New world note in Earth   作:YUKANE

52 / 70
X(Twitter)で令和6年制定の海自艦の区分番号が流れて来ましたが、航空機搭載護衛艦はCVM、次期イージス艦はCGだと判明しましたね。
今作ではあまぎ・しょうかく型航空母艦はDDH、いぶき型イージス巡洋艦はDDGとしてますが、変えた方が良いでしょうか? それともこのままいきましょうか?

今回は前話で宣言した通り、TRM諸国のお話です。最後にUA23000突破ありがとうございます!


Episode.51 TRMを回る艦隊

左へ傾いたT字型の冷軽(レヴィンガル)大陸。大陸内で4番目の国力を持つ蟻涙(アリルン)王国は、T字の横棒の下付近に細長い国土を有している。

 

長らく国土を南北に分断して争っていたこの国は東和が実施したBMPの最初の対象となり、東和の介入を受け入れた北側の勢力が国土を統一して現在に至っていた。

現在は古くから交流のある茶瑠袮須(チャルネス)共和国との繋がりを深めている関係で東和からは警戒されているが、国土の半分と海岸線の7割を占めるアルン山地由来の錫やボーキサイトなどの鉱物・国内で栽培されたカシューナッツやコーヒー豆などの農作物の輸出する見返りで得た技術によって発展を遂げていた。

 

ここ最近は鉱物と農作物のモノカルチャー経済からの脱却を目指す王国の首都 ハイロンは国土の北部に位置し、市内を流れるハロン川の両岸に築かれた街には430万人もの人々が暮らしていた。

古くから水上交通の要衝として栄えた都市の西側に政府庁舎や国会議事堂・王立博物館が構える中心部が位置し、そのど真ん中に鎮座する王城で1人の女性軍人が主である王へ訴えかけていた。

 

「以上の事から、TRM首位の座は日本が獲得すると見て間違いないでしょう。故にこれからは日本と良好な関係を築くのが最適だと私は結論づけます!

国王陛下!! 七光りの参謀の推測ですが、日本の実力を見た私の意見をどうか参考にしてください!!」

「落ち着け! オピアン! わが国王陛下が解答に困っているでないか。」

「も、申し訳ありません!! 国家の未来を思うあまり!!」

 

国防局参謀本部専属参謀のオピアン=ケリナヒ中尉は日東大演習に観戦武官として派遣され、自衛隊の実力を目にしてしまったからか相手が国王であるにも関わらず、強い口調で持論を訴えかけた。

国防局長のゼリン=パシフィムが制止した事でオピアンは自らの仕出かしに気付き、眼前の王座に座っている国王へ謝罪した。

 

「ソナタの暴走は国を思うあまりであろう。ならば喜ばしい限りで、謝る理由も無い。

だが、日本がここまでの国家なのは想定外だ。例え軍事的な力が入らずとも、日本の技術が我が国の発展に繋がるのは間違いない事実だ。」

 

国王のソルオ=アリルン=ヴェンティムはオピアンの覇気に怖気づきこそしていたが、彼女の仕出かしを許した。ついでに彼女が訴えかけた日本の実力を認識し、それが自国の発展に貢献する存在でもあるのだとも理解した。

 

「だが、彼の国が東和を介して話を進めているのは問題だ。ただでさえ我が国と東和の関係は悪いのに、“危険な国”とでも刷り込まれればどうする事も出来ん。」

「国王陛下。それに関しては(わたくし)から意見を申し上げます。」

 

国王として外交事情にも精通したソルオは日本との話し合いが東和によって妨げられる可能性を不安視するが、その場に居合わせていた経済局経済大臣のグルジュワ=オウゴウトが自らの意見を述べるべく動いた。

 

「グルジュワ。何かいい案でもあるのか?」

「はい。チャルネスや駐東大使からの情報で日本は食料と資源を求めています。故に国内で盛んに栽培されている農作物や、採掘される錫やボーキサイト・ルビー・リン鉱石などの鉱物資源を積極的に輸出し、その見返りとして日本の技術を導入出来ないでしょうか。」

「それは典型的なモノカルチャー経済のやり方だな。だが、日本が求めるモノを積極的に輸出するのは合理的ではある。」

 

経済のスペシャリストであるグルジュワが提示したのは脱却を侑めるモノカルチャー経済に逆行するモノだったが、ソルオはそれが現時点では最適な手段だと認識せざるおえなかった。

 

「私自身も日本製の素晴らしい品や技術には興味がある。モノカルチャー経済への逆行は不甲斐ないが、そうしてまでも得る価値が日本にはあるのだな。」

「それは私が保証します。演習後に東和の街を訪れましたが、雑貨類を中心に日本製品が普及していました。日本製品はTRMトップの東和人が惹かれる代物だと証明しています。」

「そこまで言うのなら早々に見たいものだ。そう言えば、大陸を回っている日本の外交団と艦隊は今、何処にいる?」

海理亜(シーリア)王国のクリアパールに寄港している模様です。」

「よりによってあの国か。あの国王は間違いなく艦隊を見学するだろうし、それきっかけで日本との関係が強まるのは大問題だ。」

 

オピアンの補足も相まって日本製品に対する興味が強まったソルオだったが、ふと思い出した冷軽大陸を回っている海自の練習艦隊と外務省の外交団の位置を聞き、頭を抱えた。

 

アリルン王国の西に存在するシーリア王国は同国を通じてチャルネスやカリスと交流していたが、両国の国境沿いに存在するマリラ半島を巡る領土問題によって関係が悪化した。現在でも両国の軍はそれぞれを仮想敵とし、TRMが定めるパスポート無しでの入国を認めない等の良好とは懸け離れた状態を現在でも続けていた。

 

「外交団はシーリア王国を夜行列車で我が国へ来訪する段取りになっております。尚、艦隊は吃水の問題からホーリネン港には入らず、沖合で第1艦隊と演習を行います。

我が国の後は古陸(フィルラント)刈寧(カルネイ)両国を訪問するそうです。」

「敵対関係を続けている国を連続して訪問するなんて、外交団も気が滅入るだろうな。だが、これは日本と繋がれる絶好の機会だ。外交局が良好な関係を築けるのを期待しよう。」

 

ソルオは今訪れている国家と関係の悪い相手に向かわざる終えない外交団のメンタルを心配しつつも、日本と繋がる絶好の機会を無駄にしないべく外交を担当する外交局に期待を寄せた。

しかしながら、ソルオの懸念通りチャルネスとの強い関係を危険視する東和によって、“反政府勢力への技術流入防止”の名目で日本の技術供与が妨害されただけでなく、輸入される品も制限される事になり、ソルオらアリルン王国の面々は東和に対する怒りを覚える結果となった。

 

 

冷軽大陸西端の沿岸に沿った細長い領土を有する海理亜(シーリア)王国は、アルン山地とシュンラ高原に隔たれた事で独自の文化を形成したシーリ族の勢力が原型であり、東和のBMP積極的に受け入れた数少ない国家でもあった。

高温多湿でスコールが年間を通して降る熱帯雨林気候の国土に広がる熱帯雨林で育った紅樹(マングローブ)二葉柿(フタバガキ)南洋桂(アガチス)洋桐(ファルカタ)等の木材を筆頭に、整備されたプランテーションで栽培された良質な天然ゴムや油椰子(アブラヤシ)・カカオ豆・ココナッツ類の輸出と、国内で産出された化石燃料と鉱石を自国産業発展に用いた事で周辺国に対して素早い近代化を果たしていた。

 

アリルンに次ぐ国力を得たシーリア王国の首都 クリアパールは海洋資源が豊富なフォルラント湾の最奥に位置し、国土の中心に存在している上に街道と舟運が交わる交通の要衝だった為に建国時から首都として機能していた。

王宮や寺院といった古い建物を中心とした西側の旧市街と、大使館や鉄道駅・港湾施設・各国企業の支社が存在する東側の新市街で構成された都市には1300万もの人々が暮らしていた。

 

冷軽大陸南部で最大の都市でもあるクリアパールに海上自衛隊 遠洋練習艦隊が寄港した。

直轄艦の「TV-3508 かしま」を旗艦に、老朽化で一線を退いた護衛艦 5隻と補給艦の「AOE-422 とわだ」の7隻で組まれた艦隊は11月15日の夕暮れに来航し、翌日の16日にシーリア王国の政府・軍部要人に対する見学が実施された。

 

見学自体はコレまで来航した国々でも行っていた為に幹部候補生ら乗組員は手慣れていたが、今回の見学は今までにない緊張感が乗組員と外交団双方に広がっていた。

 

「ほほう。これがMk.29 GMLS(対空ミサイルの発射機)か。艦首のMk.112アスロックランチャー(対潜ミサイルの発射機)に似ているが、蓋の部分が違っているのが興味深い。」

 

その主因と断言出来るのが、現シーリア国王のアヒウシューム・セルトオボが見学に訪れている事だった。皇太子時代から近隣諸国との戦いで指揮を取って勝利を勝ち取り、国王即位後も軍務局長官を兼任している軍事との繋がりが強い人物であり、TRM最強国すら凌ぐ国の海軍を見るのは納得出来る思考回路ではあった。ただ、国王の来訪など思いも寄らなかった乗組員は無礼の無い様に緊張しっぱなしだった。

 

「国王自ら訪れるとは思い切った人物ですな。」

「えぇ、私も国王が艦隊を出迎えて、その上で一隻ずつ丁寧に見学するとは思ってもおりません。」

 

「かしま」の艦橋脇に据え付けられた見張り台(ウイング)にいる練習艦隊司令官の本山継夫海将補は、国王がマジマジと見学している「TV-3516 あまぎり」を見おろしながら、乗組員の説明を真剣に聞いている様子に呆気に取られる。

外交団を率いる織川誠 文化交流・海外広報課職員はサリバー王国・ケーベル王国と連続して王族に謁見していた為に慣れてはいたが、ぎこちなさが目に見えて分かってしまう乗組員の姿に思わず緊張感を抱く。

 

「驚かせでしょう。あの方は軍の存在意義を身を持って知っているので、他国の軍隊や艦隊が訪問した際も全て見学しているんです。」

 

話し合っていた本山と織川の元に、同行していたシーリア海軍艦隊司令官 セリアム・カンパーリム中将が話しかけた。

彼女は海軍の前任である水軍時代から指揮官を幾度も輩出した名門に生まれ、女性ながら優れた才能を見せた事でアヒウシュームの後押しもあって最年少で艦隊司令官へ就任していた。アヒウシュームの采配を体感した彼女だからこそ、2人の困惑具合も理解出来たのかもしれない。

 

「その話し方ですと、同じ事を何度もやっている様ですな。ああまで軍事に熱心な政界関係者は日本にはいないだろう。」

「あんな人がいれば、間違いなく平和団体が抗議するでしょう。自衛隊に下手に突っかかるかもしれないので、いなくて良いかも知れませんが。」

「未だに毛鈴(ケーベル)といがみ合っている我が国からすれば、それは平和の象徴として誇っても良いと思いますよ。」

「そうとも言えますな。いつの日か、貴女も日本へいらして下さい。」

「陛下が日本への艦隊派遣に意欲的なので、かなり早く実現するかもしれませんよ。」

 

本山と織川は軍事に積極的な国王を見て、朱雀戦争まで戦いを知らなかった日本国民は毛嫌うだろうと仮定する。しかしながら、セリアム自身はそれは平和を作り上げた日本の誇るべきものだと答える。その発言に本山と織川は笑いつつ、彼女にそんな日本へ来てくれと社交辞令的に返す。

 

セリアムは陛下の発言を交えて返したが、それは間を置かずに実現した。日本との国交締結と貿易開始を記念してシーリア海軍艦隊の来日が決定し、彼女は司令官として訪日を果たした。

東和製海防戦艦を旗艦とするシーリア海軍艦隊は、佐世保を母港とする第3機動部隊と共同演習を実施し、セリアムらは日東大演習の観戦武官と一緒に寄港した横須賀の海軍基地や磯子の造船所を見学し、日本の軍事力の力を大いに見せつけられた。




・アリルン人の名前
アリルン人は名前と苗字の間に=を入れています。日本国召喚の二次創作で試し出しして、問題ないと確認出来たので今作でも使います。
と言うか、今作で問題ないか日本国召喚で試した形ですねw

・オピアン=ケリナヒ中尉
彼女含むTRM各国が日東大演習に派遣した観戦武官はプロット段階から用意してましたが、展開を早く進めるべくフルカットしました。
本文中の“七光り”に関しては父が先代の国防大臣な為です。

・シーリア王国のモデル
アリルン王国のモデルはベトナムだと前に書きましたが、シーリア王国はマレーシアをモデルにしています。
マレーシアっぽい描写ってあったかなぁ········やっぱりご当地料理って文化描写に最適だ。

・本山海将補と織川文化交流・海外広報課職員
このお二人はモータースポーツ関係者から取りました。国内のモータースポーツを知っていれば、分かる名前にしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。