New world note in Earth 作:YUKANE
今回は日東大演習後の東和を描きますが、次回でTRM諸国の描写を描いてドンパチパートへ突入させると宣言します。
更新が遅れた理由は実家の手伝いだったりで蓄積した疲労で書く気が起きなかったからです。
最後にUA22000突破ありがとうございます!
3日間に及ぶ日東大演習が終わって数週間後。東和大統領官邸にて東川大統領ら東和を率いる首脳陣と、陸海空三軍の関係者が一堂に介する一大会議が行われた。
この会議は日東大演習にて見せつけられた自衛隊の実力を閣僚らへ共有するのが主な目的であり、日本とどう付き合うべきかを改めて問う重要な会議だった。
「各軍の報告書は読ませて頂いた。分かっていた筈だが、いざここまで詳しく見せられると改めて格の違いを見せつけられたとしか言えないな。」
「正直、私は日本の話に現実味を見いだせずに疑いの目を向けていました。ですが、あの演習を見た事であの話が全て事実だったと突きつけられました。
“進んだ科学は魔法と区別がつかない”と言う言葉がありますが、日本はその言葉に相応しい国家だと言えるでしょう。」
東川大統領に続いて阿多機副大統領も同様の意見を述べる。阿多機は来賓として日東大演習に参加していたが、それまでの彼は日本に懐疑的な視線を向けていた勢力の大筆頭だった為に、そんな彼ですら日本の規格外な存在を認めざる終えなくなった事は閣僚らに強く印象づけた。
「皆も報告書を読んだだろうが、本職から聞いた方がより理解出来るだろう。
まずは大臣自ら演習を見学した陸軍から聞きたいが、宜しいか?」
「無論です。私自身も皆様に是非伝えるべきだと思っていましたので。」
東川大統領の問いかけに秋野陸軍大臣は即答し、その場で立ち上がる。
「私から見た日本の陸軍こと陸上自衛隊は、“既知、未知の両分野に置いて勝っている”と言えるでしょう。
我々も持っている兵器である戦車は象の如き大きさながら狼の様な速度と駆逐艦並の火力を持ち、自走砲は
これに加えて
既知で勝てない相手に未知が組み合わさってしまえば、我々に勝てる見込みなどありません。」
彼は選挙演説の様に身振り手振りを交えながら、陸自が如何に破格の存在なのかを閣僚らへ話していく。実際に演習を見ている上に、前線部隊から中核まで陸軍の全てを知り尽くしたと言える秋野が自軍のプライドを殴り捨ててまでも、勝てないと断言する光景は語った内容が妄想ではなく事実なのだと閣僚らに知らしめる。
「我が軍と自衛隊に隔絶した壁があるのは分かった。だが、それ程までに差があるのか?──同じ分類の兵器であれば大まかな構造は一緒なのだから、我が国の技術を結集すればその差を埋めれるのではないのか?」
「理論上はそうですが、実際は未知の分野の技術も用いているので不可能でしょう。
この度の演習後には参加した各軍の装備展示が行われ、同じ分類の車両を並べられたのですが、六十八式戦車を2倍も大きな陸自の10式戦車とわざわざ並べるのは最早いじめでした。前任の六式戦車は90式装甲回収車の牽引力パフォーマンスとして3両纏めて引っ張られ、六十二式軽戦車に至ってはクレーンで軽々と吊り上げられました。」
軍事知識に乏しい須江崎経済大臣が素人なりに専門分野から考え抜いた案を提示するが、秋野によってパフォーマンスと言う実例を交えて否定される。
「国家防衛の要である陸軍でそのざまか········万が一敵対して侵攻されたら一溜りもなかったわけか。」
「外務大臣、それに関してはあり得ないと言い切れます。自衛隊の
最も彼の国が持つ誘導弾の中には1000kmもの射程を持つ物があり、南瑛諸島や千月島ならば本土へ届いてしまうかもしれませんが。」
寺済外務大臣の懸念を秋野陸軍大臣は演習時に陸自から直接聞いた話を交えて否定する。ただ、最後の一言で閣僚らは別の意味で冷や汗をかく事にはなった。
「陸軍からは以上です。次は──海軍で宜しいですか?」
「問題ない。私は人間ドックと被って参加出来なかったのが無念だが、ここに集まった指揮官らは海自の力を間近で受けた者だ。彼らに説明して頂く。」
未だに演習へ行けなかった事を悔やんでいる谷澤海軍大臣の紹介で、この会議へ呼ばれた艦隊司令官らは一同へ会釈する。
「まずはわたくし、第3艦隊司令官の津賀崎大将から申し上げます。
わたくしは自らを海軍1の航空博士と自称していましたが、海自が用いた航空戦力及び航空兵器はどれも信じ難い代物でした。
海自の艦載機は使節団の報告通り、音速に近い速度で我々とチャルネスの最新戦闘機を軽くあしらうだけでなく、一部の機体は垂直離着陸を見せつけました。その上、我々のレーダーでその機影を捉える事は一度も出来なかったです。これに加えて艦隊の全域に電波妨害を行える電子作戦機やそれら機体を管制する早期警戒機などもあり、これらの連携を現状の我が軍が崩すのは困難どころか不可能です。
兵器としては旧式とは言え防護巡洋艦を文字通り爆沈させた対艦誘導弾が一番の脅威と言えます。それによる飽和攻撃を再現する標的機相手に対空戦闘も行いましたが、全ての艦が一発も命中させれずに終わりました。対して海自は艦対空誘導弾1発で標的機を落としました。標的機も海自のモノですが、操っている艦が違うのでヤラセではありません。
以上の事実から日本の航空戦力は我が国と比べ物にならないと断言出来ます。」
呼ばれた面々の中で真っ先に話しだした津賀崎大将は、専門分野の航空戦力の面から自衛隊と東和軍の差を語っていく。
航空戦力に関する演習の全てを旗艦から目の当たりにした彼の話も具体的で、一見すると非現実的な内容であっても現実味を帯びていると閣僚らに認識させた。
「航空戦力に関する話が出たのなら、ついでに空軍からも話させて頂くわ。今回の演習で空軍は対地爆撃にのみ参加したけれども、それだけでも自衛隊の実力とやらを見せつけられた。
爆撃の目標はいつも通り市街地型標的だったのけれど、空自が送り込んだF-2戦闘機はその中に設けられた目標へのピンポイント爆撃を成功させた。空自の話によると目標へ照射されたレーザーを追いかけて着弾する爆弾を用いたそうですが、この部分だけでも隔絶した差があると分かるでしょう。
問題は更にこの後で、F-2に続いてやって来たのはたった1機しかない爆撃機だったのだけど、その機体は機内だけで30tもの爆弾搭載量を持っていた。最新の六十八式爆撃機が1200kgの搭載量である為に比べ物にすらならないのは明白でしょう。
これらの機体は日本本土から飛来して演習に参加したのだが、彼らは空中給油を用いて1000km超えの距離を無着陸で飛行する術を得ている。
攻撃・運用の両面で我が国の航空技術が日本にとっては赤子の様な存在だと言い切れるでしょう。」
富来空軍大臣は津賀崎の話に絡めて、空軍目線の航空戦力について語っていく。抜群の精度を誇る精密爆撃から無類の搭載量を誇る爆撃機、無着陸での長距離飛行を可能にした空中給油、東和からすればどれも夢幻としか思えない話だが、彼女の熱弁によって日本はそれを具現化しているのだと知らされる。
「富来大臣。確認だが、30tの爆弾を積める爆撃機に精密爆撃の能力はあるのだろうか?」
「無論です。ただし、その場合は専用の爆弾を使う関係で爆弾搭載量は減少しますが。」
「そ、そうか·········」
須江崎経済大臣の問いかけに対する返答は閣僚らを落胆させつつ、恐怖を抱かせた。
住宅地内の目標をピンポイントで狙える技術と膨大な爆弾搭載量を使えば、たった1機で政府の主要施設を爆撃して東和全土を機能不全に陥らせるのが可能だと証明していた。
「ひ、ひとまず航空機に関する話はここで終わりにしよう。他の2人も話したがっているだろう。」
重い空気がどんよりと支配した会議の空気を変えようと谷澤が話を回す。彼の発言を受けて、沢目大将が発言すべく動いた。
「では、第2艦隊司令官の私が話せて頂きます。
津賀崎が航空戦力の専門家であるのなら、私は大艦巨砲主義の専門家と自称しています。我が国ですら地位と価値が低下している戦艦を、日本が持っていないのは分かりきっていましたが、あの国の護衛艦には戦艦並の火力を有していると判明しました。
たった1門しか無い主砲は小さな目標への正確な射撃を可能にし、大口径でゴリ押す戦艦の価値を失わせると断言出来ます。特に艦対艦誘導弾と呼ばれる代物は標的艦だった前弩級戦艦「楡目」を一撃で大破させる威力と主砲並の命中精度を持ち、まさに“新時代の巨砲”と言えるでしょう。」
「前弩級戦艦を一撃か───艦対艦誘導弾はどのぐらいの大きさだ?」
「見学時に計測させて頂いた
途中に谷澤の質問を挟んで語り終えた沢目の話に会議の空気は更に重くなっていく。航空戦力だけでなく火砲の面でも東和海軍は海自に劣っている事実は、ほぼ全ての海上戦力が海自に負けていると知らしめていた。
「第4潜水隊司令の神喰少将です。追い討ちをかける様ですが、私からも伝えなければならない話があります。
私は演習前の晩餐会で海自の対潜攻撃能力や潜水艦の性能を聞かされましたが、我々の常識では信じられない程に優れていた為に思わず疑心暗鬼になっていました。
ですが、いざ演習が始まるとその話が全て事実だったと分からされました。我々が誇る最新潜水艦はヘリコプターと連携した対潜攻撃であえなく撃沈判定を出され、第2艦隊は海自の潜水艦に抵抗出来ずに無力化されました。
沢目司令と同じく私も演習後の見学で海自の潜水艦「SS-512 おうりゅう」を訪れましたが、機動力向上や破損時の冗長性に長けているX型の舵や、充電時間を短縮しながらより溜められるリチウムイオン電池と言った未知なる技術を知りました。」
「潜水艦もそれか───勝っている分野が一切無いじゃないか······」
神路の話はただでさえ重い空気にトドメを刺した。TRM最強と自負していた陸海空全ての分野で自衛隊に叶わない事が判明し、それは東和がTRM最強の座から転落する事実を示していた。
今まで東和と良好な関係を結んでいた国々も日本へ鞍替えするだけならまだしも、最強から落ちた東和に対して長らく次座に居座るチャルネスがどの様な動きを見せるかの方が閣僚らの不安を煽っていた。
「日本は我々よりも遥か上をいっていた。これが惑うことなき事実である以上、受け入れなければならん。」
「しかし、このままで良いのですか!? 軍部が納得せずに反乱を起こす可能性すらあります!!」
「落ち着け。それに対する打開策を日本が提示している。」
東川大統領は自らの発言に過剰反応する秋野陸軍大臣を抑えつつ、1つの紙束を取り出す。ホッチキスで端を止められた紙束の表紙を閣僚らが見た途端、目の色が一瞬で変化した。
「
「まさか。君達が話した最新のモノは渡せないが、古いものであれば我が国へ輸出しても良いと決めたようだ。しかも、我が国でのライセンス生産を認める旨も書いてある。
軍事力を上げるついでに技術も手に入るのなら活用しない手は無いだろ?」
「確かに魅力ね·······内務省には毎日の様に日本企業の進出願が来ているが、製造業は専ら国内企業との提携が義務付けられてるせいであまり進んでない。
兵器のライセンス生産権が締結されれば国内産業の発展にも繋がるでしょう。」
東川の補足で型落ちだと知らされても尚、陸海空三大臣は日本製兵器の輸入に即座に同意した。国内で生産を行うライセンス生産の話を持ち出した事で須江崎経済大臣も八木党内務大臣も技術や経済の面で東和の発展に貢献すると判断して同意した。
「これで日本との差は縮まるでしょうが、他国頼りの兵装になるのでどちらにしろ軍部は反対しそうです。」
「そう言う輩もいざ実物を見れば意見を180°変えるだろう。それにこれに対抗しようとして、国産兵器開発も進むでしょう。」
寺済外務大臣はどの選択肢でも軍部は反論するだろうと懸念するが、阿多機副大統領が否定する。当初は日本を懐疑的に見ていながら、いざ目の当たりにした事で意見がひっくり返った阿多機の意見は信憑性のかなり高い代物だった。
「そう言えば防衛庁の横灘浜支部から、北方領土の択捉島には80年近く占領していたソ連製の重戦車が砲台として置かれており、日本政府は保存目的で回収する計画を立てている情報を得た。
陸軍としては動かずとも戦車開発の参考すべく、回収作業に一枚噛もうか考えております。」
「そう言う角度から技術を得ようとするとは·······海軍も何かしらの視線で技術を得られるか検討すべきだな。」
「用廃機や展示機の取材と言う形で機体の見学が出来ないが打診すべきね。」
秋野陸軍大臣の何気ない打診をきっかけに、谷澤海軍大臣と富来空軍大臣は自軍の専門分野に関する技術を得られないか考え始める。
それを見ていた東川大統領は日本の影響が強くなっても、自国の誇りを捨てずに何かしらの力で抗おうとする力が残っていると確信を持った。
・演習後の装備展示
前にも書いたと思いますが、日東大演習の海軍、陸軍パート終了後にはそれぞれ見学パートがあり、本編では展開を早くすべく全カットとしました。
見学では誰が何をやったかとかも書いてあったのですが、一切使わずにお役御免に。何処かで再利用したいです。
・日本製兵器の輸入計画
今回の大目玉的な扱いですが、解説パートが長すぎてショボくなった様な·····
補足しておきますと東和へ輸出する兵器は退役済みもしくは間近の古い品がほとんどです。各兵器ごとのライセンス生産先も決めており、一部は2話後から始まるドンパチパートで早くも登場する予定です。
・択捉島の重戦車
択捉島にはIS-2とIS-3重戦車が固定砲台として置かれており、現在も錆だらけながら現存しているみたいです。
今作の北方領土は朱雀戦争時に日本が奪還しており、転移前から島内の環境整備の一環として回収計画が立てられていました。回収された戦車の一部は保存され、残りはスクラップにされる筈でしたが、東和陸軍の要請を受けて各型1両がサンプル品として譲渡されました。