New world note in Earth   作:YUKANE

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UA700とお気に入り10件突破ありがとうございます!
連載開始から1ヶ月も立たずに達成するとは思っていませんでした!!


Episode.5 リスクのある希望

「確かに未知の国籍マークをつけた旧海軍の飛行艇としか言いようが無いですね······」

 

首相官邸地下1階に位置する官邸危機管理センターの大型ディスプレイに、写し出された飛行艇の写真を見た鈴村が溢した独り言はこの部屋に詰める官僚らの総意でもあった。

 

彼らは午前3時頃から正午を過ぎようとする現在まで危機管理センターに缶詰して現状把握と治安の維持をブッ通しで行っており、普段からは考えられない量の業務をこなす中入って来た未確認機(アンノウン)の情報と写真は疲れ切った頭脳を更に疲れされる案件だった。

 

「本当に旧海軍の九七式飛行艇にそっくりですな·····加工やAI生成とかでは無いのですよね?」

「その様な写真がここに来るわけ無いでしょう。」

「正直、加工やAI生成と言われた方が信じれますがな·····」

 

城山農林水産大臣の発言に大洋官房長官と栃木防衛大臣が突っ込むが、その2人もこの写真が真実だと受け入れていなかった。

官僚と関係者の大半は巨大なディスプレイに写し出された写真をマジマジと眺め続け、白丸が描かれた緑色の飛行艇からこの写真が事実だと証明する情報を得ようとしていた。

 

「写真だけなら第二次大戦時にタイムスリップ様に見えるが、日の丸が無いのからタイムスリップじゃなさそうだ。」

「仮に二次大戦の時代にタイムスリップしたとしても大問題じゃ無いですか。」

「正直ドラゴンやリヴァイアサンと言った空想の生き物が出てくれた方が、ここが地球じゃないと直ぐに納得出来るんだがなぁ········」

「そんなの初見で戦う事になる自衛隊の身も考えろ。」

 

各々がそれぞれの意見を交わす中、仕事用のタブレット端末で撮影したディスプレイの写真を拡大していた外務事務次官 冠城(かぶらぎ)勇義が、ある一点を凝視している事に気づいた本庄総理秘書官が彼へ話しかけた。

 

「冠城外務事務次官、そんなに顔を険しくしてどうかしたんですか?」

「多分だけど、垂直尾翼に何か書いてあるんだ。何が書いてあるか、見ようと拡大したんだけど見えなくてね。」

「垂直尾翼? あ、ホントだ。何か記号みたいなのが書いてある。」

 

2人の会話をきっかけにセンター内の全員が写真に写る飛行艇の垂直尾翼へ視線を写す。機体と同じく緑色の垂直尾翼には記号の様な物が白で書かれていたが、今写っている写真ではボンヤリとしていた為に判読出来る者はいなかった。

 

「確かに何か書いてあるな······立川、垂直尾翼(ここ)に何が書いてあるかの情報はあるか?」

 

栃木防衛大臣はこの写真の説明するべく防衛省から送られてきた立川弘路(ひろみち)に話を振った。栃木から話を振られた立川からは持ってきたタブレットを操作しだす。

 

「それに関してはちょうど先程、画像付きで情報が来たので見て貰った方が早いです。」

 

立川がタブレットの操作を終えるとディスプレイに写し出された写真が尾翼を拡大した高画質の物へ切り替わるが、切り替わった途端にセンター内はざわつく。

 

「な、なあ、私にはアルファベットと数字でNE-67-706と書かれている様に見えるが見間違いだよな?」

「大森副総理、見間違いではありません。この機体には()()()()()()()()()()()()()()が書かれていました。」

「な······な、な!?」

 

立川が言い切った事でざわめきは更に大きくなる。緑色の尾翼には馴れ親しんだアルファベットとアラビア数字が書かれており、地球じゃない星へ来たと言う仮説を聞いていた一同を混乱させた。

 

「何度見てもアルファベットとアラビア数字だな·······」

「地球じゃない星にアルファベットがあるのはどういう事ですか!?」

「対馬から韓国が見えなくなったとの方も入ったので、ここが地球じゃないのは間違いないと思いますが······」

「これって······手の込んだドッキリとか言うオチだったりしないか?」

「一国家を巻き込んだドッキリなんか、神ぐらいしか出来ませんよ。」

「あの白丸も実は国籍マークじゃ無かったりして·····」

 

既知の機体と言語・未知の国籍マークが混在する現状に困惑した一人一人が喋り出した事で危機管理センター内はざわめきが支配したが、数回の手拍子によってざわめきは収まっていく。

センター内に静寂が訪れると手拍子をした張本人である鈴村は冷静に話し出した。

 

「取り敢えず落ち着いて下さい、我々が動揺していたら日本は更に大変な事態になるでしょう。

皆は混乱しているでしょうが、この写真によってこの星には航空機を運用出来る国家が存在している事が証明されました。奇しくも既知の言語を使っているのであれば、それを活かさないという選択肢はありません。

私は日本を維持する為にも、今直ぐにでもこの国と接触するべきだと考えています。」

 

宣言とも取れる鈴村の発言に異論を出す者はいなかったが、日本の外交について一番知っている筈である安川外務大臣は難しい表情をしていた。

 

「安川外務大臣どうしましたか? 何か不満がありますか?」

「不満はありません。ただ、今の外務省に未知の国家に動ぜずに話せる者がいるのかと考えてしまいまして······」

「確かに······盲点でした。」

 

安川の発言に官僚らは納得しつつも難しい表情を浮かべた。あの現象後に諸外国との通信が途絶えたのだが、それは海外へ散らばっていた日本人とも繋がらなくなった事を意味していた。

 

「確かに経験豊富な職員は大使館赴任と聞いたことがある。どうせなら転移と一緒に海外にいた邦人も全て連れてきて欲しかったな。」

「邦人と入れ替わりで外国人を連れて行って貰えば、正しく万々歳だな。」

「副総理の言う通り経験豊富な職員の大半は大使館勤務で、国内にその様な経験を有している職員なんて········あ」

 

手を組んで悩んでいた安川が何かを思い出したかの様にそう言うと、困りきっていた顔は自信に満ちた物へ変わっていた。

 

「カナダとフランスで副大使と広報官を務めている姉妹が祖父の一周忌で帰国していた筈です。2人ともかなり若いですが、今回の案件に充分な実力と経験を有しているでしょう。」

 

自信満々に話す安川の発言を聞いた鈴村は右手を顎に置いて考える。

 

「かなり若いとの事ですが、副大使を務めているのであれば実力は申し分ないと言えますな。祖父の一周忌中に失礼ですが、直ぐに呼んで頂きたい。」

「それに関してですが、既に彼女らの方から何か出来ないか連絡が入っているらしいです。」

「本人がそう言うのであれば任せてみましょう。外務大臣は直ぐに準備を」

「かしこまりました。」

 

日本の命運を託したファーストコンタクトに向けた準備に徹するべく安川が危機管理センターを去ると、センター内から安堵の声が出てくる。

 

「総理、やりましたな。希望が見えてきましたぞ。」

「どんな相手か分からない以上リスクこそありますが、日本存続の見込みが高まる希望なのは間違いなさそうです。」

「国名すら分からないファーストコンタクトなんて間違いなく日本史に載るでしょうな。」

 

大洋の冗談に久しぶりの笑い声がセンター内に響く。長時間の会議で疲れ切った皆のメンタルが回復しつつあると鈴村は安心した。

 

「国内の混乱に関しても与野党が協力して事態の沈静化に努め、外国人に関しては対処を母国の大使館に押し付けたので何とかなったのは幸いです。

そう言えば福岡では貨物機のオーバーラン事故も起きた様ですが、中山国土交通大臣そちらに関してはどうなってますか?」

 

鈴村から話を振られた中山礼吾 国土交通大臣は脇に控えていた秘書からタブレット端末を受け取り、彼の問いへ答える。

 

「転移直後に福岡空港で発生したUPS航空のMD-11オーバーラン事故ですが、機体の破損や火災が発生しなかった為に死傷者はありませんでした。

ただGPSが使えなくなった影響もあって航空機と船は現在も動けていません。高速道路に関してはいつも通りですが、前述したGPS喪失でカーナビが使えなくなった上に混乱によって燃料が買い占められた為に、トラックだけでなく高速バスも運休が相次いでいます。

その影響で貨客共に唯一生き残っている鉄道へ殺到しているとの事ですが、大半の火力発電所が稼働していない為に現状維持で手一杯とのことです。」

「思っていたより何倍も酷すぎる·······総理、バス会社や物流会社も放出する備蓄燃料の優先対象にして正解でしたな。」

 

大森の発言に鈴村は無言で頷く。

 

今回の転移で石油輸入国と断絶した事を受けて、国内各地の石油備蓄施設に貯められていた原油の放出は既に決まっていた。しかしながら、自動車燃料は民間を切り捨ててでも日本存続に不可欠な存在へ優先的に供給する方針になっており、優先される対象は自衛隊や警察・消防等の行政と物流会社・定期のバス路線を有するバス会社とされていた。

 

放出される燃料は石油だけでなく石炭や液化天然ガス(LPG)も含まれており、この2つは国内電力の7割を担う火力発電所へと送られる事になっている。

 

「石油だけで200日以上が備蓄されているとは言え、恒久的な輸入先が見つかるとは限りませんから節約しながら使った方が良いかもしれないな。」

「ですが、これだけ大きな航空機を複数運用可能な国であれば国内に油田を有している可能性があり、それを用いて輸入する事が出来るかもしれません。」

 

音次経済産業大臣の発言で室内のあちこちから歓声が上がる。音次に続く様に城山も話し出す。

 

「日本存続には石油が不可欠ですが、同じくらいに食料も重要です。石油と違って国内での増産が可能ではありますが、それだけで1億の国民は維持出来ないでしょう。

この国がどの程度の食料自給率があるか分かる訳ありませんが、可能であれば各種食料類と家畜の飼料を輸入したいものです。」

「もし大日本帝国と同じなら食料生産を行っている植民地があるかもしれないが、接触してみなければ分からんな····」

「今話しても捕らぬ狸の皮算用にしかなりません。詳しい話は2人が接触してからにしましょう。」

 

議題を纏めた鈴村は日本の命運を託した姉妹の外交官へ、心の中で無事を祈るのだった。




・冠城勇義
この人は前作の11話だけに登場したモブと言って良いキャラでしたが、名前と役職を与えて今作に登場させました。
彼みたいに前作で1話しか出なかったキャラにも名前をつけて出す予定ですが、作者自身が全員把握してないという····

・立川弘路
彼は日本国召喚の二次創作「ノルース星戦記」に登場したオリジナルキャラで、"原作にいないならこっちにも出せるな"と判断したので出しました。あっちに出たオリジナルキャラも出てくると思いますが大丈夫ですよね?

・邦人と入れ替わりで外国人を連れて行って貰えば····
日本国召喚の二次創作ではこういう展開がかなり大きいと個人的に思ってますが、今作ではその様なサポートなど一切ありません。
展開的には面倒だと思いますが、ちゃんと解決策は用意してありますので····

・中山礼吾
彼も今作から登場した新キャラで、モデルはM-1初代チャンピオンに輝いたコンビの鉄オタの方です。

・UPS航空のMD-11·····
こちらの航空会社は実在しており、実際にMD-11を運用しています。
前作でもやってましたが、今作は出来る限り実在の会社やアプリをそのまま出すコンスタンスでやっていこうと思います。多分危ないんじゃないかと思う人が大半でしょうが、会社を批判する様な事はしないので大丈夫だと思っています。
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