対空砲火の霰を天へ放つ。大半の21mm弾は空を切るが、一部の弾が五十六式練習機の骨組みを破壊し、曳航していた六十一式爆撃機の紐が自動的に切れて落ちていった。

 

「2機撃墜確認!! 落としたのは対空戦車の弾幕だと思われます!!」

「機関砲部隊は撃墜出来なかったか───だが、命中はしてるだろう。良くやった。」

 

自らの機関砲部隊は撃墜こそ出来なかったが、1基足りとも腔発や弾つまり(ジャム)を起こさずに射撃を終えた部下を沙魚雪は褒め称えた。

曳航していた五十六式練習機を落とされた六十一式爆撃機は横灘浜飛行場へ帰っていき、残る5機は山の奥へ去っていく。爆撃機の機影が見えなくなると東和の対空演習は終了し、陸自の対空演習へ移行した。

 

「さあ、次は陸自だな。果たして何を見せてくれるのか·····」

「正直何を見せられても、驚きはしつつも納得出来ます。」

「同意だ。どんな事をやらかしてくれるのやら。」

 

沙魚雪は副官と陸自の対空兵装に対する感想をぶつけ合う。TOTを行える砲兵と走行中に砲撃出来る戦車を持つ陸自であれば、何を持っててもおかしくないというある意味の呆れを持っているのは共通していた。

 

暫くして先程山の奥へ消えた爆撃機の編隊が再び現れ、陸自の対空演習が始まった。

3 1/2tトラックに積まれた対空レーダ装置 JTPS-P14と、高機動車に積まれた低空レーダ装置 JTPS-P18は標的の六十一式練習機を正確に認識し、1 1/2tトラックに積まれた対空戦闘指揮統制システムは送られた情報を元に迎撃手段を的確に導き、3種類の車両へそれぞれの役割を送った。

 

その情報を元に81式短距離地対空誘導弾(短SAM)が3 1/2tトラックの荷台に積まれた発射機を旋回させ、ランチャーの上下に据え付けられたSAM-1C 2発が発射された。先端が丸まった光波弾は赤外線/可視光複合画像ホーミング方式で、先端が尖った電波弾はアクティブ電波ホーミング方式と異なる誘導方式で標的機へ向かい、2発とも曳航された五十六式爆撃機のみを正確に射止めた。

 

「1発で落とした!!」

「やはり標的機だけを狙い撃った!!」

 

沙魚雪は副官と一緒に地対空ミサイル(SAM)が標的機を撃墜する光景を目撃し、一撃で落としただけでなく曳航していた爆撃機へ誤射しなかった精度を目の当たりにした。

 

開幕早々落とした短SAMに続いて、93式近距離地対空誘導弾(近SAM)が動き出す。高機動車の荷台に積まれた発射装置は、ヘルメットに目視照準具を取り付けた班長の指示で、射手が射撃統制コンソールのジョイスティックで動かしていく。発射装置内の照準装置を構成する可視光TVカメラで照準を合わせると、ジョイスティックの発射ボタンによって左右の4連装ランチャーから2発ずつ91式携帯地対空誘導弾(SAM-2)が発射された。

携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)から流用された細いミサイルは、弾頭のCCDカメラを用いた可視光画像と赤外線ホーミング(IRH)に導かれ、榴散弾や21mm弾でボロボロになった五十六式練習機に2発ずつ直撃した。

 

「さっきより小さいのに精度は劣ってない·····」

「弾があんな小さいと人で担げそうだ。あの精度のミサイルを人力で運べれば、戦局を大きく変えるぞ。」

 

沙魚雪が鋭いとも取れる発言を零す中、たった1機だけ残された五十六式練習機を落とすべく、87式自走高射機関砲が砲塔両脇に備えたエリコンKDA 35mm高射機関砲を天へ向ける。砲塔上部後方に取り付けた棒型の索敵レーダーと皿型の追尾レーダーを目標を定めると、35mm高射機関砲が火を噴いた。

“87AW”や“スカイシューター”と呼ばれる自走対空砲は、74式戦車をベースにした車体で反動を吸収しながら、対地射撃も可能な35mm機関砲を連射していく。東和陸軍の高射機関砲より大口径な35mm弾を食らった五十六式練習機は、それまでよりも大きな破孔を開けると瞬く間に壊れて落ちていく。

 

「10分もかからずに標的機を全て落とした───巫山戯(ふざけ)てる。あんなの見せられたら、勝てる気がしないじゃないか。」

 

沙魚雪は最後の標的機が演習場の荒野へ落ちていく光景を眺めながら、努力では越えられない壁を目の当たりにして、思わず戦意を失っていた。

 

沙魚雪と同じく戦意を失う者が続出した対空パートが終わると陸自の地雷処理能力がお披露目され、92式地雷原処理車や70式地雷原爆破装置が発射したロケット弾によるド派手な地雷原処理や、90式戦車に取り付けられた92式地雷原処理ローラでの押し潰す脳筋的な処理を見せられた東和陸軍関係者や各国観戦武官らは、またしても頭を抱えてしまうのだった。

 

 

地雷処理が終わると5日の演習行程は殆どが終了し、最後に残された日東両工兵による陣地構築が始まった。陸自は第2師団第2施設大隊を投入していたが、この陣地構築はそれまで周囲を驚かし続けた陸自を、東和陸軍が驚かす事になった。

 

「工兵車両の種類と数が凄いな·······」

「旧軍と言えば工兵の機械化が進んでないイメージでしたが───東和軍は明らかに工兵を重視していると言わざる終えません。」

「“兵装は旧軍ながら、考えは陸自と大差ない”──秋崎一佐の言葉は間違ってなかったですな。」

「あぁ·····」

 

陸上幕僚監部から派遣された湯浅賢二陸将補と、第2施設大隊大隊長の嵯峨野(さがの)滉一(こういち)二等陸佐は東和陸軍の陣地構築を眺めていたが、何処を見ても何かしらの車両がいる光景に驚愕していた。

 

東和の何処でも見かける六式六輪自動貨車と、先ほどは野砲を牽引していた六十八式牽引車は道路構築に用いる土砂を軽々と運び、運ばれた土砂は6両のブルドーザーによって均される。成形こそ人力ではあったが、機械化によって工兵の労力や負担が大幅に減っているのは目に見えていた。

 

「旧軍が見たら羨ましがる光景ですよ······」

「東和陸軍って下手すりゃ大戦時の米軍並の機械率を持ってないか?」

「工兵と言うのは体力ばかり使いますから、負担を軽減すべく砲兵と同時期から機械化が優先されましたよ。」

「え? あっ!? これは秋野陸軍大臣!!」

 

考察をぶつけ合う湯浅と嵯峨野は後ろからかけられた声の方へ振り向くと、東和陸軍のトップである秋野忠大 陸軍大臣がいた為に、思わぬ人物と相した2人は急いで敬礼をする。

 

「驚かせて悪かった。陸自の工兵車両も見ておこうと思って。

東和陸軍(我々)の工兵車両に驚いてた様ですが、陸自(貴方がた)も良い工兵車両を持っているではないですか。」

 

秋野の視線の先では、第2施設大隊の車両が陣地を構築する地へ向かう道路の整備を進めていた。2両の中型ドーザが障害物を除去し、同じく2両のグレーダが平らに均していく。どちらとも民生品を濃紺に塗っただけだが、初めて秋野にとってはどちらも興味津々に見ていた。

 

「グレーダとか言う車両は面白いな。あそこまで本格的なブルドーザーは国内に無いから、是非導入したい。」

「ブルドーザーが無い? あそこで道路を均しているのは、ブルドーザーでは無いでしょうか?」

「あれは五十二式牽引車*5と言って、初の国産牽引車です。今は古くなったので、ブルドーザーとして使っているのです。」

「牽引車の流用か····そういう使い道もあるとは。」

 

東和のブルドーザーが古くなった牽引車の転用だと知った湯浅らが感心している中、整備が終わった道路を使って日東それぞれの工兵車両が構築予定地へ入り、それぞれの作業を始めていく。

 

真っ先に入った3両の施設作業車は伸縮式のショベルアームで最前線の塹壕を掘削し、その土をドーザーブレードで整えて土塁の原型を作る。2両の掩体掘削機も塹壕掘削を行い、掘られた土を載せた3両は資材運搬車はそれを運び、2両のバケットローダと大型ドーザは運ばれた土で土塁を大まかに作っていく。少ない人員数ながらも優れた設備を持つ工兵車両の補助を受けながら、素早く陣地を構築していった。

 

「洗練された動きだ。相当手慣れた集団ですな。」

「第2師団は長らくシ連(仮想敵)の最前線にいましたから、工兵部隊は防衛向けの陣地構築には力を入れていました。」

「最前線部隊でしたか。ならば納得の練度です。」

「陸自内でも上位の練度だと自負しています。ですが、東和陸軍の工兵部隊も中々の腕前でしょう。」

 

湯浅らが振り返った先では、第2工兵連隊第810大隊の工兵車両が陸自に負けずと陣地構築を進めていた。

 

六十八式戦車の足回りを流用した六十八式伐開車*6 3両は、車体正面に備えた大型衝角で自ら動いて塹壕を掘削していた。六十八式戦車の前任をベースにした五十九式工作車*7 6両は掘削装置で塹壕を掘りながら、車体前部のドーザと車外のクレーンで陣地の構築を進めていく。

 

「施設作業車に似た車両がいるとは───それに塹壕掘削専門の車両がいるのは意外だ。」

「あれは木々の伐採用に開発された車両ですが、衝角を油圧で調整すれば塹壕を掘れる用になっているのです。」

「木々の伐採用でしたか。中々面白い車両だ。」

「やはりドクトリンが違えば作られる車両も違って───うぉぉ!? なんだ!?」

 

湯浅が陸自と東和陸軍のドクトリンの違いから起きる工兵車両の違いに感心していると、陣地構築の騒音を掻き消す程の轟音が響く。思いがけぬ轟音に湯浅と嵯峨野は困惑するが、秋野は轟音の理由を知っていたのか、戸惑う2人を微笑しながら眺めていた。

 

「やはり驚かれましたか。あれは六十九式架橋車*8が戦車橋を発射した音です。海軍の火薬式カタパルトをベースにしているので、爆音がなってしまうのです。」

「火薬式カタパルトで戦車橋を飛ばすとは───恐れ入りました。」

 

湯浅と嵯峨野は秋野が指さす先に鎮座していた2両の六十九式架橋車と、それが飛ばして架橋したであろう戦車橋を見ながら、陸自では絶対に作られない車両に驚かされた。

秋野はさっきまで驚かせていた陸自が驚かされる側に回っているのに少しばかりの優越感を内心で抱いていると、3両の07式機動支援橋が陣地の先に流れる小川に架橋している光景を見つけた

 

「陸自の架橋車両は装輪式なのですか?」

「えぇ、装軌式もいますが、専ら装輪式です。」

「あんな重い架橋車が装輪とは·····」

 

やはり自分達は驚かされる側だと秋野が再認識する中、日東それぞれの陣地構築は終わり、各師団から抽出された部隊が展開を始める。

 

「これから野外炊飯となりますが、東和陸軍って炊事系の装備も持っているのでしょうか?」

「勿論ですとも。キャビンが覆われたトラックが六十六式炊事自動車*9と言いまして、戦場でも暖かい食事を提供出来る車両です。」

「工兵だけでなくフィールドキッチンも充実して安心しました。我々のは牽引式ですが、自走式も有効的か気になりますね。」

 

秋野と湯浅が見ている中、8両の六十六式炊事自動車は炊事を開始したのか、荷台の4気筒水冷ガソリンエンジンが動き出し、歩兵らが忙しなく動き出す。陸自の野外炊具1号(22改)も疲れた陸自隊員の腹を満たすべく、動き出す。

 

「それぞれの作った食事を交換するのも面白いかもしれませんな。」

「確かに面白い。同じ料理でも味付けが違っているかもしれない。」

 

秋野と湯浅は演習中に幾度と交わしたのか、ふと思いついたアイデアを言えるまでに親しくなっていた。

 

六十六式野外炊飯車は肉じゃが・ワカメと豆腐の味噌汁・小松菜の胡麻和えを作り、炊き上げた白米を添えて東和陸軍兵を満足させる。

野外炊具1号(22改)もチキンシチューとコーンスープ・胡瓜のサラダを作り、同じく炊き上げた白米と一緒に陸自隊員の腹を満たしていく。

 

湯浅と秋野の冗談めいた話は瞬く間に実現し、陸自の食事は東和陸軍の、東和陸軍の食事は陸自の師団司令部に振る舞われ、両司令部は同じ言語を使いながらも異国の料理に興味津々だった。

 

 

日東両軍が食事を終える頃には日は沈み、間もなくして甲斐原演習場は暗闇に包まれた。歩兵の動く音や銃の部品が触れる甲高い金属音・車両のエンジン音に紛れて付近に住む動物の鳴き声が響いていた。

 

先程第810大隊が作り上げた陣地には第3師団の司令部が展開しており、師団長の山銀(やまぎ)忠成(ただな)大将は目を閉じて瞑想していた。

 

「山銀師団長。実戦型演習開始まで10分を切りました。」

「いよいよだな。皆、演習とは言え、実戦と思って取り組め!」

 

秋野の部下としてBMPの一環で勃発したフィルラント平定に従軍した彼の発言で司令部要員の気合は引き締まるが、その顔には不安が隠れてないのを見抜いていた。

 

「皆、不安か?」

「い、いえ!! そんな事はありません!!」

「例え言って無くても、顔に出ているぞ。」

 

本心を言い当てられた幕僚らは反論するも、山銀は冷静に返す。

 

「戦車に砲兵に対空、師団の主力を担う部分で圧倒的な差を見せられれば、誰でもそうなる。事実、私だって陸自と戦えば敗北必須だろう。」

 

歴戦の将軍が戦う前から敗北宣言をした事に幕僚らはざわめく。

 

「だが、だとしても我々は諦めてはならん。我々が諦めれば兵士にも伝染し、勝てる戦いすら負けてしまう。

皆、それを念頭に入れて指揮を取れ!!」

 

しかしながら、山銀は上の士気は下へも響いていく事を強調し、自らは例え負ける戦いでも精一杯の指揮を取るべく宣言した。山銀の話を聞いた幕僚らはその言葉を強く引き締めて、実戦型演習への気合いを入れた。

 

時間は刻々と進んでいき、懐中時計の長針が少しずつ進んでいく。短針と長針が0の数字で重なり、日付が1日進むと山銀は椅子から立ち上がる。

 

「6日0時を迎えました!」

「ただいまをもって、実戦型演習を始める!!」

 

山銀の宣言をもって、日東大演習の最後を飾る実戦型演習が始まった。

*1
六十七式対空戦車

航空機の急速な進化に伴って既存の牽引式航空機関砲だけでは対応出来ないとされた為に、陸上部隊に随伴可能で柔軟に動ける対空戦車として横灘浜工廠で製造された。

六十八式自走砲と同じく六十八式戦車の車体に、六十六式高射機関砲 4基を備えた主砲塔を搭載している。車体を複数の車両で共有している為に整備性や量産性に優れており、他の2車と違って車内に砲機構が無い為に居住性は優れている。

機関砲は射角を85度まで取れる様になっており、一斉射撃や片方2門ずつの射撃を選択する事が可能で、幾度もの演習で航空機に対して有効的な対空射撃が可能だと判断された。また歩兵や車両・陣地への水平射撃による火力支援にも友好的だとされた。

東和初の対空戦車として高射砲連隊に配備されて陸軍部隊や基地の防空戦力として使用されているが、歩兵連隊による突撃の際には水平射撃を行う支援攻撃にも使用されている。

スペック

全長:5.79m

全幅:2.64m

全高:2.97m

重量:19.6t

エンジン:M-74型 V12空冷ディーゼルエンジン

最高速度:34.7km/h

武装:六十六式高射機関砲 4基

装甲:車体前面 29mm

   車体側面 28mm

   車体上部 14mm

   車体下部 11mm

   砲塔周囲 8mm

   砲塔上部 4mm

乗員:6名

*2
五十八式八糎高射砲

チャルネス製航空機の性能が格段に向上して陸上部隊に対する脅威となる可能性が高まった為に、戦場や基地・橋頭保で対空射撃に使用出来る野戦高射砲として羽釜鉄工所で開発・製造された。外見モデルは八八式七糎野戦高射砲。

戦場での機動力を向上させる為に大幅に軽量化して通行重量を減らしており、牽引車やトラックによる迅速な移動と展開が可能になっている。だが軽量化した代償として構造自体が華奢で耐久性に難があり、仰角を低くする対地射撃をする際は砲口制退器と防盾を取り付けなければ転倒する可能性があった。

固定陣地と戦場の双方で使用出来たが、連続射撃を行った場合は耐久性の低さから駐退機の破損が相次いだ。また破甲榴弾によって野砲や対戦車砲としても使用出来る汎用性も持っていた為に、高射連隊に主力高射砲として配備されている。

スペック

口径:85mm

砲身長:3352mm

重量:2610kg

初速:755m/s

最大射程:14500m

弾種:榴弾・榴散弾・破甲榴弾・徹甲弾・演習弾

*3
六十六式高射機関砲

13.4mmの前任では急速的に進化している航空機に対して有効打が与えられないとされた為に、銃弾の口径を21mmに拡大して威力を高めつつ、機動力を向上させた高射機関砲として木野山工業で製造された。外見モデルは九八式二十粍高射機関砲。

命中率向上の連装砲身は前任から引き継いでいるが、弾の口径が大型化した為に1つの弾倉に入れられる弾数は減っている。弾種も徹甲弾や焼夷弾・曳光弾を引き継いでいるが、対戦車戦向けにAPDS弾が新開発されている。

機動力と即応性を上げる為に六十五式榴弾砲を参考にパンクレス式のゴムタイヤが取り付けれており、自動貨車などで牽引輸送が出来る。

3分で展開可能な即応性と対戦車戦闘も可能な汎用性を持っていた為に、後継高射機関砲として歩兵部隊に配備され、地上に設置する以外にも自動貨車の荷台に乗せて使用された。

スペック

口径:21mm

砲身長:1.56m

装弾数:20発

重量:402kg

初速:990m/s

有効射程:6400m

*4
五十六式練習機

自国で航空機生産を始めたチャルネスに対抗すべく単翼の六十二式戦闘機や各種攻撃機の開発が始まったが、実用化された場合は既存の練習機との性能差が広がってしまう為に、性能差を少しでも狭めつつ操縦しやすい複葉練習機として蓬見飛行機で製造された。外見モデルは九三式中間練習機。

機体自体は木金混合の骨組みに布羽張りした堅実な構造をしているが、張線や翼間支柱の構造を簡素化している。

曲芸飛行も出来る操縦性や高くて扱い易い安定性・信頼性を有していた上に、固定脚の代わりにフロートを取り付けられる汎用性も持っていた事から空軍と海軍双方で殆どの航空隊に配備されている。

加えて部隊での修理が容易に行える程に構造自体が簡単でアルコール燃料でも動かせた事から国内の全飛行機メーカーでも生産が続いており、設立間もない諸外国空軍へ輸出された機体は軽爆撃機や偵察機・連絡機としても使用されている。

スペック

全長:7.9m

全幅:10.87m

翼面積:26.4m²

重量:970kg/1470kg(全装状態)

エンジン:レ-82(380馬力)

最高速度:220km/h

航続距離:970km

乗員:2名

武装:五十一式八粍機関銃 2基(主翼)

*5
五十二式牽引車

重量が3t越えの榴弾砲や加農砲の採用に伴って、これらの火砲類を運ぶ事が出来る牽引車として東和陸軍工廠で開発・製造された。外見モデルは三屯牽引車。

悪路走破性を高める為に足回りには東和初となる履帯が採用されており、ボンネット部に水冷ガソリンエンジンが搭載されている。駆動方式には前4・後1のトランスミッションと乾式多板のクラッチで構成されている。

東和で初めて開発された装軌式の足回りは起動輪を後方に有し、前方に誘導輪を有している。転輪は片側6輪ずつで、3つで一組になってバネ式サスペンションに接続されている。

砲の牽引装置は車体後部に付けられており、内部に振動を吸収するサスペンションが設けられている。

水冷エンジンに故障や液漏れなどの不具合が多発したが、単独なら信地旋回を行う事が出来る性能を有していた為に、東和初の装軌式車両として火砲連隊に配備されたが、現在は後継車の登場で練習部隊やドーザーを取り付けてブルドーザーとしても使用されている。

スペック

全長:3.72m

全幅:1.74m

全高:2.56m

重量:4.39t

エンジン:P-64dF型 直4水冷ガソリンエンジン

最高速度:19km/h

乗員:8名

*6
六十八式伐開機

未開拓地での木々を伐採するのに五十九式工作車の衝角による体当たりや工兵によって手作業で倒していたが、体当たりで破損や故障が相次ぎ、手作業では時間がかかっていた為にそれらを解消する専用車として東和陸軍工廠で開発・製造された。外見モデルは伐開機。

開発中だった六十八式戦車の足回りに新設計された車体が乗せられており、万が一上から枝等が落ちてきても耐えられる様に上部装甲が一番厚めに作られている。木々を押し倒すには15t程の車重が必要だとされた為に、車内や車外に重りを乗せられるスペースが設けられている。また視界の効かない密林内を走行する事が想定された為に、ジャイロコンパスを用いて速度変化を検知して移動距離に換算出来る自記径路機が装備されている。

車両正面には大型の衝角を備えており,油圧によって上下の位置調整が可能になっている。

国内での試験では充分な伐採能力を有しているとされた上に、衝角を一番下に降ろせば塹壕を掘る事も出来た為に工兵連隊に配備されたが、フィルラントでの伐採では予想以上の巨木に歯が立たず、手作業で切り込みを入れた後に体当たりで切り倒す方法が現地で開発された。

スペック

全長:9.05m

全幅:2.52m

全高:2.18m

重量:15.7t

エンジン:M-1Fa型 V12空冷ディーゼルエンジン

最高速度:26km/h

装甲:車体前面 11mm

   車体側面 13mm

   車体上部 17mm

乗員:3名

*7
五十九式工作車

未開拓地への進出や開拓向けに障害物を排除したり、塹壕掘削・地雷除去・煙幕/毒ガス展開・架橋などの工兵部隊の役割を支援出来る装軌式工兵車両として東和陸軍工廠で開発・製造された。外見モデルは装甲作業機。

戦車をベースにした車体には工兵部隊の指揮を取るべく無線機を搭載出来るスペースが確保されており、六十三式無線機が正式化された後に搭載されている。

車外には障害物を吊り上げるクレーンや木々を倒せる衝角・トーチカ破壊用の爆薬投射機・塹壕を掘る掘削装置・地雷処理器・火炎放射器などの各種アタッチメントを取り付ける事が出来る。

アタッチメントを交換する事で要求された役割を全てこなす事が出来た為に工兵部隊の近代化と効率化に大きく貢献したが、詰め込み過ぎて各部に不具合が多発した為に、クレーン等の一部機構は専用車が作られる事になった。スペック

全長:5.4m

全幅:2.64m

全高:1.97m

重量:15.2t

エンジン:YM-2型V8空冷ディーゼルエンジン

最高速度:39km/h

武装:六十一式軽機関銃

装甲:車体前面 20mm

   車体側面 17mm

   車体上部 10mm

   車体下部 7mm

乗員:5名

*8
六十九式架橋車

戦車壕を超えられる橋は工兵によって架橋されていたが、諸外国との演習で歩兵による防御を受けながらでも工兵に多大な被害が出た為に、迅速に架橋出来る架橋戦車として東和陸軍工廠で開発・製造された。外見モデルは超壕機 TG。

自走砲や対空戦車・伐開機と同じく六十八式戦車から流用した車体に全長 9mになる戦車橋が折り畳まれた状態で乗せられている。

架橋には戸妻級巡洋艦で搭載された火薬式カタパルトを元に小型化したNU-113 火薬式カタパルトで打ち出す方式が採用され、車内に設置されたスイッチを押す事で火薬式カタパルトが動作して、戦車橋を固定していた金具が自動的に外れて飛び出して迅速な架橋を行う事が出来た。

戦車橋を回収・搭載する為のクレーンとウィンチが設けられており、車内から操作する事が出来た。

かなり奇抜な方法だったが実射試験や走破性は良好だった為に、工兵連隊への配備が始まった。

スペック

全長:5.8m

全幅:2.45m

全高:1.94m

重量:19.7t

エンジン:M-3Cb型 V12空冷ディーゼルエンジン

最高速度:36.1km/h

装甲:車体前面 19mm

   車体側面 16mm

   車体上面 25mm

乗員:3名

*9
六十六式炊事自動車

自動車化歩兵連隊などの機動力に優れた部隊に随伴可能で、暖かい食事を提供出来る炊事自動車として東和陸軍工廠で開発・製造された。外見モデルは九七式炊事自動車。

車両は六式自動貨車をベースに作られており、キャビンで覆われた荷台に発電用の4気筒水冷ガソリンエンジンを搭載し、電気炊飯器や煮汁装置などの電気調理器の動力源としている。走行時でも一時間あたり450食の炊飯能力を有し、停車時なら600食の炊飯能力と800食の汁物調理能力を発揮できる。

自動車化部隊に随伴可能な走行性能を持っている上に、兵士に温かい食事を提供出来た事から陸海空全ての軍で採用され、演習時や戦場以外にも災害時の炊き出しにも使用されている。

スペック

全長:5.67m

全幅:2.14m

全高:2.97m

重量:5.04t

エンジン:HT-2型直6空冷ガソリンエンジン

     Ra1N型 4気筒水冷ガソリンエンジン

最高速度:54km/h

乗員:3名




・陸軍では少ない女性士官
陸軍は創成期からある為に変革に乏しく、空軍が積極的に採用したのを受けて漸く採用を決めたと言う経緯です。
その関係上、女性軍人は空軍が一番多く、2番目が海軍、陸軍が最も少なくなってます。

・爆撃機が曳航する標的機
“爆撃機に誤射するのでは?”と思われるでしょうが、そこはご都合展開と言う事で········P-63みたいに圧板を貼り付けている設定にしましょうかね?

・地雷処理パート
本当は92式地雷原処理車の反応を見せたかったですが、これ以上伸ばしてもアレなんで全カットしました。もう少し早くやれればなぁ〜

・秋崎一佐の言葉は間違ってなかった
日本使節団のメンバーだった秋崎紗京さんが、言及ながらも再登場しました。ここで思い出しましたが、工作車や伐開車・炊事車は自由行動の時に登場してましたw

・第2師団は長らくシ連(仮想敵)の最前線にいました···
1年半前まで強大で危険な陸軍国家と北海道で相対していたので、練度も現実よりヤバそうですね。

・それぞれの作った食事を交換するのも面白い····
こう言うのって出来るんでしょうか? 現実では食中毒関係で出来なそうなので、まあフィクションだけの描写と言うことで。

・フィルラント平定
未開拓地近代化政策(BMP)の最終段階として進出したフィルラントが戦争を仕掛けた為に、それを鎮圧すべく派遣された東和陸軍と戦った戦争。
僅か一ヶ月で王都を制圧されたフィルラント側が大敗を喫した。
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