New world note in Earth 作:YUKANE
あとUA500感謝です。
九州の北西に位置する対馬はその立地から朝鮮半島との交易路として重要な役割を担い、冷戦期にはソ連やシ連の東シナ海進出を阻む要として機能していた。
転移して朝鮮半島が見えなくなっても日本の北西を護る地として存在する対馬の北東200km海域を「DDH-185 あまぎ」を旗艦とする第2機動部隊が西へ向けて航行していた。
米海軍から退役したフォレスタル級航空母艦の1番艦「CVA-59 フォレスタル」を購入する形で手に入れた海自初の空母を囲うように展開する艦隊の先頭は、日本初のイージス艦であるこんごう型護衛艦の3番艦 「DDG-175 みょうこう」が布陣し、「あまぎ」の右隣には対空能力を高めたあきづき型護衛艦の5番艦 「DD-124 はつづき」が、左隣はあきづき型と酷似しながらも対潜戦闘に特化したあさひ型護衛艦の2番艦 「DD-131 しらぬい」が挟み込んでいた。
「あまぎ」後方には海自初の巡洋艦として建造されたいぶき型イージス巡洋艦の4番艦 「DDG-204 あそ」が陣取り、「あそ」の航路をなぞる様に新米でもある「DD-103 ゆうだち」が続いていた。
5隻の護衛艦で構築された重厚な輪形陣の中心に陣取る「あまぎ」へ、2機の
あまぎ航空隊が持つ3つの戦闘航空隊の中で、クロウ隊という別名がつけられた第2飛行隊に所属する2機はとある目的を果たすべく出撃し、その目的を果たした為に自らの巣へと帰って来た。
『
「クロウ9よりCATCCへ。素早い準備感謝する。これから着艦する、
『クロウ3よりCATCCへ。クロウ9に続いて着艦する、
「あまぎ」の航空管制を一任するCATCCと短い通信を交わしたクロウ9こと
艦載機としては珍しい単発のF135-PW-400ターボファンエンジンの出力を細かく調整し、「あまぎ」の航路をなぞる様に正対した機体は
短い距離で機体を止めるべく張られた
カラフルな上着を着た
聖月がHMDを取り付けたヘルメットを外す頃には、彼に続いて着艦したクロウ3のTACネームを持つ上原弥生二等空尉も艦上へ降り立ち、彼の元へ歩いていく。
「お疲れさん、GPSが無いのに無事帰れて良かったな。」
「艦隊が耐える事なく現実位置を送ってくれたお陰だよ。にしても·······とんでもないもん見たな。」
「あぁ、ここに配属された初の役目がこんな事とはな····」
話しながらクロウ隊こと第2飛行隊で飛行隊長を務める赤羽
「こんな状況ながらよく戻ってきてくれた、安心したぞ。」
「新入りながら中々の腕だと赤羽が言ってたが、間違いない様だな。」
「お褒めの言葉ありがとうございます。
「でかした。機体はやはり赤い淵が入った白丸がついた飛行艇か?」
「一言一句間違いありません。カメラを確認して頂ければクッキリと写っているかと。」
「そうか、2人はゆっくり休め。」
聖月と上原にそう言った渡島は左舷側のエレベーターで格納庫へ収容されている機体を追いかける様に艦内へ向かい、赤羽は2人に対して激励の言葉をかけながら仲間の元へと連れて行った。
◇
「あまぎ」艦内に設置された
「あまぎ」は疎か第2機動部隊の頭脳でもあるこの場所にやって来た渡島は、艦長である長瀬や艦隊司令の石見惣一海将へ持ってきた写真を見せる。
艦隊司令や主席参謀などの艦隊上層部も同席しており、
「こちらがISIE-11暗視カメラで撮影した
「確かに情報通り白丸がついた4発の飛行艇だな。対馬の西で接触した機体とは別だろうから、両機の接触ポイントから運用国の位置を炙り出せる可能性が出てきたぞ。」
「その国はこんな大柄の機体を複数運用出来る時点でかなりの国力を持っていそうですね·····にしても、衛星があれば機体の様子をリアルタイムで見れたのにこうして現像しないと見れないなんて不便でしかないな。」
「昔は全部こうだったから愚痴るなと言いたいが、私自身ももどかしいからかなり腑抜けにされてるようだ。衛星の存在がこんなに大きい事を転移で痛感させられたよ。」
長瀬と石見は写真の未確認機について話しつつも、衛星が無くなった事で現像という面倒くさい手順を踏まなければ見れなくなった事を嘆いた。
彼ら第2機動部隊に対しても日本が地球から転移した仮説が伝えられたが、昨日まであった筈の朝鮮半島やユーラシア大陸が見えなくなった為にその事実を容易に受け入れる事が出来ていた。
「にしてもこの機体は何処となく旧軍の雰囲気があるな。似た感じの機体はあったりするのか?」
「似ている処の話じゃない、こいつは旧日本海軍の九七式飛行艇と瓜二つだ。」
長瀬の疑問に対して即答した渡島は1冊の本を海図台の上に置き、開かれたページに載っている写真を右手の人差し指で指差す。
彼が指差した白黒写真にはF-35JCが撮影した
「確かに似ている処か、生き写しの様にそっくりだな······これは
「アレは後継の二式大艇だ。
「そのUS-1は元を辿れば対潜哨戒用のPS-1をベースにしているので、米艦隊への攻撃を主目的に開発されたこの機体の立ち位置はPS-1の方では?」
渡島の解説に第2機動部隊の艦隊主席参謀である滝原
豊富な知識量故の発言だが、冷たい口調で話す彼に渡島はミスを詰められている様な不快感を抱き、無言になる。
その様子に気づいた石見は直ぐにわざと大きな声で咳き込み、気分を紛らわそうとした。
「機体の立ち位置なんてどうでも良いじゃないか。今重要なのは国籍マーク以外が旧軍機に瓜二つなこの機体についてだ。渡島、こいつの武装は?」
「もし武装も同じだと仮定すると、20mmの機銃が1基に7.7mmの機銃が4基・2tの爆弾もしくは2本の魚雷となります。」
「こんななりで魚雷を積めるのか·······というか、F-35JC相手に目視の機銃なんか当たるのか?」
「とんでもない奇跡を起こさない限り無理だな······と言いたいが、旧軍機には積んでいない物を積んでいる可能性もあり得るから何とも言えんな。」
第2機動部隊の首脳陣と長瀬・渡島らが写真を見ながら考察していると、通信を受け取った通信士が割り込んできた。
「艦隊司令、護衛艦隊司令部から“隠岐の島沖で各種物資の補給を行う様に”と通信が入りました。」
「補給か、確かに急いで出航したから充分な燃料を積めなかったらしいし、わざわざ朱雀列島を回ってきたからな。よし、艦隊135°回頭だ!」
石見の指示に通信士は各艦へ彼の指示を伝え出し、長瀬は艦橋へ繋がる無線機を取った。
「護衛艦隊司令部より燃料補給の為に隠岐の島へ向かえと連絡が入ったので、これより艦隊は135°回頭する。方角を間違わずに隠岐の島へ向かえるか?」
『
副艦長 照山の断言するかの如き発言に安心した長瀬は短い返事をして無線機を切る。
それから間もなくして第2機動部隊は北西へ向けていた進路を東へと変え、隠岐の島方面へと向かい出した。
・あきづき型とあさひ型の艦番号
0話の艦隊編成で気づいた人がいるかもしれませんが、今作ではあきづき型以降の艦番号が大きく異なっています。
この理由は5隻で打ち切られたたかなみ型が10隻建造された事が主原因で、あきづき型も10隻就役した事で艦番号にさらなるズレが生じています。
しかしながら、現実から11隻も増えた筈なのに足りてない模様。
・いぶき型イージス巡洋艦
今作は疎か前作でも唯一となる完全オリジナルの軍艦。艦名は参考にした「空母いぶき」の世界とは全く繋がってない事を示すべく敢えて同じにした。
190mの全長と1万t超えの排水量を持つ大型の船体に、最新のイージスシステムと2門の5インチ砲を代表とする多種多様な武装を載せており、艦隊防空の要として3つの機動部隊と第5艦隊に2隻ずつ配備されている。
オリジナルの艦として作った筈がイージス・アショアの代替として、これよりデカいイージス艦が作られるとは·····まさに現実は小説よりも奇なりですね。
・あまぎ航空隊の各飛行隊名称
前作では「空母いぶき」の影響をモロに受けたので3つの飛行隊はそれぞれイーグル隊・クロウ隊・ストーク隊と呼称してましたが、今作では各飛行隊の名称という形にしました。
理由はこんな名称だけで呼ぶ飛行隊なんて存在しないだろという現実的な理由。
・石見艦隊司令と滝原主席参謀
石見司令は前作にも登場しましたが、事故で入院している設定だったので1話しか出てないような気がします。今思うとあの状態で指揮を取るのは艦長じゃなくて、代わりとして派遣された海将だろうと反省しています。
滝原主席参謀は今作からの登場人物です。艦隊司令部の編成を確認した際にいないのはマズいと判断して、登場が決まりました。前作では何をしてたのでしょうかね?(ツッコんじゃダメ)